~中国株の動向を見るうえで重要なハンセン指数/ハンセンテック指数を対象としたブル・ベアETFの取引が可能に~

~中国株の動向を見るうえで重要なハンセン指数/ハンセンテック指数を対象としたブル・ベアETFの取引が可能に~

投資情報部 李 燕

2023/05/25

5/18-5/24の香港市場は下落しました。米中対立激化懸念に加え、人民元安とアリババの軟調な決算が売り要因となりました。差し迫っている米債務上限問題を警戒し、海外投資家がリスク回避志向を強めたことも、下げ幅の拡大につながりました。

今回のトピックスは、「中国株の動向を見るうえで重要なハンセン指数/ハンセンテック指数を対象としたブル・ベアETFの取引が可能に」です。

今週の中国株市況

図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

注:5/24(水)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(5/24(水)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00968 信義光能 [シンイー・ソーラー] 5.6% -1.4% -10.1% 太陽光発電ガラスメーカー。大手証券会社が投資判断を「ホールド」から「アウトパフォーム」に引き上げた。太陽光発電用ガラスの価格は安定しており、今後は粗利益率が持ち直す可能性があると指摘した。
03692 Hansoh Pharmaceutical 3.6% -9.8% -8.1% 医薬品大手。大手証券会社が同社は2023年に2ケタ増収に回復する見込みだとし、投資判断「買い」を維持すると表明した。
01211 比亜迪 [BYD] 3.5% 7.9% 11.2% 中国EV最大手。海外展開に関するニュースを好感した。同社がフランスで乗用車工場の建設を検討しているとの報道について、同社は「欧州での乗用車工場の建設の実行可能性について評価しており、適切な場所を探している」とコメントした。
06690 海爾智家 [ハイアールスマートホーム] 2.6% -2.5% -18.2% 大手家電メーカー。筆頭株主が中国本土上場のA株を買い増したと報じられ、買い優勢となった。
00288 万洲国際 [WHグループ] 2.1% -5.5% -8.5% 豚肉加工で世界最大手。テクニカル要因のもよう。RSIが短期的に売られ過ぎサインとされる30%に近づいた後、買いが入った。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00006 電能実業 [パワー・アセッツ] -8.4% -2.2% 0.0% 電力会社。配当落ちによる影響。配当の権利落ち日は5/22だった。
01378 中国宏橋集団 -9.3% -24.4% -30.0% アルミニウム製品メーカー。大手証券会社が投資判断を「買い」から一転して「売り」引き下げたほか、目標株価を大きく引き下げ、売りが膨らんだ。
01038 長江基建 [チョンコン・インフラ] -9.4% -3.9% -0.1% グローバルインフラ会社。配当落ちによる影響。配当の権利落ち日は5/22だった。
00960 龍湖集団 [ロンフォー・グループ] -13.3% -27.0% -31.6% 中国不動産大手。中国本土市場で不動産関連株が株価下落により上場廃止となる可能性がある企業が増え、不動産株が売られた。中国本土市場では株価が連続20営業日で1元を下回った場合、上場廃止となる。
00316 東方海外 -27.2% -33.7% -16.2% 海上貨物輸送を手掛ける。配当落ちによる影響(配当の権利落ち日は5/24)に加え、バルチック海運指数の下落を嫌気した売りが株価を押し下げた。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09866 蔚来汽車 [ニオ] 10.9% 2.3% -11.1% 新興EVメーカー。5/24に新型EV「ES6」が正式に発売開始となり、買い材料となった。(ただ、5/24寄り付きは同業のシャオペン(09868)の決算を嫌気し、連れ安した。)
01024 快手(Kuaishou Technology) 5.6% 11.0% 5.1% ショート動画大手。1-3月期の決算内容が市場予想を上回ったほか、自社株買い計画も好材料となった。
09698 万国数拠服務 4.8% -34.9% -45.9% データセンターを運営。売られ過ぎの反動で自立反発狙いの買いが入ったもよう。反発する前にテクニカル指標のRSIは短期的に売られ過ぎサインとされる30%を大きく下回った。
06690 海爾智家 [ハイアールスマートホーム] 2.6% -2.5% -18.2% 大手家電メーカー。自社株買いが続き、買い優勢となった。
02018 瑞声科技 [AACテクノロジーズ] 1.2% 1.8% -5.6% 音響部品メーカー。アップル株の上昇を受け、アップル関連株が総じて買い優勢となった。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09988 アリババ・グループ -5.2% -6.7% -10.0% EC・フィンテック大手。1-3月期の決算内容を嫌気した。詳細は本文をご参照願います。
09868 小鵬汽車[シャオペン] -5.3% -6.2% -0.6% 新興EVメーカー。5/24(引け後)の決算発表を前に、業績懸念で売られた。同社は1-3月期にテスラ(TSLA)に追随して値下げを実施したため、粗利益率が圧迫された可能性が懸念されていた。実際5/24に発表された決算は予想を大きく下振れた。
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] -5.4% -13.4% 2.3% パソコン(PC)大手。1-3月期の決算内容が市場予想を下回り、売りが膨らんだ。パソコン市場の軟調が響き、純利益が大幅に下落した。
00772 閲文集団(China Literature) -5.4% -15.5% -11.3% オンライン文学プラットフォームを運営。CEOの辞任を嫌気した。新CEOに対する期待よりも不安が強く、売り優勢となった。
09618 JDドットコム -5.8% -2.2% -24.2% EC大手。アリババの決算がEC業界の回復に対する懸念につながり、売り優勢となった。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

5/18-5/24の香港市場では、ハンセン指数が2.3%下落、ハンセンテック指数は2.4%上昇しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は6.8%下落しました。

下落要因は、主に以下の3つです。

1)地政学リスクを警戒した海外投資家の売り
5/19-5/21にG7広島サミットが開催されました。今回のG7サミットについては、ウォール・ストリート・ジャーナルの社説「G7サミット、中国いじめ対策が最優先」(5/15)が示すように、中国への圧力を強めることが予想されていました。G7サミットの首脳宣言では「デカップリング又は内向き志向にならない」と明記し、市場が恐れていたほど中国に対して「タカ派」ではありませんでした。

しかし、G7広島サミット後、日本は半導体製造装置の輸出規制を強化しました。米国と歩調を合わせたものとみられています。中国も米マイクロン・テクノロジー(MU)製品の調達禁止を発表しました。中国の外務省報道官は5/22に、「米国側は一方でコミュニケーションを求めているが、他方ではあらゆる手段で中国を抑制し封じ込めている」とし、米国の「誠実さ」を非難しました。G7広島サミットを経て、米中関係の早期改善は期待薄の可能性が示されました。それを受け、香港や米国市場では海外投資家の保有比率が比較的高い中国株が大きく下落しました。

2)人民元安と一段の元安への懸念
足元の中国経済指標の弱さと米中対立懸念を受け、人民元は5/18に1ドル=7.0元台を超える水準まで下落しました。1ドル=7.0元台では中国当局が何らかの措置に出る可能性があると期待されましたが、中国人民銀行(中央銀行)は5/23と5/24に2日連続で人民元の基準値を元安方向へ設定しました。人民元安が一段進むことを警戒し、海外投資家は中国株を売り越しました。

3)予想を下回ったアリババの決算
主力中国株の企業決算は前週までは市場予想を上回ったケースも多く、市場では5/18のアリババ(09988)の決算発表に対しても期待が膨らんでいました。しかしながら、アリババの23.3期4Q(2023年1-3月期)決算は調整後EPS(1株当り利益)が市場予想を上回りましたが、売上高は市場予想を下回りました。部門別ではグローバルコマースが前年同期比29%増収、ローカルコンシューマーサービスは同20%増収と、好調でしたが、主力の中国コマースが同3%減収、クラウドが同2%減少と下振れました。主力事業の減収を嫌気し、アリババの株価は大きく下落し、同業のJDドットコム(09618)やピン多多ADR(PDD)も連れ安しました。

なお、上記の1)と2)を受けた地合いの軟調さも、主力株の下落幅を増幅させました。というのは、これまで堅調な決算を発表した銘柄も同様に売られたためです。米債務上限問題が差し迫っているなか、海外投資家が総じてリスク回避志向を強めていることも株安に拍車をかけました。特に米国上場の中国株がより影響を受け、HXC指数の下落率はハンセン指数やハンセンテック指数を大幅に上回りました。

したがって、当面は米中関係や人民元の動向に注目しながら、米債務上限問題の行方にも目を配る必要がありそうです。中国株の独自要因を考える場合、今後、米中両国が歩み寄る気配がなく、人民元安が一段と進んだ場合、中国株に対するリスクプレミアムはさらに上昇するかもしれません。一方、地政学リスクによって上乗せされたリスクプレミアムを相殺できるほど強い経済の回復が確認できれば、見直し買いが入る可能性があります。

なお、業種別では、軟調地合いなか、ほぼ全業種が売り優勢でした。ただし、電気通信はディフェンシブ性を発揮し、ほぼ横ばいとなりました。

今回のトピックス

今回のトピックスは、「中国株の動向を見るうえで重要なハンセン指数/ハンセンテック指数を対象としたブル・ベアETFの取引が可能に」です。

当局への届出書提出により、日本国内での販売が可能となったことを受け、SBI証券では5/17から、ハンセン指数とハンセンテック指数のブル・ベアETF(図表4)の取扱を開始しました。

図表4 ハンセン指数とハンセンテック指数のブル・ベアETF

銘柄コード 銘柄名 概要
07200 恒生指数 レバETF ハンセン指数の日次パフォーマンスの2倍となる投資成果を目指します。
07500 恒生 インバETF ハンセン指数の日次パフォーマンスのマイナス2倍となる投資成果を目指します。
07226 恒生 テックレバ ハンセンテック指数の日次パフォーマンスの2倍となる投資成果を目指します。
07552 恒生テックインバ ハンセンテック指数の日次パフォーマンスのマイナス2倍となる投資成果を目指します。

注:「恒生」が「ハンセン」の中国語表記です。
※当社ホームページをもとにSBI証券が作成。

ブル・ベアETFは、短期でハイリターンを狙いたい方、また上昇相場だけでなく下落相場でもリターン獲得を狙いたい投資家におすすめです。たとえば、短期的に上昇相場が予想される際はブルETF、下落相場が見込まれる際はベアETFを活用することができます。

また、ブル・ベアETFは、短期的なヘッジ手段としても利用可能です。たとえば、ロングポジション(買い持ちポジション)が多い投資家が相場の下落を懸念し、下方リスクをヘッジしたい時、短期的にベアETFを利用することができます。逆に、上昇相場になると予想される時、その資産をまったく持っていない投資家は、短期的にブルETFを利用することができます。

図表5 ハンセン指数とハンセンブル・ベアETF市場価格の推移(過去1年)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表6 ハンセンテック指数とハンセンテックブル・ベアETF市場価格の推移(ブル・ベアETF設定来)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

ただし、図表5と図表6からもわかるように、ブル・ベアETFは原指数より株価変動が大きく、あくまでも短期間の市況の値動きを捉えるための投資商品であるに注意が必要です。詳細の注意事項については、下記をご確認ください。

ハンセン指数/ハンセンテック指数のブル・ベアETFは新興国の株価指数を参照指標としているため、先進国の株価指数等を参照する一般的なレバレッジ型・インバース型 ETFと比較して、相対的にリスクが高まる可能性がある点にご留意ください。

レバレッジ型・インバース型 ETF等(ETN含む)は、主に短期売買により利益を得ることを目的とした商品です。レバレッジ指標の上昇率・下落率は、2営業日以上の期間の場合、同期間の原指数の上昇率・下落率のレバレッジ倍(又はマイナスのレバレッジ倍)とは通常一致せず、それが長期にわたり継続することにより、期待した投資成果が得られないおそれがあります。上記の理由から、一般的に長期間の投資には向かず、比較的短期間の市況の値動きを捉えるための投資に向いている金融商品といえます。投資経験があまりない個人投資家の方が資産形成のためにこうしたETF等を投資対象とする際には、取引の仕組みや内容を十分理解し、取引に伴うリスク・コストを十分に認識することが重要です。レバレッジ型・インバース型 ETF等に係る商品の特性とリスクについてはこちらのリーフレットをあわせてご確認ください。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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