~米中首脳会談後、翌年初めまでは株高のジンクス~

~米中首脳会談後、翌年初めまでは株高のジンクス~

投資情報部 李 燕

2023/11/16

11/9-11/15の中国株主要指数は続伸しました。米利上げ終了観測が一段と高あったほか、中国人民銀行による資金注入が好感されました。

今回のトピックスは、「米中首脳会談後、翌年初めまでは株高のジンクス」です。

今週の中国株市況

図表1 主要中国株指数の年初来推移

注:11/8までのチャートです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の年初来推移

注:業種別指数は香港市場のハンセン総合指数のサブ指数です。11/15までのチャートです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 当社内売買代金上位10銘柄の騰落率と関連ニュース(注)

銘柄コード 銘柄名 騰落率 関連ニュース等
NIO 蔚来汽車(ニオ)Inc ADR 0.3% EV関連企業の悪材料を受け、連れ安する場面もあったが、その後は反発した。ニオと同様に高級EVメーカーであるポールスター オートモーティブ(PSNY)は7-9月期決算で損失が市場予想以上に拡大。「世界的な消費需要の弱まりがEVの普及に影響を与えている」とし、通年の納車台数見通しも引き下げた。テスラ(TSLA)は大手証券会社による「ウェイト下げ」の投資判断で急落し、新興EVメーカーが同期間に売られた(テスラはその後は反発。インド進出をめぐる報道が好材料となった)。ニオが11/14以降に反発したのは、米インフレの鈍化で米利上げ終了観測が一段と高まったほか、同業のシャオペン(XPEV)が市場予想を上回る決算を発表したためだ。なお、ニオは11月末に決算を発表する予定。
BABA 阿里巴巴集団(アリババグループ)ADR 2.7% 10月の中国のCPI(消費者物価指数)が予想より鈍化し、経済の需要懸念で売られたが、その後は買い戻された。10月の中国の小売売上高が予想より回復したほか、「独身の日(11/11)」セールイベントの販売増加が買い材料となった。「独身の日」イベントについて同社は昨年と同様、実績値の発表は控えたが、「流通取引総額(GMV)と注文件数、加盟店数は前年より増加した」と発表した。増加の理由について、各社(アリババ含む)が大幅な値下げを実施したためとも指摘されている。一部のアナリストは「独身の日」イベント全体のGMVは1桁前半の伸びにとどまった可能性があると予想した。なお、同社は11/16夕方(アジア時間)に決算を発表する予定。
00700 テンセント(騰訊) 4.6% 決算期待で買われた。11/15引け後に発表予定の7-9月決算について、市場予想を上回る回復が期待できると大手証券会社が予想した。株価のチャートパターンが逆ヘッドアンドショルダーを形成しつつあるとし、コール取引が増加したと報じられた。なお、11/5引け後に発表された決算は、全般的に市場予想を上回る内容となった。中国国内ゲームの増収率は前年同月比で5%増にとどまったが、決済業務が含まれているフィンテック・法人向けサービス部門とオンラン広告部門の増収率はいずれも2桁の伸びとなり、市場予想を上振れした。利益率が予想以上に改善し、純利益も市場予想を上回った。
XPEV シャオペン ADR 8.0% 米国市場でEV銘柄が売られた局面では連れ安したが(ニオのコメント部分を参照)、11/13以降は急反発した。主な要因(時系列)は以下の通りである。1)同社が配車サービス大手・滴滴出行のスマートEV部門に対する買収を完了したと発表;2)主力の「P7」と「G9」が10月にそれぞれのセグメントで販売台数トップになった;3)米インフレの鈍化を受け、米利上げ終了観測が一段と高まった;4)7-9月期決算の内容が市場予想を上回った。そのうち2)について中国現地報道によると、「P7」改良版の「P7i」の販売台数は、10月に25万-35万の中型EVセダン市場において、2位のニオ「ET5T」と3位のテスラ「モデル3」を超えたという。一部では「P7i」がテスラ(モデル3)キラーになる可能性があると指摘されている。4)の7-9月期業績は、売上高が市場予想をわずかに下回ったが、1株当たり利益は-0.44ドルと市場予想の-0.53ドルより良好だった。10-12月期ガイダンスは、売上高と納車台数がともに市場予想を上振れした。
01211 比亜迪 ( Byd ) 1.9% 地合い改善で上昇した。バークシャー・ハサウェイによる保有比率引き下げの影響は、今回も限定的だったとみられる(11/2付レポート「テスラのEV需要低迷懸念をよそに、中国EVメーカーは販売好調」を参照)。なお、同社が2%強出資している河北金力新能源科技(リチウムイオン電池の湿式セパレーターを製造)が来年に香港で新規株式公開(IPO)を実施することを検討していると報じられた。
00941 チャイナモバイル 2.5% 地合い改善でほぼ全業種が買い優勢の中、ディフェンシブ銘柄も上昇した。同社株の株価は当面、200日移動平均を回復できるかどうかが注目される。
PDD PDD ホールディングス ADR 4.4% 続伸し、11/15は終値ベースで年初来高値を更新した。「独身の日」セールイベントでの販売増と海外事業の拡大期待で買われた。「独身の日」イベントについては同社もアリババと同様、実績値の発表は控えたが、多くの項目(たとえば農産物(同社の強み)や国産ブランド製品の取引件数)は前年より大幅に増加したと発表した。東南アジアで事業を展開するEC大手のシー(SE)は11/14の決算発表会で、アリババのLazadaやバイトダンスのTikTokのほか、PDDのTemuと激しい競争に直面していると認めた。PDDは米国をはじめ、東南アジアなどで積極的に展開しており、海外事業が新たな成長をもたらすと期待されている。なお、同社は11月末に決算を発表する予定。
LI リーオート ADR 3.0% 決算発表(11/19)直後は、短期的な材料出尽くしで利益確定売りに押されたが、その後は反発した。7-9月期は納⾞台数が10.5万台に拡⼤し、粗利益率は22%に改善し、好業績となった。4Qの納⾞台数ガイダンスは12.5万-12.8万台で市場予想を上振れした。10月も販売好調が続き、月間ベースで初めて4万台を超えた。同社の⾞と製品特性が近いファーウェイのSUV「AITO M7」が9月に販売開始し、競争懸念を引き起しいるが、今のところそれによる影響は限定的のようだ。同社が11/14に発表した11/6-11/10の販売台数は1万台を超え、新興EVメーカーのうち引き続き首位となった。
02269 薬明生物技術 -0.6% テック株が買われた中、テック株に先行して上昇したヘルスケア関連株は利益確定売りに抑えれた。ただ、下落率は限定的で、同社の株価は上昇トレンドを形成している。
BILI ビリビリ ADR 4.5% 「独身の日」セールイベントでは同社アプリ経由の取引額が前年の3.5倍となり、買われた。若い世代に人気な動画プラットフォームやインフルエンサーによる販促ビデオは引き続き人気を博しているもよう。Eコマース事業の売上高構成比(2022年度)は15%にとどまっているが、成長分野として期待されている。

注:米国上場の中国企業ADRを含めた2023年7月-9月の中国株売買代金上位10銘柄で、売買代金順となります。米国市場と香港市場に同時上場している銘柄については、売買代金を合算の上、銘柄表記は売買代金の多い銘柄となっています。騰落率は11/15時点、過去5日間の株価騰落率です。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

11/9-11/15の中国株主要指数は、ハンセン指数が2.9%上昇、ハンセンテック指数は2.6%上昇しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は4.3%上昇しました。

米利上げ終了観測が一段強まったほか、中国人民銀行による資金注入が好感されました。

中国人民銀行は11/15に中期融資制度を通じて1兆4,500億元を提供し、過去7年近くで最大規模の資金注入を実施しました。景気支援のために銀行システムに流動性を供給したことになり、相場を押し上げました。

地合い改善が続いたことを受け、香港市場ではほぼ全業種が買い優勢となりました。ハンセン指数とハンセンテック指数の構成銘柄のうち、騰落率上位・下位5銘柄は図表4の通りです。

スマートフォン関連銘柄の舜宇光学(02382)やBYDエレクトロ(00285)は、「独身の日」セールイベントでのスマートフォンの販売好調を受け、続伸しました。半導体受託生産(ファウンドリ)大手の華虹半導体(01347)とSMIC(00981)は、市場予想を下回る決算が嫌気され、大幅安となりました。

図表4 ハンセン指数指数とハンセンテック指数構成銘柄の騰落率

ハンセン指数構成銘柄の騰落率上位5銘柄と下位5銘柄

銘柄コード Bloomberg銘柄名 騰落率 企業概要
00669 創科実業 [テクトロニック・インダストリーズ] 10.8% 海外が主力市場の大手電動工具メーカー
00101 恒隆地産 [ハンルン・プロパティーズ] 8.2% 香港の不動産会社
00836 華潤電力 8.2% 大手電力会社
00968 信義光能 [シンイー・ソーラー] 7.9% 太陽光発電ガラスメーカー
01044 恒安国際 [ハンアン・インターナショナル] 7.7% 衛生用品メーカー
銘柄コード Bloomberg銘柄名 騰落率 企業概要
00027 銀河娯楽 [ギャラクシー・エンターテインメント] -3.7% カジノ大手
02020 安踏体育用品 [アンタ・スポーツ] -3.8% スポーツ用品大手
02331 李寧 [リー・ニン] -4.6% 中国国産ブランドのスポーツウエア大手
06098 CG SERVICES -4.8% 不動産大手カントリーガーデン(02007)傘下の不動産サービス会社
00981 中芯国際 [SMIC] -6.5% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手

ハンセンテック指数構成銘柄の騰落率上位5銘柄と下位5銘柄

銘柄コード Bloomberg銘柄名 騰落率 企業概要
02382 舜宇光学 [サニーオプチカル] 7.4% 大手光学機器メーカー
00285 比亜迪電子 [BYDエレクトロニック] 6.6% BYD(01211)傘下のスマートフォン部品・受託製造メーカー
02015 理想汽車[リーオート] 6.5% 新興EVメーカー
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] 6.3% パソコン(PC)大手
09961 携程旅行網 [トリップドットコム゚] 6.3% オンライン旅行サービス大手
銘柄コード Bloomberg銘柄名 騰落率 企業概要
09866 蔚来汽車 [ニオ] -1.6% 新興EVメーカー
09898 微博 -2.9% ソーシャルメディア・プラットフォーム運営会社
01347 華虹半導体 [フアホン・セミコンダクター] -6.0% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手
00981 中芯国際 [SMIC] -6.5% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手
00772 閲文集団(China Literature) -7.0% オンライン文学プラットフォームを運営

注:騰落率は11/15時点、過去5日間の株価騰落率です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

今回のトピックス

今回のトピックスは、「米中首脳会談後、翌年初めまでは株高のジンクス」です。

米中首脳会談が約1年ぶりに実施されました。今回の米中首脳会談では両首脳とも歩み寄る姿勢を示しています。

11/16(アジア時間早朝)に行った対面会談で、バイデン米大統領は「我々は競争が争いに発展しないようにしなければならない。責任を持って管理する必要がある」と発言し、習近平国家主席は「両国のような大国にとって、互いに背を向けるという選択肢はない。一方が他方を変えることは非現実的であり、対立や衝突は双方にとって耐え難い結果をもたらす」と述べました。

2018年に米中貿易摩擦が勃発してから、米中首脳会談は合わせて3回実施されました。具体的には、2018年12月1日と2022年11月14日、および今回の2023年11月16日です。

この3回の米中首脳会談には、共通点があります。それはつまり、会談前までは米中関係悪化の期間が長く続き、もはや関係改善はほぼ不可能と示されかけた際に、両国が少しずつ歩み寄る姿勢を示し、最終的には首脳会談が実現されたことです。いずれの場合も、両国が自国の事情や世界経済情勢を踏まえて、極度な関係悪化を回避する必要性があると判断したことで、首脳会談の実現につながったとみられます。

2018年と2022年の米中首脳会談後、MSCI中国指数の動きを確認してみると(図表5)、いずれも翌年初めまでは株価が回復しました。

図表5 MSCI中国指数の終値と予想PER(株価収益率)の推移(2018年以降)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

ただ、2018年は年末まで一旦調整(約1割下落)を経て、翌年1月初めに反発しました。当時は中国だけでなく、米中貿易摩擦による影響で米国経済および世界経済の見通しも悪化し、世界同時株安の状況(S&P500指数も同時期に1割下落
)でした。2022年の場合は12月中旬から年末にかけて小幅に調整後(S&P500指数も同様)、翌年初に反発しました。クリスマス休暇の影響で12月下旬は市場参加者が少ないことが影響したかもしれません。

なお、過去2回の米中首脳会談時と比較した際、もう一つの共通点があります。それは、中国株が歴史的に割安な水準まで売られたことです。バリュエーション面での割安さも、2018年と2022年の米中首脳会談後の反発につながったとみられます。

米中対立はもはや「ニューノーマル」となっていますが、米中関係が極度に悪化すれば世界経済に影響を及ぼすため、株式市場にとって悪材料です。他方、2018年や2022年と同様に米中首脳会談を経て、その後両国の関係が改善されれば(短期だとしても)、株式市場にとってプラス材料となり得ます。2018年末のようなボラティリティ(株価変動)は排除できませんが、バリュエーション面の割安さからすると、「米中首脳会談後、翌年初めまでは株高」のジンクスは今回も成立するかもしれません。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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