~本格的な反発か?!全人代の注目ポイントは?~

~本格的な反発か?!全人代の注目ポイントは?~

投資情報部 李 燕

2024/03/01

2/16-2/29の中国株主要指数は続伸しました。中国当局が引き続き、相場対策と景気支援の意向を表明し、投資家心理を支えました。

今回のトピックスは、「本格的な反発か?!全人代の注目ポイントは?」です。

※なお、李が担当する「中国株 ココがPOINT!」は今回が最終回となります。長い間ご愛顧いただき、誠に有り難うございました。

今週の中国株市況

図表1 主要中国株指数の推移(2023年2月以降)

注:2024/2/29までのチャートです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2023年以降)

注:業種別指数は香港市場のハンセン総合指数のサブ指数です。2024/2/29までのチャートです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 当社内売買代金上位10銘柄の騰落率と関連ニュース(注)

銘柄コード 銘柄名 騰落率 関連ニュース等
NIO 蔚来汽車(ニオ)Inc ADR -5.6% 新興EVメーカーが売られた。米新興EVメーカーのリビアン・オートモーティブとルーシッド・グループが発表した2024年の生産計画がともに市場予想を大きく下回り、両社の株価が急落した。中国の新興EVメーカーも連れ安した。ニオについては、大手証券会社が投資判断を「中立」から「アンダーウエイト」に引き下げたことも嫌気された。同証券会社は、売上高と利益が減少する可能性があるうえ、同業他社と比べて新モデルが不足していることも株価を押し下げる可能性があると予想した。ニオは3/5に決算発表を控えていることもあり、同大手証券の投資判断引き下げは、投資家の警戒を誘った。ただ、2/29は反発した。ニオがForseven Limitedと技術ライセンス契約を結んだと発表し、買い材料となった。同契約に基づき、ニオはForseven Limitedに対し、ニオのスマートEVプラットフォームに関連する技術情報やソリューション、知的財産権の一部を使用するためのライセンスを付与し、Forseven Limitedからライセンス料やロイヤリティを受け取る。Forseven Limitedはアブダビ政府系の投資会社CYVNの子会社である。
00700 テンセント(騰訊) -2.9% 反落した。中国当局は2/27に、2月の新規ゲーム認可リストを発表したが、テンセントの作品は含まれていなかった。競合のネットイース(09999)の新作ゲームはリスト入りとなった。検索エンジン大手の百度(BIDU)が中国のマクロ経済に対して慎重な見通しを示したことも、中国株全般に対する売りを誘った(詳細は本文を参照されたい)。
BABA 阿里巴巴集団(アリババグループ)ADR 0.3% 中国株に対するセンチメントの改善を受け、2/27まで上昇したが、2/28は反落した。同社がクラウドサービス価格の引き下げを発表し、売りを誘った。クラウド事業における競争激化が背景と警戒された。検索エンジン大手の百度(BIDU)が中国のマクロ経済に対して慎重な見通しを示したことも、中国株全般に対する売りを誘った(詳細は本文を参照されたい)。
01211 比亜迪 ( Byd ) 5.7% 続伸した。習近平国家主席が家電や自動車などの消費財の販売拡大策を指示し、自動車株が買われた。習氏は2/23に開催された共産党中央財経委員会で、「大規模な製品アップグレード、および消費財の買い替えに関する新たな取り組みを奨励し、指導しなければならない」と述べた。同社については、自社株買い計画も好感された。同社の王伝福会長は中国本土上場のA株について、自社株買いの規模倍増(2億ドルから4億ドルに)を提案した。王会長は、「新エネルギー産業の見通しと会社の将来に対する自信に基づいたもので、株主利益を保護し、投資家の信頼を高めるため」と説明した。
PDD PDD ホールディングス ADR -8.0% 反落した。米国の議員たちが強制労働への懸念から同社の「Temu」の出荷禁止を要求していると報じられ、売り材料となった。海外版ECサイトの「Temu」は米国で急速に利用者数を獲得しており、同社の成長分野として期待されている。米国の議員たちは「Temu」に対して、「同サイトはサプライヤーによる強制労働の防止に十分な措置を講じていないと主張」し、「米国土安全保障省などの機関に対し、ウイグル強制労働防止法違反者のリストに『Temu』を追加するよう要請している」という。これまで同リストに加えられた企業は、新疆ウイグル自治区に拠点を置くか、米国が新疆ウイグル自治区で強制労働を行ったと主張している製造業者や企業で構成されている。「Temu」のようなECサイトがリスト入りしたことはない。なお、同じく米国に進出している中国のECサイト「Shein」に対して、米議員たちはこれほど「ハト派」的な姿勢を取っていない。「Shein」はワシントンでロビイストや顧問を雇用し、強制労働の懸念を和らげるために議員たちと面会しているという。「Temu」も「Shein」に習って、米国でロビー活動を実施する必要があろう。なお、今後の展開については予想しがたい部分も多いため、当面は米制裁懸念が株価の重石となりそうだ。この間の機関投資家の売買動向を確認してみると、全体的にポジションを少し落としたファンドの数が多かった。Bloomberg集計による目標株価は、ほぼ変わらずだった。
XPEV シャオペン ADR 2.9% ボラティリティを伴う上昇となった。米新興EVメーカーのリビアン・オートモーティブとルーシッド・グループが発表した2024年の生産計画がともに市場予想を大きく下回り、両社の株価が急落した局面では連れ安した。シャオペンについては、大手証券会社が目標株価を引き下げたことも売りを誘った。同証券会社は、今年第1四半期の利益率低下を予想した。ただ、フォルクスワーゲンからの技術ロイヤルティ料を認識し始める第2四半期からは収益性が改善する可能性があり、下期に潜在的なエントリーポイントが現れる可能性もあると付け加えた。2/29は株価が急反発し、下落分を取り戻した。シャオペンは2023年7月に独フォルクスワーゲンと提携を発表したが、2/29に提携拡大を発表し、好材料となった。今回の発表では以下の点も明らかになった。両社は中国市場向けのインテリジェント・コネクテッドカー・モデルを共同開発し、高度な自動運転機能を搭載したEV2車種を2026年に市場に投入する予定だ。なお、共同開発により開発時間は3割以上短縮できるなどの相乗効果があるとも明かした。
BILI ビリビリ ADR -4.5% 反落した。主な下落分は2/28の下げ(6%下落)によるものだった。検索エンジン大手の百度が決算発表会で、中国のマクロ経済環境に対する慎重姿勢を示し、2/28は中国株全般で売りが優勢だった。
02269 薬明生物技術 23.5% 急反発した。大手証券会社が買い推奨した。短期的な海外政策の変動(米国の制裁懸念)は企業の長期的なファンダメンタルズに影響を与えないため、同社の業界におけるリーダーの地位について依然として楽観視し、今後も着実な発展を維持する見込みだとした。なお、反発にはテクニカル要因もあったとみられる。RSIが短期的売られ過ぎサインの30%を下回った後、買い優勢となった。この間の機関投資家の売り買いは交錯した。2週間前は「海外勢売り・中国本土系買い」だったが、ここ2週間は一部の海外勢ファンドがポジションを増やした。
00941 チャイナモバイル -0.6% 特段材料がない中、小動きとなった。
175 吉利汽車 5.9% 続伸した。習近平国家主席が家電や自動車などの消費財の販売拡大策を指示し、自動車株が買われた。習国家主席は2/23に開催された共産党中央財経委員会で、「大規模な製品アップグレード、および消費財の買い替えに関する新たな取り組みを奨励し、指導しなければならない」と述べた。なお、同社傘下のEVメーカー、ロータス・テクノロジーが2/23に特別買収目的会社(SPAC)のLキャタルトン・アジア・アクイジションとの合併を通じてナスダック市場に上場した。ロータス・テクノロジーは同社が2017年に買収した英自動車グループのEV子会社である。吉利汽車傘下の自動車向け技術開発会社・EcarxのCEOはCNBCの取材に対し、「AIに基づく自動運転システムに関しては現在、エヌビディアが優位性を享受しているが、Ecarxは大衆車市場を狙っており、エヌビディア製品と競合できる製品を(間もなく)発表しようとする」と語った。

注:米国上場の中国企業ADRを含めた2023年10月-12月の中国株売買代金上位10銘柄で、売買代金順となります。米国市場と香港市場に同時上場している銘柄については、売買代金を合算の上、銘柄表記は売買代金の多い銘柄となっています。騰落率は2/16-2/29の株価騰落率です。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

2/16-2/29の中国株主要指数は、ハンセン指数が3.6%上昇、ハンセンテック指数は6.5%上昇しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は3.2%上昇しました。中国当局が引き続き、相場対策と景気支援の意向を表明し、投資家心理を支えました。

相場対策として中国当局は、クオンツファンドに株価指数先物市場での取引を禁止し、高速取引への監視を強化する方針を示しました。景気支援については、習近平国家主席が家電や自動車などの消費財の販売拡大策を指示しました。習氏は2/23に開催された共産党中央財経委員会で、「大規模な製品アップグレード、および消費財の買い替えに関する新たな取り組みを奨励し、指導しなければならない」と述べました。

なお、ハンセンテック指数の上昇率がHXC指数より高いのは、主に以下2つの要因によるものです。

1)香港市場に上場している半導体やAI関連株が大幅に上昇した

ハンセンテック指数の構成銘柄である中国の半導体受託生産(ファウンドリ)大手のSMIC(00981)華虹半導体(01347)、AI関連銘柄のセンスタイム(00020)などは、中国当局がAI関連技術の開発を加速させ、より競争力のある企業を育成するよう要請したことで大きく買われました。これらの銘柄は他の主力中国株のように米国市場にADRとして上場していないため、HXC指数はこれらの銘柄が上昇した際は恩恵がほとんどありません。

2)大幅下落した百度の指数における構成比率はハンセンテック指数よりHXC指数のほうが高い

時価総額の大きい百度は米国市場と香港市場に同時上場していますが、指数における構成比率は米国上場の百度(BIDU)のほうが香港市場の百度(09888)より高いです。検索エンジン大手の百度は2/28決算発表後、株価が急落しました。

百度の2023年10-12月期決算は売上高が前年同期比6%増で市場予想と一致し、調整後純利益は同44%増で市場予想を上回りました。しかし、今後の見通しについて経営陣は、生成AIについてはより大きな収益貢献が期待できるものの、伝統的な広告事業はマクロ経済の低迷によって圧迫されるだろうと予想し、売り材料となりました。

百度の経営陣は、「我々はまだ多くの不確実性を抱えたマクロ環境の中にある」、「今年の目標を達成するためには、重要な景気刺激策を注視することが不可欠だと考えている」とコメントしました。中国のマクロ経済見通しに対して慎重姿勢を示し、2/28は中国株全般が売られました。今後の中国株の見通しについては、百度の経営陣が言ったように「重要な景気刺激策」の有無がカギとなりそうです。

なお、中国新興EVメーカーのリーオート(米国上場株:LI、香港上場株:02015)は好決算で大幅に続伸しました。EV市場の値下げ競争にもかかわらず同社の2023年10-12月期の粗利率は市場予想を上回りました。決算発表後、証券会社数社が目標株価を引き上げました。

図表4 主要指数の構成銘柄の騰落率

注:騰落率は2/16-2/29の株価騰落率です。ナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数の主要構成銘柄は、2024年1月末を基準に時価総額ベースで上位10銘柄となっております。中国企業ADRの代表銘柄の一つであるPDDホールディングスADR(PDD)は、現時点で同指数の構成銘柄には含まれておりません。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

今回のトピックス

今回のトピックスは、「本格的な反発か?!全人代の注目ポイントは?」です。

主要中国株指数の推移を確認してみると(図表1)、いずれも2月は反発しました。主な要因は、以下の2つと考えられます。

1)バリュエーションが歴史的な低水準まで低下

これまで中国株は成長鈍化と米中対立激化の懸念に加え、中国当局が成長鈍化を容認する姿勢を示し、景気支援措置を出し渋ってきたことを背景に売られ続けてきました。その結果、バリュエーションは歴史的な低水準まで低下しました。つまり、ある程度の悪材料は株価に織り込んでいます(1/26付Bloomberg記事「時価総額930兆円失った中国株、ようやく買い場と言えるのか-Q&A」もご参照ください)。過去の経験からすると、通常その際は、下値リスクと上値余地を比較して後者のほうが高い可能性があります。

2)中国当局による株価対策と景気支援策への期待

主要中国株指数が反発したきっかけは、中国当局が2/6に一連の株価対策を打ち出したためです。その後も、高速取引への監視強化を表明し、株価対策を続ける姿勢を示しました。同時に新エネルギー車向けの支援措置(主に輸出支援)など一部の経済対策も打ち出しました。習近平国家主席は2/23に開催された共産党中央財経委員会で、家電や自動車などの消費財の販売拡大策を指示しました。これを受け、景気支援策に対する期待も根強く、株価の反発を支えました。

上記の1)と2)を考える際、本格的な反発につながるためには、2)の方がより重要と考えられます。つまり、バリュエーションの修正が本格的に行われるためには、景気支援策への期待が現実になる必要があります。

「今週の中国株市況」の部分で触れましたように、中国検索エンジン大手の百度の経営陣は「今年の目標を達成するためには、重要な景気刺激策を注視することが不可欠だと考えている」との見方を示しました。これは百度に限らず、多くの中国企業にとっても言えることだと思います。したがって、中国企業の業績見通しが改善されるかどうかは、景気支援策の有無に大きく左右されることとなりそうです。

その景気刺激策の有無を占ううえで、一つの重要なイベントが来週に控えています。「全人代」が略称となっている全国人民代表大会の開催です。同会議では開催初日(3/5)に、李克強首相が政府活動報告を行う予定です。政府活動報告では、2023年の経済状況を振り返るとともに、2024年のGDP成長率目標や財政赤字の対GDP比が公表される予定です。

この二つの項目、つまりGDP成長率目標と財政赤字の対GDP比が高く設定された場合、大規模な景気刺激策を打ち出す可能性も高まります。市場コンセンサスを確認してみると、GDP成長率目標については2023年と同様に5%前後、財政赤字の対GDP比については2023年の3%より少し引き上げられた3%-3.5%となっています。

もし、全人代でこの2つの項目に対し、市場コンセンサスより低く設定された場合、中国株にとって売り材料となる可能性があります。市場コンセンサスとほぼ一致した場合は、ある程度株価を下支えると予想されます。他方、市場コンセンサスを上回る設定となった際や景気支援に対して前向きな姿勢を示した場合、株価を大きく押し上げる材料となりそうです。総合的にみると、中国株に対する見通しは前週と同様に、「慎重ながら楽観的」を維持したいと思います。

図表7 SBI証券が取り扱っている主要中国株ETF

銘柄コード Bloomberg銘柄名 ETF概要
02846 iシェアーズ・コア CSI 300 ETF CSI 300 指数の実績に概ね対応する投資成果(手数料及び経費控除前)をあげることを目標としています。当ファンドがこの目標を達成できる保証はありません。対象指数は上海・深セン証券取引所に上場している300社の株式で構成される分散された指数であり、これら二つの証券取引所の時価総額合計の約70%を表しています。 *当ETFは香港籍のETFであり、香港の規制上、シンセティックETFであるとの表示が義務付けられています。シンセティックETFとは、対象インデックスのパフォーマンスを複製するために、金融デリバティブ商品(スワップやほかの発行体が発行したパフォーマンス連動のストラクチャー商品など)を利用したETFのことです。
FXI iシェアーズ 中国大型株 ETF(FXI) FTSE 中国 25 インデックスによって測定される証券の価格および利回り実績と同等水準の投資成果(報酬および経費控除前)を目指しています。
02828 ハンセンH株指数ETF ハンセンH株指数(※)を構成する全銘柄に投資し、同指数に連動します。(※H株とは、香港市場に上場する中国本土で登記された中国企業の株式の総称。)
02800 トラッカー ファンド オブ ホンコン 香港ハンセン指数と連動する運用成果を目指します。運用目標を達成するために、主として香港ハンセン指数とほぼ同一の構成比率で、同指数の構成銘柄への投資を行ないます。
03033 CSOPハンセンテックインデックスETF ハンセンテック指数に連動する投資成果を目指します。同指数は中国テック業界を代表する大手30銘柄から構成されており、中国のクラウドコンピューティング、ビデオゲーム、デリバリー等のプラットフォーム経済など成長性高いテック銘柄などへ投資が可能です。

※弊社ホームページをもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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