海外投資家が日本株に注目する納得の理由とは?

海外投資家が日本株に注目する納得の理由とは?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/06/06

日経平均33年ぶりの32,000円台突破!週足ベースで8連騰

5月第5週(5/29-6/2)の日経平均は前週末比607円91銭高(+2.0%)と週足ベースで8連騰しています。

前半は、海外短期筋とみられる先物買いが続き、主力大型株の上昇が目立ちました。月末の5/31(水)には、MSCIのリバランスに絡む売買もあり、東証プライム市場の売買代金は6.9兆円と過去最大を記録しました。中国経済指標の悪化を受けた上、米債務上限交渉が大詰めの段階を迎えていたこともあり、同日は一旦調整が入る形で下落しました。
週後半は、米債務上限の一時停止法案が上院、下院ともに議会をスムーズに通過したことを受け、安心感から株高となりました。市場で不安感が増すと上昇するVIX指数(恐怖指数)は14.6と2020年2月以来ぶりに15を下回り、日米両市場でリスクオンムードが広がっています。6月第1週初日、6/5(月)の日経平均も前週末の米国株の上昇を受け、33年ぶりに32,000円台に突入。693円21銭(+2.2%)の大幅高となり、好調なスタートを切っています。

日経平均株価採用銘柄の上昇率(図表7・5/29~6/5)首位はトヨタの子会社、日野自動車(7205)です。同社は、2022年にエンジン認証の不正が発覚。賠償費用等がかさみ、前期(23.3期)は3期連続で純損益が赤字となりました。株価が低迷する中、5/30(火)に独ダイムラートラック傘下の三菱ふそうトラック・バスとの経営統合の基本合意を発表し、経営再建への期待感から買いが入ったもようです。

日経平均株価採用銘柄の下落率上位(図表8・5/29~6/5)では、私鉄3社の小田急電鉄(9007)、東急(9005)、京王電鉄(9008)がランクインしています。インバウンド期待から足元の株価が堅調に推移していた反動があった形です。中国でのコロナ再流行は、インバウンド関連銘柄全体の懸念事項として意識されています。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(5/29~6/5)

図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位(5/29~6/5)

海外投資家が日本株に注目する納得の理由とは?

今週、国内では6/8(木)に23年1-3月期GDP統計(改定値)が発表されます。市場参加者の多くが注目している実質GDP成長率については、5/17(水)に発表された速報値が+1.6%(前期比年率)とブルームバーグ集計の市場予想(+0.8%)を大きく上回りました。これに対し、改定値の市場予想は+1.9%と、速報値を更に上回ることが予想されています。その場合、あらためて日本経済の堅調さが示されることになるでしょう。

実質GDP成長率が、堅調な成長を遂げている背景には、設備投資の回復が挙げられます。1-3月期GDP統計の速報値においても、設備投資の動きを示した民間企業設備が+0.9%(前期比年率)と市場予想(▲0.3%)に反しプラス成長となりました。また、6/1(木)発表の1-3月期法人企業統計で設備投資(ソフトウェア投資を除く)が+10.0%(前年同期比)と市場予想(+3.7%)を大きく上回る伸びとなったことを受けて、今回発表の改定値において民間企業設備は+1.3%へ上方修正されることが予想されています。

設備投資の回復が顕著になってきている要因の1つは円安の進展にあります。昨年は円安が大きく進行しましたが、今年に入ってからも1ドル=130から140円と円安圏での推移が定着しつつあります。前述した1-3月期法人企業統計で設備投資の増加が顕著だったのは、製造業では輸送用機器や通信機械などの加工組立業であり、円安により国内回帰を進めているものと考えられます。

また、足元では海外企業が日本に生産設備を投資する動きも見られます。その代表例は、TSMC(台湾積体電路製造)が70億ドル(9,800億円)をかけて熊本県・菊陽町付近に建設中の生産工場です(2024年末稼働予定)。日銀福岡支店のレポートによると、TSMCの進出を受けて、九州全体で半導体関連投資の設備投資が活発化しており、2024年までの3年間で半導体関連投資が少なくとも1.5兆円に上るとしています。更に、TSMCはこの地域に総投資額1兆円以上の第2工場の建設を検討していると報じられるなど、さらなる投資拡大が見込まれています。設備投資は、経済に対し先行性が高く、今後も持続的な経済成長が期待されると考えられます。

図表9 実質GDPと主要項目の成長率

  • ※BloombergよりSBI証券作成

図表10 法人企業統計の企業利益と設備投資の推移

  • ※BloombergをもとにSBI証券が作成

さて、国内株式市場の動きに目を向けると、5/31(水)の東京株式市場で、日経平均は440円安と大幅安となりました。しかし、同日の東証プライム市場の売買代金は6兆9,552億円と7億円に迫り、プライム市場としては過去最大を記録しました。この日は、世界の機関投資家がベンチマーク(運用成績の比較指標)に使うMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)指数において、構成銘柄の入れ替えに伴うリバランスの反映日に当たりました。そうした中、新規採用銘柄に買い需要を期待する買いが入るなど、取引終了のラスト1分で3.6兆円の売買が行われており、日本株に対する海外投資家の注目度の高さをうかがうことになりました。

また、日本取引所グループ(JPX)が発表する投資主体別売買動向によると、海外投資家による日本株売買(現物+先物)は4月第1週から5月第4週にかけて8週連続で買い越しが継続しております。この期間中の合計の買い越し額は6兆1,500億円となり、2012年以降で最大の買い越し額となっており、こうしたデータからも日本株への注目度の高さがうかがえます。国内設備投資の回復感が強まるなど、国内経済の中長期的な成長期待が高まる中、海外投資家による日本株への注目度についても、一段と高まることが期待されます。足元の日経平均には、やや過熱感がうかがえますが、海外投資家の持続的な買いを手掛かりに、中長期的には堅調な推移が期待できるでしょう。

図表11 日経平均と投資部門別売買動向(海外投資家)

  • ※Quick Workstation Astra ManagerをもとにSBI証券が作成

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