日経平均に押し目買いのチャンス到来!?

日経平均に押し目買いのチャンス到来!?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/02/27

日経平均、1989年以来の史上最高値を更新!

2月第3週(2/19-22)末の日経平均は、前週末比611円44銭高(+1.6%)となり、1989年以来の史上最高値を更新。週足ベースで4週続伸し、堅調な相場展開が続きました。特に主力の半導体関連株が買われました。また同期間、TOPIXグロース指数が+0.9%であったのに対し、TOPIXバリュー指数は+1.8%とアウトパフォームするなど、出遅れ感が生じていたバリューセクターの銘柄が選好されました。

米国市場も、2月第3週の最終営業日にNYダウとS&P500が史上最高値を更新。現地時間21日(水)に行われたエヌビディアの決算発表を皮切りに、ハイテク株が上昇をけん引しました。

エヌビディアはAI(人工知能)向け半導体の最大手であり、決算発表に対する市場の期待感もかなり高まっていた状態でした。結果は、2-4月期売上高見通しが240億ドル±2%(市場予想219億ドル)と力強い見通しを示したことで、ハイテク株への物色に繋がった格好です。翌日の東京株式市場でも東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)が大幅高となり、日経平均の高値更新に寄与しました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(2/16~2/22、図表7)の首位は、あおぞら銀行(8304)でした。1月末の決算発表で、米商業用不動産向けローンの引当金などを計上し、24.3期は15期ぶりの最終赤字となる見通しを示し、株価は大幅安となっていたため、反動で買いが入ったもようです。

2位には日立造船(7004)がランクイン(現在同社は日立グループでも造船会社でもなく、ごみ焼却発電施設等を手掛ける環境事業が主業。2024年10月に社名変更予定)。2月初旬の決算発表で、会社予想の通期経常利益の上方修正と社長交代が発表され株価は高値を付けていました。15日(木)、ごみ焼却時のCO2削減を目指す官民の共同事業で、同社を含む5社に政府が約400億円を投じることを発表。業績拡大にさらなる追い風が吹いているようです。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(2/16~2/22、図表8)の首位は、任天堂(7974)でした。17日(土)、次世代ゲーム機の発売延期が報じられたことが、嫌気されました。市場では2024年中の発売予想が主流でしたが、2025年1-3月期に延期すると複数のゲーム開発会社に通達があったと報道されました。

2月第4週(2/26-3/1)の日経平均は、26日(月)に史上最高値を2営業日連続で更新し、順調なスタートを切っています。急ピッチで上昇した半導体関連株は売られた一方、商社株などが上昇。バフェット氏率いるバークシャーハサウェイが保有を拡大するのではとの思惑買いがあったもようです。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(2/16~2/22)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(2/16~2/22)

日経平均に押し目買いのチャンス到来!?

先週の日経平均は、遂に89年12月につけた38,915円を超え、39,000円台に到達しました。約34年ぶりに史上最高値を更新したとは言え、バブルの熱狂に沸いた前回のような高揚感は乏しく、今回は割と冷静な反応だったのではないかと思われます。おそらく、これはバブル期と異なり現状の株高は企業業績の改善などファンダメンタルズの裏付けを伴ったものであること、史上最高値の更新はあくまで株価上昇の通過点に過ぎない、といった見方がそうさせたのではないかと思われます。

年明けから急ピッチな上昇により日経平均は39,000円台へ到達しました。今後はここから更に上昇して一気に4万円台を突破していくのでしょうか。それとも多少なりともスピード調整が入ることになるのでしょうか。それを占うべく3月相場における注目ポイントを確認していきましょう。

図表9 日経平均の長期チャート(年足)

3月相場における最大の注目イベントは、春闘(春季生活闘争)で協議される賃上げ交渉の行方でしょう。昨年の春闘で賃上げ率は+3.58%と30年ぶりの高い伸びとなりました。労働組合の全国中央組織である連合が“5%程度”の賃上げを求めて交渉に入ったのに対し、相応の結果となりました。今年の春闘について、連合は昨年の要求を上回る“5%以上”の賃上げ目標を掲げています。既に自動車大手のホンダやマツダは、組合側の賃上げ要求に対し満額回答したと伝わっており、賃上げの動きが一段と強まることが期待されます(春闘の集中回答日は3/13)。

賃上げが進むことは中長期で見て個人所得や個人消費にプラスになります。しかし、それは裏を返せばインフレを強めることにもなり、金融引き締めの可能性が高まります。植田総裁は、2/22衆院予算委員会において、今後も物価上昇が続くとの見解を示したうえで「今は(物価が下がり続ける)デフレではなく、インフレの状況にある」とし、金融政策の転換を示唆するような発言を行いました。春闘の集中回答日に賃上げの動きが確認されれば、翌週(3/18・19)に開催される日銀金融政策決定会合において、現状の金融緩和策であるマイナス金利政策の解除を含めた、脱金融緩和策が打ち出される可能性があります。

日銀はマイナス金利政策を解除しても、当面は緩和的な金融政策を続ける方針を示しています。23年10-12月期実質GDP成長率が前期比▲0.1%と小幅ながら2四半期連続のマイナス成長となるなど、国内経済が決して強い訳ではないことからも、急ピッチな金融引き締めが行われる可能性は低いと考えられます。ただ、年初からの株高で日本株の買い手となった海外投資家の手掛かりの1つは、日銀による緩和的な金融政策だったと言われています。それだけに金融政策の方針が変わるタイミングでは、こうした買いの動きが鈍る可能性があります。

図表10 春闘における賃上げ率の推移

一方、米国の金融政策に目を向けると、当面は金融政策についてタカ派的な見方が強まる可能性があります。昨年末にかけて米国株は、金融緩和期待(利下げ期待)が大きく高まったことを手掛かりに堅調に推移しました。今年は行き過ぎた金融緩和期待が後退し米国金利が上昇しています。一見すると、株安につながりかねない金利上昇となりますが、実際の米国株は堅調に推移しています。この背景には、エヌビディアを筆頭にAI(人工知能)関連や半導体関連銘柄への期待が強かったこと、あるいは、昨年まで積極的な利上げが行われたにもかかわらず、いまだに米国景気が想定以上に堅調に推移し、更にインフレについても鈍化傾向にあること、などが挙げられます。

もっとも、現状は米国において23年第4四半期(10-12月期)の決算発表シーズンが一巡したことで、市場の関心がミクロ(企業業績)からマクロ(経済動向)に移行することが予想されます。そうした中、1月消費者物価や生産者物価が市場予想を上回る伸びとなり、市場でインフレへの警戒が高まり始めています。一部では金融緩和観測が後退するだけではなく、FRBの金融政策の次の一手は“利下げ”ではなく“利上げ”になるのでは?との見方もちらほら聞こえています。米国金利の上昇が進むようであれば、流石に米国株の足を引っ張る可能性が高まるでしょう。

日米の金融政策が、短期的に日本株の上昇の足かせになる可能性がありますが、とは言え、中長期的な上昇トレンド自体が損なわれるとの見方ではなく、あくまで株高局面における小休止になると考えられます。年初から日本株の上昇が続いていることで買いのタイミングを逸した投資家から見れば、押し目買いのタイミングになるになると考えられます。

図表11 市場が予想する政策金利見通し

おすすめ記事(2024/02/27 更新)

信用取引のご注意事項

信用取引に関するリスク

信用取引は、差し入れた委託保証金額の約3倍の取引を行うことができます。そのため、現物取引と比べて大きなリターンが期待できる反面、時として多額の損失が発生する可能性も含んでいます。また、信用取引の対象となっている株価の変動等により、その損失の額が、差し入れた委託保証金額を上回るおそれがあります。この場合は「追加保証金」を差し入れる必要があり状況が好転するか、あるいは建玉を決済しない限り損失が更に膨らむリスクを内包しています。
追加保証金等自動振替サービスは追加保証金が発生した際に便利なサービスです。

信用取引の「二階建て」に関するご注意

委託保証金として差し入れられている代用有価証券と同一銘柄の信用買建を行うことを「二階建て」と呼びます。当該銘柄の株価が下落しますと信用建玉の評価損と代用有価証券の評価額の減少が同時に発生し、急激に委託保証金率が低下します。また、このような状況下でお客さま自らの担保処分による売却や、場合によっては「追加保証金」の未入金によって強制決済による売却が行われるような事態になりますと、当該株式の価格下落に拍車をかけ、思わぬ損失を被ることも考えられます。よって、二階建てのお取引については、十分ご注意ください。

ご注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社、および情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製、または販売等を行うことは固く禁じます。

・必要証拠金額は当社SPAN証拠金(発注済の注文等を加味したSPAN証拠金×100%)-ネット・オプション価値(Net Option Value)の総額となります。

・当社SPAN証拠金、およびネット・オプション価値(Net Option Value)の総額は発注・約定ごとに再計算されます。

・SPAN証拠金に対する掛け目は、指数・有価証券価格の変動状況などを考慮のうえ、与信管理の観点から、当社の独自の判断により一律、またはお客さまごとに変更することがあります。

・「HYPER先物コース」選択時の取引における建玉保有期限は原則新規建てしたセッションに限定されます。なお、各種設定においてセッション跨ぎ設定を「あり」とした場合には、プレクロージング開始時点の証拠金維持率(お客さま毎のSPAN掛目およびロスカット率設定に関わらず必要証拠金額はSPAN証拠金×100%で計算)が100%を上回っていれば、翌セッションに建玉を持ち越せます。「HYPER先物コース」選択時は必要証拠金額はSPAN証拠金×50%~90%の範囲で任意に設定が可能であり、また、自動的に決済を行う「ロスカット」機能が働く取引となります。

先物・オプションのSPAN証拠金についてはこちら(日本証券クリアリング機構のWEBサイト)

・指数先物の価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。市場価格が予想とは反対の方向に変化したときには、比較的短期間のうちに証拠金の大部分、またはそのすべてを失うこともあります。その損失は証拠金の額だけに限定されません。また、指数先物取引は、少額の証拠金で多額の取引を行うことができることから、時として多額の損失を被る危険性を有しています。

・日経平均VI先物取引は、一般的な先物取引のリスクに加え、以下のような日経平均VIの変動の特性上、日経平均VI先物取引の売方には特有のリスクが存在し、その損失は株価指数先物取引と比較して非常に大きくなる可能性があります。資産・経験が十分でないお客さまが日経平均VI先物取引を行う際には、売建てを避けてください。

・日経平均VIは、相場の下落時に急上昇するという特徴があります。

・日経平均VIは、急上昇した後に数値が一定のレンジ(20~30程度)に回帰するという特徴を持っています。
日経平均VIは、短期間で急激に数値が変動するため、リアルタイムで価格情報を入手できない環境での取引は推奨されません。

・指数オプションの価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。買方が期日までに権利行使又は転売を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。売方は、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。また、指数オプション取引は、市場価格が現実の指数に応じて変動しますので、その変動率は現実の指数に比べて大きくなる傾向があり、場合によっては大きな損失を被る危険性を有しています。

・未成年口座のお客さまは先物・オプション取引口座の開設は受付いたしておりません。

・「J-NETクロス取引」で取引所 立会市場の最良気配と同値でマッチングする場合、本サービスをご利用いただくお客さまには金銭的利益は生じないものの、SBI証券は委託手数料を機関投資家から受け取ります。

・J-NETクロス取引の詳細は適宜修正される可能性がありますのでご留意ください。