~中国当局の出動で株価反発、持続性と「反発力の高い」銘柄は?~

~中国当局の出動で株価反発、持続性と「反発力の高い」銘柄は?~

投資情報部 李 燕

2024/01/26

1/19-1/25の中国株主要指数は反発しました。株安を受け、中国当局が動き出したためです。

今回のトピックスは、「中国当局の出動で株価反発、持続性と『反発力の高い』銘柄は?」です。

今週の中国株市況

図表1 主要中国株指数の推移(2023年以降)

注:2024/1/25までのチャートです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2023年以降)

注:業種別指数は香港市場のハンセン総合指数のサブ指数です。2024/1/25までのチャートです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 当社内売買代金上位10銘柄の騰落率と関連ニュース(注)

銘柄コード 銘柄名 騰落率 関連ニュース等
NIO 蔚来汽車(ニオ)Inc ADR -3.8% EV関連銘柄が逆行安となった。新興EVメーカー・シャオペン(XPEV)の値下げによる競争激化懸念とテスラ(TSLA)の軟調な決算が重石となった。世界主要EVメーカーの中で最も早く決算を発表したテスラは、2024年は販売が鈍化する見通しだとし、株価が急落しました。テスラが初めて年間納車台数ガイダンスを示さなかったことも、EV需要軟調懸念を増幅させました。
00700 テンセント(騰訊) 4.8% 本文の中国株反発要因の3)をご参照ください。
BABA 阿里巴巴集団(アリババグループ)ADR 8.5% 本文の中国株反発要因の2)をご参照ください。
01211 比亜迪 ( Byd ) 1.0% 新興EVメーカーの逆行安が目立つ中、小幅ながら上昇した。海外市場での新車投入や大手証券会社の買い推奨が株価を下支えした。
PDD PDD ホールディングス ADR 1.7% 特段材料はなく、中国株のセンチメント改善を受けて反発した。上昇率は自社株買いを実施したアリババより低いが、過去のように「アリババ買い・PDD売り」の展開にはならなかった。
XPEV シャオペン ADR -8.3% 同社が1/24-1/29の間で一部車種に対し、値下げを実施すると発表し、売り材料となった。テスラの軟調な決算も売りを誘った(詳細はニオのコメント部分を参照されたい)。
BILI ビリビリ ADR -0.6% 中国株のセンチメント改善で買われる場面もあったが、大手証券会社の目標株価引き下げが重しとなった。
02269 薬明生物技術 3.1% 中国株のセンチメント改善で反発し、株価は節目の30香港ドルを回復した。
00941 チャイナモバイル 4.0% 国有企業が買われた。中国当局は国有企業の経営幹部の評価項目に、上場企業の時価総額に関する管理を取り入れる方針を示した。国有企業の自社株買いや増配を奨励する意向も示した。
175 吉利汽車 1.5% 中国株のセンチメント改善を受け、小幅高となった。

注:米国上場の中国企業ADRを含めた2023年10月-12月の中国株売買代金上位10銘柄で、売買代金順となります。米国市場と香港市場に同時上場している銘柄については、売買代金を合算の上、銘柄表記は売買代金の多い銘柄となっています。騰落率は1/25時点、過去5日間の株価騰落率です。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

1/19-1/25の中国株主要指数は、ハンセン指数が5.3%上昇、ハンセンテック指数は4.2%上昇しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は3.7%上昇しました。

主要株価指数がそろって反発したのは、主に以下3つの要因によるものです。

1)中国当局がついに株式対策へ

中国当局が予想外に株式対策に動き出し、株価反発につながりました。詳細の関連措置は、図表4の通りです。

図表4 関連措置(報道含む)

※Bloombergおよび各種報道をもとにSBI証券が作成。

2)アリババの経営陣による株式取得

アリババ(BABA)(香港上場株は、09988)の創業者・馬雲氏と同社会長の蔡崇信氏が株式取得を実施したことも、アリババだけでなく中国株のセンチメント改善につながりました。報道によると、馬氏は2023年10-12月に約5,000万ドル相当のアリババの香港上場株を購入し、蔡氏は同時期に約1億5,000万ドル相当の米国上場ADRを取得しました。会社側は報道に対して、事実だとコメントしました。

3)ゲーム規制の強化が緩む可能性

ロイター通信は1/23に、「中国規制当局、ビデオゲーム規則草案をウェブサイトから削除」と報じました。先月に提案された同規制草案は、ゲーム関連株の急落を招き、中国株に対するセンチメントにも悪影響を与えました。中国政府公式サイトから同規制草案が削除されたことで、規制をめぐる緩和期待につながりました。なお、同規制草案のパブリックコメントの期限日が1/22でした。

今後の見通しについて中国現地の有力紙は、ゲーム業界に長らくかかわってきた識者の見方を紹介しました。同氏は「オンラインゲームに関する管理措置は依然として導入されるかもしれないが、業界の意見と提案を間違いなく考慮し、より柔軟的でかつ幅を持たせる内容になるだろう」との見方を示しました。なお、国家新聞出版署は1/25夜に、1月は国内オンラインゲームを115本認可したと発表しました。昨年12月の105本に続いて、100本を超える認可となりました。

上記3つのうち、1)の方がより重要だと考えられます。というのは、中国株安が続いた要因は、軟調な景気見通しもさることながら、中国当局が景気鈍化や株安を許容する姿勢を示してきたためです。今回、中国当局が予想外に株式対策に動き出したことで、米国上場の中国株ADRの空売り規模は1/23に、1/23を基準とした過去30日間で15%減少したと報じられています。中国当局の対応を受け、空売り筋による買い戻し(ショートカバー)が入ったとみられます。

なお、中国株主要指数の構成銘柄の騰落率は、図表5の通りです。

ハンセン指数構成銘柄の場合は、時価総額の大きい石油・天然ガス大手のペトロチャイナ(00857)CNOOC(00883)が急伸し、指数を押し上げました。WTI原油先物価格が約2カ月ぶりの高値を付け、買いを誘いました。WTI原油先物価格は、米国在庫の減少と中国の景気刺激期待で上昇しました。中国当局が国有企業の経営幹部の評価項目に、上場企業の時価総額に関する管理を取り入れる方針を示したことも、石油メジャーの株価を押し上げました。

図表5 主要指数の構成銘柄の騰落率

注:騰落率は1/25時点、過去5日間の株価騰落率です。ナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数の主要構成銘柄は、2023年12月末を基準に時価総額ベースで上位10銘柄となっております。中国企業ADRの代表銘柄の一つであるPDDホールディングスADR(PDD)は、現時点で同指数の構成銘柄には含まれておりません。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

今回のトピックス

今回のトピックスは、「中国当局の出動で株価反発、持続性と「反発力の高い」銘柄は?」です。

■反発の持続性は?

「今週の中国株市況」部分で取り上げましたように、中国当局はついに株式対策へ動き出し(図表4)、主要指数や主力銘柄は急反発しました。今回の反発を受け、株式市場で大きく議論されているのは、「反発の持続性」です。それについて、今のところ海外投資家は慎重な見方を取っています。主な理由として挙げられているのが、これまでの対策では不十分かもしれないということです。

確かに図表4を確認してみると、預金準備率(RRR)の引き下げや商業用不動産市場への支援、株式市場の下支え”検討”はある程度のインパクトはあるものの、足元の中国経済見通しや中国株に対する悲観ムードを考えると、もの足りなさを感じさせると言わざるを得ません。したがって、中国当局のこれまでの措置は空売り筋の退治や下値リスク回避の抑制につながるかもしれませんが、株価反発を持続させるためには一段と強力な措置が必要かもしれません。ただ、中国当局が立て続けに施策を発表したことからすると、当局は株安を注目しており、一段の支援措置を講ずる可能性も高いと考えられます。その兆候が一段と鮮明になれば、反発は続く可能性があります。

■「反発力の高い」銘柄は?

中国当局が株式対策に動き出した後、主要指数構成銘柄(※)の騰落率上位銘柄を確認してみると、図表6の通りです。
(※ハンセン指数とハンセンテック指数の構成銘柄のうち、1/25時点で時価総額が2,000億ドル以上の銘柄)

図表6 ハンセン指数とハンセンテック指数構成銘柄の騰落率(1/23--1/25)上位15位

銘柄コード Bloomberg銘柄名 騰落率 主力事業 不動産市場との関連があるかないか 国有企業か否か ネットやゲーム関連か否か
01109 華潤置地 [チャイナ・リソーシズランド] 19% 不動産 ×
09999 網易 17% ゲーム × ×
02318 中国平安保険(集団)[ピンアン・インシュアランス] 16% 保険 × ×
00857 中国石油天然気 [ペトロチャイナ] 16% 石油・天然ガス × ×
03968 招商銀行 14% 銀行 × ×
00762 中国聯通 [チャイナ・ユニコム] 14% 通信キャリア × ×
09618 JDドットコム 13% EC × ×
00386 中国石油化工 [シノペック] 13% 石油・天然ガス × ×
02628 中国人寿保険[チャイナ・ライフ・インシュアランス]  12% 保険 ×
09988 アリババグループ・ホールディング 12% EC × ×
09888 百度[バイドゥ] 12% 検索エンジン・AI × ×
02899 紫金鉱業集団[ズージン・マイニング・ク 12% 銅・金 ×
00700 騰訊控股[テンセント・ホールディングス] 11% ゲーム × ×
01088 中国神華能源 [チャイナ・シェンファ・エナシ 11% 石炭 × ×
00388 香港取引所 11% 証券取引所 × × ×

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

全般的に、不動産関連銘柄や国有企業、およびネットやゲーム関連銘柄が大きく反発しました。

不動産関連銘柄が買われたのは、商業用不動産市場への支援が材料視されただけでなく、中国当局が住宅市場への支援も打ち出す可能性があると見込まれたためです。住宅市場への一段の支援(時期や程度)に関しては、3月初めに開催予定の全国人民代表大会で何らかのシグナルが出る可能性もありますが、現時点では不透明感も残っています。一部の機関投資家は不動産市場の底打ちを見込んでポジションを構築している(※)ようですが、一般の個人投資家が投資するにはややリスクが高いと言えるかもしれません。

(※1/11付のBloomberg記事「中国不動産セクターは底打ちか、有力ファンドマネジャーが好機見込む」をご参照ください)

国有企業の反発は、中国当局が国有企業の経営幹部の評価項目に、上場企業の時価総額に関する管理を取り入れる方針を示したためです。大手証券会社は同措置を理由に、「中国国有企業の黄金時代の到来」を予想しています。今回の中国当局の措置はいわば国有企業の経営陣に対し、市場の評価を意識するよう要請したものと言えます。これは、東京証券取引所がPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業に対して改善策を要請したことと似ていると言えそうです。中国当局の場合は、国有企業に対する影響力がはるかに大きいことを考えると、多くの国有企業は時価総額や株価を意識した経営の実現に向けて取り組み、中国当局の要請に応じて自社株買いや増配などを実施する可能性がありそうです。したがって、国有企業の株高はしばらく続くかもしれません。

ネットやゲーム関連銘柄の反発は、中国当局がついに株式対策に動き出したことに加えて、アリババの自社株買いやゲーム業界への規制に関する緩和観測も買いを誘いました。国有企業より海外投資家に人気が高いこれらの民間企業は、株価下落でそのバリュエーションは大幅に低下し、もはやグロース株というよりバリュー株になっています。中国当局が本格的に景気支援策へ動き出せば、これらの主力中国株はバリュエーションの修正が期待できるかもしれません。

上記のいずれにも該当しない香港証券取引所(00388)が買われたのは、中国当局の株式対策を受け、出来高が急増したためです。中国株式に対する見直しや株価の先高感が続けば、香港証券取引所への恩恵は続くとみられます。

図表7 図表6の銘柄のバリュエーション(1/25時点)

注:PERは株価収益率、PBRは株価純資産倍率です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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