NISAでオルカンが人気でも、S&P500を選ぶ人の理由

NISAでオルカンが人気でも、S&P500を選ぶ人の理由

投資情報部 植田 雄也

2026/05/28

NISAでオルカンが人気でも、S&P500を選ぶ人の理由

NISAで人気の投資信託を調べると、オール・カントリー(※1)・S&P500(※2)の2つがよく挙げられています。ここで、「世界中に分散されているオール・カントリーの方が安心そうなのに、なぜS&P500を選ぶ人も多いの?」と疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。S&P500が選ばれる理由の一つは、「今後も米国企業が利益を伸ばしていく」と考える投資家が多いからです。

ではなぜ、米国企業にはそのような成長期待が集まっているのでしょうか。

その背景を理解するために、今回は米国経済を

・「生産面(企業が利益を生み出す力)」

・「支出面(消費や需要の強さ)」

の2つの視点から、シンプルに整理していきます。


■結論:ヒト・モノ・カネが集まりやすい構造

米国経済が強い背景は、単に「米国内で稼いでいる」からではなく、世界中からヒト・モノ・カネが集まりやすい構造を持っているためかもしれません。

なぜなら米国には、

・世界トップ級のテクノロジー企業

・巨大な資本市場

・高い消費力

・世界中から集まる人材

などがあります。

その結果、「世界中から人材や資本が集まる → 企業が積極的に投資できる→ 新しい技術やサービスが生まれる → 企業の売上や利益が成長する」循環が生まれやすくなります。これが、S&P500が長期的に成長してきた背景の一つと考えられます。


■実はオール・カントリーも「米国中心」

はじめに押さえたいのが、オール・カントリーも実は米国比率が高いという点です。例えば、SBI証券における投資信託販売ランキング1位(2026年5月26日現在)のeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)〈愛称:オルカン〉では、米国の比率が6割超を占めています(※3)。つまり、オール・カントリーに投資すること自体、ある程度「米国経済の成長」に期待しているとも言えます。1987年末を100として比較した図表1の長期推移でも、S&P500指数がMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスを大きく上回って推移しています。

「NISA植田道場」では、

【初心者向け】NISAでオルカン・S&P500、どっちを選ぶ?

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「マユコの投資レシピ」では、

初級- 今さら聞けない!オルカン・S&P500とは? 前編

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図表1 MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスとS&P500(四半期足)

なぜ「米国成長」が期待されるのか?

◎生産面のポイント:技術進歩が利益成長につながる?

経済における生産力は一般的に、

・技術進歩

・資本ストック

・労働

などの要因に依存して決まると考えられています。

例えば、「技術進歩」に着目してみると、米国には世界トップクラスのテクノロジー企業が存在し、AI・半導体・クラウド・データセンターなどを中心に巨額の設備投資が続いています。こうした投資は、新たな製品や技術、サービスの誕生と拡大につながり、企業の売上や利益の成長期待を高める要因の一つと考えることができます。

「技術進歩」→「売上成長期待」→「利益成長期待」

実際、図表2にある通り、S&P500採用企業のEPS(1株利益)(※4)は長期的に成長しており、それに伴ってS&P500も上昇基調を続けてきました。では、今後はどうなのでしょうか。Bloomberg集計の市場コンセンサス(5/27時点)では、S&P500の今後12カ月予想EPSは前年比22.29%増、2027年は同13.73%増、2028年は同10.97%増と、引き続き利益成長が見込まれています。

◎支出面のポイントGDPの約7割を占める個人消費

支出面からみたGDPは、

・個人消費

・投資

・政府支出

・純輸出

で構成されます。

その中でも個人消費はGDPの約7割(※5)を占めており、米国経済を支える最大の要素となっています。例えば、個人消費が拡大すると、企業の商品やサービスがより多く購入されるため、企業の売上や利益の成長期待を高める要因の一つと考えることができます。

「個人消費の拡大」→「売上成長期待」→「利益成長期待」

図3にある通り、米国の名目GDPは長期的に成長しており、それに伴ってS&P500も上昇基調を続けてきました。では、今後はどうなのでしょうか。国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し(2026年4月版)」によれば、米国の実質GDP成長率は、2026年が前年比2.3%、2027年と2028年はともに同2.1%と予想されています(※6)。もっとも、株価や企業の利益は、物価上昇(インフレ)も含めた「お金の総額ベース」で動くため、実際の投資では実質GDPだけでなく名目GDPも重要になります。

一方で、今後も同じ成長が続くとは限りません。米国は高齢化や労働力不足を移民によって補っている側面があるため、トランプ氏が掲げる移民抑制政策は、中長期的には労働供給や個人消費の減少につながる可能性があります。その結果、企業利益や名目GDP成長の下押し要因となる可能性も考えられます。


■最後に

米国株が長期的に成長してきた背景には、「技術進歩」「EPS(1株利益)の成長」「個人消費の強さ」など、さまざまな要因が考えられます。特に米国が、世界中からヒト・モノ・カネが集まりやすい構造を持っていると考えると、それが新たな投資やイノベーションを生み、さらに経済成長につながる循環を形成しやすくなります。

ただ、繰り返しにはなりますが、今後も同じ成長が続くとは限りません。金利上昇、インフレ、移民政策、地政学リスクなど、米国経済を取り巻く不確実性は存在します。実際、こうした要因によって企業利益や株価が大きく変動する場面もあります。だからこそ大切なのは、「なぜ米国企業は成長してきたのか」「今後も成長しそうなのか」を簡単にでも想像し、ご自身で腹落ちしたうえで投資先を選ぶことではないでしょうか。


※1.オルカン:オール・カントリーの略でeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の愛称。本稿では世界の株に投資をする投資信託の総称をオール・カントリーと記載する。

※2.S&P500:米国経済を代表する約500社の株価指数。本稿ではS&P500に連動する投資成果をめざす投資信託の総称をS&P500と記載する。

※3.eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)〈愛称:オルカン〉月次レポート 2026年4月30日 現在。

※4.企業が1株あたりどれだけ利益を稼いだかを示す指標。

※5.米国商務省経済分析局(BEA)、国内総生産比率:個人消費支出

※6.国際通貨基金(IMF)、「世界経済見通しデータベース(World Economic Outlook Database)」

図表2 EPSとS&P500(四半期足)

図表3 名目GDPとS&P500(四半期足)

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