2万8,000円前後で上値が重い日経平均!?その理由は?

2万8,000円前後で上値が重い日経平均!?その理由は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2022/11/22

インフレ鈍化期待 VS FRB(連邦準備銀行)のタカ派姿勢

11月第3週(11/14-18)の日経平均株価は、前週末比363円80銭安(▲1.3%)と週足ベースで4週ぶりの反落となりました。

11/11(金)の日経平均が前日比817円(+3.0%)の大幅高となっており、第3週はその反動があったもようです。
日経平均は11/14(月)の週初日こそ、前週末の大幅高の反動で前日比300円安(▲1.1%)となりました。しかし、それ以降15(火)-18(金)の変動値幅はいずれも前日比1%以内と狭く、米国市場の動きを慎重に見定めようとする展開でした。

同期間の米国株式市場は、NYダウが▲0.006%とほぼ横ばい。構成銘柄にグロース銘柄が多いナスダックは▲1.6%で終えています。ナスダックは11月第2週の上昇率がNYダウの約2倍と好調であった分、11月第3週は下落幅が大きくなった形です。

米国株式市場では、インフレ鈍化を示す経済指標が市場で好感される一方、FRB(米連邦準備銀行)メンバーが楽観視する市場参加者をけん制するように、タカ派姿勢を示す姿が度々見受けられました。

週中に発表された経済指標は、11/15(火)の米10月生産者物価指数(PPI)や11/17(木)の11月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、11/18 (金)の10月景気先行指標総合指数(前月比)はいずれも市場予想下振れる数値でした。軟化した経済指標がインフレ鈍化観測を高じさせ、FRBの金融引締め姿勢へ後退期待が増す要因となったもようです。
一方で、11/14(月)にFRB副議長や理事がインフレ率を2%まで引き下げるため金融引き締め姿勢を堅持してゆくことを示したり、続く11/17(木)にもセントルイス連銀総裁がターミナルレート(利上げの最終到達地点)引き上げを示唆したりと、タカ派的スタンスを表す場面が多々ありました。

経済指標の軟化に喜ぶ市場参加者に対し、FRB当局関係者たちが警鐘を鳴らす姿勢を示すという動きが週中で幾度となく起こり、株式市場は好悪材料のせめぎあい状況が続きました。よって、狭いレンジで株価が上下する展開でした。

ただ、FRBによる金融引締めの効果は企業業績にも大きな打撃を与えてるのも実情です。小売大手ターゲットは、11/16に行われた8-10月期決算発表にて低調な年末商戦見通しを示したことが嫌気され、同決算通過後に株価が13%超の大幅安となりました。米国では11/25(金)にブラックフライデーを迎え、これ以降年末商戦が本格化する運びです。米国は個人消費がGDPの約7割を占める消費大国であるため、企業にとっての稼ぎ時である年末商戦の動向にも今後注視したいところです。

11月第4週の日経平均は材料難の中、小幅反発でスタート。バークシャーハサウェイ(世界的著名投資家のウォーレンバフェット氏が率いるファンド)による商社株の追加取得が明らかとなり、卸売業が前日比+1.2%と堅調に推移しています。

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(11/14~21)では前週に続き、好調な決算を発表した銘柄が多々見受けられます。

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(11/14~21)では、リクルートHD(6098)や電通G(4324)等の決算が不調に終わった銘柄のランクインが目立ちます。今回、業種ではサービス業の銘柄が多く、景況感悪化による影響が少なからずありそうです。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(11/14~21)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(11/14~21)

2万8,000円前後で上値が重い日経平均!?その理由は?

日経平均は8月半ばに2万9,000円台を回復しましたが、その後、米国でインフレへの懸念が一段と強まったことなどが嫌気され、10月初旬には2万6,000円台前半へ大幅な株価調整を強いられました。そこから日経平均は切り返しへ転じて11/11(金)に2万8,000円台を回復しましたが、その後、株価上昇は一服し、一進一退の値動きが続いています。

現状の日経平均の上値が重い要因について考えてみましょう。図表9は2021/1以降の日経平均と価格帯別売買高(250円刻み)を表したグラフです。このグラフを見ると、日経平均が2万7,750円~2万9,250円あたりの累計売買高が多いことがわかります(図表9の赤い点線部分)。これは過去に積極的な売買が行われたことを示しており、株価回復局面では”戻り待ちの売り”を誘うことで、日経平均の上値抑制要因になる可能性があります。

図表9  日経平均(週足)と価格帯別累積売買高

  • ※ブルームバーグをもとにSBI証券が作成。
  • ※データは2022/11/18時点のものを使用。


JPX(日本取引所グループ)が公表している投資主体別売買動向(図表10)を見ると、個人投資家は過去3週間(10月第4週~11月第2週)にわたって日本株を売り越しており、前述した”戻り待ちの売り”を行っている売り主体の1つと見ることができます。一方、3週間連続で日本株を買い越しているのが海外投資家です。11月8日付の本コーナー『円安一服で海外投資家の日本株買い再開へ?』で述べた通り、円相場において円安の進展が一服する中、海外投資家が(円建てに比べて)割安なドル建て日経平均に注目して買っていると思われます。つまり、個人投資家の売りVS海外投資家の買いという構図が、足元の日経平均の膠着感を演出していると言えます。

再び急激な円安に見舞われない限り、海外投資家による日本株買いの動きが日経平均の下値を支えていくと見られます。ただし、上値を追うには個人投資家の”戻り待ちの売り”をこなしていく必要があることを考慮すると、日経平均の2万8,000円~2万9,000円のレンジを上抜けするには、やや時間がかかることが想定されるでしょう。

図表10  投資主体別売買動向 (海外投資家 VS 個人投資家)

  • ※日本取引所グループ公表データをもとにSBI証券が作成。

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