飲み頃のスープはまだ続く?米金融政策の注目点は?

飲み頃のスープはまだ続く?米金融政策の注目点は?

投資情報部 淺井一郎/栗本 奈緒実

2023/01/31

リターン・リバーサル

1月第4週(1/23-27)の日経平均株価は829円03銭高(+3.1%)と続伸しました。年初来からは、およそ5%高しており順調なスタートダッシュを切っています。背景には、リターン・リバーサルの動きから、米国でハイテク株高が進んだことがあります。

米FRB(米連邦準備制度理事会)の積極的金融引締めによる景気悪化懸念や中国での需要減速観測を受け、2022年のハイテク株は軟調な株価推移でした。2023年になると、割安感から買いが入った形です。米SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)は、同期間+5.4%(年初来:+16.3%)となり、日本でも半導体株を中心に物色が進んでいます。

また、同期間は日米両市場ともに10-12月期決算が本格化した週でした。10-12月実績に関しては、案外堅調な結果となっています。しかし、通期の業績見通しに関しては、特に米国を中心に下方修正する企業も目立っています。

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(1/23~1/30)では、「物言う株主」による大規模な株式取得が伝わった大日本印刷(7912)が17%超の大幅高となり、他を圧倒しました。同社の株式取得を報じられた、米エリオットマネジメントは世界最大級のヘッジファンドの1つであり、近年では2020年のソフトバンクグループ(9984)の株式取得で話題にあがっていました。

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(1/23~1/30)では、海運大手3社が上位を独占する結果でした。欧州の海運大手が提携解消を発表したことで、さらなる運賃の下落懸念が増しました。競争激化か予想され、需要減速見通しによる運賃の下落に追い打ちをかけた形です。

2月第1週は重要日程が目白押しです。週内には、アップルやアマゾンといった主力IT株の決算発表、1/31-2/1のFOMC、最終営業日には1月雇用統計の発表があります。そのため、同週は相場の潮目が変わる可能性も大きいです。リターン・リバーサルによる年初来からのハイテク株高も一服する可能性があります。

1/30(月)は、日米両市場で主立った重要な経済イベントがないため材料に乏しい展開でした。まるで、嵐の前の静けさです。2月第1週は金曜日の米1月雇用統計を見届けるまで、緊張感の抜けない週となるでしょう。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(1/23~1/30)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(1/23~1/30)

飲み頃のスープはまだ続く?米金融政策の注目点は?

先週(1月23日)から今週(30日)にかけて日経平均は合計で900円超上昇しました。決算発表シーズンが本格化する中、好業績銘柄を物色する動きも見られますが、相場全体としては米国株高に後押しされたと考えられます。NYダウは20日から27日にかけて6営業日連続で上昇しました。また、円相場で円高が一服し、1ドル=130円前後で推移していることも、日本株の買い安心感につながったと見られます。

一部の市場参加者は、現状の米国市場はゴルディロックス相場(適温相場)にあると見ている模様です。「ゴルディロックス」は英国童話「3びきのくま」に登場する主人公の少女の名前で、童話の中で少女は留守中のくまの家に入り、熱し過ぎず、冷め過ぎず、丁度良い温度のスープを飲んだという話です。これを相場の動きで説明すると、経済が堅調すぎる(熱すぎる)と、FRBによる金融引き締めが加速して金利上昇(債券安)を伴った株安が進行し、逆に経済が軟化しすぎる(冷たすぎる)と、リスク回避の動きからリスク資産である株を売って債券に乗り換える(金利低下)動きが強まる可能性があります。現状、市場参加者は米国経済が、このどちらでもない適温状態にあり、米国市場では金利低下(債券高)と株高が進むという、債券投資家と株式投資家の両方から見て都合の良い相場となっています。

もっとも、市場のこうした見方は金融当局者の見方と一致しておらず、むしろ大きく乖離した状態にあります。12月に開催された前回のFOMC(米連邦公開市場委員会)で示された政策金利見通し(ドットチャート)では、23年に政策金利は3回分(0.25%pt×3回)の引き上げが見通されています(23年末の政策金利水準は5.00―5.25%)。また、パウエルFRB議長は現時点で23年中に利下げを行う予定がないと表明しました。それにもかかわらず、市場の政策金利の予想(図表9)は、政策金利のピークが6月となり、水準は5%に到達せず、更に年後半にかけて利下げに転換することが予想されています。現状のゴルディロックス相場を支えているのは、米国経済がほどよく減速する中で、FRBの金融政策に対するスタンスが大きく変化するとの期待を先取りしていると見られます。

図表9 政策金利(FFレート誘導目標)見通し FOMC VS 市場予想

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成


では、1月31日から2月1日にかけて開催される今回のFOMCにおける注目点とはどういったところになるのでしょうか?まず、政策金利(FFレート誘導目標)は+0.25%ptの利上げが幅広く予想されています。政策金利は、12月会合において、過去4会合にわたって行われた+0.75%pt利上げから+0.50%ptへ利上げ幅が縮小し、今回の会合で更にペースダウンする見通しとなっています。市場では、米国経済の鈍化が一段と鮮明になる中、インフレリスクはピークアウトし、もはや大幅な利上げは必要がないとの考えを強めている模様です。

  更に注目されるのは、今回のFOMCにおいて、利上げ打ち止めに向けた何らかのサインが示されるか否かでしょう。上述したように、利上げ幅が市場予想並みの+0.25%ptか、あるいは利上げ見送りとなり、加えて利上げ打ち止めのサインが確認された場合、米国株式市場ではリスク選好の債券高(金利低下)とともに、ハイテクなどのグロース株主導で株高が進むでしょう。日本株についても、同様の株高が期待される一方、金融などの金利敏感株や、円高進行による輸出株の売りには注意したいところです。

  一方、逆にFOMCにおいて改めて金融引き締め姿勢が示されたり、+0.25%ptを上回る利上げが行われたりする可能性も否定できません。ここもとFRBの金融政策スタンスは、景気配慮よりもインフレ抑制に注力しており、少々、景気が減速したからといって、金融引き締めの手綱を緩めるとは限らないためです。この場合、市場ではゴルディロックス相場が足元から掬われる形となるため、金利上昇(債券安)と株安が顕著となる可能性があります。日本株については、米国株安を手掛かりにハイテク株主導で軟調な展開が想定されますが、円安・ドル高を手掛かりとする輸出株買いや、金利上昇を受けた金融株買いが、どれだけ相場を下支えするか注目されるでしょう。

図表10 米国政策金利(FFレート誘導目標)の推移

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成


おすすめ記事(2023/01/31 更新)

信用取引のご注意事項

信用取引に関するリスク

信用取引は、差し入れた委託保証金額の約3倍の取引を行うことができます。そのため、現物取引と比べて大きなリターンが期待できる反面、時として多額の損失が発生する可能性も含んでいます。また、信用取引の対象となっている株価の変動等により、その損失の額が、差し入れた委託保証金額を上回るおそれがあります。この場合は「追加保証金」を差し入れる必要があり状況が好転するか、あるいは建玉を決済しない限り損失が更に膨らむリスクを内包しています。
追加保証金等自動振替サービスは追加保証金が発生した際に便利なサービスです。

信用取引の「二階建て」に関するご注意

委託保証金として差し入れられている代用有価証券と同一銘柄の信用買建を行うことを「二階建て」と呼びます。当該銘柄の株価が下落しますと信用建玉の評価損と代用有価証券の評価額の減少が同時に発生し、急激に委託保証金率が低下します。また、このような状況下でお客さま自らの担保処分による売却や、場合によっては「追加保証金」の未入金によって強制決済による売却が行われるような事態になりますと、当該株式の価格下落に拍車をかけ、思わぬ損失を被ることも考えられます。よって、二階建てのお取引については、十分ご注意ください。

ご注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社、および情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製、または販売等を行うことは固く禁じます。

・必要証拠金額は当社SPAN証拠金(発注済の注文等を加味したSPAN証拠金×100%)-ネット・オプション価値(Net Option Value)の総額となります。

・当社SPAN証拠金、およびネット・オプション価値(Net Option Value)の総額は発注・約定ごとに再計算されます。

・SPAN証拠金に対する掛け目は、指数・有価証券価格の変動状況などを考慮のうえ、与信管理の観点から、当社の独自の判断により一律、またはお客さまごとに変更することがあります。

・「HYPER先物コース」選択時の取引における建玉保有期限は原則新規建てしたセッションに限定されます。なお、各種設定においてセッション跨ぎ設定を「あり」とした場合には、プレクロージング開始時点の証拠金維持率(お客さま毎のSPAN掛目およびロスカット率設定に関わらず必要証拠金額はSPAN証拠金×100%で計算)が100%を上回っていれば、翌セッションに建玉を持ち越せます。「HYPER先物コース」選択時は必要証拠金額はSPAN証拠金×50%~90%の範囲で任意に設定が可能であり、また、自動的に決済を行う「ロスカット」機能が働く取引となります。

先物・オプションのSPAN証拠金についてはこちら(日本証券クリアリング機構のWEBサイト)

・指数先物の価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。市場価格が予想とは反対の方向に変化したときには、比較的短期間のうちに証拠金の大部分、またはそのすべてを失うこともあります。その損失は証拠金の額だけに限定されません。また、指数先物取引は、少額の証拠金で多額の取引を行うことができることから、時として多額の損失を被る危険性を有しています。

・日経平均VI先物取引は、一般的な先物取引のリスクに加え、以下のような日経平均VIの変動の特性上、日経平均VI先物取引の売方には特有のリスクが存在し、その損失は株価指数先物取引と比較して非常に大きくなる可能性があります。資産・経験が十分でないお客さまが日経平均VI先物取引を行う際には、売建てを避けてください。

・日経平均VIは、相場の下落時に急上昇するという特徴があります。

・日経平均VIは、急上昇した後に数値が一定のレンジ(20~30程度)に回帰するという特徴を持っています。
日経平均VIは、短期間で急激に数値が変動するため、リアルタイムで価格情報を入手できない環境での取引は推奨されません。

・指数オプションの価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。買方が期日までに権利行使又は転売を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。売方は、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。また、指数オプション取引は、市場価格が現実の指数に応じて変動しますので、その変動率は現実の指数に比べて大きくなる傾向があり、場合によっては大きな損失を被る危険性を有しています。

・未成年口座のお客さまは先物・オプション取引口座の開設は受付いたしておりません。

・「J-NETクロス取引」で取引所 立会市場の最良気配と同値でマッチングする場合、本サービスをご利用いただくお客さまには金銭的利益は生じないものの、SBI証券は委託手数料を機関投資家から受け取ります。

・J-NETクロス取引の詳細は適宜修正される可能性がありますのでご留意ください。