~テック株の反発力に注目、底堅い業績が支えに?~

~テック株の反発力に注目、底堅い業績が支えに?~

投資情報部 李 燕

2023/08/24

8/17-8/23の香港市場は続落しました。中国の利下げ幅が予想を下回り、投資家の失望売りを誘いました。

今回のトピックスは、「テック株の反発力に注目、底堅い業績が支えに?」です。

今週の中国株市況

図表1 ハンセン指数とハンセンテック指数の年初来推移

注:8/23(水)までのチャートです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の年初来推移(2022年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(8/9(水)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
02020 安踏体育用品 [アンタ・スポーツ] 6.2% -6.7% -0.4% スポーツ用品大手。1-6月期の売上高と純利益が市場予想を上回り、買い材料となった。
00291 華潤ビール [チャイナリソーシズビール] 1.8% -8.0% -12.9% ビール大手。1-6月期の売上高と純利益が市場予想を上回り、買い材料となった。
00881 中升集団 1.8% -15.6% -27.4% 自動車販売会社。テクニカル要因のもよう。RSIが短期的に売られ過ぎサインとされる30%を下回った後、反発した。
01378 中国宏橋集団 1.7% -2.4% 19.6% アルミニウム製品メーカー。1-6月期の純利益は前年同期比69%減となったが、事前に公表した会社側予想に沿った内容となった。決算と当時に特別配当を発表したことが買い材料となった。
01088 中国神華能源 [チャイナ・シェンファ・エナシ] 1.6% -4.3% -19.2% 石炭大手。テクニカル要因のもよう。RSIが短期的に売られ過ぎサインとされる30%を下回った後、反発した。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00968 信義光能 [シンイー・ソーラー] -9.4% -25.1% -22.4% 太陽光発電ガラスメーカー。米国の対中関税引き上げ措置が売り材料となった。米国商務部は中国の太陽電池パネルメーカーに対し、東南アジア諸国で製品を完成させることで関税を回避していたと指摘し、輸入関税を課すことを決定した。
00960 龍湖集団 [ロンフォー・グループ] -10.5% -23.5% -9.4% 中国不動産大手。1-6月期の売上高は前年同期比35%減と市場予想を下回り、売り材料となった。
02007 碧桂園 [カントリー・ガーデン] -15.7% -55.7% -54.6% 中国不動産大手。ハンセン指数からの除外と債券の利払いをめぐる不透明感が報じられ、売り材料となった。
00241 阿里健康信息技術 [アリババ・ヘルス] -17.2% -21.7% -11.7% アリババ(09988)傘下のインターネットヘルス大手。同業のJDヘルスの1-6期決算が市場予想を下回り、売り材料となった。市場センチメントが総じて弱いことも、売りを助長した。
06618 京東健康(JD Health) -18.3% -26.6% -17.2% JDドットコム(09618)傘下のインターネットヘルス大手。1-6月期の売上高が前年同期比34%増となったが、市場予想には届かず、売り材料となった。市場センチメントが総じて弱いことも、売りを助長した。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00285 比亜迪電子 [BYDエレクトロニック] 12.5% 8.0% 39.2% BYD(01211)傘下のスマートフォン部品・受託製造メーカー。8/28の決算発表を前に、大手証券会社が同社をトップ推奨銘柄に挙げ、急伸した。同証券会社はスマートフォンや電気自動車(EV)関連製品の成長を受け、同社の1-6月期の業績は堅調になるだろうと予想した。
01024 快手(Kuaishou Technology) 2.1% -4.2% 16.8% ショート動画大手。4-6月期は市場予想を大幅に上回る黒字額を計上し、買い材料となった。
03888 金山軟件 [キングソフト] 1.5% -9.3% 0.7% ゲーム・ソフトウェア大手。4-6月期の売上高が小幅ながら市場予想を上回り、買い優勢となった。
09868 小鵬汽車[シャオペン] -0.2% -28.0% 72.8% 新興EVメーカー。4-6月期は競争激化で市場予想以上の損失額を計上したが、7-9月の納車台数ガイダンスは販売回復を示し、売り買いが交錯した。
01810 小米集団 [シャオミ] -0.3% -4.4% 9.1% スマートフォン・IoT家電大手。8/29の決算発表を前に大手証券会社が売上高はスマートフォンの販売鈍化による影響を受けるものの、粗利益率は高価格帯製品の貢献で改善する見込みだと予想し、売り買いが交錯した。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09618 JDドットコム -6.8% -18.0% -5.4% EC大手。4-6月期の売上高と調整後純EPSは市場予想を上回ったが、売り優勢となった。営業利益率が大型キャンペーンによるコスト増で予想を下回ったことが嫌気されたもよう。市場センチメントが総じて弱いことも、売りを助長した。
09866 蔚来汽車 [ニオ] -7.0% -26.3% 26.5% 新興EVメーカー。競争激化懸念で売られた。テスラ(TSLA)の改良版「モデル3」が9月に量産開始になる予定だと報じられた。
01833 平安健康医療 [ピンアン・ヘルスケア] -12.8% -17.7% -9.0% 平安保険(02318)傘下のインターネットヘルス大手。同業のJDヘルスの1-6期決算が市場予想を下回り、売り材料となった。市場センチメントが総じて弱いことも、売りを助長した。
00241 阿里健康信息技術 [アリババ・ヘルス] -17.2% -21.7% -11.7% アリババ(09988)傘下のインターネットヘルス大手。同業のJDヘルスの1-6期決算が市場予想を下回り、売り材料となった。市場センチメントが総じて弱いことも、売りを助長した。
06618 京東健康(JD Health) -18.3% -26.6% -17.2% JDドットコム(09618)傘下のインターネットヘルス大手。1-6月期の売上高が前年同期比34%増となったが、市場予想には届かず、売り材料となった。市場センチメントが総じて弱いことも、売りを助長した。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

8/17-8/23の香港市場では、ハンセン指数が2.6%下落、ハンセンテック指数は2.8%下落しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は1.0%下落しました。

中国の輸出入の伸び鈍化や不動産問題を背景に景気懸念が強まるなか、市場では中国当局の金融緩和に対する期待が高まっていました。しかし、中国人民銀行(中央銀行)が8/21に発表した1年物ローンプライムレート(LPR)の引き下げ幅は市場予想を下回り、5年物LPRは予想外の据え置きとなりました。

住宅ローンの参考指標となる5年物LPRは今回、従来の4.20%から4.05%への引き下げが予想されていました。しかし、中国当局は度重なる支援表明とは裏腹に、政策の実行において明らかに「パンチ不足(支援不足)」となっており、投資家の失望を誘いました。

なお、Bloombergのエコノミストは5年物LPRの据え置きは、中国当局がそれよりも即効性の高い不動産支援策を準備している可能性を示唆しているかもしれないと指摘しました。事実なら中国株にとって支援材料ですが、政策支援が一段と遅れる場合は軟調地合いが続くかもしれません。

業種別では、不動産を筆頭に、ほぼ全業種が売り優勢でした。投資家のリスクセンチメントの悪化を反映し、ディフェンシブの電気通信も利益確定売りに押されました。一方、エネルギーは小幅ながら買い優勢でした。石油・天然ガス大手のCNOOC(00883)が1-6月に原油価格の下落にもかかわらず底堅い業績を発表し、買われました。

今回のトピックス

今回のトピックスは、「テック株の反発力に注目、底堅い業績が支えに?」です。

中国企業の決算発表がピークを迎えており、主要テック株の決算も出揃いました。ハンセンテック指数の構成銘柄で確認してみると、決算発表を終えた17銘柄のうち、13銘柄の調整後EPS(1株当り利益)が市場予想を上回りました。

図表4 ハンセンテック指数の構成銘柄のうち、決算発表を終えた銘柄の業績と株価動向

銘柄コード Bloomberg銘柄名 調整後EPSの実績対市場予想比(%) 決算発表翌営業日の株価騰落率(%)
00700 騰訊 [テンセント・ホールディングス] 7.3% 1.0%
09988 アリババ・グループ 22.8% 1.1%
09618 JDドットコム 10.1% -1.4%
09888 百度 [バイドゥ] 39.6% 4.4%
02015 理想汽車[リーオート] 11.1% -5.5%
01024 快手(Kuaishou Technology) 86.6% 3.0%
00981 中芯国際 [SMIC] 108.3% -2.1%
06618 京東健康(JD Health) 88.5% -6.4%
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] -20.6% -5.0%
09868 小鵬汽車[シャオペン] -30.0% 1.6%
02382 舜宇光学 [サニーオプチカル] -50.4% -2.4%
09626 ビリビリ 7.5% 0.7%
03888 金山軟件 [キングソフト] -72.7% 1.2%
00772 閲文集団(China Literature) 12.1% 0.6%
01347 華虹半導体 [フアホン・セミコンダクター] 15.4% -9.0%
00268 金蝶国際軟件 [キングディー・ソフトウエア] 10.5% -4.9%
09698 万国数拠服務 89.4% 4.7%

注:時価総額順です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

特にアリババ(09988)やテンセント(00700)、JDドットコム(09618)、百度(09888)の増収率からは、ネット大手の業績は中国当局による規制強化の影響から脱出しつつあることが示されました(図表5)。

図表5 主力ネット大手の増収率の推移(%、四半期ベース)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

しかし、決算発表翌営業日の株価騰落率は必ずしも業績とは一致せず、好決算の割りに株価上昇率が限定的だったり、あるいは逆に売られた銘柄が多かったです(図表4)。今回の決算発表シーズンでは、中国の不動産不況と中国当局の支援不足(「今週の中国株市況」部分を参照)がクローズアップされたためです。つまり、足元の株価動向は決算よりも、景気懸念をより反映した形となりました。

それを端的に表しているのが、図表6です。ハンセンテック指数の終値と予想EPSの推移を確認してみると、足元で明らかに乖離が大きくなっています。つまり、今回の決算発表シーズンではハンセンテックの予想EPSが上方修正されているにもかかわらず、株価はむしろ大きく下落しています。

このような大幅な乖離は通常、長引かず、修正される場合が多いです。したがって、マクロ要因からくる悪材料に気を取られ過ぎることなく、テック株の反発力にも注目したいと思います。

図表6 ハンセンテック指数の終値と予想EPSの推移(年初来)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

おすすめ記事(2023/08/24)

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。