～悪材料に反応しなくなった、底入れの兆しか？！～
投資情報部 李 燕
2024/02/16
2/9－2/15の中国株主要指数は続伸しました。中国株をめぐるセンチメントがやや改善し、特に米国市場で中国ADRが買われました。
今回のトピックスは、「悪材料に反応しなくなった、底入れの兆しか？！」です。
今週の中国株市況
図表1 主要中国株指数の推移（2023年2月以降）
注：2024/2/15までのチャートです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
図表2 香港市場の業種別指数の推移（2023年以降）
注：業種別指数は香港市場のハンセン総合指数のサブ指数です。2024/2/15までのチャートです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
図表3 当社内売買代金上位10銘柄の騰落率と関連ニュース（注）
| 銘柄コード | 銘柄名 | 騰落率 | 関連ニュース等 |
| NIO | 蔚来汽車（ニオ）Inc ADR | 4.6% | EV関連銘柄が続伸した。中国当局が新エネルギー車向けの支援措置を発表してから、EV関連銘柄をめぐる地合いがやや改善した。 |
| 00700 | テンセント(騰訊) | -0.6% | 特段材料はなく、需給要因とみられる。機関投資家の売買動向を確認してみると、売り買いが交錯した。 |
| BABA | 阿里巴巴集団（アリババグループ）ADR | 4.3% | 前週は軟調な決算を受けて下落したが、株価は節目の70ドル台で下げ止まり、反発した。決算発表後、大手証券会社数社が目標株価を引き下げたが、特段材料視されなった。悪材料はある程度株価に織り込んでいるかもしれない。「世紀の空売り」で有名になったマイケル・バリー氏が率いるサイオン・アセット・マネジメントが2023年10-12月に、アリババとJDドットコムの株式を大幅に買い増したことが明らかになった。サイオン・アセット・マネジメントのポートフォリオでは昨年12月末時点でアリババが最大の保有銘柄（ファンド純資産の約6％）となった。 |
| 01211 | 比亜迪 ( Byd ) | -0.7% | 中国当局が新エネルギー車向けの支援措置を発表してから、前週は反発したが、小反落した。需給要因とみられる。同社株の場合は、主要新興EVメーカーのように米国市場に同時上場しているわけではないので、米国市場でEV関連銘柄が買われた際はその恩恵も薄い。 |
| PDD | PDD ホールディングス ADR | 6.8% | 続伸した。米最大のスポーツイベントであるスーパーボウルで同社は「億万長者のような店」というスローガンで大規模な広告を出し、注目を集めた。アナリストはスーパーボウルでの広告戦略は非常に有効だと評価した。 |
| XPEV | シャオペン ADR | 8.8% | EV関連銘柄が続伸した。中国当局が新エネルギー車向けの支援措置を発表してから、EV関連銘柄をめぐる地合いがやや改善した。同社については、大手証券会社がハンセン指数入りの可能性があると指摘した。EV大国であるノルウェーの自動車連盟「NAF」が主催した2024年の冬季テストで、同社のフラグシップSUV「G9」は充電テスト（10%から80%への充電状態に達するまでの時間の短さ）で1位となり、航続距離テストでは5位となった。 |
| BILI | ビリビリ ADR | 4.2% | 米国市場で中国株が買われ、連れ高した。同社は、他の銘柄より投資家センチメントの影響を受けやすく、ボラティリティがやや高い。 |
| 02269 | 薬明生物技術 | -13.0% | 米制裁懸念で下落した。米議員の超党派グループがバイデン政権に対し、同社と薬明康徳(02359)に対する正式調査の開始を要請した。同社は、「米国や他のいかなる国に対しても国家安全保障上のリスクを与えておらず、今後も与えるつもりはない」と表明した。ただ、制裁をめぐる不透明感の払しょくには至らず、売りが優勢となった。機関投資家の売買動向を確認してみると、売り買いが交錯した。中国系大手ファンドは保有株比率を引き上げた。 |
| 00941 | チャイナモバイル | -1.3% | 特段材料はなく、小幅安となった。地合い改善で、ディフェンシブ銘柄の同社は売りが優勢だった。 |
| 175 | 吉利汽車 | 0.5% | 前週に大幅続伸したこともあり、旧正月連休前は利益確定売りに押される場面もあり、結果的に小幅高となった。 |
注：米国上場の中国企業ADRを含めた2023年10月－12月の中国株売買代金上位10銘柄で、売買代金順となります。米国市場と香港市場に同時上場している銘柄については、売買代金を合算の上、銘柄表記は売買代金の多い銘柄となっています。騰落率は2/9－2/15の株価騰落率です。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。
今週の中国株市況
2/9－2/15の中国株主要指数は、ハンセン指数が0.4％上昇、ハンセンテック指数は1.7％上昇しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数（HXC指数）は5.2％上昇しました。
中国株をめぐるセンチメントがやや改善し、特に米国市場で中国ADRが買われました。ハンセンテック指数の場合は、その構成銘柄のうち、米国市場に同時上場している銘柄が多いため、米国市場での中国株の恩恵を受けました。
前週のレポートで触れましたように、中国当局の株価対策と、旧正月連休明けや3月の全国人民代表大会（全人代）での支援策強化に対する期待が投資家センチメントを支えています。
著名な機関投資家による中国株買いも、主力株の反発につながりました。「世紀の空売り」で有名になったマイケル・バリー氏が率いるサイオン・アセット・マネジメント（Scion Asset Management）が2023年10-12月に、アリババ(BABA)とJDドットコム(JD)の株式を大幅に買い増したことが明らかになりました。サイオン・アセット・マネジメントのポートフォリオでは2023年12月末時点でアリババが最大の保有銘柄となり、次いでJDドットコムが2位となりました。
指数算出会社であるMSCIが最新の四半期見直しで、MSCI中国指数から66銘柄を除外すると発表しましたが、その影響は限定的でした。これについては、「今回のトピックス」部分で取り上げます。
中国株主要指数の構成銘柄の騰落率は、図表4の通りです。スポーツ用品大手のリーニン（李寧）(02331)や安踏体育用品(02020)が大幅に続伸しました。両銘柄はともに1月まで下落が続きましたが、2月に入ってから買い優勢に転じました。特段材料があったわけではないことを考えると、今後のバリュエーション修正に対する期待で買われたとみられます。
オンライン旅行サービス大手のトリップ・ドットコム ADR(TCOM)は、機関投資家の買いを好感し、上昇しました。過去4四半期連続で同社株の売却を進めたシュローダー・インベストメント・マネジメントが2023年10-12月は買いを実施したことが明らかになりました。なお、旧正月連休の最初の4日間、中国の総旅客数はのべ10.5億人に達し、前年同期比で20％増、2019年同期比では24％増加しました。
図表4 主要指数の構成銘柄の騰落率
注：騰落率は2/15時点、過去5日間の株価騰落率です。ナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数の主要構成銘柄は、2024年1月末を基準に時価総額ベースで上位10銘柄となっております。中国企業ADRの代表銘柄の一つであるPDDホールディングスADR(PDD)は、現時点で同指数の構成銘柄には含まれておりません。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
今回のトピックス
今回のトピックスは、「悪材料に反応しなくなった、底入れの兆しか？！」です。
指数算出会社であるMSCIは2/12に、最新の四半期見直しでMSCI中国指数から66銘柄を除外すると発表しました。銘柄の入れ替えは2/29（引け後）から有効です。指数からの除外は時価総額の大幅減少が背景で、中国本土に上場しているA株が圧倒的に多かったです（図表5）。
図表5 MSCIによる四半期見直しで除外・追加される中国株リスト
| 除外銘柄 | 除外銘柄 | 除外銘柄 |
| 3PEAK A (HK-C) | G BITS NETWORK A (HK-C) | PING AN HEALTHCARE & TEC |
| 3SBIO | GDS HOLDINGS A (HK) | PYLON TECH A (HK-C) |
| ANHUI HONGLU A (HK-C) | GEMDALE CORP A (HK-C) | RAYTRON TECH A (HK-C) |
| APELOA PHARMA A (HK-C) | GREENTOWN CHINA HLDGS | SHANDONG BUCHAN A (HK-C) |
| BEIJING E-HUALU A (HK-C) | HANGZHOU LION A (HK-C) | SHANGHAI FUD MIC A(HK-C) |
| BEIJING EASPRING A(HK-C) | HEBEI HENSHUI A (HK-C) | SHANXI SEC CO A (HK-C) |
| BEIJING SHIJI A (HK-C) | HOYUAN GREEN A (HK-C) | SHENGHE RES A (HK-C) |
| BEIJING UNITED A (HK-C) | HUAXI SECURITIES A(HK-C) | SHENZHEN DYNANO A (HK-C) |
| BETTA PHARMA A (HK-C) | HUBEI FEILIHUA A (HK-C) | SHENZHEN SENIOR A(HK-C) |
| BGI GENOMICS A (HK-C) | HUBEI XINGFA A (HK-C) | SHENZHEN SUNLORD A(HK-C) |
| BTG HOTELS GRP A (HK-C) | JOYY INC ADR | SHUANGLIANG ECO A (HK-C) |
| CECEP WIND-PWR A (HK-C) | JUEWEI FOOD A (HK-C) | SINOPEC SHANGHAI A(HK-C) |
| CETC CYBERSPACE A (HK-C) | KNGBRD LAMNTS HLDG (CN) | TANGSHAN JIDONG A (HK-C) |
| CHINA EVERBRIGHT ENV GRP | LUFAX HOLDING ADR | TITAN WIND ENER A (HK-C) |
| CHINA MEHECO A (HK-C) | LUXI CHEMICAL A (HK-C) | UNI-PRESIDENT CHINA HLDG |
| CHINA STH AIRLINES H | MICROPORT SCI (CN) | WEIBO CORP ADR |
| CHINA TRAD CHINESE MED | MINTH GROUP (CN) | WUXI AUTOWELL A (HK-C) |
| CHINASOFT INTERNATIONAL | NAVINFO CO A (HK-C) | XTEP INTL HOLDINGS |
| DAQO NEW ENERGY CORP ADR | NINE DRAGONS PAPER | YUAN LONGPING A (HK-C) |
| DHC SOFTWARE CO A (HK-C) | NINGBO RONBAY A (HK-C) | ZHEFU HOLDING A (HK-C) |
| DO FLUORIDE NEW A (HK-C) | NORTH IND GRP A (HK-C) | ZHEJIANG JIUZHOU A(HK-C) |
| FARASIS ENERGY A (HK-C) | OVCTEK CHINA A (HK-C) | ZHUZHOU KIBING A (HK-C) |
| 追加銘柄 | 追加銘柄 | 追加銘柄 |
| CHINA MERCH EXP A (HK-C) 3PEAK A (HK-C) | MGI TECH A (HK-C) ANHUI HONGLU A (HK-C) | NINGBO SANXING A (HK-C) BEIJING E-HUALU A (HK-C) |
| GIANT BIOGENE HOLDING 3SBIO | MIDEA GROUP CO A (HK-C) APELOA PHARMA A (HK-C) |
※MSCIの公式発表文をもとにSBI証券が作成。
除外により、パッシブ運用のファンドは該当銘柄のポジションを減らす必要があります。したがって、通常、指数からの除外はマイナス材料です。ただ、除外リストに入った香港上場株のグリーンタウン(03900)や中国南方航空(01055)、平安健康医療科技(01833)と、米国上場株の微博（ウェイボー）A ADR(WB)やルファックス ホールディング(LU)、JOYY ADR(YY)、ダコ ニュー エナジー ADR(DQ)の株価動向の確認してみると、その影響は今のところ限定的のようです。
考えられる要因は、中国株の株価下落が続いたことである程度の悪材料は織り込んでいる可能性があることです。66銘柄に上る除外について、各メディアでみ大きく取り上げられましたが、中国株の全体に対する影響も限定的でした。バリュエーションが歴史的低水準になっていることが背景と考えられます。
過去の経験からすると、悪材料に反応しなくなった時は、底入れの兆しを示す傾向があります。したがって、今回の出来事と相場の反応を踏まえて、中国株に対する見通しを「慎重ながら楽観」に修正したいと思います。
図表6 過去1カ月間の各国株のETFへの資金流出入（ネット、百万ドル）
※BloombergをもとにSBI証券が作成。
図表7 SBI証券が取り扱っている主要中国株ETF
| 銘柄コード | Bloomberg銘柄名 | ETF概要 |
| 02846 | iシェアーズ・コア CSI 300 ETF | CSI 300 指数の実績に概ね対応する投資成果（手数料及び経費控除前）をあげることを目標としています。当ファンドがこの目標を達成できる保証はありません。対象指数は上海・深セン証券取引所に上場している300社の株式で構成される分散された指数であり、これら二つの証券取引所の時価総額合計の約70%を表しています。 *当ETFは香港籍のETFであり、香港の規制上、シンセティックETFであるとの表示が義務付けられています。シンセティックETFとは、対象インデックスのパフォーマンスを複製するために、金融デリバティブ商品（スワップやほかの発行体が発行したパフォーマンス連動のストラクチャー商品など）を利用したETFのことです。 |
| FXI | iシェアーズ 中国大型株 ETF(FXI) | FTSE 中国 25 インデックスによって測定される証券の価格および利回り実績と同等水準の投資成果（報酬および経費控除前）を目指しています。 |
| 02828 | ハンセンH株指数ETF | ハンセンH株指数（※）を構成する全銘柄に投資し、同指数に連動します。（※H株とは、香港市場に上場する中国本土で登記された中国企業の株式の総称。） |
| 02800 | トラッカー ファンド オブ ホンコン | 香港ハンセン指数と連動する運用成果を目指します。運用目標を達成するために、主として香港ハンセン指数とほぼ同一の構成比率で、同指数の構成銘柄への投資を行ないます。 |
| 03033 | CSOPハンセンテックインデックスETF | ハンセンテック指数に連動する投資成果を目指します。同指数は中国テック業界を代表する大手30銘柄から構成されており、中国のクラウドコンピューティング、ビデオゲーム、デリバリー等のプラットフォーム経済など成長性高いテック銘柄などへ投資が可能です。 |
※弊社ホームページをもとにSBI証券が作成。
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