~中国景気が悪い?!、主力企業は好業績で株高に~

~中国景気が悪い?!、主力企業は好業績で株高に~

投資情報部 李 燕

2023/08/31

8/24-8/30の香港市場は反発しました。中国当局の相場支援措置に加え、主力企業の好決算が株高を支えました。

今回のトピックスは、「中国景気が悪い?!、主力企業は好業績で株高に」です。

今週の中国株市況

図表1 ハンセン指数とハンセンテック指数の年初来推移

注:8/23(水)までのチャートです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の年初来推移(2022年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(8/30(水)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
06098 CG SERVICES 26.7% 5.0% -1.4% 不動産大手カントリーガーデン(02007)傘下の不動産サービス会社。中国当局による住宅ローン規制の緩和と親会社のデフォルト回避に向けた取り組みが評価された。
02007 碧桂園 [カントリー・ガーデン] 25.7% -44.3% -40.9% 中国不動産大手。中国当局による住宅ローン規制の緩和と同社のデフォルト回避に向けた取り組みが評価された。同社は9/2に償還を迎える元建て債の保有者に対して猶予期間の延長(40日間)を提案した。
02269 薬明生物 [ウーシー・バイオロジクス] 12.5% 4.9% 10.9% バイオ医薬品開発受託大手。1-6月期の売上高と純利益が市場予想を上回り、買い材料となった。新型コロナワクチン関連以外の業務が力強く伸び、業績を支えた。
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] 12.0% -3.1% 16.9% パソコン(PC)大手。同社が最近リリースしたAI向けGPUを搭載したサーバーについて引き合いが好調と報じられ、買い材料となった。
01211 比亜迪 [BYD] 11.2% -11.2% 4.3% 中国EV最大手。4-6月期の売上高と純利益が市場予想を上回り、買い材料となった。競争激化にもかかわらず、好調なEV販売とコスト管理が好業績を支えた。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00316 東方海外 -0.5% -10.1% 19.2% 海上貨物輸送を手掛ける。大手証券会社が同社を含む海運株の目標株価を引き下げた。コンテナ業界はまだ業績の底から脱していないことを理由に挙げた。
00762 中国聯通[チャイナ・ユニコム] -0.7% -1.6% -5.3% 通信キャリア。投資家のリスクセンチメントがやや回復し、ディフェンシブ銘柄として買われたきた同社が利益確定売りに押された。
00003 香港中華煤気[ホンコン&チャイナ・ガス] -1.4% -13.5% -20.0% ガス会社。配当の権利落ちによる影響。配当の権利落ち日が8/28だった。
00836 華潤電力 -6.0% -10.4% -18.0% 大手電力会社。大手証券会社が2024年は電力価格の引き下げ圧力が高まる見込みだとし、同社を含む電力株の投資判断と目標株価を引き下げた。
02688 新奥能源 [ENNエナジー] -18.5% -32.2% -31.5% 天然ガス供給会社。1-6月期の売上高と純利益が市場予想を大きく下回り、売り材料となった。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09868 小鵬汽車[シャオペン] 17.0% -15.8% 133.0% 新興EVメーカー。事業拡大に向けたM&Aが好材料となった。同社は配車サービス大手の滴滴出行のスマートEV部門を買収し、滴滴出行と戦略的パートナーシップを締結すると発表した。
01833 平安健康医療 [ピンアン・ヘルスケア] 16.0% -4.5% 6.2% 平安保険(02318)傘下のインターネットヘルス大手。1-6月期は赤字幅が市場予想より大きく縮小し、買い材料となった。
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] 12.0% -3.1% 16.9% パソコン(PC)大手。同社が最近リリースしたAI向けGPUを搭載したサーバーについて引き合いが好調と報じられ、買い材料となった。
00981 中芯国際 [SMIC] 10.6% -2.3% -3.5% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。ファーウェイの最新フラッグシップ・スマホ「Mate60 Pro」の発売が報道より半月ほど早まり、買い材料となった。「Mate60 Pro」はSMICの14nmプロセスを採用していると報じられている。
00285 比亜迪電子[BYDエレクトロニック] 9.6% 18.4% 53.9% BYD(01211)傘下のスマートフォン部品・受託製造メーカー。1-6月期の純利益が前年同期の2.4倍となり、買われた。スマホ市場が軟調のなかで好業績を達成し、サプライズとなった。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00020 SenseTime Group Inc 0.7% -18.4% -31.1% AIソフトウェア大手。1-6月期の売上高は市場予想を上回ったが、純損失額は市場予想より拡大した。売り買いが交錯し、小幅高となった。
09618 JDドットコム 0.6% -17.5% 1.4% EC大手。競合のピン多々(PDD)が市場予想を大幅に上回る決算を発表し急騰するなか、同社の上昇率は限定的だった。
09898 微博 -1.7% -13.7% -15.7% ソーシャルメディア・プラットフォーム運営会社。4-6月期の決算内容は市場予想を上回ったが、大手証券会社の目標株価引き下げを嫌気し、売り優勢となった。
09866 蔚来汽車 [ニオ] -4.2% -29.4% 35.5% 新興EVメーカー。4-6月期は粗利益率の低下で純損失額は市場予想より拡大し、売り材料となった。なお、経営陣は7月以降の販売回復により、業績は7-9月期に底を打つ可能性があるとし、楽観的な見通しを示した。
02018 瑞声科技 [AACテクノロジーズ] -5.0% -12.0% -2.6% 音響部品メーカー。1-6月期の純利益が前年同期比で57%減少し、売り材料となった。決算発表後、大手証券会社数社が目標株価を引き下げた。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

8/24-8/30の香港市場では、ハンセン指数が3.6%上昇、ハンセンテック指数は4.7%上昇しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は5.2%上昇しました。

中国当局が株式取引の印紙税を引き下げ、新規株式公開(IPO)のペースを一時的に減速させる方針を明らかにしました。一連の相場支援措置を好感し、中国本土市場が反発し、香港市場も持ち直しました。中国当局による住宅ローン規制の緩和も好材料となりました。また、企業の決算発表が終盤を迎えるなか、主力企業の決算が総じて好調だったことも株高を支えました。

上記を受け、全業種が買い優勢となりました。そのうち、ヘルスケアと不動産、一般消費財の上昇が顕著でした。

ヘルスケアは、代表銘柄の薬明生物技術(02269)と平安健康医療科技(01833)が市場予想を上回る決算を発表し、上昇をけん引しました。バイオヘルス大手の百済神州(06160)や医薬品開発受託大手の無錫薬明康徳(02359)も上昇しました。

不動産は、カントリー・ガーデン(02007)のデフォルト回避に向けた取り組みと中国当局による住宅ローン規制の緩和が好材料となりました。中国当局は8/25に、過去に住宅ローンを組んだことがある人に対し、たとえローンが完済された場合でも次回購入時は一次取得者と見なさないという従来のルールについて、地方政府が撤廃できると発表しました。これにより、一次取得者に該当する人(頭金や住宅ローンの要件が緩くなる)が増え、住宅が取得しやすくなります。

また、8/29は一部の国有銀行が既存の住宅ローン金利を近く引き下げる可能性があると報じられました。中国当局の不動産支援をめぐっては、これまでの措置が必ずしも十分ではないと指摘されてきましたが、ここにて中国当局がついに本腰を上げてきたようです。カントリー・ガーデンを筆頭に、不動産株がそろって反発したほか、建設資材関連株も上昇しました。

一般消費財は、自動車株が上昇を主導しました。中国EV(電気自動車)最大手のBYD(01211)が予想を上回る決算を発表し、10%を超える上昇となりました。新興EVメーカーの小鵬汽車 A(09868)(通称シャオペン)は事業拡大に向けたM&Aが好材料となりました。同社は配車サービス大手の滴滴出行のスマートEV部門を買収し、滴滴出行と戦略的パートナーシップを締結すると発表しました。

一方、新興EVメーカーのニオ インク A(09866)は4-6月期の粗利益率が市場予想以上に低下し、大幅安となりました。値下げ競争の影響で同社は4-6月期に販売が苦戦し、業績悪化につながりました。なお、経営陣は決算発表会で、7月以降の販売回復により、業績は7-9月期に底を打つ可能性があるとし、楽観的な見通しを示しました。

今回のトピックス

今回のトピックスは、「中国景気が悪い?!、主力企業は好業績で株高に」です。

中国企業の決算発表がピークを終えました。今回の決算発表シーズンでは不動産不況で景気懸念が強まりましたが、主力企業(特にテック株)の決算からは、企業業績は堅調であることが示されました。8月末の株高は、まさに企業業績を評価した見直し買いを反映しています(図表4)。

図表4 ハンセンテック指数の終値と予想EPSの推移(年初来)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

景気懸念をよそに、好業績を発表した主力銘柄は、図表5の通りです。これらの銘柄はこれまで業績動向よりも、中国経済に対する懸念でリスクプレミアムが上乗せされ、他の中国株と同様に売られてきました。今回の決算では業績の堅調さが見直し買いのきっかけとなり、バリュエーションの修正につながると思います。また、これからの成長分野でリード役を確立している百度(09888)や比亜迪 (Byd)(01211)(通称BYD)、およびBYDと同様に中国ブランドを世界に広めているPDDホールディングス ADR(PDD)はグロース株としても注目に値すると考えれます。

図表5 主な好業績銘柄の決算ポイント

主力分野 銘柄名 決算コメント
検索エンジン/AI 百度(09888) 4-6月期の売上高と調整後EPSは市場予想を上回った。主力のオンライン広告事業が前年同期比15%増収となり、1-3月期の同6%増収から伸びが加速した。クラウド事業も同11%増収となり、2桁成長を確保した。生成AIの「アーニーボット」について経営陣は、広告事業では検索への活用により収益の改善につながっており、クラウド顧客の利用も引き続き増加していると説明。
なお、8/31の報道によると、中国当局は生成AIサービスを早ければ今週にも承認する見通しだ。生成AI分野で業界をリードしている同社にとって好材料と言えよう。
EV 比亜迪 (Byd)(01211) 4-6月期の売上高と調整後EPSは市場予想を上回った。新エネルギー車の販売好調で売上高は前年同期の2倍になり、粗利益率も19%に上昇した。粗利益率の上昇傾向が続いていることからすると、同社は既にある程度の規模の経済が効く状態になっており、コスト管理力も高まっていることが示唆されている。テスラ(TSLA)のイーロン・マスクCEOが同社を「最も脅威的なライバル」とみる所以であろう。競争激化にもかかわらず、経営陣は今年の販売台数目標(300万台)の達成について自信を持っていると表明した。
EC PDD ホールディングス ADR(PDD) 通称ピン多々。4-6月期の売上高と調整後EPSは市場予想を上回った。特に売上高は前年同期比66%増となり、競争激化のなかでも強い伸びとなった。海外展開の加速で投資がかさんでいたにもかかわらず、純利益も前年同期47%増と好調だった。高い収益を確保しながら事業拡大を進めていることが示された。
阿里巴巴集団控股(09988) 4-6月期の売上高と調整後EPSは市場予想を上回った。主力の中国コマースが前年同期比12%増収に転じたほか、菜鳥(物流部門)は同34%増収、グローバルコマースが同41%増収と好調だった。競争激化のなか、中国コマースが二桁増収に回復したことはサプライズで、同社の底力がうかがえる。
JDドットコム(09618) 4-6月期の売上高と調整後EPSは市場予想を上回った。中国の消費回復と毎年恒例の「6/18」セールの好調が販売を押し上げた。ただ、3月にピン多々などからの価格競争へ対抗するため、100億元規模のキャンペーンを開始したことで、営業利益率は1-3月期よりやや低下した。
スマホ 小米 B(01810) 4-6月期の売上高は4%減と市場予想ほどは落ち込まず、スマホ市場の低迷が深刻だった過去数四半期に比べて減少幅は縮小した。純利益は2倍余り増加し、市場予想を上回った。コスト削減が奏功したほか、高額スマホに注力したことも好業績に寄与した。中国のスマホ市場はまだ最悪期を脱していないかもしれないが、コロナ禍でたまっていた買い替え需要は年後半から来年にかけて増加すると見込まれる。プレミアム市場でシェアを獲得している同社はその恩恵を受けるだろう。
BYDエレクトロ(00285) 1-6月期の売上高と調整後EPSは市場予想を上回った。スマホ市場が軟調のなか、スマホの組み立て事業が予想を上回る増収率となり、好業績を支えた。コスト管理も奏功し、純利益は前年同期の2.4倍となった。なお、同社はアップル(APPL)のサプライヤーであると同時に、間もなく発売されるファーウェイの最新フラッグシップ・スマホ「Mate60 Pro」の主要サプライヤーでもあり、両社の新製品発表の恩恵が期待できよう。

※BloombergをもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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