ここが転換点!?押さえておきたいFOMCのポイントとは?

ここが転換点!?押さえておきたいFOMCのポイントとは?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/06/13

日経平均は週足ベースで9連騰!株式市場はリスクオンムード

6月第1週(6/5-9)の日経平均は前週末比740円95銭高(+2.4%)と週足ベースで9連騰。33年ぶりに3万2千円の大台を突破しました。売買代金も全営業日で3兆円を超え、活況を呈しました。

前週に続き先物が主導する展開でした。前半は、前週からのリスクオンムードを引き継ぐ格好で2日続伸でスタートしました。その後、週半ばは、節目である3万2千円を突破したことによる利益確定やSQへの警戒感から一旦反落。週最終日には、警戒されていた6月SQ算出を無難に通過。前日までの下落に対する押し目買いも入ったとみられます。

日米両株式市場で堅調な展開が続く中、物色対象が徐々に変化しています。足元では、グロース株優位からバリュー株優位の展開となり、出遅れ銘柄へ買いが進んだ格好です。以下は前週末比での騰落率になります。

▶ 5月第4週 : TOPIXグロース +4.1%   TOPIXバリュー +2.2%

▶ 5月第5週 :    〃    +1.7%       〃     +1.8%

▶ 6月第1週 :    〃    +1.2%       〃     +2.6%

上記3週においては米国でも同様で、ナスダックのパフォーマンス面での優位性は後退気味です。6月第1週にはNYダウとS&P500にアンダーパフォームとなりました。ただ、一部グロース株への息の長い買いは継続中です。AI関連銘柄や、充電ネットワークが業界標準規格となる見方がほぼ確定路線となったEV大手テスラが選好されています。

日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(6/5~12・図表7)では、主力バリュー株の一角である大手商社から4社がランクイン。首位は、エーザイ(4523)です。米バイオジェンと共同開発するアルツハイマー治療薬「レマネカブ」が、米FDAの正式承認に向けて進展があり期待感から大幅高となりました。なお、審査終了目標日は7/6(木)です。

6月第2週の日経平均は、続伸してスタートとなっています。6/13(火)も前日の米ハイテク株高を受け、リスクオンムードが続いています。今週半ばは、米5月消費者物価指数(CPI)の発表やFOMC開催が予定されているため、それらを見極める必要がありそうです。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(6/5~12)

図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位(6/5~12)

ここが転換点!?押さえておきたいFOMCのポイントとは?

米国では6/13(火)、6/14(水)にFOMC(連邦公開市場委員会)が行われます。金融政策を決めるこの会合でまず注目されるのは、政策金利(FFレート誘導目標)の動向です。今回は、事前にパウエルFRB議長が「ここまで(金融引き締め)政策を進めてきたので、データや変わりつつある見通しを注視して慎重に分析する余裕が我々にはある」と述べており、利上げは一旦、休止となる可能性が高そうです。もっとも、次回FOMC(7月25日、26日)以降の利上げ再開の可能性を示し、利上げ打ち止めムードが広がることは避けると考えられます。

一方、今回のFOMCでは、政策メンバーによる経済、政策金利予想が更新されます(前回3月予想は図表9)。実は、この予想内容が今回のFOMCにおける注目ポイントと考えられます。そこで、この予想に対する注目点を3つご紹介いたします。

図表9 政策メンバーによる経済、政策金利予想(23年3月)

  • ※BloombergよりSBI証券作成

<注目点12023年の実質GDP成長率

1つ目は23年の実質GDP成長率がどれだけ上方修正されるかです。前回予想で、米実質GDP成長率は22年実績の前年比+2.1%に対し、23年予想は+0.4%と急減速が見込まれていました。しかし、23年1-3月期の成長率は+1.3%。また、アトランタ連銀公表のGDP Now(図表10)によると4-6月期は、現状で+2.2%と堅調な推移が見込まれており、もし、このペースで行けば23年成長率は前回予想を大きく上回ることになります。これはおそらく、年初頃の市場参加者の想定ほど、米国経済が減速しないということになります。景気は強いことに越したことはないと言いますが、景気が強いとなると、市場では今後の追加利上げに対する警戒が強まる可能性があるでしょう。

図表10 GDP Now 23年4-6月期実質GDP成長率予想

  • ※BloombergをもとにSBI証券が作成

<注目点2>2023年の政策金利予想

前回予想で23年末の政策金利予想は5.125%と、既に現在の政策金利(5.00-5.25%)と同水準にあります。今回の政策金利予想で利上げを見込むのであれば、(年内の利下げは無いとの前提で)23年の政策金利予想は上方修正されることになります。FFレート先物(図表11)を見ると、7月頃に1回(0.25%)の利上げがある程度見込まれており、23年末政策金利予想でそれが反映される分について、市場では織り込み済みと考えられます。2回以上の利上げが予想に反映されるようであれば、市場参加者にタカ派的な印象を与えることになると考えられます。

図表11 FFレート先物イールドカーブ(23年6月12日)

  • ※Quick Workstation Astra ManagerをもとにSBI証券が作成

<注目点32023年と2024年の政策金利予想の金利差

前回予想では、政策金利は23年末の5.125%に対して24年末が4.250%と、24年かけて0.875%pt(0.25%pt×3.5回)程度の利下げが予想されています。今回の予想では、この0.875%ptの金利差が拡大するか、縮小するのかが注目されます。金利差の拡大は従来よりも急ピッチな利下げを示し、市場にハト派的な印象を与えるでしょう。逆に金利差が縮小すれば、緩やかな利下げとなりタカ派的となります。米国では3月に相次いだ地銀の経営破綻などで金融システムが不安定になった影響もあり、FRBは利上げを進めにくくなった可能性があります。そのため、FRBが想定していたよりも政策金利のピーク水準が低くなった一方、インフレ抑制効果が薄れる分、高金利状態が長期化(つまり、前述の金利差が今回の予想で縮小)する可能性がある点には注意する必要がありそうです。

今回のFOMCで上記の注目点を受けてタカ派色が強まった場合、金融市場で大きな影響を受けるのは米国長期金利であり、米10年国債利回りは4%台へ向けて上昇トレンドに入る可能性があります。その際、日本株を含めた株式市場の物色は、テクノロジーなどのグロース株(成長株)から、金利上昇に強いバリュー株(割安株)にシフトすることが見込まれます。また、日本株については、米金利上昇により円安基調が強まる可能性があるため、(バリュー株の中でも)輸出関連株主導の展開が想定されるでしょう。

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