家族信託の流れと遺言書で押さえるべきポイントとは?

執筆:SBIマネープラザ株式会社

更新:2025年12月18日

近年、家族間で財産を管理・承継するための柔軟な手段として、民事信託が注目を集めています。一方、遺言書は、作成者の意思を法的な効力をもって示し、相続における財産の分配を明確にさせるための最も重要な手段です。

本記事ではそれぞれの基本的な役割を理解し、自身や家族の将来に備え、安心できる財産管理と相続対策を考えるきっかけとしていただければと思います。

家族信託とは:財産管理・承継を円滑にする仕組み

家族信託とは、財産を持つ人(委託者)が、信頼できる家族など(受託者)に財産の管理や運用を託し、その利益を特定の人(受益者)が受け取る仕組みになります。信託契約に基づいて行われ、原則として契約が成立した時点から信託が開始されます。

万が一、委託者が高齢になったり、病気になったりすることで判断能力を失った場合でも、財産が凍結されることはありません。また、成年後見人制度との比較でも、受託者が信託目的に従って柔軟に財産管理を行える点が大きな特徴です。

●家族信託の具体的な手続きの流れ

STEP1:家族構成と資産状況を整理する

最初のステップとして、家族構成や資産内容をリストアップし、何を誰に信託するのかを決めます。

STEP2:信託契約書文案を作成し公正証書にする

STEP1で決定した内容をもとに、信託契約書を作成します。法律上の不備のない信託契約書を作成するためにも、司法書士や弁護士に文案の作成を依頼しましょう。金融機関等に提出が必要な際には金融機関と事前に打ち合わせを行い、出来上がった文案をもとに公証役場で公正証書を作成します。

STEP3:名義変更と信託口口座開設で財産を分離して管理する

不動産であれば信託登記を行い、金融資産であれば信託専用の口座を開設します。これによって信託財産が受託者固有の財産と混在せず、受託者が信託財産を適切に管理することが可能となります。

STEP4:受託者による財産管理と定期的な報告義務

受託者は、信託契約に基づいて財産を管理・定期的に報告する義務を負います。収支や預金残高などを明確にしなければなりません。

遺言書とは:相続における最終意思表示

遺言書は、作成者の財産を誰にどのように残したいか、自分の意思や想いを確実に伝えるための手段です。自らが所有する財産の行方を明確にし、それを法的に保護された形で残すことで、死後の相続トラブルを回避する手段となります。相続人全員の理解を得ていない場合でも、法律上は有効ですが、遺留分への配慮など注意すべき点も少なくありません。

●遺言書作成の基本的な流れと注意点

遺言書は、主に自筆証書遺言や公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類が存在し、それぞれの要件を満たす必要があります。特に公正証書遺言は公証人の関与があるため、信頼度が高く安心して利用できますが、作成には証人の手配も含めた手間と費用がかかります。自筆証書遺言の場合は、全文を自書することや日付・署名・訂正方法などの要件が厳格に求められます。なお、2019年より「財産目録」の部分に限りPCでの作成や、通帳のコピーや不動産の登記事項証明書を添付して作成することが可能になりました。また、実務上、利用されるケースは少ないですが秘密証書遺言は、内容を秘密にしたいが自筆証書遺言よりも偽造・変造のリスクを減らしたい場合の選択肢となります。遺言書を封筒に入れ、封印した状態で公証人に提出するため、公証人・証人にも遺言の内容を知られることがありません。

遺言書について詳しくお知りになりたいときは、こちらのコラムをご覧ください。

家族信託と遺言書はどちらが優先される?

家族信託と遺言書が同じ財産について異なる内容を定めている場合、原則として家族信託の内容が優先されます。 ただし、信託契約に含められる財産には制限があり、例えば、公的年金などの将来発生する財産には信託の効力が及びません。 そのため、これらの財産については遺言書を作成し、承継先を明確に定めておくことが重要です。

●家族信託と遺言書を併用するときの注意点

家族信託では生前の財産管理を先行して定め、遺言書は死後に残る財産の分配方法を定めます。ただし、どの財産を家族信託に含め、どこから遺言書で指定するのかを明確にしておかないと、相続手続きが複雑になる可能性があります。書類の整理や契約内容の確認は、専門家のアドバイスを受けながら丁寧に進めましょう。

●当事者や財産の変動に備える信託内容の設計

家族信託を設計する際には、受益者や受託者が死亡した場合の次の受益者・受託者指定や、財産価値の変動に備えた条項を考慮することが望ましいです。家族状況や財産の将来的な変動に備え、長期にわたって問題が起こらない仕組みを整えることが重要です。

その他の配慮すべき点

遺言書で特定の相続人に財産を集中させる場合、兄弟姉妹以外の法定相続人が持つ遺留分(最低限の取り分)を侵害し、将来的なトラブルの原因となるおそれがあります。円満な相続を実現するためには、事前に遺留分相当額を考慮したうえで遺言を作成し、財産配分について相続人への十分な説明と話し合いの機会を持つことが重要です。

また、家族信託を利用する際は、受託者が単独の判断で財産を管理していると家族間で不信感や対立が生じるケースも考えられます。こういった問題を避けるため、信託契約時に受託者の役割や報告義務を明確に定め、定期的に財産状況を開示するなどして透明性を確保することを検討しましょう。

家族信託や遺言書を検討すべきケース・不要なケース

ご家族が認知症になるおそれがある場合や、相続人が多い、あるいは相続対象の財産が複雑な場合などは、家族信託を検討するメリットが大きいです。特に不動産の処分や大きな資金移動が必要なときに、後見手続きの煩雑さや費用を回避できるのは大きなメリットといえます。

一方、収益物件など積極的に管理・処分したい財産がない場合は、任意後見制度や法定後見制度といった制度を利用した方がよいケースもあります。また、主な財産が預金のみの場合には、各金融機関の指定代理人制度を利用することで十分なケースもあります。まずはご自身の家族構成や財産内容を洗い出し、専門家と相談して最適な方法を見極めることが賢い選択といえます。

まとめ・総括

家族信託は、生前からの財産管理に焦点を当てる柔軟な制度であり、認知症対策や親族同士のトラブル回避に効果的です。そして、遺言書は、遺言者の最終の意思表示として円満な財産配分に欠かせない手段といえます。

両者を併用する場合には、家族構成や財産の種類、ご本人の希望を踏まえて整合性を十分に確保することが重要となります。最終的には、専門家との相談を通じて最適な方法を選ぶことが重要です。相談する際には、依頼先の過去の実績や対応方針をしっかりヒアリングし、費用だけでなく、アフターフォローの充実度にも目を向けながら、生前のうちにしっかりと準備を進めることが、家族全員の安心と円満な相続の鍵となるでしょう。

家族信託について、更に知りたい方はこちらのコラムもご覧ください。

  • 本資料・記事は執筆時点の法令・通達等に基づいて作成しています。今後の法改正等により法令・通達等が変更される可能性があります
  • 本資料・記事に記載されている情報は、公開日または更新日時点のものであり、内容の正確性や完全性、またその後の変更、最新性等について保証するものではありません。
  • 本資料・記事は一般的な情報の提供を目的としており、特定の商品の勧誘のために作成したものではありません。

本資料・記事の内容に基づいて行われた行為により生じた損害等について、当社は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

<コラムポリシー>

コラムは一般的な情報の提供を目的としており、当社で取り扱いのない商品に関する内容も含みます。また、内容は掲載日当時のものであり、現状とは異なる場合があります。

情報は当社が信頼できると判断した広告提携業者から入手したものですが、その正確性や確実性を保証するものではありません。コラムの内容は執筆者本人の見解等に基づくものであり、当社の見解等を示すものではありません。

なお、コラムの内容は、予告なしに変更、削除することがあります。

SBIマネープラザ株式会社

オンライン相談可相談無料訪問対応可無料セミナー資産運用相談
対応地域
全国
営業時間
平日 9:00~18:00
アクセス
南北線「六本木一丁目」駅直結
得意分野
相続全般コンサルティング