~年後半の中国経済、人民元、中国株~

~年後半の中国経済、人民元、中国株~

投資情報部 李 燕

2023/07/06

6/29-7/5の香港市場はハンセン指数が小幅安、ハンセンテック指数は小幅高となりました。不動産株が売られた一方、電気自動車(EV)関連株が買われたことが背景です。

今回のトピックスは、「年後半の中国経済、人民元、中国株」です。

今週の中国株市況

図表1 ハンセン指数の推移(日足、6ヵ月)

注:7/5(水)までのチャートです。今回より一目均衡表ではなく、移動平均線の表示となります。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(7/5(水)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00316 東方海外 12.9% 20.0% -21.5% 海上貨物輸送を手掛ける。海運業の持ち直し期待で買われた。同業のコスコシッピング(01919) が5月と6月の輸送量は前年同月比で鈍化が続いたものの、前月比では増加したことを明かし、材料視された。
00762 中国聯通[チャイナ・ユニコム] 7.1% -11.2% -11.3% 通信キャリア。テクニカル要因のもよう。RSIが短期的に売られ過ぎサインとされる30%を大幅に下回った後、反発した。
00175 吉利汽車 [ジーリー・オートモービル] 5.7% 5.5% 1.6% 大手自動車メーカー。電気自動車(EV)ブランド「ZEEKR」の6月の販売台数が前年同月比で147%増加し、買い材料となった。
01378 中国宏橋集団 4.1% 10.1% -8.6% アルミニウム製品メーカー。アルミニウム株が買われた流れの一つ。アルミニウム生産地の雲南省では水力発電の逼迫でアルミニウムの減産に見舞われてきたが、雨季で貯水池の水位上昇が報じられた。アルミニウムの生産回復期待につながった。
01211 比亜迪 [BYD] 4.0% 5.6% 15.4% 中国EV最大手。6月の新エネルギー車の販売台数が前年同月比で89%増となり、買い材料となった。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
06098 CG SERVICES -5.7% 7.7% -25.1% 不動産大手カントリーガーデン(02007)傘下の不動産サービス会社。不動産株が売られた流れの一つ。デフォルトに陥った不動産大手の世茂集団(00813)のプロジェクトが強制売買にかけられたが、買い手がつかなかったと報じられ、悪材料となった。
02388 中国銀行(香港) [BOCホンコン] -5.8% -5.0% -7.7% 中国4大銀行の一角である中国銀行の香港子会社。配当落ちによる影響。配当の権利落ち日が7/3だった。
03968 招商銀行(CMB) -6.1% -7.2% -13.6% 大手商業銀行。配当落ちによる影響。配当の権利落ち日が7/5だった。
01044 恒安国際 [ハンアン・インターナショナル] -6.6% -8.2% -14.1% 衛生用品メーカー。テクニカル要因のもよう。MACDが下降トレンドを示唆し、売り優勢が続いた。
02688 新奥能源 [ENNエナジー] -6.8% -3.4% -6.2% 天然ガス供給会社。需給要因のもよう。株価が100香港ドルの突破に失敗した後、売りが続いた。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09868 小鵬汽車[シャオペン] 23.1% 65.7% 32.9% 新興EVメーカー。新型ミドルサイズSUV「G6」の発売開始と6月の販売回復が好材料となった。
01347 華虹半導体 [フアホン・セミコンダクター] 8.1% 1.3% -26.3% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。大手証券会社が目標株価を引き上げた。6月最終週の中国の自動車販売が引き続き回復していることから、車載半導体の需要増が見込まれることを理由に挙げた。
09866 蔚来汽車 [ニオ] 7.6% 32.9% 4.9% 新興EVメーカー。6月の販売台数は前年同月比で17%減となったが、前月比では74%増加し、買い材料となった。同社は6月に値下げを実施したが、その効果が表れているもよう。
06060 衆安在線財産保険 4.3% 2.5% -9.0% オンライン保険大手。需給要因のもよう。7月入ってから、同社株を含めて年前半に軟調だった銘柄に反発狙いの買いが入っている。
02015 理想汽車[リーオート] 3.3% 22.1% 51.7% 新興EVメーカー。6月の納車台数が前年同月比で150%増加し、買い材料となった。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09698 万国数拠服務 -2.9% -0.2% -40.4% データセンターを運営。特段材料はなく、需給要因のもよう。
02382 舜宇光学 [サニーオプチカル] -3.0% 3.2% -16.3% 大手光学機器メーカー。大手証券会社が目標株価を引き下げた。スマートフォン販売の伸び鈍化と競争激化が同社の利益率を圧迫する見通しだとした。
03888 金山軟件 [キングソフト] -3.9% 4.6% -20.1% ゲーム・ソフトウェア大手。6月末にかけてポジション調整による売りがみられた。同社CEOが自社株買いを実施したと報じられ、下げ幅はやや抑えられた。
06690 海爾智家 [ハイアールスマートホーム] -5.1% -0.9% -1.1% 大手家電メーカー。不動産市場の軟調な見通しを嫌気し、家電株が売られた。同社は中国本土上場のA株に対し、自社株買いを実施した。
00020 SenseTime Group Inc -11.6% -12.8% -41.7% AIソフトウェア大手。大株主であるアリババ(09988)が引き続き、同社株の売却を進めている可能性があると香港現地紙が報じ、売りが膨らんだ。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

6/29-7/5の香港市場では、ハンセン指数が0.3%下落、ハンセンテック指数は0.4%上昇しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は0.04%下落しました。

好悪材料まちまちのなか、主要指数はもみ合う展開となりました。

米中関係をめぐっては、米イエレン財務長官が訪中する予定と伝わり、関係改善に向けた動きとして評価されました。一方、中国政府は半導体材料のガリウムとゲルマニウム関連製品の輸出管理を強化すると発表し、「米国は中国企業を対象に、米国のクラウド・コンピューティング・サービスの利用を制限する準備を進めている」報じられました(ウォール・ストリート・ジャーナル)。米中ハイテク戦争の範囲が広がっていることが示唆されました。

中国国内では、景気先行指数である購買担当者指数(PMI)が発表されました。6月は製造業PMIがやや持ち直しましたが、非製造業PMIが予想外に鈍化しました。不動産市場では、デフォルトに陥った不動産大手の世茂集団(00813)のプロジェクトが強制売買にかけられましたが、買い手がつかなかったと報じられました。一方、電気自動車(EV)を含む新エネルギー車の販売データからは6月も回復が続いたことが示されました。

これらを受け、不動産関連株が軟調だった一方、EV関連銘柄は買い優勢となりました。他方、マクロ要因と関係なく動いた業種もありました。6月相場が終了したことに伴うポジションの再構築を背景に、6月に軟調だったヘルスケアやエネルギーには7月に入って見直し買いが入りました。

今回のトピックス

今回のトピックスは、「年後半の中国経済、人民元、中国株」です。

【年後半の中国経済】
中国のGDP成長率は4-6月期に7.5%に回復した後は、7-9月期は5.0%に鈍化、その後10-12月期には5.4%に回復すると見込まれています(図表4)。もっとも、4-6月期の高水準は比較対象の前年同期が低水準(上海ロックダウンの影響)だったことによる部分が大きいです。したがって、年間を通してみた場合、中国のGDP成長率は四半期ベース緩やかに回復する見通しです。

ただし、四半期ごとで比較した際は、4-6月期の高水準はベースの低さが主因であったとしても、7-9月期の水準は回復の弱さを印象付けることとなりそうです。特に「ゼロコロナ政策」の撤廃に伴い、中国経済は今年力強く回復すると期待していた投資家にとっては「物足りなさ」を感じさせるかもしれません。

図表4 中国の主要経済指標(四半期ベース、4-6月期以降は市場予想値)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

なお、中国当局は2023年のGDP成長率目標を5.0%前後と設定しており、今のところ目標達成となりそうです。株式市場にとってのインプリケーションは、中国経済が底割れしない限り、中国当局は大規模な景気刺激策を躊躇する可能性が高いということです。

他方、足元の景気先行指数からは、景気の回復具合は中国当局の想定よりも鈍いことが示されています。たとえば、6月の購買担当者指数(PMI)は製造業がやや持ち直しましたが、非製造業は予想以上に鈍化しました(図表5の上段)。両指数が5月に鈍化したことを受け、中国当局は既に主要政策金利を引き下げました(図表5の下段)。過去の経験からすると、景況感の悪化が続いた場合、中国当局は金融緩和を続ける可能性があります。緩和継続なら、株式市場にとっては下支え要因となりそうです。

図表5 景気先行指数のPMIと主要政策金利の推移(2018年以降)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。


【人民元】
年前半(特に5月以降)は、中国の景気見通しや米中関係をめぐる不透明感を背景に人民元安が進みました。中国当局が元安に対して容認姿勢を示したことも元安に拍車をかけました。しかしながら、中国人民銀行(中央銀行)は6月末から元安の抑制に動きだしました(図表6)。それを受け、足元では元安の進行に一旦歯止めがかかるようになりました。

中国人民銀行は6/30に、人民元について「包括的な措置を導入し、期待を安定させる方針を示し、大幅変動リスクを断固として防ぐ」と表明しました。過去の経験からすると、中国当局が元安抑制措置を続けた場合、元安の進行はある程度収まる可能性があります。他方、経済見通し悪化のほうが強い場合は、元安の進行が再開する恐れもあります。

したがって、中国人民銀行による元安抑制の措置も重要ですが、経済見通しの安定化に向けて中国当局がどう動くかがより注目されます。それについて中国人民銀行は、「内需が依然として力強さに欠けるため、より広範にわたって経済支援を拡大させる」と表明しました。今後は、中国当局が約束通りに経済支援を拡大させるかどうかが重要になってきます。元安傾向が続いている間は、中国株買いが手控えられる可能性があります。逆に元安から元高へ反転した際は、株式市場にとってポジティブ要因となりそうです。

図表6 人民元の中心レート(対ドル)の実績値対予想値、および人民元対ドルレートの推移(過去5年、元/ドル)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。


【中国株】
年前半の中国株は冴えない展開となり、ハンセン指数が4.4%下落、ハンセンテック指数は5.3%下落しました。元安と同様に、中国の景気見通しや米中関係をめぐる不透明感が背景です。一方、上期の経済成長や企業業績の回復底堅さと比較した際は、バリュエーションの著しい低下も目立ちます(図表7)。投資家が米中対立を嫌気し、中国株に対して高いリスクプレミアムを上乗せしていることと大きく関係しています。

図表7 ハンセン指数の予想PERの推移(過去10年、月次ベース)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。


米中関係をめぐる不透明感は当面続くことが予想されるため、関係改善の兆しが明確に示されない場合は、中国株全体の上値は抑制されそうです。一方、そのリスクプレミアムを相殺するほど、経済見通しの改善や企業業績の回復が示されれば、年後半は見直し買いが入る可能性もあります。バリュエーション面が著しく低下したためです。もし、全体的な見直し買いが期待されない場合は、比較的堅調な業種(たとえば、販売回復が続いている電気自動車(EV)、図表8参照)に対する物色買いが続く可能性がありそうです。

図表8 中国の主要EVメーカーの販売動向(四半期ベース、2023年は月次ベース)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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