3万1000円は通過点?"日はまた昇る"を期待させる理由とは?

3万1000円は通過点?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/05/23

日経平均は33年ぶりの高値水準!米国市場も年初来高値を更新

5月第3週の日経平均(5/15-19)は続伸し、前週末比1420円超(+4.8%)の大幅高。海外勢による買いが継続し、週内最終営業日5/19(金)には取引時間中高値30,924円57銭をつけ、バブル崩壊以来の高値水準となりました。

同期間の東証グロース市場指数は+0.1%、東証マザーズ指数は▲0.02%と中小型株が軟調なパフォーマンスでした。東京株式市場の買いの主体である海外勢や機関投資家からすると、時価総額や流動性といった部分で中小型株には資金を投入しづらい面があります。投資部門別取引状況で海外勢は5月第2週まで7週連続の買い越しであり、物色の対象としては時価総額が大きく、流動性のある、いわゆるプライム市場の主役級の面々となりました。

日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(5/15~22・図表7)では、東京エレクトロン (8035)や、1:4の株式分割を発表したアドバンテスト(6857)、SCREENホールディングス (7735)等の半導体製造装置を手掛ける企業がランクインしました。米SOX指数(フィラデルフィア半導体株価指数)の上昇に加え、足元で世界の半導体企業が日本への投資を拡大していることが追い風となっている模様です。5/18(木)にはメモリーの世界的大手マイクロン・テクノロジー(MU)が日本国内の工場に最大5,000億円の投資を行うと日経新聞のインタビューにて明らかにしています。

同期間の米国市況ではS&P500が+1.6%、グロース中心のナスダックが+3.0%と年初来高値更新となりました。債務上限問題では大統領や下院議長、財務長官といったキーパーソン達の発言や、交渉の進捗状況の報道で揺れ動いたものの、特段新たな追加材料はありませんでした。小売大手の決算において、市場が想定していた程実績や見通しが悪くなかったことや、パウエル議長のハト派発言がプラスに作用し上昇相場となりました。また、グロース株優位となった要因として、機関投資家の株主保有状況報告書「13F」で、大手ファンドが23.3末までにハイテク株の保有割合を増やしていたことが明らかになったことが挙げられます。もし、さらに興味がある方は下記レポートをご参照ください。
アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~バフェットのバークシャーほか米機関投資家の「買い銘柄」から、有望銘柄を探る~

5月第4週の日経平均は、5/22(月)に次なる節目である31,000円を突破。終値べースでは、1990年7月末以来の高値水準です。米債務上限交渉での進展が見られないことによる海外からの資金逃避需要が継続したことや、日経平均の高値水準に耐え切れなくなった売り方の買い戻しなどが、株価を押し上げたと考えられます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(5/15~22)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(5/15~22)

3万1000円は通過点?“日はまた昇る“を期待させる理由とは?

5月22日(月)の日経平均は前日比278円高の3万1,086円と、終値では1990年7月31日以来、約33年ぶりに3万1,000円を上回りました。これで日経平均は8連騰を記録しており、5月12日に昨年8月の高値(2万9,222円)を上抜けすると、そこから株高の勢いが強まりました。日経平均の5週(25日)移動平均線に対する乖離率は6%超、また東証プライム市場の騰落レシオ(25日)は129%と買われ過ぎのサインとされる120%を上回り続けています(図表9)。相場の過熱感が強まっていることは否めませんが、その一方で外国人投資家による日本株買いに支えられた相場上昇の腰は思いの外強く、外部環境が大きく悪化しない限りは日本株の堅調地合いは当面、続きそうな勢いと思われます。

図表9 日経平均と騰落レシオ

  • ※BloombergよりSBI証券作成


さて、前回に日経平均が3万1,000円を上回っていた頃ですが、当時は89年末につけた3万8,915円から翌90年10月1日の1万9,781円(ザラ場安値)にかけて、株価が転げ落ちるように下落する過程にありました。日本経済は、90年3月の大蔵省(当時)による不動産融資の総量規制と、金融引き締めにより、日本の不動産価格が下落へ転換し、それが後の不良債権問題や金融危機へと発展する、バブル崩壊の道のりを歩んでいました。英紙エコノミストの記者だったビル・エモット氏の著書「日はまた沈む」(90年)は、日本のバブル崩壊を予測しベストセラーとなったのですが、当時は市場でバブル崩壊が理解されていませんでした。急激な株安は、政局不安や日米構造協議への不安、金融引き締め、(湾岸戦争による)原油価格上昇などが要因と考えられていました。日本の景気拡張は岩戸景気(拡張期は58年6月から61年10月)を抜いたので、次はいざなぎ景気(65年10月から70年7月)を超えるのではないか、といった論調が関心事であり、市場では「景気は良いのに、なぜ株価は下がるのか」といった空気が強かったそうです。

図表10は90年7月31日と23年5月22日(現在)における、国内企業時価総額トップ20社の顔触れです。90年7月31日時点で東証1部の時価総額は約530兆円、時価総額の上位には銀行が目立ちました。当時は“Japan as NO.1”と言われており、世界の時価総額トップ50社でも日本企業が32社ランクインされるなど、日本経済はまさに絶頂期にあったと言えます。一方、現在は東証プライム市場の時価総額は約770兆円へと大きく増加しましたが、時価総額トップ20社の顔触れは大きく変わりました。当時と現在と両方でランクインしているのは、トヨタ自動車、NTT、任天堂、日立製作所の4社しかありません。不良債権問題に苦しんだ銀行は単独で生き残ることは出来ず、経営統合などを繰り返してきました。また、世界の時価総額トップ50社のうち、日本企業はトヨタ自動車のみと、日本企業のプレゼンスは大きく低下してしまいました。

図表10 国内企業の時価総額ランキング

  • ※Quick Workstation Astra ManagerをもとにSBI証券が作成

図表11 日経平均と東証1部市場時価総額

  • ※BloombergをもとにSBI証券が作成


現在、日経平均は90年と異なって株価上昇局面にあります。前述のビル・エモット氏は「日はまた沈む」を書いた17年後の2006年に「日はまた昇る」という著書で日本経済の復活を予測しました。この当時は、後のリーマンショックの影響もあって日本再興とまではいきませんでした。もっとも、同書のサブタイトルは“日本のこれからの15年”であり、日本経済のゆっくりとした変化を予測しており、現在になってようやく復活の芽が息吹き始めたのかもしれません。実際、足元の日本経済は、物価高に背中を押されたとは言え大企業を中心とする賃上げの動きが強まっていることや、インバウンドを含めた内需の喚起、あるいは世界的な半導体メーカーによる日本への直接投資など、これまでになかなか見ることが出来なかった動きが出てきているように思えます。日本株上昇を支える外国人投資家の買いは、日本経済復活への期待が背景にあるのであれば、息の長い資金流入が期待できるのかもしれません。

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