中国株 ココがPOINT!~2つのローテーション、一段高の可能性を示唆か~

中国株 ココがPOINT!~2つのローテーション、一段高の可能性を示唆か~

投資情報部 李 燕

2023/02/02

1/26-2/1の香港市場は小幅ながら続伸しました。高値警戒感から一部のセクターは利益確定売りに押されましたが、景気回復に対する期待が続き、出遅れセクターに対する見直し買いが相場を支えました。

今回のトピックスは、「2つのローテーション、一段高の可能性を示唆か」です。

今週の中国株市況

図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

注:2/1(水)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)+I13D3D3:J14
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
01211 比亜迪 [BYD] 14.8% 35.0% 41.6% 中国EV最大手。会社側が2022年通期の純利益は前年比425%-458%増になる見通しだと発表し、好材料となった。業績予想が発表された後、大手証券会社が目標株価を引き上げた。
01810 小米集団 [シャオミ] 13.8% 23.4% 46.0% スマートフォン・IoT家電大手。「小米自動車」の設計に関連する画像がインターネットにアップされ、同社は最終版の設計ではないとコメント。サプライヤールートでの情報漏洩のようだが、同社のEV事業の進展を示す材料として評価された。
00669 創科実業 [テクトロニック・インダストリーズ] 10.3% 21.9% 35.3% 大手電動工具メーカー。北米の売上高構成比が8割を占める。大手証券会社が買い推奨した。米国で今年前半に利上げが続いたとしたも、2018-2019年の利上げサイクルの経験からするとインフレの鈍化はポジティブ材料で、同社株はさらに上昇する可能性があると分析した。
00175 吉利汽車 [ジーリー・オートモービル] 10.3% 16.5% 47.2% 大手自動車メーカー。傘下のプレミアムEV「極克」(ZEEKR)ブランドが3つ目の新モデルを打ち出す可能性があると報じられ、買い材料となった。
09888 百度 [バイドゥ] 10.0% 29.2% 78.7% 検索エンジン大手。同社が米企業のオープンAIの「ChatGPT」に似た人工知能(AI)を使った自動応答アプリケーションの導入を計画していると報じられ、買い材料となった。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00388 香港取引所 -4.3% 4.5% 55.7% 香港証券取引所を運営。テクニカル指標のRSIが短期的に買われ過ぎサインとされる70%に近づき、利益確定売りを誘ったもよう。
01177 中国生物製薬 [シノ・バイオファーマ] -5.0% 0.7% 9.8% 大手医薬品メーカー。セクターローテーションの一環とみられる。昨年10月末からの相場上昇をけん引してきたヘルスケアから出遅れセクターへの資金移動がみられた。
09988 アリババ・グループ -5.4% 27.5% 66.4% EC・フィンテック大手。「アリババがシンガポールに本社を移す」との噂に対し、アリババが否定し、売りを誘ったもようと現地紙が報じた。テクニカル指標のRSIが短期的に買われ過ぎサインとされる70%を超えたことを踏まえると、「本社移転有無」の材料は単に利益確定売りの「口実」になった可能性がある。
06862 海底撈(Haidilao) -5.5% -4.7% 68.5% 火鍋チェーン中国最大手。競争激化懸念で売られたもよう。同社のライバルであるシャブシャブケータリング(00520)も海外進出を計画していると報じられた。
02269 薬明生物 [ウーシー・バイオロジクス] -6.0% 12.0% 76.7% バイオ医薬品開発受託大手。テクニカル指標のRSIが短期的に買われ過ぎサインとされる70%を超え、利益確定売りを誘った。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00020 SenseTime Group Inc 35.5% 32.4% 129.7% AIソフトウェア大手。指数算出会社のFTSEラッセルが米国財務省当局者とのコミュニケーションに基づく情報として、「現在、同社株は米国の投資家が株式の保有を禁じる中国企業の制裁対象ではない」と示し、買い材料となった。
02015 理想汽車[リーオート] 22.0% 35.3% 83.3% 新興EVメーカー。セクターローテーションの一環として、EV関連株について出遅れ修正の動きがみられた。詳細は「今回のトピックス」部分をご参照願います。
09868 小鵬汽車[シャオペン] 20.5% 14.1% 59.4% 新興EVメーカー。セクターローテーションの一環として、EV関連株について出遅れ修正の動きがみられた。詳細は「今回のトピックス」部分をご参照願います。
09866 蔚来汽車 [ニオ] 14.7% 24.2% 19.4% 新興EVメーカー。セクターローテーションの一環として、EV関連株について出遅れ修正の動きがみられた。詳細は「今回のトピックス」部分をご参照願います。
01810 小米集団 [シャオミ] 13.8% 23.4% 46.0% スマートフォン・IoT家電大手。「小米自動車」の設計に関連する画像がインターネットにアップされ、同社は最終版の設計ではないとコメント。サプライヤールートでの情報漏洩のようだが、同社のEV事業の進展を示す材料として評価された。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
06060 衆安在線財産保険 -3.8% 23.0% 64.3% オンライン保険大手。テクニカル指標のRSIが短期的に買われ過ぎサインとされる70%を超え、利益確定売りを誘った。
00241 阿里健康信息技術 [アリババ・ヘルス] -4.3% 6.0% 93.7% アリババ(09988)傘下のインターネットヘルス大手。セクターローテーションの一環とみられる。昨年10月末からの相場上昇をけん引してきたヘルスケアから出遅れセクターへの資金移動がみられた。
00909 Ming Yuan Cloud Group -4.6% 9.1% 82.4% 不動産会社向けソフトウェア大手。大手証券会社が中国の不動産市場は依然として回復の兆しがみられないと指摘し、不動産関連株が売られた。
01833 平安健康医療 [ピンアン・ヘルスケア] -5.4% -0.7% 38.1% 平安保険(02318)傘下のインターネットヘルス大手。セクターローテーションの一環とみられる。昨年10月末からの相場上昇をけん引してきたヘルスケアから出遅れセクターへの資金移動がみられた。
09988 アリババ・グループ -5.4% 27.5% 66.4% EC・フィンテック大手。「アリババがシンガポールに本社を移す」との噂に対し、アリババが否定し、売りを誘ったと現地紙が報じた。他方、テクニカル指標のRSIが短期的に買われ過ぎサインとされる70%を超えたことを踏まえると、その材料は単に利益確定売りの「口実」になった可能性がある。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

1/26-2/1の香港市場では、ハンセン指数が0.1%上昇、ハンセンテック指数は2.8%上昇しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は、3.3%上昇しました。

主要指数は、旧正月連休の一大イベントを無事に通過したことで連休明け直後は大幅に続伸しました。ただ、1/30-1/31は高値警戒感による売りや月末のポジション調整がみられました。これまで大きく上昇したセクターや銘柄が利益確定売りに押されました。

業種別では、工業、素材、一般消費財が上昇率上位に並びました。

工業は、景気に敏感な海運株が上昇を主導しました。国際通貨基金(IMF)が2023年の中国および世界の経済成長見通しを上方修正し、買い材料視されました。海運大手のコスコシッピング(01919)と物流大手の京東物流(02618)やZTOエクスプレス(02057)が買われました。

素材も、景気回復に伴う需要拡大期待で買われました。アルミニウム大手の中国アルミ(02600)や中国宏橋(01378)が上昇しました。金・銅大手のツージンマイニング(02899)は、今後数年間でリチウム生産量を大幅に増やす計画を発表し、買われました。リチウム大手のガンフォンリチウム(01772)は、会社側が2022年通期の純利益は前年比244%-321%増になる見通しだと発表し、好材料となりました。

一般消費財は、主に出遅れのEV(電気自動車)関連株が上昇をけん引しました。テスラ(TSLA)が予想を上回った決算を発表し、EV関連銘柄に対する見直し買いが入りました。米国に同時上場している新興EVメーカーのニオ(09866)、リーオート(02015)、シャオペン(09868)がそろって大幅高となりました。BYD(01211)は2022年通期の純利益が前年比425%-458%増になる見通しだと発表し、買われました。

一方、ヘルスケア、金融、不動産はやや軟調でした。

ヘルスケアは、昨年10月末からの相場上昇をけん引してきましたが、足元では出遅れセクターへの資金移動を背景に、売りが優勢でした。インターネットヘルス関連のアリババヘルス(00241)や平安ヘルスケア(01833)、バイオ医薬品開発受託大手の薬明生物(02269)が調整しました。

金融と不動産は、不動産市場の回復遅れに対する懸念が売りを誘いました。中国の不動産市場は依然として回復の兆しがみられないと、大手証券会社が指摘しました。ただし、不動産市場の回復には時間がかかるとの見方が主流になっているため、調整幅は限定的でした。

今回のトピックス

今回のトピックス

今回のトピックスは、「2つのローテーション、一段高の可能性を示唆か」です。

旧正月明けの中国株の動向からは、2つのローテーションが確認されました。

■香港や米国上場の中国株から中国本土株へのローテーション

■セクターローテーション

香港や米国上場の中国株から中国本土株へのローテーション

旧正月連休明け後、香港や米国上場の中国株を売り、中国本土株を買う動きがみられました。その背景には、以下2つの要因が挙げられます。

1)出遅れ修正

昨年10月からのパフォーマンスを比較してみると、香港や米国上場の中国株に比べて、中国本土株の出遅れが目立ちます。たとえば、昨年10月末から今年1月末までに、ハンセン指数が49%上昇したのに対し、上海・深セン300指数は18%の上昇にとどまりました。

図表4 主要中国株指数の推移(2022年10月末=100として指数化)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

2)海外投資家の買い
海外投資家が中国本土株を買う際のメインルートである「香港と中国本土のストックコネクト」の取引状況からは、海外投資家が連日、中国本土株を買い増していることが明らかになりました。旧正月連休の一大イベントを無事に通過し、中国の景気回復に対する期待が一段と広がっていることが背景と考えられます。海外投資家の動きは中国本土の現地紙でも大きく取り上げられ、中国本土の投資家もそれに追随した可能性があります。

セクターローテーション
旧正月連休明け後、セクターローテーションの動きが顕著でした。たとえば、これまで上昇をけん引してきたネット大手が利益確定売りに押された一方、出遅れのEV(電気自動車)関連銘柄は大きく上昇しました。ネット大手に関しては、特段悪材料が出たわけでないことを踏まえると、急反発後の高値警戒感が意識されたと思われます。

EV関連銘柄については、新興EVメーカーの1月の販売が全般的にさえず、むしろ「悪材料」がありました。しかし、市場では1月の軟調は既に株価に織り込まれているとの指摘が目立ちました。EV世界最大手のテスラ(TSLA)が予想を上回った決算を発表し、今後の販売に対して楽観的な見通しを示したことも、EVセクターに対する投資家センチメントの改善につながりました(※)。したがって、EV関連銘柄の上昇は、出遅れ修正の側面と今後の好材料(販売回復)に対する期待が主な要因と考えられます。

(※詳細は2/1付レポート「EV最先端 ~テスラの販売実績と業績動向、値下げによる影響~」をご参照願います。)

図表5 主要ネット大手とEV関連銘柄の株価推移(2022年10月末=100として指数化)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

上記の2つのローテーションは裏を返せば、一部のセクターや銘柄の調整は急反発後の高値警戒感からくるもので、中国経済や企業業績の回復に対する疑念からくるものではないと言えそうです。IMFは1/31に2023年の中国GDP成長率見通しを5.2%に上方修正し、アナリストたちも中国企業の業績見通しを上方修正しています。したがって、中国株はセクターローテーションやスピード調整をこなしながら、上昇トレンドを維持する可能性が高いと考えられます。

図表6 IMFの世界経済見通しによる最新のGDP成長率予測

※IMFの「世界経済見通し改定版」(2023年1月)をもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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