~中国政府系ファンドが動き出した!その効果は?~

~中国政府系ファンドが動き出した!その効果は?~

投資情報部 李 燕

2023/10/12

10/5-10/11の香港市場は反発しました。米長期金利の反落と中国の財政支援観測が好材料となりました。

今回のトピックスは、「中国政府系ファンドが動き出した!その効果は?」です。

今週の中国株市況

図表1 ハンセン指数とハンセンテック指数(ローソク足)の年初来推移

注:10/11(水)までのチャートです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の年初来推移(2022年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等

ハンセン指数

騰落率上位
銘柄名 騰落率 関連ニュース等
02382 舜宇光学 [サニーオプチカル] 14.6% 大手光学機器メーカー。9月の携帯端末用レンズセットの出荷量が前年同月比17%増(前月比でも3%増)となり、買われた。ファーウェイが2024年のスマホ出荷台数について6,000-7,000万台を目指すと報じられたことも好感された。大手証券会社は投資判断を「買い」に引き上げた。
03690 美団(Meituan) 9.0% 中国フードデリバリー最大手。国慶節連休期間中の観光業の回復と低バリュエーションを理由に、大手証券会社が買い推奨した。
09999 網易 [ネットイース] 8.7% ゲーム大手。国慶節連休期間中に、同社ゲームのダウンロードが増加したと報じられた。5月に発表した人気のパーティーゲーム「Eggy Party」がけん引役となったもよう。
00981 中芯国際 [SMIC] 8.5% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。半導体株が買われた流れの一つ。サムソン電子の7-9月期の決算からは半導体市況の底入れが示唆され、買い材料となった。米国の対中半導体規制に緩和の兆しが出たことも材料視された。米当局は半導体製造装置の対中輸出規制で韓国大手2社を適用から除外すると発表した。
01093 石薬集団 [CSPCファーマシュ-ティカル] 8.1% 医薬品大手。新薬の上市(市販)が承認され、買い材料となった。米長期金利の低下を受け、ヘルスケア株が全般的に買い優勢だったことも上昇幅を押し上げた。
騰落率下位
銘柄名 騰落率 関連ニュース等
00669 創科実業 [テクトロニック・インダストリーズ] -0.3% 海外が主力市場の大手電動工具メーカー。大手証券会社が目標株価を引き下げた。世界マクロ環境(同社は北米の売上高構成比が8割)の不透明感を理由に挙げた。
06690 海爾智家 [ハイアールスマートホーム] -0.4% 大手家電メーカー。地合い好転でテック株が買われた中、家電業に従事している同社はやや売り優勢となった。
01929 周大福珠宝集団[チョウタイフックジュエリー] -0.9% 宝飾類の小売会社。宝飾品関連銘柄が冴えなかった。高級ブランドグループであるLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンの7-9月期売上高の伸び鈍化が材料視された。
00316 東方海外 -4.5% 海上貨物輸送を手掛ける。大手証券会社が目標株価を引き下げた。海運業のピークシーズンの市況が予想を下回っていることを理由に挙げた。
01378 中国宏橋集団 -5.3% アルミニウム製品メーカー。格付け会社のムーディーズが同社の格付け見通しについて「安定」から「ネガティブ」に修正した。短期債務への依存度が高まったことを理由に挙げた。ただ、業界トップの地位や安定した経営を反映し、格付けは据え置いた。

ハンセンテック指数

騰落率上位
銘柄名 騰落率 関連ニュース等
02382 舜宇光学 [サニーオプチカル] 14.6% 大手光学機器メーカー。9月の携帯端末用レンズセットの出荷量が前年同月比17%増(前月比でも3%増)となり、買われた。ファーウェイが2024年のスマホ出荷台数について6,000-7,000万台を目指すと報じられたことも好感された。大手証券会社は投資判断を「買い」に引き上げた。
09698 万国数拠服務 12.0% データセンターを運営。テック株が買われた流れを受けたもの。米長期金利の低下と中国の財政支援検討の報道を受け、米国上場の中国ADRが買われた。同社は他の銘柄よりボラティリティが大きい傾向がある。
00268 金蝶国際軟件 [キングディー・ソフトウエア] 11.4% ソフトウェア会社。会社側が1-9月期のクラウドのサブスクリプションサービスの年間経常収益(ARR)は前年同期比40%増加したと発表し、買い材料となった。
00020 SenseTime Group Inc 11.4% AIソフトウェア大手。テック株が買われた流れを受けたもの。米長期金利の低下と中国の財政支援検討の報道が支援材料となった。同社は他の銘柄よりボラティリティが大きい傾向がある。
09898 微博 9.9% ソーシャルメディア・プラットフォーム運営会社。テック株が買われた流れを受けたもの。米長期金利の低下と中国の財政支援検討の報道を受け、米国上場の中国ADRが買われた。同社は他の銘柄よりボラティリティが大きい傾向がある。
騰落率下位
銘柄名 騰落率 関連ニュース等
09961 携程旅行網 [トリップドットコム゚] 2.6% オンライン旅行サービス大手。国慶節連休期間中の予約状況が好調で買われた。ただ、米長期金利の低下でテック株に買いが集まったなか、上昇率は限定的だった。
06060 衆安在線財産保険 2.5% オンライン保険大手。地合い好転でテック株が買われた中、上昇率は限定的だった。保険業に従事している同社よりも他のテック株が米長期金利の低下によって買われやすいことが背景とみられる。
01797 East Buy Holding Ltd 1.6% 漢字社名は「東方甄選」、オンライン教育会社。地合い好転でテック株が買われた中、上昇率は限定的だった。ネットで偽装品を摘発・撲滅する、ある有名人が同社をターゲットにしていると示し、材料視されたもよう。
06690 海爾智家 [ハイアールスマートホーム] -0.4% 大手家電メーカー。地合い好転でテック株が買われた中、家電業に従事している同社はやや売り優勢となった。
09868 小鵬汽車[シャオペン] -0.9% 新興EVメーカー。同社が汚職に対する社内取り締まりの一環として、サプライチェーン責任者を停職処分にしたと報じられ、売り優勢となった。ただ、地合い好転でテック株が買われた中、下落率は限定的だった。なお、同社の措置は部品調達のコスト改善を図るためのものとみらる。フォルクスワーゲンが同社へ出資する前に行ったデューデリジェンスで、製品には非常に満足しているが、多くの部品のコストが過度に高いと指摘したと報じられている。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。なお、騰落率は過去5日間のものです。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

10/5-10/11の香港市場では、ハンセン指数が4.1%上昇、ハンセンテック指数は5.3%上昇しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は5.0%上昇しました。米長期金利の反落と中国の財政支援観測が好材料となりました。

米長期金利の下落は、FRB(米連邦準備理事会)高官からのハト派発言と中東情勢の緊迫化を受けた米国債買い(紛争時に安全資産として買われやすい)が背景です。

足元の米長期金利の急上昇を受け、FRB高官からは一転してハト派発言が相次ぎました。たとえば、米サンフランシスコ連銀は「金融環境は過去90日間でかなり引き締まったが、その状態が続く場合は、我々が更なる行動を起こす必要性が低下する」と述べ、米ダラス連銀総裁は「(米長期債利回りの上昇で)当局としては、政策を追加で引き締める必要性が低下する可能性がある」との認識を示しました。連銀総裁たちのハト派発言を受け、市場では11月のFOMCでの追加利上げ観測が後退するとともに、「利上げ終了」への期待も高まりました。それを受け、投資家のリスクセンチメントは大きく改善しました。

10/10には、中国当局が新たな刺激策を検討しており、財政赤字の上限突破を容認する可能性があると報じられました。これまで中国当局は大掛かりな財政支援を出し渋っていただけに、事実なら中国株にとってプラス材料となります。

投資家センチメントの好転を受け、香港市場では全業種が買い優勢でした。中でもヘルスケアと情報テクノロジーが上昇をけん引しました。両業種は米長期金利の動向と連動性が比較的高く、長期金利の低下で買戻しが顕著でした。中東情勢の緊迫化を受けた原油高を手掛かりに、エネルギーも反発しました。

今回のトピックス

今回のトピックスは、「中国政府系ファンドが動き出した!その効果は?」です。

10/11(引け後)に、中国政府系ファンドである中央匯金投資が中国4大国有銀行の株式を10/11に買い増したことが明らかになりました。それを受け、香港市場では10/12寄り付きで、中国工商銀行(01398)、中国建設銀行(00939)、中国銀行(03988)、中国農業銀行(01288)がそろって上昇しました。中央匯金投資は今後6カ月にわたり株式購入を続ける計画だと表明しました。今回の動きは、中国当局がついに株価支援に動き出したことを意味します。

中国当局は過去にも中央匯金投資を通じて、相場を買い支えたことがあります(図表4)。Bloombergによると、過去6回に政府系ファンドが買いを実施した際の上海総合指数の動きは、買い後1週間では6回のうち5回が上昇し、平均上昇率は3.4%でした。つまり、短期的に政府系ファンドによる買いは相場を押し上げる効果があると言えそうです。

ただ、その後1カ月間でみた場合は、6回のうち3回が上昇、3回は下落しました。そのうち、下落率が最も大きかったのは2008年の世界金融危機時(15%下落)でした。2008年の買い後、1週間では4.2%上昇しました。したがって、世界金融危機のような時は、たとえ政府が買い支えたとしてもその効果は一時的にとどまる可能性があると言えそうです。

図表4 CSI300指数の終値と予想PER、および政府系ファンドの動きの推移

注:PERは株価収益率で1株当たりの純利益を示します。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

次いで、2015年のチャイナショック時は1カ月間の騰落率では上昇したものの、3カ月間でみた場合は下落していました。当時の株価調整は、世界金融危機時前後のバブル相場という点では、2007-2008年と共通していますが、株価調整要因は世界情勢というより中国独自の要因が強いです。2015年8月に、中国当局が予想外に人民元を大幅に切り下げたことがバブル崩壊につながりました。また、2015年の時は、株価水準が比較的に高かったことも、その後の一段の調整を招いたとみられます。

足元の状況を確認してみると、株価水準(図表4のCSI300指数の予想PER)は過去平均を下回っており、歴史的低水準にあります。その点は、2008年と2015年の状況とも異なると言えそうです。ただし、相場が底を付けた時の株価水準よりは現在の株価水準がやや高いとも言えます。したがって、バリュエーション面で言えることは、下値は限定的と楽観視できる一方、過去の経験からすると、底を付けるまでもう一度調整する可能性もゼロではないとも言えそうです。

総合的にみて、政府系ファンドによる買いは、投資家心理の改善につながり、ある程度(特に短期的に)相場の下支え効果はあると考えられます。他方、相場が本格的に(より中期的に)回復するためには、10/10に報じられたように中国当局が財政出動といったより本格的な景気支援策を打ち出すことで、中国経済や中国企業業績の見通しが改善する必要があるとみられます。

図表5 主要中国株ETF

銘柄名 株価(10/11) 52週高値 52週安値
GXMSCI中国(03040) 25.24香港ドル 32.10香港ドル 20.00香港ドル
iS MSCIチャイナ(02801) 18.86香港ドル 23.98香港ドル 15.29香港ドル
GX高利回り(03110) 19.36香港ドル 24.98香港ドル 17.32香港ドル
CSOP 中国A50 ETF(02822) 12.24香港ドル 15.40香港ドル 11.25香港ドル
iS CSI300(02846) 26.18香港ドル 34.60香港ドル 25.00香港ドル

※BloombergをもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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