決算発表シーズン前に押さえておきたい!日銀短観の注目ポイントは?

決算発表シーズン前に押さえておきたい!日銀短観の注目ポイントは?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/10/03

日経平均は軟調な展開がつづく。2週累計で1,675円の大幅安

9月第4週(9/25-29)末の日経平均は、前週末比544円79銭安(▲1.68%)と週足ベースで続落。9月第3週から累計では1,675円超の大幅安となり、軟調な展開が続きました。高水準な米金利が継続していることや、期末要因、配当落ち、米政府機関閉鎖懸念など複数材料が株式市場の重しとなりました。

9/28(木)は9月末配当実施企業の権利落ち日であり、影響額は224円(Quick推定)でした。また、四半期末のリバランスに伴い、今年度始めからパフォーマンスが好調であったバリュー株への売り圧力も強まりました。9月第4週、TOPIXグロース指数が▲1.2%であったのに対し、TOPIXバリュー指数は▲3.1%と大きく差が開いた形です。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(9/22~29・図表8)では、高配当株として選好されていた海運株や金融株等が、配当落ち後に売られ、複数銘柄がランクインしています。他には、足元の株価が堅調に推移してきた電力株や建機株が売られた格好です。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(9/22~29・図表7)では、ディフェンシブセクターの医薬品から3銘柄がランクイン。2位の第一三共(4568)は、英アストラゼネカと共同開発中の抗がん剤が臨床試験で「改善を示した」と結果を発表したことが好感されました。

10月第1週(10/2-6)の日経平均は、下落スタート。前週末の米国でつなぎ予算が成立し、政府機関の閉鎖懸念が解消されたことに加え、寄り前に発表された日銀短観(9月調査)の結果も堅調であったため、一時は500円超高となる場面もありました。しかし、引けにかけては先物主導で売られ、下げに転じた形です。市場参加者の注目点が、高水準で維持する米金利に移ったと指摘する声が複数聞こえます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(9/22~29)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(9/22~29)

決算発表シーズン前に押さえておきたい!日銀短観の注目ポイントは?

残暑が厳しかった9月が終わり、国内市場は23年度下半期に入りました。そしてこの10月は2月期や3月期決算を中心に、多くの企業が中間期決算の発表を行います。それに先立ち10/2(月)に9月調査の日銀短観(全国企業短期経済予測調査)が発表されました。この統計では、全国約9,100社の企業を対象に、自社の業況や経済環境の現状、先行きについてどうみているのか、あるいは売上や収益、設備投資といった事業計画の実績や予測など、企業活動全般にわたる項目が調査されています。本稿では、日銀短観を通じ、決算発表シーズンに向けた注目ポイントを解説します。

まず、日銀短観でもっとも注目される業況判断DI(景気が「良い」と答えた企業の割合-「悪い」と答えた企業の割合)は、大企業・製造業が+9と2期連続で改善しました。自動車などでは、世界的な半導体不足が概ね解消したことによる生産回復を背景に業況が改善。また、食品などは円安・原材料高の影響を価格転嫁で吸収したことによる収益環境の改善が見られました。一方、大企業・非製造業は+27となり、コロナ禍から経済が立ち直る中、21年3月調査以降、業況の改善傾向が続いています。足元では、国内の人流活性化に加え、訪日外客数の回復に伴い、宿泊・飲食サービスや小売などの業況判断の改善が顕著となりました。

先行きの業況判断DIについては、大企業・製造業が+10と小幅ながら改善が続く一方、大企業・非製造業は+21と現状から悪化が見込まれています。ただし、非製造業の業況判断は、先行きの業況判断DIに対し、次期調査における業況判断DIが上振れする傾向があります。実際、前回の6月調査においても、現状が+23に対し、先行きが+20と悪化が見込まれていたものの、9月調査で+27と大幅な改善となりました。非製造業は、国内経済の先行きについて慎重になる傾向があると見られるため、先行きの悪化見通しについては上振れの可能性があると考えられます。

図表9 日銀短観 業況判断DI

  • ※各種報道をもとにSBI証券が作成

続いて企業の収益計画に注目してみましょう。23年度の経常利益計画については、大企業・製造業が前期比▲5.0%、大企業・非製造業が同▲0.8%と、依然として減益が予想されています。もっとも、過去の傾向を見ると、製造業、非製造業ともに、期初予想に対し、期が進むにつれて、特に下半期にかけて上方修正されてきました。これは、企業の期初計画が保守的になりやすいためであり、今後の上方修正期待につながると考えられます。

特に今下期にかけては、製造業の輸出企業を中心に円安が業績の追い風になることが期待されます。今回の日銀短観で調査されている、企業(全規模・全産業)の23年度為替前提は、米ドル円が135.75円(下半期:135.88円)、ユーロ円は144.62円(下半期:144.66円)と、実勢の為替レートと比較して円高前提になっています。今後、急激な円高が進行しない限り、企業の為替前提が円安方向へ修正されることに伴う業績の上振れが期待できるでしょう。

図表10   大企業(製造業、非製造業)の経常利益予想の変遷

  • ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成



最後に業種別の業況判断DIを見てみましょう。

図表11は各業種のDIの変化を見た分布図です。縦軸は前回(6月調査)の先行きに対して今回(9月調査)の現況がどう変化したか(=『足元の景況感の変化』)、横軸は今回の現況に対する先行きの変化(=『先行きの景況感の変化』)を見ています。

また、図表11は第1から第4象限の4つに区分けしていますが、業種別の分布を見ると、多くの業種は第2象限か、第4象限に集中していることが分かります。第2象限は『足元の景況感の変化』が改善している一方で『先行きの景況感の変化』は悪化しています。つまり、この象限に位置する業種は、実績の業績上振れが期待できるものの、先行きについては保守的な見通しが示される可能性が考えられます。今回の決算発表を前に、予め業績期待で株価が大きく上昇しているようであれば、決算発表後に利益確定売りが出ることも想定されます。もっとも、通期業績など中長期で見た業績改善の方向性が不変ならば、決算発表後の利益確定売りは、その銘柄を新規に買う良いタイミングとなるかもしれません。

一方、第4象限は、『足元の景況感の変化』が悪化しており、今回の決算発表では業績予想に対して実績の下振れが起きる可能性があります。もっとも、『先行きの景況感の変化』は改善しているため、下半期に向けて比較的に強気な計画が示されるかもしれません。ここに位置する業種については、決算発表前に業績への不安で株価が弱含みとなっているならば、押し目買いを行う良いタイミングになることが考えられるでしょう。

第1象限、および第4象限にある業種は、いずれも決算発表前後に株価が下がったときが買いのタイミングといえるのかもしれません。

図表11 業種別の業況判断DI分布

  • ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成

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