~底値圏にある中国株!?、2024年の投資視点は~

~底値圏にある中国株!?、2024年の投資視点は~

投資情報部 李 燕

2023/12/14

12/7-12/13の中国株主要指数はまちまちでした。

今回のトピックスは、「底値圏にある中国株!?、2024年の投資視点は」です。

今週の中国株市況

図表1 主要中国株指数の年初来推移

注:12/13までのチャートです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の年初来推移

注:業種別指数は香港市場のハンセン総合指数のサブ指数です。12/13までのチャートです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 当社内売買代金上位10銘柄の騰落率と関連ニュース(注)

銘柄コード 銘柄名 騰落率 関連ニュース等
NIO 蔚来汽車(ニオ)Inc ADR -4.1% EV関連銘柄が軟調だった。主な要因は、以下の3つである。1)業界の競合激化と販売鈍化に対する懸念:12月に入り、多くの自動車メーカーが値下げキャンペーンを実施していることが明らかになった。中国の自動車業界団体は11月の販売動向を発表した際、各社が年末の追い込みで値下げを実施しているが、12月の販売を大幅に押し上げる可能性は高くないだろうとの見方を示した。同団体のデータによると、11月の中国の新エネルギー車販売台数は前年同月比26%増、前月比2.4%増だった。11月の輸出台数は前年同月比1.6%増だったが、前月比では21.8%減少した。2)2024年の景気支援策に対する期待が後退し、3)格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス(以下、ムーディーズ)による中国の国有銀行8行の格付け見通し引き下げで、中国株売りの動きが続いた。2)と3)の詳細については、本文をご参照されたい。同社については、追加の人員削減報道も嫌気された。同社はコスト削減と効率向上を図るため、人員削減や非生産部門のスピンオフ計画を発表していた。ただ、当初の10%人員削減計画に対し、同社が追加削減を検討していると報じられた。記事では「一部の部署ではレイオフが従来の20%から30%に拡大される可能性がある」とした。同社の広報担当者はさらなる人員削減計画を否定し、同社は引き続き「機動的に調整」すると述べた。
BABA 阿里巴巴集団(アリババグループ)ADR 0.0% 11月中旬以降、クラウド部門のスピンオフ上場中止や競合PDDホールディングスの好業績で急落したが、足元では株価がやや下げ止まる気配がみられている。悪材料は株価に十分織り込んでいるとみる一部の投資家が買いを入れたもよう。機関投資家の売買動向からは、一部の大手ファンドがポジションを追加したことが明らかになった。
00700 テンセント(騰訊) -1.5% 同社の大株主である南アフリカ共和国の大手インターネット企業Naspers(子会社のProsusを通じて出資している)が12/7に、同社株を追加売却したことが明らかになった。売却後、Prosusの保有株比率は24.99%となった。なお、ProsusのCEOは7月中旬に、テンセントへの出資比率を毎年2~3%ポイントずつ減らし、その結果2023年末には24~25%まで低下するだろうとコメントしていた。同時に、テンセントのビジネスと中国のインターネット消費分野に対する自信は変わらず、テンセントへの長期投資意向も変わらないと示した。そのような経緯に加え、テンセントが自社株買いを続けていることもあり、テンセントの株価下落率は限定的だった。
XPEV シャオペン ADR -7.9% EV関連銘柄が軟調だった。主な要因は、ニオのコメン部分をご参照されたい。同社については、値下げの実施も売りを誘った。同社は12/8-12/17の間、一部車種に対して値下げキャンペーンを実施すると発表した。年末にかけての値下げは、年間販売目標の達成に向けた措置とみられるが、業界の需要鈍化と競合激化懸念につながっている。
01211 比亜迪 ( Byd ) -4.6% EV関連銘柄が軟調だった。主な要因は、ニオのコメン部分をご参照されたい。同社については、12月に値下げを実施したことも売りを誘った。年末にかけての値下げは、年間販売目標の達成に向けた措置とみられるが、業界の需要鈍化と競合激化懸念につながっている。
00941 チャイナモバイル -1.5% 格付け会社ムーディーズが中国の国有銀行8行の格付け見通しを引き下げ、国有企業が売られた。
PDD PDD ホールディングス ADR 3.1% 利益確定売りが一巡したのか、逆行高となった。同社の海外版ECサイト「Temu」について、調査会社Apptopiaのデータによると、アクティブユーザーの1日平均利用時間は10月に22分に達し、Amazonの2倍となった。7-9月の場合は、「Temu」が18分、Amazonは10分、アリババの海外版ECサイトは11分だったという。そのうち、「Temu」の場合は若者の利用時間が19分だったという。「Temu」の利用者は若者が圧倒的に多いことが示唆された。低価格に加え、ゲーム感覚の買い物体験(たとえば、ルーレットでクーポンを獲得するなど)が若者に人気な理由として挙げられている。なお、12/5にAmazonは20ドル以下の衣料品販売手数料を来年1/15から引き下げると発表した。格安のファッション通販サイト「Shein」(非公式で米国上場を申請済、2024年に上場する可能性がある)や「Temu」を意識したものと指摘されている。「Shein」や「Temu」が米国市場で存在感を増してきたことを示唆する。両社ともAmazonに対抗するには程遠いが、特定の低価格品市場では一定のシェアを獲得する可能性が高いとみられる。別の調査会社Earnest analyticsのデータによると、米国のディスカウントストア市場における「Temu」のシェアは11月に17%に達した。業界大手のDollar General(シェア43%)やDollar Tree(同28%)を大きく下回るものの、あらゆるものが5ドル以下のFive Below(同8%)を既に超えたという。
LI リーオート ADR -3.8% EV関連銘柄が軟調だった。主な要因は、ニオのコメン部分をご参照されたい。他のEVメーカーに比べて同社株の下落率がやや低かったのは、同社がすでに年間販売目標を達成しているためと思われる。11月までの販売実績に基づけば、同社の目的達成率は108%となっており、他社を大きく上回る。
02269 薬明生物技術 -8.8% 続落した。予想外の業績見通し下方修正を嫌気した売りが続いた。同社は12/5に発表した通り、12/7から自社株買いを実施した。なお、業績見通しの下方修正は同社に限らず、世界の同業他社も行っていると指摘された。同社独自の要因というより業界見通しの急速な悪化を反映している。大手証券会社は目標株価を引き下げながらも、足元の下落は行き過ぎで、中長期的にみて現在の下落は買いチャンスであろうとの見方を示した。機関投資家の売買動向を確認してみると、売り買いが交錯した。
BILI ビリビリ ADR 4.0% RSIが短期的売られ過ぎの30%に近づいた後反発し、緩やかながら上昇が続いた。大手証券会社はモバイルゲームの売上高は減少したが、広告や付加価値サービスは堅調だと指摘し、2024年は効率化とコスト最適化により損益分岐点の達成が見込まれると予想した。

注:米国上場の中国企業ADRを含めた2023年7月-9月の中国株売買代金上位10銘柄で、売買代金順となります。米国市場と香港市場に同時上場している銘柄については、売買代金を合算の上、銘柄表記は売買代金の多い銘柄となっています。騰落率は12/13時点、過去5日間の株価騰落率です。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

12/7-12/13の中国株主要指数は、ハンセン指数が1.4%下落、ハンセンテック指数は1.6%下落しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は0.3%上昇しました。

ハンセン指数とハンセンテック指数が続落した要因は、主に以下の2つです。

1)2024年の景気支援策に対する期待が後退

12/11-12/12に開催された中国経済工作会議では、2024年の政策運営について最先端技術による産業革新を推進することを最優先課題に挙げました。中長期的な発展方向に沿った政策方針ですが、喫緊の課題や成長鈍化への対応措置として期待されている大規模な景気支援については何らかの示唆もありませんでした。

2)格付け会社ムーディーズが中国の国有銀行8行の格付け見通しを引き下げ

ムーディーズ・インベスターズ・サービス(以下、ムーディーズ)は12/5に中国の格付け見通しを引き下げ後、翌12/6に中国の国有銀行8行の格付け見通しも引き下げました。ムーディーズの発表資料では、中国政府の信用格付け見通しの引き下げが主な原因だと説明しました。

香港上場の4大国有銀行の株価動向を確認してみると、いずれも小動きとなり、ムーディーズの格付け見通し引き下げによる影響は限定的でした。銀行株は下落傾向が続いていたため、ある程度の悪材料は株価に織り込まれていたためと考えられます。たとえば、4大国有銀行のPER(株価収益率)は3-5倍で、PBR(株価純資産倍率)は0.4-0.5倍になっています。この水準の割安さからすると、もし中国当局が政策を転換し、不動産市場や経済全体の見通しが改善されれば、銀行株は反転のポテンシャルを持っていると言えます。他方、オールドエコノミの代表格である銀行株は、もはや中国経済成長の恩恵を最も受ける業種でなくなっているため、投資家の関心は低いと想定されます。中長期的にみると、ハイテク関連などニューエコノミー群が引き続き、注目されると思います。

株式市場全体に話を戻しますと、ムーディーズによる中国政府、および国有銀行8行に対する格付け見通しの引き下げは、パニック売りにはつながりませんでしたが、中国株に対する海外投資家のセンチメントを一層悪化させました。2024年の景気支援策に対する期待が後退したこととも相まって、中国株のポジションを減らす動きにつながりました。

他方、図表1を確認してみると、中国のテック株で構成されているハンセンテック指数や、中国企業ADRで構成されているナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数は下げ止まる気配を示しています。主力株で時価総額が大きいアリババ(米国上場ADR:BABA、香港上場株:09988)に下げ止まりの気配が示されたほか、ハンセンテック指数ではスマートフォン関連銘柄の舜宇光学(02382)小米 B(01810)、ナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数ではゲーム大手の網易(ネットイーズ) ADR(NTES)やオンライン旅行大手のトリップドットコム グループ ADR(TCOM)が上昇したためです(図表4)。 

一方、中国国産ブランドのスポーツウエア大手リーニン(李寧 )(02331)は急落しました。同社が22億香港ドル(約2.8億ドル)を投じ、香港の不動産物件を購入すると発表し、売りを誘いました。本業の業績が芳しくない中、本業以外での大規模投資は理にかなわないとし、大手証券会社が目標株価を大幅に引き下げました。同社は、香港での不動産物件購入は海外展開のためだと改めて説明するとともに、最大30億香港ドル規模の自社株買い計画を発表しました。それを受け、株価の下落は一旦収まりましたが、反発力は限定的でした。

図表4 主要指数の構成銘柄の騰落率

注:騰落率は12/13時点、過去5日間の株価騰落率です。ナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数の主要構成銘柄は、11月末を基準に時価総額ベースで上位10銘柄となっております。中国企業ADRの代表銘柄の一つであるPDDホールディングスADR(PDD)は、現時点で同指数の構成銘柄には含まれておりません。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

今回のトピックス

今回のトピックスは、「底値圏にある中国株!?、2024年の投資視点は」です。

中国株の代表的な指数であるMSCI中国指数は、年初から(12/13まで)14%下落し、このままですと3年連続の下落となります。同指数がこれまで3年連続で下落したのは、過去1回のみで、2000年-2002年に当たります(図表4)。その後、2003年は急反発しました。

図表5 MSCI中国指数の年間騰落率(1992年以降)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

2003年の大幅反発は、外部環境の改善(世界株式市場が回復)もさることながら、3年連続の下落を経て株価水準が大幅に低下したことも寄与したとみられます(図表6)。足元の株価水準を確認してみると、株価収益率(PER)は11倍で、過去の最も低い水準(約9倍)を上回っているものの、3年連続で下落した2002年の12倍を下回っています。株価純資産倍率(PBR)は2000年以降で最も低い水準の1.1倍となっています。したがって、バリュエーション面でみた場合、さらに大幅に下落するより、2024年は反発を試す可能性がありそうです。

図表6 MSCI中国指数の株価収益率(PER)と株価純資産倍(PBR)(1992年以降、年次データ)

注:2023年12月は、12/13時点のデータです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

ただ、大幅反発のきっかけとなるトリガーを考える際、足元ではやや材料難と言わざるを得ない状況です。たとえば、12/11-12/12に開催された中国経済工作会議で示した2024年の政策運営方針は、引き続き、最先端技術による産業革新を推進することを最優先課題に挙げました。多くの投資家が大規模な景気支援を期待しているだけに、今回の中国経済工作会議は期待外れだったと指摘する声もあります。他方、中国当局が2024年3月の全国人民代表大会(全人代)で予想外の方向転換を示した際は、大幅な株価の見直しにつながる可能性があります。

企業業績については、主力企業の業績は回復しているものの、全体的には力強さに欠けている状況です。不動産や不動産関連企業が足を引っ張っています。したがって、中国当局が思い切って大幅な支援を実施しない限り、2024年の中国株は一部の業種や個別銘柄に投資チャンスがありそうです。あるいは、他の主要国の株式市場がもたつき、相対的に中国株の投資妙味(リスクリターンのトレードオフ観点から)が増してきた際は、中国株に対する見直しにつながる可能性もあります。

足元の状況を考えると、マクロ要因よりも業界サイクルを反映し、2024年は業種別ではスマートフォンやパソコンの回復が期待できそうです。両業種はコロナ特需の反動減と在庫の積み上がりに苦しんできましたが、2023年7-9月期の決算内容からすると、反動減の影響は低下し、在庫レベルも健全な水準まで戻りつつあります。直近1カ月に目標株価が上昇修正された中国株を確認してみると、スマートフォンやパソコン関連銘柄が目立ちました(図表7)。

個別銘柄では業績堅調なEコマース大手のPDDホールディングス(PDD)や携程集団(09961)、網易(ネットイーズ) ADR(NTES)の目標株価の上方修正が目立ちました。PDDホールディングスは海外での事業展開に対する期待も反映されていると思われます(中国株式One Pagerの「ピン多多 ADR」をご参照ください)。

図表7 目標株価上方修正銘柄(注)

銘柄コード Bloomberg銘柄名 目標株価修正率 主な関連分野
PDD PDDホールディングス 34.0 Eコマース
09961 携程旅行網[トリップドットコムグループ] 6.8 オンライン旅行サービス
NTES 網易 6.3 ゲーム
02382 舜宇光学科技(集団)[サニーオプチカル・テクノロジー] 3.3 スマートフォン部品
01810 小米集団[シャオミ] 2.1 スマートフォン
00941 中国移動 [チャイナモバイル] 1.7 通信キャリア
00981 中芯国際集成電路製造 [SMIC] 1.3 半導体
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] 1.0 パソコン
03692 HANSOH PHARMACEUTICAL GROUP 1.0 医薬品
00669 創科実業[テクトロニック・インダストリーズ] 0.8 電動工具

注:ハンセン指数とハンセンテック指数、およびナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数の構成銘柄と中国企業ADRの代表銘柄でありながら指数構成銘柄になっていないPDDホールディングス(PDD)を加えた銘柄のうち、直近1カ月で目標株価が上方修正された上位10銘柄です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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