~業績相場への移行が試されるアリババや百度の決算~

~業績相場への移行が試されるアリババや百度の決算~

投資情報部 李 燕

2023/02/22

2/16-2/21の香港市場は続落しました。米FRBによる利上げ長期化懸念が再燃し、世界株式市場でリスク回避ムードが強まるなか、中国株もハイテク・グロース株が調整しました。中国のEC業界をめぐる競争激化懸念も、ネット大手のハイテク株の重石となりました。

今回のトピックスは、「業績相場への移行が試されるアリババや百度の決算」です。

図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

注:2/21(火)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(2/21(火)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00868 信義玻璃控股 [信義ガラス] 10.4% 0.4% 25.6% 大手ガラスメーカー。中国当局による不動産市場への追加支援と1月の住宅価格データ(図表4参照)を好感し、建設資材が買われた。
01378 中国宏橋集団 10.3% 2.8% 38.1% アルミニウム製品メーカー。中国当局による不動産市場への追加支援と1月の住宅価格データ(図表4参照)を好感し、建設資材が買われた。アルミニウム産地の雲南省政府がアルミニウムメーカーに対して減産を要請したことも買い材料となった。減産による供給ひっ迫はアルミニウム価格の上昇につながると期待された。
00688 中国海外発展 [チャイナオ-バ-シ-ズランド] 7.7% -5.3% 8.7% 中国不動産大手。中国当局による不動産市場への追加支援と1月の住宅価格データ(図表4参照)を好感し、不動産株が買われた。中国当局は不動産市場への支援の一環として、不動産私募ファンドを試験的に導入すると発表した。
00762 中国聯通[チャイナ・ユニコム] 6.4% 11.2% 62.1% 通信キャリア。投資家のリスク回避を受け、ディフェンシブの電気通信が買われた流れの一つ。
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] 6.0% 11.9% 8.4% パソコン大手。2022年10-12月期の売上高は市場予想を下回ったものの、粗利益率と純利益が市場予想を上回り、買い材料となった。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
01929 周大福珠宝集団[チョウタイフックジュエリー] -5.1% -10.3% -4.9% 宝飾類の小売会社。金先物価格が下落し、売り材料となった。金先物価格の下落は、ドル高やインフレ連動債の下落(インフレヘッジの機能を持ち、金価格との相関が比較的高い)が背景のもよう。
09988 アリババ・グループ -5.7% -18.1% 25.0% EC・フィンテック大手。EC業界の競争激化懸念で売られた(JDドットコム(09618)の部分のコメントをご参照願います)。なお、大手投資ファンドによる売り買いは交錯した。
09618 JDドットコム -6.1% -20.6% -8.2% EC大手。同社がライバルと競合するために、100億元の購入助成キャンペーンを実施する計画だと報じられ、売り材料となった。大規模キャンペーンによる粗利益率の低下が懸念された。なお、大手投資ファンドによる売り買いは交錯した。
02269 薬明生物 [ウーシー・バイオロジクス] -7.3% -21.4% 10.3% バイオ医薬品開発受託大手。大手証券会社が2022年-2025年の売上高成長率予想を1%下方修正し、目標株価を小幅に引き下げた。
09888 百度 [バイドゥ] -7.4% 5.3% 50.5% 検索エンジン大手。米利上げ長期化懸念が再燃し、世界株式市場でリスク回避ムードが強まるなか、生成AI(人工知能)の「ChatGPT」に関連するハイテク・グロース株が売られた。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] 6.0% 11.9% 8.4% パソコン大手。2022年10-12月期の売上高は市場予想を下回ったものの、粗利益率と純利益が市場予想を上回り、買い材料となった。
06618 京東健康(JD Health) 5.9% -16.6% -10.9% JDドットコム(09618)傘下のインターネットヘルス大手。JDヘルス医療機器の顧客数が2022年に1億人を突破したことが明らかになり、買い材料となった。大手証券会社がインターネットヘルス業界の成長余地はまだ大きいとし、買い推奨したことも材料視された。
09868 小鵬汽車[シャオペン] 4.9% 3.4% 25.8% 新興EVメーカー。2/1-2/12までの中国の新エネルギー車販売台数は前年同期比104%増となったと報じられ、電気自動車(EV)関連銘柄が買われた。
06690 海爾智家 [ハイアールスマートホーム] 4.6% -0.7% 22.6% 大手家電メーカー。大手証券会社が投資判断を「中立」から「買い」に引き上げた。中国の不動産市場や消費の回復、および欧米の需要可視性の向上が家電業界にプラス影響を与える見通しだとした。
00241 阿里健康信息技術 [アリババ・ヘルス] 2.8% -20.5% 4.1% アリババ(09988)傘下のインターネットヘルス大手。大手証券会社がインターネットヘルス業界の成長余地はまだ大きいとし、買い推奨した。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
01024 快手(Kuaishou Technology) -6.3% -18.8% 6.2% ショート動画大手。EC事業も手掛ける。EC業界の競争激化懸念で売られた(JDドットコム(09618)の部分のコメントをご参照願います)。
09888 百度 [バイドゥ] -7.4% 5.3% 50.5% 検索エンジン大手。米利上げ長期化懸念が再燃し、世界株式市場でリスク回避ムードが強まるなか、生成AI(人工知能)の「ChatGPT」に関連するハイテク・グロース株が売られた。
00268 金蝶国際軟件 [キングディー・ソフトウエア] -7.4% -12.6% 7.7% ソフトウェア会社。米利上げ長期化懸念が再燃し、世界株式市場でリスク回避ムードが強まるなか、ハイテク・グロース株が売られた。
03888 金山軟件 [キングソフト] -8.0% -8.0% 6.6% ゲーム・ソフトウェア大手。米利上げ長期化懸念が再燃し、世界株式市場でリスク回避ムードが強まるなか、ハイテク・グロース株が売られた。
00020 SenseTime Group Inc -8.8% 14.8% 28.4% AIソフトウェア大手。米利上げ長期化懸念が再燃し、世界株式市場でリスク回避ムードが強まるなか、生成AI(人工知能)の「ChatGPT」に関連するハイテク・グロース株が売られた。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

2/16-2/21の香港市場では、ハンセン指数が1.1%下落、ハンセンテック指数は3.1%下落しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は、6.2%下落しました。

米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ長期化懸念が再燃し、世界株式市場でリスク回避ムードが強まるなか、中国株もハイテク・グロース株が調整しました。中国のEC業界をめぐる競争激化懸念も、ネット大手のハイテク株の重石となりました。

業種別では、情報テクノロジーやヘルスケアの下げを主導しました。米利上げ長期化懸念を受けたハイテク・グロース株の売りが背景です。

情報テクノロジーは、投資家のリスク回避志向の強まりを受け、百度(09888)やセンスタイム(00020)など中国版「ChatGPT」関連銘柄のほか、キングソフト(03888)や金蝶国際(00268)などソフトウェア大手が大幅安となりました。EC大手のJDドットコム(09618)やアリババ(09988)も調整しました。JDドットコムがライバルと競合するために、100億元の購入助成キャンペーンを実施する計画だと報じられ、競争激化懸念につながりました。なお、大手投資ファンドによる売り買いは交錯し、一部の大手投資ファンドは今回の調整を好機として捉えたもようで、持ち株比率を引き上げました。

ヘルスケアは、バイオ医薬品開発受託大手の薬明生物(02269)が指数を大きく押し下げました。大手証券会社が同社の2022年-2025年の売上高成長率予想を1%下方修正し、目標株価を引き下げたことが売りを誘いました。売上高成長率予想や目標株価の引き下げ幅はわずかでしたが、薬明生物の株価は7%を超える下落率となりました。グロース株に対する足元の投資家センチメントの弱さを反映したものとみられます。一方、ヘルスケアのうち、JDヘルス(06618)やアリババヘルス(00241)などインターネットヘルス関連株は逆行高となりました。インターネットヘルス業界の成長余地はまだ大きいとし、大手証券会社が買い推奨しました。

投資家のリスク回避を受け、ディフェンシブの電気通信が堅調でした。通信サービス大手3社のチャイナモバイル(00941)とチャイナユニコム(00762)、チャイナテレコム(00728)がそろって52週高値に近い水準まで上昇しました。3社の5G(第5世代移動通信システム)契約者数が合わせて11億人に達したことも、買い材料視されました。

素材も、逆行高となりました。中国当局による不動産市場への追加支援策(不動産私募ファンドを試験的に導入)に加え、1月の主要70都市の新築住宅価格が前年同月比でマイナス幅を縮小した(図表4)ことも、買い材料視されました。不動産市場の回復に伴う需要の増加を織り込み、ガラス大手の信義ガラス(00868)やアルミニウム大手の中国宏橋(01378)などの建設資材株が大きく上昇しました。

図表4 主要70都市の新築住宅価格の前年同月比伸び率(%)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

今回のトピックス

今回のトピックスは、「業績相場への移行が試されるアリババや百度の決算」です。

米国企業の決算発表が終盤を迎えるなか、中国企業はこれから決算発表シーズンに突入します。主力株では、検索エンジン大手の百度(09888)が2/22(引け後)に、EC大手のアリババ(09898)が2/23(引け後)に決算を発表する予定です。

百度やアリババなどの中国ハイテク株は昨年11月からの大幅反発を受け、バリュエーション面(たとえば株価収益率のPER)の修正は一段落した可能性があると指摘されています。そのタイミングで、米利上げ長期化懸念や米中対立の激化懸念が再燃し、2月は利益確定売りが優勢でした。

他方、株価に影響を与える要素としてバリュエーションのほか、業績も重要な要素の一つです。昨年11月からの中国株反発はバリュエーションの修正に加え、「ゼロコロナ政策」の撤廃に伴う業績回復期待も、要因の一つとなっています。したがって、主力企業の決算の内容次第では今後、業績相場へ移行する可能性もあり、真っ先に決算を発表するアリババや百度の決算に注目が集まると思います。

アリババを例に確認してみると、前回の決算発表時(昨年11月)の決算内容(2022年7-9月期)は強弱まちまちでした。売上高は市場予想を小幅に下回りましたが、営業利益は市場予想を上回りました。当時、決算発表後、アリババの株価は上昇しました。「ゼロコロナ政策」が堅持されたなか、売上高の低調さはある程度想定内だったことに加え、経営陣が中国当局の「ゼロコロナ政策」の見直しについてポジィティブな影響を見込むとコメントしたためです(注:当時は「ゼロコロナ政策」について段階的な緩和にとどまっており、完全に撤廃されたのは2023年1月です)。

図表5を確認してみると、アリババの売上高は2021年4-6月以降に伸び率が急速に鈍化しました。中国当局がネット大手に対して締め付けを強化したと同時に、「ゼロコロナ政策」を堅持した時期と重なります。

図表5 アリババの売上高の伸び率(四半期ベース、%)

注:予想はBloomberg集計によるものです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

Bloombergが集計した市場予想(図表5の右側)を確認してみると、2022年10-12月期(アリババにとっては2023年度第3四半期)は売上高の伸び率が引き続き鈍化する見通しです。一方、2023年1-3月期は回復が見込まれています。中国当局が昨年末にネット大手への締め付けを緩和し、「ゼロコロナ政策」については今年1月に完全に撤廃したことが背景です。

今後、中国の経済再開が続けば、消費の回復とともにアリババの売上高は四半期ベースで持ち直すが続くと予想されます。したがって、今回の決算発表では2022年10-12月期の実績もさることながら、会社側が示す2023年1-3月期以降の業績見通しも注目ポイントとなります。また、足元で浮上してきた競争激化懸念に対し、経営陣から何らかのコメントが出るかどうかも注目されます。

相場全体への影響としては、アリババや百度の決算内容が上振れれば、業績相場への転換となる可能性があります。他方、下振れた場合は、一段落の利益確定売りを誘発する可能性もあるため、両社をはじめとする主力株の決算内容がカギとなりそうです。

図表6 主要中国株の決算発表予定日(注)

銘柄コード Bloomberg銘柄名 発表予定日 決算期
09888 百度[バイドゥ] 2023/2/22 2022年度第4四半期
09999 網易 2023/2/23 2022年度第4四半期
01024 快手科技 2023/2/23 2022年度通期
09988 アリババグループ・ホールディング 2023/2/23 2023年度第3四半期
00027 銀河娯楽 [ギャラクシー・エンターテインメント] 2023/2/23 2022年度通期
02015 理想汽車 2023/2/27 2022年度第4四半期
09866 蔚来汽車[ニオ] 2023/3/1 2022年度第4四半期
01876 百威亜太[バドワイザー・ブリューイング・カンパニーAPAC] 2023/3/2 2022年度第4四半期
09626 ビリビリ 2023/3/2 2022年度第4四半期
01299 友邦保険控股[AIAグループ] 2023/3/10 2022年度通期
09618 JDドットコム 2023/3/10 2022年度第4四半期
00762 中国聯通 [チャイナ・ユニコム] 2023/3/13 2022年度通期
01833 Ping An Healthcare and Technology 2023/3/13 2022年度通期
02318 中国平安保険(集団)[ピンアン・インシュアランス] 2023/3/17 2022年度通期
02331 李寧 [リー・ニン] 2023/3/17 2022年度通期
01378 中国宏橋集団[チャイナ・ホンチャオ・グループ] 2023/3/20 2022年度通期
00175 吉利汽車控股[ジーリー・オートモービル・ホールディングス] 2023/3/21 2022年度通期
02020 安踏体育用品 [アンタ・スポーツ] 2023/3/21 2022年度通期
06060 ZhongAn Online P&C Insurance 2023/3/21 2022年度通期
01044 恒安国際集団[ハンアン・インターナショナル] 2023/3/22 2022年度通期
02382 舜宇光学科技(集団)[サニーオプチカル・テクノロジー] 2023/3/22 2022年度通期
00700 騰訊控股[テンセント・ホールディングス] 2023/3/22 2022年度通期
01810 小米集団[シャオミ] 2023/3/22 2022年度通期
02269 薬明生物技術[ウーシー・バイオロジクス] 2023/3/22 2022年度通期
09961 携程旅行網[トリップドットコムグループ] 2023/3/23 2022年度第4四半期
03888 金山軟件 [キングソフト] 2023/3/23 2022年度通期
06862 Haidilao International Holding 2023/3/23 2022年度通期
02018 瑞声科技[AACテクノロジーズ・ホールディンクス」 2023/3/23 2022年度通期
00941 中国移動 [チャイナモバイル] 2023/3/23 2022年度通期
00291 華潤ビール[チャイナリソーシズビール] 2023/3/24 2022年度通期
02628 中国人寿保険 [チャイナ・ライフ・インシュアランス] 2023/3/24 2022年度通期
03690 美団[メイトゥアン] 2023/3/27 2022年度通期
00020 SenseTime Group Inc 2023/3/27 2022年度通期
09868 小鵬汽車 2023/3/28 2022年度第4四半期
01211 比亜迪 [BYD] 2023/3/29 2022年度通期
00285 比亜迪電子(国際) [BYDエレクトロニック] 2023/3/29 2022年度通期

注:1)決算発表予定日は、2/21時点のBloombergデータによるものです。今後変更される可能性もあります。
2)中国企業の場合、一般的には決算発表予定日の引け後(香港市場)に決算が発表されます。 ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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