日経平均4万円は通過点!?そのカギを握るのは?

日経平均4万円は通過点!?そのカギを握るのは?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/01/23

日経平均、大躍進!33年11ヵ月ぶりの高値を更新

1月第3週(1/15-19)の日経平均は、前週末比386円16銭高(+1.09%)と週足ベースで続伸。週初の1/15(月)には一時36,000円台を90年2月以来に突破しました。過去の累積売買高が少ない真空地帯に突入したものの、その後は36,000円が上値抵抗ラインとなり利益確定売りが発生。さらに、中国本土の株式市場で日経平均連動型のETFが2日連続で売買停止となり、東京株式市場の過熱感解消へと繋がったもようです。

風向きが変わるきっかけとなったのが、日本時間1/18(木)に実施された世界最大の半導体ファウンドリTSMC(TSM)の決算発表でした。すでに1/10(水)に発表されていた10‐12月期の売上高は、AI関連企業からの旺盛な需要により市場予想を上振れて着地。1/18(木)の会見では、24.12月期はAI需要を背景に、前年比20%前半から半ばの増収と、過去最高更新の見通しを示しました。TSMC(TSM)が堅調な業績見通しを示したことで、同社の大口顧客である半導体のエヌビディア(NVDA)などの生成AI関連株が上昇。東京市場での半導体関連株にも買いが入った格好です。1/22(月)には終値ベースでも36,000円の大台を突破。日米両市場で、主力グロース株への物色が強まった期間でした。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(1/12~19.図表7)では、首位のアドバンテスト(6857)を筆頭に半導体関連銘柄が過半数を占めました。他には、大手海運の川崎汽船 (9107)と商船三井 (9104)がランクイン。同社等は親イラン武装組織フーシ派による襲撃で、紅海での通航を停止中です。迂回による運賃上昇期待から買いが入りました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(1/12~19.図表8)のワーストは、『メイプルストーリー』等を展開するゲーム大手のネクソン(3659)です。年初、売上高の9割を占める韓国で、公正取引委員会から罰金116億ウォン(約12.8億円、1/23時点)を科されたことが明らかとなっています。アイテムの当選確率を顧客に黙って操作していたようです。昨年末の中国当局によるオンラインゲームの管理強化など悪材料が相次ぎ、株価の低迷が続いています。

FRB(連邦準備制度理事会)による3月利下げ開始観測が後退する一方、株式市場では好業績・成長が見込める企業への選好が続いています。1月後半から本格化する10-12月期の企業発表の動向は、上昇相場が続くか占う上で、要注目の局面となるでしょう。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(1/12~19)

図表8  日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(1/12~19)

日経平均4万円は通過点!?そのカギを握るのは?

24年の日経平均は好調に推移しています。大発会こそ一時700円超下落し、33,000円台を割り込むなど、やや波乱の幕開けとなりましたが、その後はほぼ順調に上値を伸ばしてきました。日経平均は1/9に終値で昨年来高値(33,753円)をクリアすると、15日には一時36,000円に乗せるなど一気に駆け上がりました。そこから、やや利益確定の売りに押されましたが、米国株高や円安進展を手掛かりに再び日本株買いの動きが強まると、22日に36,546円と節目を大きく超えました。日経平均は1月22日までの僅か12営業日で3,000円強の上げ幅(上昇率は9.2%)を達成しました。

日経平均が大きく上昇した背景については、1/22のマーケット・フラッシュ『日経平均は遂に36,000円台に到達!上方修正期待銘柄は?』を併せてご参照ください。そして、これだけの大幅上昇を経たことで日経平均としても1989年12月29日につけた史上最高値(38,915円)超えは勿論、4万円の大台到達を期待する声が高まっているようです。2000年代の前半(日経平均が1万円台から大台割れしていく頃)に社会人となった当時の筆者からすれば、日経平均が史上最高値の目指すことなど想像外のことだっただけに、実際に史上最高値更新、更に4万円の大台が手の届くところまで来ていることに感慨深い気持ちです。

ただ、ここで気になるのは、日経平均4万円は株式の価値(バリュエーション)として許容されるものなのかということでしょう。そこで本稿では代表的なバリュエーション指標である株価純資産倍率(PBR=株価÷1株当たり純資産)と、株価収益率(PER=株価÷1株あたり利益)から、日経平均のバリュエーションを考えてみます。

まず、図表9は日経平均と日経平均株価と日経平均のPRB、および1株あたり純資産の推移です。まず、直近(1/22)の日経平均PBRは1.418倍。リーマン・ショックが発生した2008年以降、PBRは概ね0.8倍から1.5倍程度で推移し、上限は2015年4月の1.557倍となっています。一方、1株あたり純資産は企業利益の積み上げなどもあって概ね右肩上がりで増加し、直近は2.568万円/株となっています。日経平均4万円を直近の1株あたり純資産で割れば、PBRは1.558倍であり、リーマン・ショック後で最も高いPBRに到達すれば、日経平均4万円は十分に到達可能となります。更に一歩踏み込むと、1株あたり純資産は時間をかけながらも増加傾向にあること、更に2000年代前半(リーマン・ショック前)のPBRが1.5倍から2.5倍超で推移しており、同レンジの上限(2.568万円/株×2.5倍≒6.4万円)まで買われるとすると、日経平均の4万円はただの通過点となる可能性もあるでしょう。

図表9  日経平均株価とPBR

一方、PERで見るとどうでしょうか。Quick社が算出する12ヵ月先予想PERは、直近(1/22)で15.50倍。ヒストリカルに見てPERは概ね12倍から16倍(異常値除く)で推移しており、現状のPERは割高感が強い訳ではないですが、レンジ上限に近いため、ここからPERの切り上げは難しいかもしれません。現状の予想EPS(2,358円)で日経平均が4万円に到達する場合、予想PERは16.96倍となり、やや割高感が生じることになります。もっとも、昨年の秋以降、円安進展などを手掛かりに企業の業績改善期待が高まる中、予想1株あたり利益は上昇傾向を辿っています。直近の予想1株あたり利益(2,358円/株)が今後、6%程度の利益成長を遂げれば、PERは16倍のレンジに留まることになります。つまり、予想PERの観点から見ると順調な利益成長を遂げることが、日経平均が4万円を到達し、それを更に超えていくためのポイントになると言えるでしょう。

図表10 日経平均の予想PERと1株当たり利益

PER、PBRの両観点から見ても、結局のところ株価上昇が続くのかどうかのカギを握るのは、企業業績が順調に伸びていくのかということでしょう。

そうしたなか、国内では今週から23年10‐12月期の決算発表シーズンがスタートします。主要企業の中では、1/24のニデックやオービック、ディスコが先陣を切って決算を発表。そこから徐々に本格化していき、2月第2週(2/5-9)にピークを迎えます(日経平均採用銘柄の決算発表シーズンのピークは2月第1週(1/29-2/2)です。3月期決算企業にとって今回は第3四半期決算であり、トラックレースに例えるとゴール(通期決算)に向けていよいよ最終コーナーに差し掛かった勝負どころとなります。足元の業績動向だけではなく、アナリスト等から来期業績についても明るい見通し示されるようであれば、日経平均としてもさらなる上値を追う足がかりになると考えられます。

図表11  上場企業の決算発表予定数

おすすめ記事(2024/01/23 更新)

信用取引のご注意事項

信用取引に関するリスク

信用取引は、差し入れた委託保証金額の約3倍の取引を行うことができます。そのため、現物取引と比べて大きなリターンが期待できる反面、時として多額の損失が発生する可能性も含んでいます。また、信用取引の対象となっている株価の変動等により、その損失の額が、差し入れた委託保証金額を上回るおそれがあります。この場合は「追加保証金」を差し入れる必要があり状況が好転するか、あるいは建玉を決済しない限り損失が更に膨らむリスクを内包しています。
追加保証金等自動振替サービスは追加保証金が発生した際に便利なサービスです。

信用取引の「二階建て」に関するご注意

委託保証金として差し入れられている代用有価証券と同一銘柄の信用買建を行うことを「二階建て」と呼びます。当該銘柄の株価が下落しますと信用建玉の評価損と代用有価証券の評価額の減少が同時に発生し、急激に委託保証金率が低下します。また、このような状況下でお客さま自らの担保処分による売却や、場合によっては「追加保証金」の未入金によって強制決済による売却が行われるような事態になりますと、当該株式の価格下落に拍車をかけ、思わぬ損失を被ることも考えられます。よって、二階建てのお取引については、十分ご注意ください。

ご注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社、および情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製、または販売等を行うことは固く禁じます。

・必要証拠金額は当社SPAN証拠金(発注済の注文等を加味したSPAN証拠金×100%)-ネット・オプション価値(Net Option Value)の総額となります。

・当社SPAN証拠金、およびネット・オプション価値(Net Option Value)の総額は発注・約定ごとに再計算されます。

・SPAN証拠金に対する掛け目は、指数・有価証券価格の変動状況などを考慮のうえ、与信管理の観点から、当社の独自の判断により一律、またはお客さまごとに変更することがあります。

・「HYPER先物コース」選択時の取引における建玉保有期限は原則新規建てしたセッションに限定されます。なお、各種設定においてセッション跨ぎ設定を「あり」とした場合には、プレクロージング開始時点の証拠金維持率(お客さま毎のSPAN掛目およびロスカット率設定に関わらず必要証拠金額はSPAN証拠金×100%で計算)が100%を上回っていれば、翌セッションに建玉を持ち越せます。「HYPER先物コース」選択時は必要証拠金額はSPAN証拠金×50%~90%の範囲で任意に設定が可能であり、また、自動的に決済を行う「ロスカット」機能が働く取引となります。

先物・オプションのSPAN証拠金についてはこちら(日本証券クリアリング機構のWEBサイト)

・指数先物の価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。市場価格が予想とは反対の方向に変化したときには、比較的短期間のうちに証拠金の大部分、またはそのすべてを失うこともあります。その損失は証拠金の額だけに限定されません。また、指数先物取引は、少額の証拠金で多額の取引を行うことができることから、時として多額の損失を被る危険性を有しています。

・日経平均VI先物取引は、一般的な先物取引のリスクに加え、以下のような日経平均VIの変動の特性上、日経平均VI先物取引の売方には特有のリスクが存在し、その損失は株価指数先物取引と比較して非常に大きくなる可能性があります。資産・経験が十分でないお客さまが日経平均VI先物取引を行う際には、売建てを避けてください。

・日経平均VIは、相場の下落時に急上昇するという特徴があります。

・日経平均VIは、急上昇した後に数値が一定のレンジ(20~30程度)に回帰するという特徴を持っています。
日経平均VIは、短期間で急激に数値が変動するため、リアルタイムで価格情報を入手できない環境での取引は推奨されません。

・指数オプションの価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。買方が期日までに権利行使又は転売を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。売方は、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。また、指数オプション取引は、市場価格が現実の指数に応じて変動しますので、その変動率は現実の指数に比べて大きくなる傾向があり、場合によっては大きな損失を被る危険性を有しています。

・未成年口座のお客さまは先物・オプション取引口座の開設は受付いたしておりません。

・「J-NETクロス取引」で取引所 立会市場の最良気配と同値でマッチングする場合、本サービスをご利用いただくお客さまには金銭的利益は生じないものの、SBI証券は委託手数料を機関投資家から受け取ります。

・J-NETクロス取引の詳細は適宜修正される可能性がありますのでご留意ください。