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資産運用

どうして富裕層は「減らさない」資産運用をしたいと考えるのか

資産運用といえば資産を増やすことと考える人もいるのではないでしょうか。しかし、資産運用にはお金を増やすことだけではなく、お金を減らさないために行うものもあるのです。そういった運用をしている人たちの一例が富裕層です。なぜ、彼らは多くのお金を増やさなくてもいい、ただし減らしたくはないと考えるのでしょうか。

富裕層の実態

2018年12月の野村総合研究所の調査によれば、日本の富裕層は127万世帯いるそうです。また、同研究所によれば、純金融資産保有額が5億円以上の超富裕層は8.4万世帯、1億円以上から5億円未満の富裕層が118.3万世帯、5,000万円以上1億円未満の準富裕層は322.2万世帯だそうです。

富裕層はどこに資産を置いている?

富裕層の資産の置き場所を考えると、預貯金、株式等の有価証券、保険、不動産、骨董品や美術品等の資産などさまざまな種類に分散していることが分かります。それぞれの資産にお金を分けることには目的があり、例えば預貯金はいつでも使えるお金、有価証券は自社株や資産株として考え、保険は自らに万一何かあったときに遺された家族の生活が変わらず継続できるように、相続税対策も含めて検討しています。不動産や骨董品や美術品等も資産圧縮を目的に保有していることもあります。

ただ、一定以上の株式を保有する富裕層は、自分の資産を有価証券として置いておきたいと考えるようになります。そのため、多額の資産を保有するようになればなるほど、自らもしくは親世代や祖父母世代に上場した自社株を大量に保有しているケースがあります。日本の税制を考えると、有価証券として資産を持っていたいと考えるのは無理もないかもしれません。

ちなみに、有価証券の売却等にかかる税率は20%(2019年4月現在、復興特別所得税を含めると20.315%)です。これは富裕層であっても平均年収のビジネスパーソンであっても変わりません。所得が多ければ多いほど納税率が高くなる累進課税の最高税率が45%ですから、有価証券の売却等にかかる税率は半分以下になる計算となり得だといえます。これは、多額の納税を行う富裕層ならではの考えといえるでしょう。

富裕層が資産を減らしたくないと考える理由

上述したように、富裕層の大半は自らが支払う税金について熟考しています。彼らは贈与や相続を行う際に発生する納税資金について、その節税方法や納税資金の工面方法について思案しています。特に所得が多ければ多いほど納税資金が増える傾向にあります。そのため、少しでも納税資金を圧縮して、遺される配偶者や我が子が納税で困らないように、あらかじめ節税対策を実施して評価資産を圧縮し、資産移転を行うよう工夫しているのです。

なお、遺される家族にとっても納税まで加味した財産移転が行われることで、資産を安心して受け継げる効果があります。

富裕層は減らさないことを意識する

以上のことから、富裕層は資産を減らさずに資産運用したいと考えているといえるのです。所得が多ければそれだけ未来のことも考えて資産の置き場所を考え、運用し、節税もしています。

2025年には団塊世代の人たちが後期高齢者となります。いわゆる大量の相続が発生し、大きな資産移転が始まる可能性があります。つまり、減らさない資産運用は富裕層のみならず、どの人にも起こり得ることだといえるのです。自分が相続で困ることのないように、富裕層の減らさない運用を参考に、きたるべき将来のことを検討してみてもよいのではないでしょうか。

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