~中国がついに景気支援か、内需関連株に恩恵~

~中国がついに景気支援か、内需関連株に恩恵~

投資情報部 李 燕

2023/06/08

6/1-6/7の香港市場は急反発しました。米債務上限問題の解決、中国の景気支援観測、および米中関係の改善期待が株高につながりました。

今回のトピックスは、「中国がついに景気支援か、内需関連株に恩恵」です。

今週の中国株市況

図表1 ハンセン指数の推移(日足、6ヵ月)

注:6/7(水)までのチャートです。今回より一目均衡表ではなく、移動平均線の表示となります。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(6/7(水)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00960 龍湖集団 [ロンフォー・グループ] 20.7% -16.0% -24.1% 中国不動産大手。中国当局が不動産市場を支える新たな支援措置を検討していると報じられ、不動産株が買われた。
09618 JDドットコム 14.5% 2.4% -22.6% EC大手。米債務上限問題の解決、中国の景気支援観測、および米中関係の改善期待で買われた。
01109 華潤置地 [チャイナ・リソーシズランド] 13.7% -8.6% -12.0% 中国不動産大手。中国当局が不動産市場を支える新たな支援措置を検討していると報じられ、不動産株が買われた。
02331 李寧 [リー・ニン] 12.5% -15.3% -30.0% 中国国産ブランドのスポーツウエア大手。米債務上限問題の解決、中国の景気支援観測、および米中関係の改善期待で買われた。
03690 美団(Meituan) 12.1% -8.9% -10.4% 中国フードデリバリー最大手。米債務上限問題の解決、中国の景気支援観測、および米中関係の改善期待で買われた。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
01038 長江基建 [チョンコン・インフラ] -1.2% -8.5% -0.8% グローバルインフラ会社。特段材料はなく、需給要因のもよう。中国の内需関連株が買われたなか、相対的に売り優勢となった可能性がある。
00322 康師傅控股 [ティンイー] -1.2% -16.3% -11.9% 大手食品メーカー。配当落ちによる影響。配当の権利落ち日が6/7だった。
01093 石薬集団 [CSPCファーマシュ-ティカル] -2.5% -17.6% -23.3% 医薬品大手。配当落ちによる影響。配当の権利落ち日が6/5だった。
00012 恒基兆業地産[ヘンダーソン・ランド] -3.8% -16.3% -15.1% 香港の不動産会社。FTSE EPRA Nareitグローバル不動産指数への構成銘柄になると期待されたが、予想に反し指数入れとならず、売り材料となった。
00836 華潤電力 -4.1% -1.5% 2.7% 大手電力会社。投資家のリスク志向の高まりを受け、ディフェンシブの電力株が売り優勢となった。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09618 JDドットコム 14.5% 2.4% -22.6% EC大手。米債務上限問題の解決、中国の景気支援観測、および米中関係の改善期待で買われた。
09698 万国数拠服務 13.0% -23.3% -41.9% データセンターを運営。米債務上限問題の解決、中国の景気支援観測、および米中関係の改善期待で買われた。
03690 美団(Meituan) 12.1% -8.9% -10.4% 中国フードデリバリー最大手。米債務上限問題の解決、中国の景気支援観測、および米中関係の改善期待で買われた。
00772 閲文集団(China Literature) 11.0% -7.9% -9.3% オンライン文学プラットフォームを運営。米債務上限問題の解決、中国の景気支援観測、および米中関係の改善期待で買われた。
09888 百度 [バイドゥ] 10.9% 10.6% -8.2% 検索エンジン大手。米債務上限問題の解決、中国の景気支援観測、および米中関係の改善期待で買われた。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00020 SenseTime Group Inc 1.9% -17.4% -15.4% AIソフトウェア大手。米国市場でAI関連株が冴えず、その影響が香港市場にも波及し、同社株の上昇率も限定的だった。
09898 微博 1.4% -12.5% -19.5% ソーシャルメディア・プラットフォーム運営会社。5/25に市場予想を下回った決算を発表した後、下落基調が続いた。
06060 衆安在線財産保険 -0.5% -12.9% -10.0% オンライン保険大手。需給要因のもよう。テクニカル指標のRSIが30%に近づいた後、反発をしたものの、投資家の買い意欲は弱く、200日移動平均近辺でもみあった。
02018 瑞声科技 [AACテクノロジーズ] -1.0% -4.8% -12.3% 音響部品メーカー。アップル関連株が売られた流れの一つ。アップル(AAPL)の株価が新製品を発表した後、冴えず、連れ安した。
09626 ビリビリ -3.5% -20.9% -24.9% 動画プラットフォーム大手。1-3月期決算では調整後EPSが市場予想より良好でしたが、付加価値サービスとモバイルゲーム部門の増収率とMAUの伸び率が下振れ、売り優勢となった。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

6/1-6/7の香港市場では、ハンセン指数が5.6%上昇、ハンセンテック指数は8.1%上昇しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は9.6%上昇しました。

3指数は、いずれも200日移動平均に近づきました。ハンセン指数は、6/7の場中で200日移動平均線にタッチしました(図表1を参照)。

中国株が急反発した要因は、主に以下の3つです。

1)米債務上限問題の解決
5月末にかけて米債務上限問題をめぐる不透明感が続いたことで、投資家はリスク回避姿勢を強めていました。しかしながら、米債務上限問題は「Xデー」の直前に解決し、米国政府のデフォルトは回避されました。それを受け、投資家のリスクセンチメントは回復し、リスク資産として意識されやすい中国株が買い戻されました。

2)中国の景気支援観測
米債務上限問題が解決されたタイミングで、中国当局が不動産市場に対する新たな支援措置を検討していると報じられました。また、中国当局は先週、国有銀行に対して預金の金利を引き下げるよう勧告したとも報じられました。預金金利の引き下げは銀行にとって資金調達コストの低下を意味し、結果的に銀行は貸出金利を引き下げる余地が出てきます。したがって、中国当局は銀行に対する「窓口指導」により金利水準を引き下げようとしていると解釈できます。一連の動きは、中国当局が景気支援へ動きだそうとしていることが示され、株高につながりました。

2)米中関係の改善期待
ブルームバーグは6/6に、ブリンケン米国務長官が数週間以内に中国を訪問し、習近平国家主席と会談する可能性もあると報じました。ブリンケン米国務長官は今年2月に中国を訪問する予定でしたが、中国の偵察気球問題で訪中計画を取りやめました。したがって、今回の報道は偵察気球問題以降に一段と悪化した米中関係がひとまず安定化に向けて動き出そうとしていることを示唆します。米中関係の悪化は中国株のリスクプレミアムを押し上げましたが、今回の報道は上乗せされていたリスクプレミアムの修正につながりました。

上記を受け、香港市場は全業種が買い優勢でした。特に海外投資家の保有株比率が比較的高い情報テクノロジーが急反発しました。不動産関連株も買い戻しが顕著でした。新たなの不動産支援措置によって不動産市場が持ち直せば、消費マインドも回復すると期待され、消費関連株も反発しました。なお、買い戻しが顕著だった銘柄群については、図表4をご参照ください。

今回のトピックス

今回のトピックスは、「中国がついに景気支援か、内需関連株に恩恵」です。

なお、本題に入る前に、中国株に関するお知らせです。SBI証券では、”新規取扱記念】CSOP中国ETFの買付手数料全額キャッシュバック”を開始しました。詳細は、リンク先をご確認願います。

【中国当局は、報道通りに景気支援へ動くのか】

6月1週目の中国株高は、市況部分で確認したように、1)米債務上限問題の解決、2)中国の景気支援観測、3)米中関係の改善期待が背景です。

そのうち、1)はイベントが通過したため、今後の上昇の持続性については、2)と3)が重要になってきます。

3)については、米大手企業のトップが相次いで中国を訪問していることと合わせて考えれば、米中関係は一段と悪化するより、ひとまずは安定化を模索する可能性が高いと考えられます。また、ブリンケン米国務長官の訪中報道について中国外交部のスポークスマンは、「現時点で提供できる情報はない」とコメントしました。過去にあったように「そのような情報は把握していない」と完全否定をしてないことからすると、同報道の確度は高いと言えるかもしれません。

ただ、米中関係については過度な楽観も禁物なため、これで関係が改善されると期待しすぎてもいけないと思います。他方、株式市場にとっては、これ以上悪化しないことは支援材料と言えます。今後、両国の間で閣僚級の行き来が増えれば、中国株に対して上乗せされたリスクプレミアムは低下すると思います。

そして、何より2)の方がより肝心になると思います。前回のレポートで触れましたように、海外投資家が最も失望していたのは、景気回復が芳しくないにもかかわらず、中国当局は「静観」を続けていたことです。したがって、株高の持続性にとって重要なのは、中国当局が観測記事通りに景気支援措置を打ち出すかどうかになると思います。

この点については、過去の経験則からすると、中国当局は観測通りに景気支援措置を打ち出す可能性が高いと考えられます。極端な例を挙げますと、昨年10月末に市場では中国当局が「ゼロコロナ政策」を撤廃する可能性があるとの観測が出ました。その後、中国当局は本格的に「ゼロコロナ政策」を撤廃しました。なお、今回の景気支援措置は打ち出すにしても、当時の「ゼロコロナ政策」撤廃ほどパンチはないと考えられます。ただし、新たなな不動産支援策を打ち出せば景気鈍化懸念の払しょくにつながると思います。

また、中国証券紙は、「今年下期に預金準備率の引き下げや利下げの可能性もある」と報じました。不動産市場策に加え、中国当局は金融緩和を実施する可能性もあります。いずれも、中国株を支える支援材料となりそうです。

なお、ハンセン指数でみた場合、6/7場中に200日移動平均線をタッチしました(図表1)。今年の経験からすると、一旦200日移動平均を回復すれば、しばらく上昇が続く可能性が高いです(図表1の青い点線で囲んでいる部分)。したがって、当面は200日移動平均を突破できるかどうかが注目されます。

【内需関連株に恩恵】

海外メディアが「中国当局は不動産市場に対する新たな支援措置を検討している」と報じた後、中国国内の有力証券紙2社は「中国当局は6月にも新たな不動産支援措置を打ち出す可能性があり、そのうち一部の措置は従来のツールの”限界”を超える可能性がある」と報じました。

不動産市場の回復遅れは、国内需要の低迷につながるため、逆に不動産市場が持ち直せば国内需要や消費マインドは回復すると期待されます。不動産支援観測を受け、情報テクノロジーや消費関連などの内需関連株が買われたのは、このような要因が背景です。中国国内の報道通り、中国当局が従来の枠組みを超えた新たな不動産支援策を打ち出せば、内需関連株は一段高を試す可能性がありそうです。

図表4 中国の主な内需関連株と株価騰落率

銘柄コード Bloomberg銘柄名 6月の株価騰落率(6/7まで) 関連分野
09618 JDドットコム 14.5% EC
02331 李寧 [リー・ニン] 12.5% スポーツ用品
03690 美団(Meituan) 12.1% フードデリバリー
09888 百度 [バイドゥ] 10.9% 検索エンジン、AI
02015 理想汽車[リーオート] 10.9% 電気自動車(EV)
01024 快手(Kuaishou Technology) 10.3% ショート動画
02269 薬明生物 [ウーシー・バイオロジクス] 8.9% バイオ医薬品開発
09868 小鵬汽車[シャオペン] 8.7% 電気自動車(EV)
01928 金沙中国 [サンズ・チャイナ] 8.5% カジノ
09999 網易 [ネットイース] 8.3% ゲーム
00700 騰訊 [テンセント・ホールディングス] 8.1% ゲーム、フィンテック
09988 アリババ・グループ 7.9% EC、クラウド
01810 小米集団 [シャオミ] 7.0% スマートフォン
01211 比亜迪 [BYD] 6.9% 電気自動車(EV)
09961 携程旅行網 [トリップドットコム゚] 6.9% 旅行予約サイト
03888 金山軟件 [キングソフト] 6.3% ゲーム、クラウド
00285 比亜迪電子 [BYDエレクトロニック] 5.9% スマートフォン部品
02020 安踏体育用品 [アンタ・スポーツ] 5.6% スポーツ用品
00027 銀河娯楽 [ギャラクシー・エンターテインメント] 5.3% カジノ
00291 華潤ビール [チャイナリソーシズビール] 5.0% ビール

注:ハンセン指数とハンセンテック指数の構成銘柄のうち、不動産関連銘柄は省きました。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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