~中国1-3月GDPの中身、リオープン買い「フェーズ2」入りを試す~

~中国1-3月GDPの中身、リオープン買い「フェーズ2」入りを試す~

投資情報部 李 燕

2023/04/20

4/13-4/19の香港市場は小動きとなりました。主要指数は4/18までは中国経済の回復期待で買い優勢でしたが、4/19は中国の経済指標がまちまちだったうえ、米長期金利の上昇を嫌気し、反落しました。

今回のトピックスは、「中国1-3月GDPの中身、リオープン買い「フェーズ2」入りを試す」です。

今週の中国株市況

図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

注:4/19(水)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(4/19(水)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
01378 中国宏橋集団 10.9% -15.2% -26.7% アルミニウム製品メーカー。大手証券会社が不動産市場の回復がアルミニウム需要の拡大につながると予想し、買い推奨した。
00316 東方海外 10.1% -0.7% -33.9% 海上貨物輸送を手掛ける。大手証券会社が目標株価を引き上げ、買い材料となった。
02269 薬明生物 [ウーシー・バイオロジクス] 7.2% 10.4% -34.0% バイオ医薬品開発受託大手。同社の業績伸び鈍化に対する懸念はすでに過ぎ去った可能性が高いとし、大手証券会社が買い推奨した。
02628 中国人寿保険 [チャイナ・ライフ] 6.6% 13.5% -26.4% 大手保険会社。大手証券会社が1-3月の純利益は前四半期から回復した可能性が高いとし、買い推奨した。
03968 招商銀行(CMB) 6.3% -14.7% -30.5% 大手商業銀行。中国本土投資家による買いがみられた。中国本土の株式市場では銀行株への資金流入が報じられた。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00017 新世界発展[ニューワールト] -5.8% -11.6% -20.8% 香港の不動産会社。香港の不動産株が売られた流れの一つ。香港不動産業界団体のトップが不動産市場は昨年第4四半期まで回復の兆しがみられていないとし、香港政府に抑制措置の終了を要請した。
06098 CG SERVICES -5.8% 4.0% -66.9% 不動産大手カントリーガーデン(02007)傘下の不動産サービス会社。中国の不動産株が売られた流れの一つ。1-3月の全国の不動産投資が市場予想を下回り、不動産株が反落した。
02382 舜宇光学 [サニーオプチカル] -6.4% 1.4% -41.2% 大手光学機器メーカー。前週は反発を試すも、再び上値抵抗線を突破できず、ダブルトップのチャートが示され、売り優勢となった。
02007 碧桂園 [カントリー・ガーデン] -7.9% -19.4% -62.6% 中国不動産大手。中国の不動産株が売られた流れの一つ。1-3月の全国の不動産投資が市場予想を下回り、不動産株が反落した。
02020 安踏体育用品 [アンタ・スポーツ] -11.4% -2.0% -13.7% スポーツ用品大手。予想外の増資計画を嫌気した。大手証券会社2社が増資による希薄化を理由に、目標株価を引き下げた。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00981 中芯国際 [SMIC] 9.1% 32.5% 43.4% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。半導体国産化の加速期待で買われた。中国の李強・首相が半導体の設定・生産などのボトルネック問題の早期解消を求めた。
02015 理想汽車[リーオート] 4.4% 9.8% 14.8% 新興EVメーカー。電気自動車(EV)の普及拡大期待でEV関連銘柄が買われた。4/18から始まった上海モーターショーでは各社そろってEVを強化する姿勢を鮮明に打ち出し、EV化の加速期待につながった。ただ4/18以降は、競争激化懸念がより意識され、売り優勢となった。
03690 美団(Meituan) 4.1% 4.6% -14.9% 中国フードデリバリー最大手。中国本土の好成績の投資ファンドが1-3月に同社株を大幅に買い増したと報じられ、買い材料視された。
02018 瑞声科技 [AACテクノロジーズ] 3.8% -1.7% -19.8% 音響部品メーカー。テクニカル要因のもよう。前週の急落でRSIが短期的に売られ過ぎサインとされる30%に近づいた後、買い優勢となった。
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] 3.4% 17.1% 44.2% パソコン(PC)大手。同社経営陣が今後の研究開発は演算(コンピューティング)や人工知能(AI)に重点を置くと表明し、買い材料となったもよう。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09698 万国数拠服務 -4.7% 1.9% -26.2% データセンターを運営。投資家のリスク回避志向が全般的に弱いなか、売り優勢となった。同社の株価は比較的リスクマネーの動向と連動性が高い。
09618 JDドットコム -4.8% -5.8% -37.2% EC大手。前週に続き、同社創業者の劉強東氏による保有株の一部売却やアナリストによる目標株価の引き下げが重石となった。
02382 舜宇光学 [サニーオプチカル] -6.0% 0.1% -14.6% 大手光学機器メーカー。前週は反発を試すも、再び上値抵抗線を突破できず、ダブルトップのチャートが示され、売り優勢となった。
00020 SenseTime Group Inc -11.1% 2.9% 33.2% AIソフトウェア大手。詳細は本文をご参照願います。
00772 閲文集団(China Literature) -11.3% 5.5% -2.2% オンライン文学プラットフォームを運営。生成AI関連銘柄が売られた流れの一つ。詳細は本文をご参照願います。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

4/13-4/19の香港市場では、ハンセン指数が0.3%上昇、ハンセンテック指数は0.2%下落しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は2.1%上昇しました。

香港市場の主要指数は4/18まで買い優勢でしたが、4/19は売り優勢でした。4/18までは中国の景気回復期待が相場を支えましたが、4/19は中国の経済指標がまちまちだったうえ、米10年国債利回りが香港市場の取引時間帯に3.6%台に上昇したことが嫌気されました。なお、米10年債利回りはその後、米国取引時間帯では3.6%を下回りました。

香港現地紙によると、4/19香港取引時間帯での米長期金利の上昇は、米利上げ観測によるものです。CMEグループの FedWatch ツール(※)によると、5月に0.25%利上げする確率は88%に上昇し、6月の追加利上げ(0.25%)の確率は前週の16.5%から26.5%に上昇しました。それを受け、投資家はややリスク回避志向を強めました。

(※米政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の先物価格データに基づいて、市場が織り込まれているFF金利の動向の確率を示すツールです。)

業種別では、投資家のリスクセンチメントに影響を受けやすい情報テクノロジーが軟調でした。情報テクノロジーは、中国のAIソフトウェア大手のセンスタイム(00020)の大幅下落も響きました。センスタイムは大規模AIツールを発表するとのニュースで4/3以降急騰しましたが、4/10に正式に新AIツールを披露した翌日に中国当局がAI規制案を発表し、4/11は株価が急反落しました。その後、大株主であるソフトバンク・グループとアリババによる保有株式の売却も明らかになり、売り優勢が続きました。その影響で、同じく生成AI関連銘柄である百度(09888)も軟調でした。

不動産も売り優勢でした。不動産は1-3月の全国不動産投資が前年同期比5.8%減となり、市場予想の4.7%減を下回ったことが嫌気されました。不動産市場の状況をめぐっては3月の新築住宅価格が2月に続いて持ち直したため、市場では投資の減少幅も縮小されると期待しました。しかしながら、投資の回復は依然として緩やかなペースにとどまったため、不動産デベロッパー大手のカントリーガーデン(02007)や龍湖集団(00960)が反落しました。

一方、素材やエネルギーは堅調でした。1-3月の不動産投資は市場予想を下回ったものの、GDP成長率は市場予想を上回り、経済回復が確認されました。GDP発表後、中国国内のアナリストは商品市況の見通しについて、世界経済の先行き不透明感は懸念材料であるものの、中国経済の持ち直しで下値は限定的であろうと前向きなコメントを出しました。

非鉄金属については、個別材料が出たことも株高を支えました。たとえば、リチウム大手2社のガンフォン(01772)と天斉リチウム(09696)は、業界淘汰による恩恵期待で買われました。中国国内の炭酸リチウム価格が過去半年でおよそ6割下落したことを受け、大手証券会社は業界の淘汰が加速するだろうと予想し、大手2社を買い推奨しました。洛陽モリブデン(03993)はコンゴ民主共和国でのコバルト採掘ロイヤリティをめぐり、現地企業と合意が成立し、買われました。

石油・天然ガス大手のペトロチャイナ(00857)や中国石油化工(00386)は、中国当局がガソリンとディーゼル燃料の国内価格を引き上げたことを好感しました。石炭大手のチャイナシェンハ(01088)とヤンクアン(01171)も上昇しました。石炭価格の下落余地は限定的であるうえ、バリュエーション(株価水準)や配当利回りの側面からすると投資妙味があるとし、大手証券会社が買い推奨しました。

なお、上記の資源関連銘柄が買われた背景には、国有企業に対する見直し買いも挙げられます。きっかけは、中国当局が中央直轄の国有企業の評価基準について2023年から新たに自己資本利益率(ROE)を導入したためです。それにより、国有企業は今後、より株主価値を意識する経営を行うことが期待されています。

通信キャリア最大手であるチャイナモバイル(00941)も、国有企業改革に対する期待で買われました。同社の本土上場A株は時価総額が首位に君臨していた茅台酒(600519)を超えたことで話題を呼びました。チャイナモバイルを筆頭とする通信キャリア大手はまた、中国当局が強化しているデジタル経済(クラウドコンピューティングやAIなど)のインフラ企業として注目されています。なお、チャイナモバイルは今年1月から4カ月連続で上昇し(4月は4/20まで)、株価も節目の70香港ドルが意識されやすい局面にあることを考えると、短期的には利益確定売りの圧力も高まっている可能性があります。当面は、株価が節目の70香港ドル台をできるかどうかが注目されます。

今回のトピックス

今回のトピックスは、「中国1-3月GDPの中身、リオープン買い「フェーズ2」入りを試す」です。

【中国1-3月GDPの中身】
4/18に発表された中国の1-3月の実質GDP成長率は4.5%となり、市場予想の4.0%を上回りました。「ゼロコロナ政策」の撤廃による経済回復が示されました。一方、小売売上高や鉱工業生産からは景気回復は依然として「まだら模様」であることが示唆されました(図表4)。

図表4 1-3月の主要経済指標の実績と市場予想の比較

注:市場予想はBloomberg集計によるものです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

産業別のGDP成長率からも、景気回復の「まだら模様」が示されました(図表5)。産業別でみた場合、宿泊・飲食業の成長率が14%と最も高く、製造業が含まれている工業は3%と最も低い成長率となりました。「ゼロコロナ政策」の撤廃により人々はまず「外出」を増やしたことが端的に示されました。なお、宿泊・飲食業の付加価値は3月に前年同月比30%増となり、2月の旧正月連休イベント後も堅調さが続きました。

1-3月の産業別GDP成長率で2位となったデータ通信・ソフトウェア・情報テクノロジー業は含まれているサブ産業が多いため、けん引役は必ずも明確ではありません。金融業と並んでGDP成長率3位となった建築業は、不動産市場の軟調さがまだ続いたことを考えると、インフレ建設が回復を下支えたと思われます。

図表5 1-3月の産業別GDP成長率

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

製造業が含まれている工業の弱さは、「ゼロコロナ政策」が撤廃された1-3月に物の消費はまだ本格的に回復しておらず、輸出も比較的軟調だったことが影響したと考えられます。輸出を大きく左右する海外の経済状況に不透明感が強くなったためか、中国国家開発委員会のスポークスマンは4/19に自動車や家電、サービスを含む消費の拡大を促進する政策を急いで策定していると発表しました。いわば、国内消費によって経済成長を支えようとしるようです。早期に具体策が打ち出された場合、相場にとって支援材料となりそうです。

【リオープン買い「フェーズ2」試す】
中国株全体の動きをより反映するMSCI中国指数の動きを確認してみると、昨年11月から今年1月まではリオープン買いの「フェーズ1」の様相を呈しました。「ゼロコロナ政策」の撤廃に伴う景気回復を織り込み、3カ月連続で上昇したため、MSCI中国指数の予想PER(株価収益率)は1月末時点で13.6倍に回復しました。過去10年平均の12.3倍を上回ったことで、2月はバリュエーション懸念で利益確定売りに押されました。

図表6 MSCI中国指数の推移(過去1年)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

その後、3月初めに反発を試しましたが、予想外の欧米金融不安を受け、下落しました。中国当局が全国人民代表大会(全人代)で2023年のGDP成長率について控え目の目標を設定したことも、投資家のリスクセンチメントに影を落としました。ただ、3月下旬にかけて欧米の金融不安が後退すると、MSCI中国指数は持ち直しました。

4月これまでは、強弱まちまちの中国経済指標や米金融政策の不透明感、欧米金融不安による世界経済への影響懸念などでやや方向感の乏しい展開が目立ちました。世界投資家のリスク志向に大きく影響を与える米金融政策の動向や、欧米金融不安による世界経済への影響には当面、注視する必要がありそうです。

他方、足元の香港市場の動向からすると、リオープン買いの「フェーズ2」入りを試す展開にも目を配る必要がありそうです。たとえば、Bloombergマカオ・カジノ6社の株価指数は足元で反発しています(図表7)。「ゼロコロナ政策」が撤廃された後、マカオのカジノ収入は回復が続いているほか(図表9)、ゴールデンウイークのマカオ旅行の予約状況からは今後も回復が続くことが示唆されているためです。

図表7 Bloombergマカオ・カジノ6社の株価指数(過去1年、日次ベース)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表8 マカオのカジノ6社と株価

銘柄名 4/19終値 52週高値 52週安値
金沙中国(01928) 28.75香港ドル 31.55香港ドル 12.50香港ドル
銀河娯楽(00027) 57.95香港ドル 58.30香港ドル 33.55香港ドル
メルコリゾート&エンターADR(MLCO) 13.52米ドル 14.24米ドル 4.06米ドル
MGMチャイナ(02282) 10.58香港ドル 11.22香港ドル 3.01香港ドル
永利澳門(01128) 8.77香港ドル 10.32香港ドル 2.95香港ドル
澳門博彩(SJM)(00880) 4.14香港ドル 5.14香港ドル 2.31香港ドル

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表9 マカオのカジノ収入とBloombergマカオ・カジノ6社の株価指数の推移(過去10年、月次ベース)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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