日経平均は上昇相場継続!?その理由は?

日経平均は上昇相場継続!?その理由は?

投資情報部 浅井一郎 鈴木英之

2023/10/10

コツンと来たか?

10月第1週(10/2-6)末の日経平均は、前週末比862円95銭安(▲2.7%)と週足ベースで3週続落。10/4(水)には一時30,487円67銭まで下げ、5/18(木)以来の安値水準を付けました。9/15(金)の取引時間中に付けた高値である33,634円31銭からは3,146円64銭(9.4%)下げた計算です。

日経平均が3週続落となったもっとも大きな理由は、米10年国債利回りの上昇とみられます。もともと、9月以降は上昇基調が復活していましたが、9月末4.57%から10/6(金)には4.80%と急ピッチで上昇しました。この週に発表されたISM製造業指数や、JOLTS(雇用動態調査)求人数など、米国で強い経済指標の発表が目立ったことで、政策金利は「より高く上昇し、より長期間高止まる」との懸念が強まりました。

10/6(金)には米金融政策に大きな影響を与える米雇用統計(9月)の発表がありました。非農業部門雇用者数は前月比17万人増との市場予想(Bloombergコンセンサス)に対し、33.6万人増と大きく上振れしました。さらに過去2ヵ月の雇用増も11.9万人上方修正されました。時間当たり賃金は前年同月比4.2%増と、4.3%との市場予想を下回りましたが、総じて強い統計になったと考えられます。

前週、日米株式市場の不透明要因となった、米予算審議を巡る混乱は、前週末につなぎ予算の成立により、政府機関閉鎖は回避されました。しかし、マッカーシー下院議長(共和党)が共和党内からの造反で解任されたため、11月半ば以降の政府機関閉鎖懸念がくすぶり続けることになりました。

ここまでご説明したように、内外の株式市場はほとんど好材料がみられない状況でした。しかし、10月第1週末の米国株(S&P500指数)は結局、前週末比0.5%高と上昇しました。また、日経平均株価も前週30,487円を安値に、10/10(火)は大きく上昇しました。ここまで大幅に反発すると、相場感覚的には「コツンと来た」と考えたいところですが、その見方は正しいのでしょうか。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(9/29~10/6)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(9/29~10/6)

日経平均は上昇相場継続!?その理由は?

先週の日経平均は3週連続の下落となりました。10/4(水)には、今年5月末以来となる31,000円を割り込んで、30,526円まで下落。その後、週後半にかけて持ち直しましたが、この3週間の日経平均の下げ幅は約2,500円に達しており、今後の展開が気になるところではないでしょうか。

そこで日経平均の現状について確認します。まず、日経平均は10/4(水)時点で5週(25日)移動平均線からの乖離率が▲6.13%に達しました(図表9)。経験則では、5週移動平均の乖離率で▲5%超が下落目途となる傾向があるため、買い戻しが入りやすいタイミングと考えられます。実際、週末にかけて買い戻しの動きがみられ、TOPIXは10/6(金)も上昇しました。

図表9 日経平均と5週移動平均乖離率

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

また、図表10は、相場の過熱感を測る指標である、東証プライム市場の騰落レシオ(25日平均)とTOPIXのRSI(14日平均)の推移です。騰落レシオについては、9月初旬以降、過熱圏とされる120%超えで推移していましたが、最近の株価下落で90%台へ低下しており、過熱感の解消がうかがえます。

また、同じく相場の過熱感を測ったTOPIXのRSIは、10/4(水)で27%まで低下しており、こちらについては経験則として売られ過ぎ(30%以下)の水準となっています。これらのテクニカル指標を見る限り、日経平均は一旦、調整目途に達したと考えられます。

図表10   騰落レシオとRSI

  • ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成

では、日経平均が本格的に反発局面に入るか否かについてですが、今後の展開を占う上で考慮しなければならないのが、米国長期金利の動向でしょう。現状で米10年国債利回りは4.8%台へ上昇し、5%の大台到達が視野に入っています。米国長期金利は、政策金利(FFレート誘導目標)について、「より高く、より長く」との見方が、上昇を促しているとの見方があります。

もっとも、長期金利上昇の要因はこれだけに留まりません。金融政策を巡っては、FRBが金融緩和策として大量に購入した米国債などの資産圧縮(QT:量的引き締め)を進めています。また、米国議会に目を向けると、先週、米国史上初めて下院議長が解任され、政治面において不透明感が強まっています。そして、先週末に世界を驚かせたのが、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織であるハマスとイスラエルが戦争状態にはいったことです。地政学リスクが高まったことで原油価格が大きく上昇し、世界的なインフレへの懸念が意識されています。こうした点を考慮すると、米長期金利の上昇局面はまだ続く可能性が高く、世界的な株価の重石になることが想定されるでしょう。

図表11 米10年国債利回りとVIX指数

  • ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成

こう考えると日本株についても、米国金利上昇の影響に備える必要があるでしょう。ただ、米国市場では長期金利の上昇が続いているにも関わらず、株式市場の不安心理を映すと言われているVIX指数(別名「恐怖指数」)の上昇は限定的であり、米国株式市場は比較的に冷静さを保っているようです。日経平均が10/6(金)までの3週間で▲6.6%の下落だったのに対し、米国市場においてS&P500株価指数は▲4.4%の下落に留まっていることを考慮すると、日経平均の下落はやや過剰反応だったと考えられます。

米国長期金利の上昇は、株式市場全体としてリスク回避を促す可能性がある一方、米金利上昇による金融株物色や、円安期待による輸出株物色につながるなど、日本株にとってプラス材料もあります。また、これから国内では決算発表シーズンで企業業績への関心が高まることが想定されます。10/3の日経平均の『ココがPOINT!』「決算発表シーズン前に押さえておきたい!日銀短観の注目ポイントは?」でも指摘していますが、企業の景況感の改善がみられる中、企業業績への期待が相場を支えていく展開が期待されます。

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