~バフェット氏売却でも、BYD株が上昇する理由~

~バフェット氏売却でも、BYD株が上昇する理由~

投資情報部 李 燕

2023/05/11

4/27-5/10(※)の香港市場はレンジ推移となりました。中国の景気見通しの悪化や地政学リスクが相場の重石となりましたが、主力企業の堅調な決算が相場を下支えしました。

(※5/4はゴールデンウイーク連休の関係で休載だったため、今回は過去2週間の市況となります。)

今回のトピックスは、「バフェット氏売却でも、BYD株が上昇する理由」です。

今週の中国株市況

図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

注:5/10(水)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(5/10(水)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
02318 平安保険 [ピンアン・インシュアランス] 12.3% 13.5% -0.7% 大手保険会社。1-3期の決算内容が市場予想を上回り、好材料となった。決算発表後、大手証券会社が目標株価を引き上げた。
01088 中国神華能源 [チャイナ・シェンファ・エナシ] 11.1% 15.4% 19.5% 石炭大手。1-3月期の決算内容が市場予想を上回り、買われた。
00003 香港中華煤気[ホンコン&チャイナ・ガス] 9.1% 10.4% -2.3% ガス会社。大手証券会社が投資判断を「アンダーウエイト」から「中立」に引き上げた。
00267 中国中信 [シティック] 8.6% 12.7% 12.2% コングロマリット。資源関連事業も手掛ける。傘下の中国本土上場企業数社が市場予想を上回る決算を発表し、買い材料となった。同社は四半期決算ではなく、半期決算(8月に発表の予定)となっている。
00762 中国聯通[チャイナ・ユニコム] 8.1% 6.7% 13.7% 通信キャリア。子会社の中国本土市場へのスピンオフ上場計画が香港証券取引所より承認された。テンセントと合弁会社を設立したことも買い材料となった。同合弁会社は主にコンテンツ配信ネットワークとエッジコンピューティングに関連する業務を行う予定。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00981 中芯国際 [SMIC] -8.8% -12.3% 14.3% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。5/11の決算発表を前に、業績懸念で売られた。大手証券会社が1-3月期の決算内容は予想を下回る可能性が高いと予想し、注意喚起のレポートを出した。
00241 阿里健康信息技術 [アリババ・ヘルス] -8.9% -11.7% -15.2% アリババ(09988)傘下のインターネットヘルス大手。会社側が1-3月期は黒字転換する見直しだと発表。それを受け株価は一時上昇したが、200日移動平均線を突破できず、売り優勢に転じた。大手証券会社が投資判断「アンダーウエイト」を維持すると発表した。
06098 CG SERVICES -8.9% -9.2% -29.0% 不動産大手カントリーガーデン(02007)傘下の不動産サービス会社。親会社の4月の不動産販売額が前年同月比0.2%増にとどまり、売り材料となった。
02331 李寧 [リー・ニン] -9.5% -12.9% -29.4% 中国国産ブランドのスポーツウエア大手。競争激化懸念で売られた。競合のアディダスは1-3月期に中国で予想以上の販売を達成。アディダスの経営陣は国際ブランドが中国で市場シェアを取り戻す可能性があるとコメントした。
00291 華潤ビール [チャイナリソーシズビール] -11.5% -15.8% -6.0% ビール大手。4月のサービス業PMI(購買担当者景気指数)が市場予想を下回り、売り材料となった。ゴールデンウイーク期間中は旅行や外食産業は好調だったが、先行指数であるサービス業PMIの軟調さから持続性を疑問視する見方が優勢となった。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
02015 理想汽車[リーオート] 11.1% 6.8% 4.5% 新興EVメーカー。4月のEV販売台数が新興EVメーカーのうち首位となり、買われた。5/10(引け後)の決算発表を前に、業績期待も膨らんだ。
00285 比亜迪電子 [BYDエレクトロニック] 9.7% -0.8% -11.5% BYD(01211)傘下のスマートフォン部品・受託製造メーカー。1-3月期の決算内容が市場予想を上回った。決算発表後、大手証券会社数社が目標株価を引き上げた。
09868 小鵬汽車[シャオペン] 7.9% -2.2% 6.3% 新興EVメーカー。EV販売の回復が見込まれるとし、大手証券会社が目標株価を引き上げた。
02018 瑞声科技 [AACテクノロジーズ] 5.2% -11.3% -16.2% 音響部品メーカー。アップル(AAPL)のサプライヤーが買われた流れの一つ。アップルは1-3月期決算でiPhoneの販売が予想を上回る結果となった。
06060 衆安在線財産保険 4.2% -0.8% 7.5% オンライン保険大手。大手保険会社が相次いで市場予想を上回る決算を発表し、連れ高した。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00981 中芯国際 [SMIC] -8.8% -12.3% 14.3% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。5/11の決算発表を前に、業績懸念で売られた。大手証券会社が1-3月期の決算内容は予想を下回る可能性が高いと予想し、注意喚起のレポートを出した。
00241 阿里健康信息技術 [アリババ・ヘルス] -9.1% -11.9% -15.4% アリババ(09988)傘下のインターネットヘルス大手。会社側が1-3月期は黒字転換する見直しだと発表。それを受け株価は一時上昇したが、200日移動平均線を突破できず、売り優勢に転じた。大手証券会社が投資判断「アンダーウエイト」を維持すると発表した。
09961 携程旅行網 [トリップドットコム゚] -9.3% -13.8% -12.2% オンライン旅行サービス大手。ゴールデンウイーク期間中の旅行関連データは堅調だったが、株価は4月以降の下降トレンドが続いた。中国の景気見通しに対する懸念や地政学リスクが意識され、米国上場の中国ADRが軟調に推移し、香港上場株株も売り優勢となった。
09698 万国数拠服務 -10.2% -22.5% -41.7% データセンターを運営。中国の景気見通しに対する懸念や地政学リスクが意識され、米国上場の中国ADRが軟調に推移し、香港上場株株も売り優勢となった。
01347 華虹半導体 [フアホン・セミコンダクター] -21.6% -25.8% -8.1% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。中国本土市場へのIPO計画に進展がなく、売り優勢となった。5/11の決算発表を前に、業績懸念(00981HKのコメント部分参照)も重石となった。なお、5/10引け後、上海証券取引所は同社のA株上場を審議すると発表した。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

4/27-5/10(※)の香港市場では、ハンセン指数が0.1%上昇、ハンセンテック指数は1.5%下落しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は0.1%下落しました。

(※5/4はゴールデンウイーク連休の関係で休載だったため、今回は過去2週間の市況となります。)

中国の4月の製造業および非製造業PMI(購買担当者景気指数)、および貿易統計がいずれも市場予想を下回り、景気回復に対する懸念が相場の重石となりました。中国とカナダの「応酬」も地政学リスクとして意識され、投資家のセンチメントに影を落としました。カナダが中国の外交官に国外退去を通告したことを受け、中国はその報復措置として、在上海カナダ総領事館の領事を追放すると発表しました。

ただし、上記の悪材料にもかかわらず、ハンセン指数は小幅ながらプラスを維持しました。銀行や保険など主力企業の決算が市場予想を上回ったためです。銀行株は、国有企業改革の恩恵や高配当も買い材料として取り上げられました。中国4大銀行(中国工商銀行(01398)、中国建設銀行(00939)、中国銀行(03988)、中国郵政貯蓄銀行(01658))と、2大保険大手(平安保険(02318)とチャイナライフ(02628))がそろって大幅高となりました。ただ、5/9-5/10は急騰による高値警戒感が意識され、利益確定売りが目立ちました。

ハンセンテック指数も、主力企業の業績実績や見通しに左右される動きとなりました。半導体受託生産大手のSMIC(00981)と華虹半導体(01347)は決算発表を前に、業績に対する懸念で売られました。大手証券会社がSMICについて、1-3月期の決算内容は予想を下回る可能性が高いと予想し、注意喚起のレポートを出したことがトリガーとなりました。

一方、新興EV(電気自動車)大手のリーオート(02015)は、5/10(引け後)の決算発表を控え、業績期待で買われました。リーオートは4月にEV販売台数が新興EVメーカーのうち首位になったことが明らかになりました。4月の販売台数が3月から小幅に増加したシャオペン(09868)も買い優勢でした。ただし、減少となったニオ(09866)は小幅安となりました。

石炭株も堅調でした。最大手のチャイナシェンハ(01088)が予想を上回る決算を発表し、上昇をけん引しました。ヤンクアン(01171)は減益を発表した直後は下落しましたが、大手証券会社が石炭株を推奨し、買い優勢に転じました。同証券会社は国有企業改革の一環として、石炭企業は今後、親会社による上場企業への資産注入が行われる可能性が高く、石炭株の再評価につながると予想しました。

生活必需品は軟調でした。ビール大手3社(華潤ビール(00291)、バドワイザーAPAC(01876)、青島ビール(00168))がそろって下落し、指数を押し下げました。4月の非製造業PMI(サービス業が含まれているPMI)が市場予想を下回ったことが売り材料となりました。ゴールデンウイーク期間中の旅行や外食産業は好調でしたが、先行指数であるサービス業PMIの軟調さから持続性を疑問視する見方が優勢となりました。

なお、4月の経済指標が総じて軟調だったことを受け、中国国内の証券紙では経済支援策が必要と論じる報道が増えています。また、米国で利上げ停止論が強まるなか、中国は金融緩和の余地が出てきたとの指摘も増えています。なぜならば「米国利上げ+中国利下げ」の場合、中国からは資金流出が生じる可能性が高いため、中国当局は通常、米国が積極的に利上げを実施する局面では金融緩和を控える向きが強いです。

景気見通しが弱まってきたデータが増えていることを鑑みると、中国当局は株式市場が「催促」しているように、何らかの経済支援策や金融緩和策を打ち出す可能性がありそうです。一方、期待外れとなった場合は、全体としては軟調地合いが続き、個別では好業績や高配当銘柄を中心として物色が続く可能性があります。

今回のトピックス

今回のトピックスは、「バフェット氏売却でも、BYD株が上昇する理由」です。

5/8に米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハザウェイが、5/2にBYD(01211)の保有株式をさらに売却したことが判明しました。2022年8月から始まったバフェット氏によるBYD株の売却は今回で11回目となります。その結果、バフェット氏の保有比率は5/2時点で9.87%に低下しました。保有株数でみた場合、当初の持ち分から半分以上(52%)を減らした試算になります。

バフェット氏の追加売却が伝わった翌5/9に、BYDの株価は1.0%下落しました。しかし、5/10は2.4%上昇し、5/11の寄り付きでも続伸しました。バフェット氏の売りを嫌気する株価下落は、今回(これまでのところ)は1営業日にとどまりました。なお、バフェット氏による売却の影響は、初めて売却が明らかになった昨年8月からの数カ月間に比べると、今はその影響がかなり薄れてきています。

特に今年に入ってからは、中国の「ゼロコロナ政策」撤廃といったマクロ要因や業界動向、およびBYD自身の業績がより株価の動向を左右する要因となっています(図表4)。

図表4 BYD(01211)の株価とバークシャー・ハサウェイの保有株数の推移(2000年1月から)

※香港証券取引所とBloombergデータをもとにSBI証券が作成。

足元では、BYDの好決算と販売実績が株高を支えています。4/27に発表されたBYDの1-3月期決算は、売上⾼が前年同期⽐80%増、調整後純利益は前年同期の5倍以上となり、市場予想を上回りました。新エネルギー⾞の販売好調に加え、粗利益率の上昇が寄与しました。⽶テスラの値下げに追随し、同社も⼀部⾞種で値下げを実施しましたが、粗利益率はむしろ上昇しました。1-3月期の業績からはBYDの規模の経済性やコストの優位性に加え、同社⾞種に対する需要の堅調さが⽰されました。

なお、足元ではBYDだけでなく、電気自動車(EV)関連銘柄が総じて買い優勢となっています。主な要因は、以下の3つです。

1)値下げ競争に一服の兆し

今年に入ってから米テスラ(TSLA)が値下げ競争を仕掛けたことをきっかけに、中国市場では多くの自動車メーカーがテスラの値下げに追随しました。1-3月は補助金切れの影響である程度の反動減が予想されていましたが、値下げ競争により消費者が買い控える動きとなり、業界をめぐる事業環境は悪化しました。

しかし、テスラは5月入り、予想外に中国市場で値上げを発表しました。テスラは値下げによる業績の悪化が市場予想を上回っただけに、業績面への影響を考慮し、値上げに踏み切った可能性があると指摘されています。また、各社が値下げを実施するなか、自社の値下げ戦略が必ずしも有効でなくなる(値下げに見合う販売拡大が見込まれなくなる)恐れも出てきました。なお、今回のテスラの値上げで、値下げ競争が終了したと断定するにはまだ早いかもしれませんが、業界見通しの改善につながる好材料となったことは間違いありません。値下げはまだまだ続くと期待し、これまでに買い控えていた消費者も動き出す可能性があります。

2)4月の販売が堅調

値下げ競争による影響で販売の鈍化が懸念されていましたが、4月の中国の新エネルギー車の販売は予想より堅調でした。EV主力4社を確認してみると、BYD(01211)とリーオート(02015)、シャオペン(09868)の3社は、いずれも4月は3月に比べて販売が拡大しました。

図表5 BYD(01211)と新興EV3社の4月の販売実績

  前年同月比(%) 前月比(%)
BYD(01211) 96% 1%
リーオート(02015) 516% 23%
シャオペン(09868) -21% 1%
ニオ(09866) 31% -36%

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

3)政策支援期待

中国の景況感が総じて弱いなか、市場では中国当局が何らかの景気支援策を打ち出す可能性がある予想されています。特に消費刺激策の一環として新エネルギー車分野への支援が期待されています。中国当局もそれを示唆する動きを示しました。李強首相は5/5に主催した国務院(中央政府機関)常務会議で、農村部で充電設備を拡充し、新エネルギー車の普及を拡大する方針を打ち出しました。

上記の3)については、期待先行という側面がより強いかもしれませんが、1)と2)は当面、EV関連銘柄の株価を支える要因となりそうです。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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