~中国株でも、エヌビディア・テスラ・アップル関連株が好調、独自要因も~

~中国株でも、エヌビディア・テスラ・アップル関連株が好調、独自要因も~

投資情報部 李 燕

2023/06/15

6/8-6/14の香港市場は続伸しました。中国当局が短期金利を引き下げ、金融緩和への期待が高まり、投資家センチメントを支えました。

今回のトピックスは、「中国株でも、エヌビディア・テスラ・アップル関連株が好調、独自要因も」です。

今週の中国株市況

図表1 ハンセン指数の推移(日足、6ヵ月)

注:6/7(水)までのチャートです。今回より一目均衡表ではなく、移動平均線の表示となります。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(6/14(水)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
02007 碧桂園 [カントリー・ガーデン] 12.1% -6.4% -12.4% 中国不動産大手。中国当局が不動産や内需支援のため、広範囲の刺激策を検討していると報じられ、不動産株が買われた。
00669 創科実業 [テクトロニック・インダストリーズ] 9.6% 3.6% -2.9% 大手電動工具メーカー。同社が空売り業者の2度目の空売りレポートを否定し、買い優勢となった。大手証券会社数社が空売りレポートの論点の不備を指摘したことも好材料となった。
02382 舜宇光学 [サニーオプチカル] 7.8% 1.0% -2.1% 大手光学機器メーカー。詳細は「今回のトピックス」部分をご参照願います。
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] 6.9% 6.1% 10.3% パソコン(PC)大手。詳細は「今回のトピックス」部分をご参照願います。
01929 周大福珠宝集団[チョウタイフックジュエリー] 6.8% -3.5% 5.6% 宝飾類の小売会社。決算発表会で4-5月の中国本土の既存店売上高が前年同期比で17%増、香港.マカオは同61%増になったと明かし、買い材料となった。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
02331 李寧 [リー・ニン] -3.2% -9.9% -29.4% 中国国産ブランドのスポーツウエア大手。短期的な利益確定売りに押されたもよう。前週は10%を超える上昇となった。
01398 中国工商銀行(ICBC) -3.5% -4.2% 0.7% 4大銀行の一角。中国当局が予想外に短期金利を引き下げ、銀行株が売られた。短期金利が引き下げられた後、主要政策金利の引き下げを見込む声が増え、銀行の利ざや縮小につながると懸念された。
00386 中国石油化工 [シノペック] -5.6% -7.8% 1.9% 石油・石油化学製品大手。ゴールドマン・サックスが世界的な供給増加と需要不振を背景に原油価格予測を再び引き下げ、原油関連株が売られた。
00003 香港中華煤気[ホンコン&チャイナ・ガス] -5.8% -8.4% -4.3% ガス会社。配当落ちによる影響。配当の権利落ち日が6/9だった。
00883 中国海洋石油 [CNOOC] -7.9% -10.9% -4.1% 中国石油・天然ガス大手。ゴールドマン・サックスが世界的な供給増加と需要不振を背景に原油価格予測を再び引き下げ、原油関連株が売られた。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09868 小鵬汽車[シャオペン] 23.3% 5.7% 34.4% 新興EVメーカー。詳細は「今回のトピックス」部分をご参照願います。
09866 蔚来汽車 [ニオ] 16.9% 9.4% 8.5% 新興EVメーカー。詳細は「今回のトピックス」部分をご参照願います。
02018 瑞声科技 [AACテクノロジーズ] 15.5% 8.4% 11.0% 音響部品メーカー。詳細は「今回のトピックス」部分をご参照願います。
09698 万国数拠服務 14.1% 11.5% -17.3% データセンターを運営。詳細は「今回のトピックス」部分をご参照願います。
00772 閲文集団(China Literature) 9.1% 8.5% 8.8% オンライン文学プラットフォームを運営。ハイテク株分析で有名な証券会社が同社を投資判断「買い」で新規カバレッジを開始した。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
06690 海爾智家 [ハイアールスマートホーム] 0.0% 0.6% -7.1% 大手家電メーカー。特段材料はなく、株価はほぼ横ばいとなった。
00268 金蝶国際軟件 [キングディー・ソフトウエア] -0.4% -0.5% -26.1% ソフトウェア会社。大手投資ファンドが保有株比率を引き下げたと報じられ、売り優勢となった。
06618 京東健康(JD Health) -0.7% -4.5% -5.2% JDドットコム(09618)傘下のインターネットヘルス大手。6/5からハンセン指数入りとなり、それまで買い優勢だったが、その後は短期的な利益確定売りが優勢となった。
00241 阿里健康信息技術 [アリババ・ヘルス] -1.0% -3.4% -9.1% アリババ(09988)傘下のインターネットヘルス大手。ヘルスケア関連株が総じて軟調のなか、売り優勢となった。
01810 小米集団 [シャオミ] -1.8% -1.5% -1.3% スマートフォン・IoT家電大手。海外への違法送金に関与した疑いがあるとし、インド当局が同社に正式に通告した。インドは同社の海外主力市場の一つである。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

6/8-6/14の香港市場では、ハンセン指数が0.8%上昇、ハンセンテック指数は3.4%上昇しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は6.4%上昇しました。3指数は、いずれも200日移動平均を回復しました。

3指数が続伸した理由は、中国人民銀行(中央銀行)が予想外に短期金利を引き下げたことに加え、中国当局が不動産や内需支援のため、広範囲の刺激策を検討していると報じられたためです。

ハンセン指数の上昇率が限定的だったのは、原油関連株と銀行株の下落が足を引っ張ったためです。原油関連株は、ゴールドマン・サックスが世界的な供給増加と需要不振を背景に原油価格予測を再び引き下げたことが響きました。銀行株は、短期金利が引き下げられた後、主要政策金利の引き下げを見込む声が増え、銀行にとって利ざやの縮小につながると懸念されました。

一方、工業と情報テクノロジー、一般消費財は堅調でした。工業は、主にスマートフォン関連株や太陽光発電関連株が上昇を主導しました。太陽光発電関連の信義光能(00968)と福菜特玻璃(06865)は、太陽光パネルの素材となるシリコンの供給のボトルネックが解消されるにつれ、業界の回復が見込まれると大手証券会社が分析し、買い優勢となりました。

情報テクノロジーは、中国株に対する投資家のセンチメントの好転(※)を受け、続伸した銘柄が目立ちました。一般消費財は、主にEV関連銘柄が好調でした。詳細については、「今回のトピックス」部分で取り上げます。

なお、全体的に主要指数が200日移動平均を回復した局面では、消費やハイテク株が引き続き堅調だったことに加え、出遅れ銘柄への物色も目立ちました。このような動きは、通常、多くの投資家が株高は続く可能性が高いと判断した局面でよくみられます。したがって、過去の経験同様に(図表1)、主要指数は200日移動平均線を回復した後、上昇トレンドを維持する可能性が高いと考えられます。

今回のトピックス

今回のトピックスは、「中国株でも、エヌビディア・テスラ・アップル関連株が好調、独自要因も」です。

米国市場では、エヌビディア(NVDA)やテスラ(TSLA)、アップル(AAPL)の株高が続き、関連株も恩恵を受けています。その影響は中国株にも及んでおり、中国のAI関連株やEV関連株、スマートフォン関連株も足元で好調です。ただ、これらの関連株が上昇したのは、中国独自の業界要因や個別銘柄の要因もあります。

以下では、図表形式で簡単にまとめましたので、投資のご参考にしていただければと思います。

図表4 エヌビディア・テスラ・アップル関連の中国株の株価動向と主要ニュース

関連分野 銘柄 株価騰落率(過去5日) 株価騰落率(過去1カ月) 中国独自の業界要因 個別銘柄の要因
エヌビディア/AI関連株 万国数拠服務 A(09698) 14.1% 11.5% 北京市がAI支援措置を発表した後、深セン市は「AIの高品質発展を促進する行動計画(2023-2024年)」を発表。中国のイノベーション2大都市がAIの発展に力を入れている。 短中期的に業界の回復は時間を要するかもしれないが、中国経済の回復やクラウド・AI関連の投資拡大により、データセンター業界も回復が見込まれるとし、中国大手証券が買い推奨した。
キングソフト(03888) 7.6% 2.4% 子会社のキングソフト・オフィスが4月に生成AIアプリ「WPS AI」を近々公表すると発表し、同社もAI関連銘柄として注目されている。同社は3月の決算発表時に、AI技術への投資を拡大すると表明した。
百度(09888) 5.7% 17.6% 中国国内のテックメディアによると、同社は1対1のAI対話ソフトウェアを打ち出す可能性がある。中国版ChatGPTの「文心一言」に加え、新製品が投入される見通しとなった。
センスタイム(00020) 5.6% -0.9% 新製品の囲碁AIロボット「元蘿蔔 」を発表。既にECサイトで予約販売を開始した。
レノボグループ(00992) 6.9% 6.1% AI関連に10億ドルを追加投資すると発表。また、IDCによると、世界サーバー市場での同社の市場シェアは2023年1-3月に7.1%に上昇した。中国の大手証券会社は今後、AI関連業務が同社の成長をけん引する見通しだとした。
テスラ/EV関連株 小鵬汽車 A(09868) 23.3% 5.7% 5月の新エネルギー車販売が回復した。中国当局は6/2に新エネルギー車の車両購置税減免政策を継続、最適化すると表明。中国自動車業界団体のトップは6/13に自動車の消費を加速させるために引き続き、何らかの支援策を導入する必要があるとコメント。中国当局が内需支援のため、広範囲の刺激策を検討していると報じられたタイミングと重なったため、政策期待が高まった。 新型SUVが販売開始して3日間で、2.5万台の予約を獲得した。同社は今年は販売が総じて冴えなかったため、新型SUVの好調な滑り出しで販売の持ち直しが期待された。
ニオ インク A(09866) 16.9% 9.4% これまで値下げ競争に参加しなかった同社が、5月末に売れ筋モデルの改良版を安価で販売開始し、6/12には全車種で値下げを発表。値下げによる販売拡大が期待された。
理想汽車(02015) 3.0% 13.2% 新興EV3社のうち、同社は今年5月まで最も販売が好調だった。週次ベースの販売状況からは、6/5-6/11は過去最高水準に達し、好調は続いていることが確認された。
比亜迪 (Byd)(01211) 2.4% 6.4% 積極的に海外展開を進めている同社は、フランスで5車種のEVを投入する予定と報じられた。早ければ6月にもフランスのディーラーに納車が行われる予定だという。
アップル/スマートフォン関連 瑞声科技(02018) 15.5% 8.4% ファーウェイが2023年の携帯電話出荷目標を3,000万台から4,000万台に引き上げたと報じられた。中国のスマートフォン販売をめぐっては、回復の遅れが懸念されているが、下期は上向く可能性があると期待された。 同社は「3P VR Pancake」光学モジュールの量産に成功したと発表。「3P VR Pancake」はアップルの複合現実(MR)ヘッドセット「Vision Pro」のレンズと同じパンケーキ光学設計となっているため、アップルへの供給製品であると期待された。
舜宇光学(02382) 7.8% 1.0% 中国のアップルサプライヤーのうち、同社と瑞声科技(02018)はアップルの「Vision Pro」と廉価版「Vision Pro」の恩恵を最も受ける見通しだとし、大手証券が買い推奨した。
BYDエレクトロ(00285) 3.5% 4.6% -

※Bloombergおよび各種報道をもとにSBI証券が作成。

なお、上記図表4の銘柄のうち、比亜迪 (Byd)(01211) を除いて、ハンセンテック指数の構成銘柄となっています。ハンセンテック指数に連動するETFは下記の通りです。

図表5 ハンセンテック指数に関連するETF

銘柄 ETF概要
CSOP テック ETF(03033) ハンセンテックインデックス ETF(CSOP Hang Seng TECH Index ETF HKD)は、ハンセンテック指数の価格および利回り(手数料および費用控除前)のパフォーマンスに概ね連動する投資結果を提供することを目指す。
恒生 テックレバ(07226) ハンセンテック指数の日次パフォーマンスの2倍となる投資成果を目指す。

※当社ホームページをもとにSBI証券が作成。

ハンセンテック指数のブル・ベアETFは新興国の株価指数を参照指標としているため、先進国の株価指数等を参照する一般的なレバレッジ型・インバース型 ETFと比較して、相対的にリスクが高まる可能性がある点にご留意ください。

レバレッジ型・インバース型 ETF等(ETN含む)は、主に短期売買により利益を得ることを目的とした商品です。レバレッジ指標の上昇率・下落率は、2営業日以上の期間の場合、同期間の原指数の上昇率・下落率のレバレッジ倍(又はマイナスのレバレッジ倍)とは通常一致せず、それが長期にわたり継続することにより、期待した投資成果が得られないおそれがあります。上記の理由から、一般的に長期間の投資には向かず、比較的短期間の市況の値動きを捉えるための投資に向いている金融商品といえます。投資経験があまりない個人投資家の方が資産形成のためにこうしたETF等を投資対象とする際には、取引の仕組みや内容を十分理解し、取引に伴うリスク・コストを十分に認識することが重要です。レバレッジ型・インバース型 ETF等に係る商品の特性とリスクについてはこちらのリーフレットをあわせてご確認ください。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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