~半導体とスマホ関連銘柄、2023年はリターン・リバーサルとなるか~

~半導体とスマホ関連銘柄、2023年はリターン・リバーサルとなるか~

投資情報部 李 燕

2023/01/19

1/12-1/18の香港市場は全般的に買い優勢のなか、情報テクノロジーが軟調でした。旧正月連休を控えたポジション調整が背景です。他方、調整幅は限定的で、年初から大幅に上昇した割に利益確定売りの「程度」は穏やかでした。

今回のトピックスは、「半導体とスマホ関連銘柄、2023年はリターン・リバーサルとなるか」です。

今週の中国株市況

図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

注:1/18(水)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(1/18(水)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09999 網易 [ネットイース] 12.9% 29.1% 26.0% ゲーム大手。今年初の中国当局による新作ゲームの認可リストに同社のゲームも入り、好材料となった。
02382 舜宇光学 [サニーオプチカル] 8.7% 10.8% 33.2% 大手光学機器メーカー。同社を含む中国のアップルサプライヤーがインドでの事業拡大に向け、インド当局から初期承認を得たと報じられ、買い材料となった。大手証券会社がスマートフォン市場の在庫水準は4-6月期までに正常化する可能性があると指摘したことも、好感された。
00669 創科実業 [テクトロニック・インダストリーズ] 8.6% 14.7% 38.2% 大手電動工具メーカー。1/9に世界大手証券会社2社が同社製品に対する需要は依然として堅調だと指摘し、同社株は200日移動平均線を突破した。その後、家電業界では欧米での在庫調整が終盤を迎えている可能性があると大手証券会社が指摘し、家電株が買われるなか、連れ高した。
00857 中国石油天然気 [ペトロチャイナ] 8.6% 10.4% 17.4% 中国石油・天然ガス最大手。原油先物価格が上昇し、買われた。石油輸出国機構(OPEC)が「中国の石油需要はコロナ規制の緩和によって回復し、世界需要の増加をけん引する」と予想した。
00883 中国海洋石油 [CNOOC] 7.3% 8.4% 9.6% 中国石油・天然ガス大手。原油先物価格が上昇し、買われた。石油輸出国機構(OPEC)が「中国の石油需要はコロナ規制の緩和によって回復し、世界需要の増加をけん引する」と予想した。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
03690 美団(Meituan) -6.0% -7.0% 6.2% 中国フードデリバリー最大手。中国本土投資家に売りが連日続いた。香港地場の証券会社はテンセントによる同社株の持ち株比率引き下げ(特別配当の形で実施)による影響はまだ続く見込みだとし、「安値拾い」を推奨しないとコメント。一部の世界大手投資ファンドは同社株の持ち株比率を引き上げた。
00960 龍湖集団 [ロンフォー・グループ] -7.3% -6.8% 26.1% 中国不動産大手。深セン市が「共有財産権住宅」を土地譲渡時の市場価格より50%低い価格で売却することを検討していると報じられ、不動産株が売られた。
02007 碧桂園 [カントリー・ガーデン] -9.3% -7.0% 87.9% 中国不動産大手。深セン市が「共有財産権住宅」を土地譲渡時の市場価格より50%低い価格で売却することを検討していると報じられ、不動産株が売られた。
00881 中升集団 -10.4% 7.7% 25.1% 自動車販売会社。1月の自動車市場は「比較的フラット」になる見通しだと中国自動車業界団体が予測し、売り材料となった。
06098 CG SERVICES -11.0% -4.6% 98.3% 不動産大手カントリーガーデン(02007)傘下の不動産サービス会社。深セン市が「共有財産権住宅」を土地譲渡時の市場価格より50%低い価格で売却することを検討していると報じられ、不動産株が売られた。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
02018 瑞声科技 [AACテクノロジーズ] 16.8% 17.8% 66.0% 音響部品メーカー。アップルに詳しい著名アナリストが「iPhone 15」は振動装置が増える設計になっており、同社はその恩恵を受ける見込みだと指摘し、買い材料となった。大手証券会社がスマートフォン市場の在庫水準は4-6月期までに正常化する可能性があると指摘したことも、好感された。
09999 網易 [ネットイース] 12.9% 29.1% 26.0% ゲーム大手。今年初の中国当局による新作ゲームの認可リストに同社のゲームも入り、好材料となった。
02382 舜宇光学 [サニーオプチカル] 8.7% 10.8% 33.2% 大手光学機器メーカー。同社を含む中国のアップルサプライヤーがインドでの事業拡大に向け、インド当局から初期承認を得たと報じられ、買い材料となった。大手証券会社がスマートフォン市場の在庫水準は4-6月期までに正常化する可能性があると指摘したことも、好感された。
00285 比亜迪電子 [BYDエレクトロニック]? 4.6% -2.1% 30.0% BYD(01211)傘下のスマートフォン部品・受託製造メーカー。アップルが2023年新製品第1弾を発表し、買い手掛かりとなった。大手証券会社がスマートフォン市場の在庫水準は4-6月期までに正常化する可能性があると指摘したことも、好感された。
01347 華虹半導体 [フアホン・セミコンダクター] 4.6% 7.3% 75.3% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。生産能力拡大のニュースが買い材料となった。同社は中国国家半導体ファンドを含む団体・企業と共同で12インチ工場に対応する合弁会社を設立した。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] -4.9% -5.9% 6.9% パソコン大手。世界パソコン市場では企業顧客がパソコンの購入を先延ばしにしており、法人向けパソコン市場は2024年までに回復する可能性は低いと業界調査会社が予測し、売り材料となった。大手証券会社は同社の投資判断を「中立」から「売り」に引き下げた。
01024 快手(Kuaishou Technology) -5.5% 4.3% 40.9% ショート動画大手。RSIが買われ過ぎサインとされる70%に達した後、下落に転じた。株価が節目の80香港ドル台を突破できなかったことも利益確定売りを誘ったもよう。
03690 美団(Meituan) -6.0% -7.0% 6.2% 中国フードデリバリー最大手。中国本土投資家に売りが連日続いた。香港地場の証券会社はテンセントによる同社株の持ち株比率引き下げ(特別配当の形で実施)による影響はまだ続く見込みだとし、「安値拾い」を推奨しないとコメント。一部の世界大手投資ファンドは同社株の持ち株比率を引き上げた。
00909 Ming Yuan Cloud Group -8.0% 7.2% 71.2% 不動産会社向けソフトウェア大手。深セン市が「共有財産権住宅」を土地譲渡時の市場価格より50%低い価格で売却することを検討していると報じられ、不動産株が利益確定売りに押された。
09868 小鵬汽車[シャオペン] -8.5% -10.8% 3.4% 新興EVメーカー。一部のEVについて値下げを発表し、売り材料となった。同社は2022年のEV販売実績ではトップ10から外れており、競争激化や需要をめぐる懸念につながった。大手証券会社は同社の投資判断を「オーバーウエイト」から「中立」に引き下げた。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

1/12-1/18の香港市場では、ハンセン指数が1.1%上昇、ハンセンテック指数は0.5%下落しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は、2.9%上昇しました。目新しい材料に欠けるなか、旧正月連休を控えたポジション調整が相場を主導しました。

業種別では、エネルギーと素材が上昇率上位に並びました。

エネルギーは、中国の3大石油メジャーであるペトロチャイナ(00857)、中国海洋石油(00883)、中国石油化工(00086)がそろって買われました。石油輸出国機構(OPEC)が「中国の石油需要はコロナ規制の緩和によって回復し、世界需要の増加をけん引する」と予想し、石油先物価格が上昇しました。

素材は、アルミニウム大手の中国アルミ(02600)や中国宏橋(01378)、銅大手のコウセイコパー(00358)が買われました。中国の「ゼロコロナ政策」撤廃に伴う景気回復を見込み、アルミニウムや銅の先物価格が上昇しました。ただ、金先物価格は高値警戒感からやや調整し、金・銅大手のツージンマイニング(02899)は利益確定売りに押されました。

一方、情報テクノロジーは総じて軟調でした。これまで上昇が続いたこともあり、旧正月連休を前に利益確定売りが優勢でした。一部の主要銘柄は、テクニカル要因(たとえばRSIが短期的に買われすぎサインとされる70%に達した)による売りもみられました。

フードデリバリー大手の美団(03690)が大幅続落したことも指数を押し下げました。テンセントが同社株を特別配当として分配すると発表して以来、その権利落ち日(1/5)の前後ではテンセントと同社株を両方保有するファンドによる持ち高調整がみられました。それ以降は、中国本土投資家による売りが連日続きました。テンセントによる実質的な持ち株比率引き下げによる影響は、当面続く可能性があると一部の証券会社が指摘しました。

不動産も軟調でした。深セン市が「共有財産権住宅」を土地譲渡時の市場価格より50%低い価格で売却することを検討していると報じられ、売りを誘いました。「共有財産権住宅」は通常の住宅に比べて供給量が限定的です。したがって、大量供給を実施しない限り、低価格での供給が実施されたとしてもその影響は限定的とみられます。中国当局が2023年は不動産市場を支援する方針であることも踏まえると、地方政府が不動産市場見通しの悪化につながるような施策を打ち出す可能性は低いと想定されます。

今回のトピックス

今回のトピックスは、「半導体とスマホ関連銘柄、2023年はリターン・リバーサルとなるか」です。

半導体とスマホ関連銘柄は、中国株式市場だけでなく、世界株式市場でも2022年は厳しい1年となりました。「コロナ特需」がはがれ落ち、コロナ禍の「特需」とサプライチェーン問題を受けた在庫積み増しによる過剰在庫、米国の利上げによる金利上昇などが逆風となりました。しかし、半導体とスマホ関連銘柄は2023年に堅調なスタートを切りました。

半導体とスマホ関連銘柄が上昇に転じたタイミングを確認してみると、2022年10-11月でした。当時は、中国当局が「ゼロコロナ政策」に関連する措置を順次撤廃し、成長重視へ方針を転換しました。米国に対しては2023年の利下げ期待が持たれていました。

米国の利下げをめぐっては不透明感があり、足元で意見が分かれています。他方、2022年ほど急ピッチな利上げは実施しない可能性が高いとみられます。一方、中国は1/8に正式に「ゼロコロナ政策」を撤廃しました。それを受け、2023年に入ってからは中国経済の回復期待が強まり、その恩恵で世界経済も回復が見込まれるとの見方が増えています。

中国の「ゼロコロナ政策」の撤廃と成長重視への方針転換は、半導体やスマートフォンの需要回復に対する期待にもつながったとみられます。また、2023年に入ってから、半導体やスマートフォン業界での在庫調整は続いていますが、今年前半には在庫水準が安定化する可能性があるとの指摘が、企業側や大手証券会社で出ています。

今後の在庫や需要の動向に留意する必要がありますが、半導体とスマホ関連銘柄は2023年にリターン・リバーサルを演じる可能性がある点にも注目したいです。なお、1/18付のレポート「半導体最先端を垣間見る ~「バフェット銘柄」のTSMCSOX指数の動向~」も併せてご参照いただければと思います。

図表4 香港市場の半導体・スマホ関連銘柄

銘柄 概要 株価(1/18) 52週高値 52週安値
舜宇光学(02382) 大手光学機器メーカー。アップルのサプライヤーでもある。 104.30香港ドル 219.00香港ドル 65.00香港ドル
比亜迪電子(00285) BYD(01211)傘下のスマートフォン部品・受託製造メーカー。アップルのサプライヤーでもある。 26.20香港ドル 28.10香港ドル 13.20香港ドル
瑞声科技(02018) 音響部品メーカー。アップルのサプライヤーでもある。 20.75香港ドル 32.90香港ドル 11.10香港ドル
小米(01810) スマートフォン・IoT家電大手。 11.90香港ドル 19.08香港ドル 8.31香港ドル
華虹半導体(01347) 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。 30.85香港ドル 42.00香港ドル 15.74香港ドル
SMIC(00981) 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。 17.66香港ドル 20.95香港ドル 14.64香港ドル

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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