日本では投資がなかなか普及せず、岸田政権でも「貯蓄から投資」を掲げ、国民の資産所得倍増プランに注目が集まっています。
コモンズ投信株式会社 取締役社長 兼 最高運用責任者である伊井 哲朗 氏は、「日本人が持っている投資に対する投機的なイメージを払拭することが重要」とし、「若者を中心に、投資の1つの側面として「ソーシャル・グッド」といえる社会貢献を重視する姿勢が高まりはじめている。この流れを後押しし、日本に長期投資を根付かせることが、日本の大きな課題である」と語りました。
投資は「未来を信じる力」
コモンズ投信 取締役社長 兼
最高運用責任者 伊井 哲朗 氏
コモンズ投信のミッションは「一人ひとりの未来を信じる力を合わせて、次の時代を共に拓く~投資は未来を信じる力~」です。「投資は未来を信じる力」としていますが、投資というのは、なんとなく怖いと感じられる方もいらっしゃると思います。また、今のような時代は、未来を信じるといっても、不安もたくさんあると思います。
当社は、「コモン・グラウンド(共有地)」というところからネーミングしています。私どものお客さまや関心を持ってくださっている方々。それから、投資先の企業、寄付先、そして私どもの商品を取り扱っていただいているパートナーの金融機関が「コモン・グラウンド」に集まって、不安はあるけれど、未来を信じる気持ちを持ち寄って、そこで気づきや学びを得て、それが、明日への希望につながっていくというような場にしたいと思っています。
コロナやロシアのウクライナ侵攻など大きな変化が起こっていますが、特にコロナ禍では生活に大きな変化がありました。例えば、教育や医療現場では、オンラインでの教育や診療などが、コロナ禍によって一気に10年位前倒しで進みはじめたのは、大きな変化だと思います。
米英に比べて日本の個人の金融資産が伸びない理由
NISAやiDeCoなどを始めることに抵抗がある方もいらっしゃると思います。
例えば、「年間で1万円の利息をもらうための預金額はいくらになると思いますか?」
この質問を、私は金融機関のトップが集まる会合で、当時の金融担当大臣だった麻生 太郎さんがされていたことを覚えています。
1万円をもらうためには、12億5,000万円~6,000万円程度の預金が必要になります。計算上では10億円ですが、税金を引かれるので、手取りで1万円をもらおうとした場合、12億円を超の金額が必要になります。日本の場合は、多くの国民が預金をしています。当時、麻生さんが金融機関のトップに投げかけたのは、銀行や証券会社に対して、銀行預金ばかりを国民がしているのは、商品やサービスが良くないのではないかという問いかけだったのです。
個人の金融資産は、自分で働いて貯める「勤労所得」と、お金にも働いてもらって貯まる「財産所得」がありますが、アメリカでは個人の金融資産が直近20年間で3倍近く増えました。イギリスは2.3倍で、日本は1.4倍です。この内、お金が働いて増えた運用によるリターンをみると、アメリカが伸びているのは当然と言えるかもしれませんが、アメリカもイギリスも日本も、個人で買える金融商品はあまり差がありません。条件は全く同じなのに、結果にすごく大きな差があります。
日本の個人の金融資産は2,000兆円程度あり、現預金が1,090兆円程度です。アメリカの個人金融資産は1京6,000兆円程度あり、現預金は2,000兆円程度です。アメリカは個人の金融資産に占める現預金は13%程度ですが、日本は54%程度あります。
「投資」というと、日本では少し投機的なイメージがあって、買ったり売ったりして儲けなければならない感じがあります。一方、アメリカやヨーロッパでは年金を作るために投資信託の積立をしている人が非常に多いです。
投資信託を保有されている人の割合も、少し古い数字ですけれども、日本では7%程度に対し、アメリカは50%程度です。なお、アメリカでは非課税の制度を使って投資信託を保有されている方が90%程度で、投資信託の積立をされている方は70%程度になります。
ただし、アメリカの個人の金融資産が直近で3倍近く増えたというのはあくまで平均で、全員が3倍に増えたというわけではありません。なお、金融資産が増えた人の多くは、非課税制度を使って投資信託の積立投資を行っています。先ほどもお話ししたように、アメリカでも半分の人は投資信託の積立をやっていません。にも関わらず、個人の金融資産が3倍に増えたということですから、積立投資を行っている方は、5倍やそれ以上に増えているのではないかと推測されます。
日本の人口は減少傾向にありますが、今後20年で金融資産が2倍、3倍になっていけば、1人当たりの金融資産は潤沢になるので、経済的には人口が減少した部分を個人の金融資産で補うことも可能です。また、それが投資に回れば、文化面も含めてお金がもっと回るような世の中になっていくのではないかと思います。
30年目線で考える投資
皆さまにお子さんが生まれ、親として1銘柄だけ選んで株式をプレゼントするとします。ただし、条件として、その株式は成人を迎えるまで売却できません。また、成人を迎えた日に、親として、なぜこの会社を選んだのかを説明し、子供から「いいね!」と言ってもらう必要があります。
あなたなら、どんな企業を選びますか?
例えば、プレゼントした株式の株価が3倍くらいになったとしても、子供から「株価は上がったかもしれないけど、この会社はブラック企業だよね」と言われると、子供から「いいね!」はもらえませんよね。
これまで株価は、上がればいいという考え方がアメリカを中心にあったと思います。特に、「リスクとリターンの最適な組み合わせを考える」ということが重視され、いかにリスクを抑えて高いリターンを得るかということが競われてきましたが、今後の方向性としてはリスクとリターンだけではなく、「ソーシャル・グッド」といわれるような、社会的リターンを考えなければならないという新しい軸ができていくのではないでしょうか。
当社のファンド「コモンズ30」の運用コンセプトは、30年目線で30社程度に厳選して投資を行い、企業ともしっかり対話するということです。30年目線というのは、子供たちの時代に良い地球環境、良い社会になっていることを考えて投資するということです。当ファンドは、2009年から運用をはじめ、運用成績は平均で年間12%強(2022年8月末時点)のリターンが出ています。市場の平均である「TOPIX(東証株価指数)」よりも年2%程度の超過収益が出ています。一部では、インデックスにアクティブファンドは勝てないと言われているのですが、当ファンドの様に“勝てるファンド”もあります。長期的に良い会社に厳選して投資する運用をぜひ、ご検討いただきたいと思います。