遺言書は必要? 円満相続のために知っておきたい基礎知識

執筆:SBIマネープラザ株式会社

更新:2026年01月22日

ご自身が亡くなった後、財産は法律で定められたルールに則り相続手続きが進みます。しかし、そのルールが、必ずしもご自身の想いや、ご家族にとっての円満な相続を実現するとは限りません。

例えば、長年連れ添った配偶者に多くの財産を残したいと思っても、遺言書がなければその意思は反映されにくいのが実情です。

この記事では、なぜ遺言書が必要なのか、遺言書の基礎知識とその効力についてご紹介します。

遺言書とは?

遺言書(ゆいごんしょ・いごんしょ)は、大切な財産や想いを「誰に」「どのように」残すかを明確に示す、法的な効力を持つ文書です。

これは、単なる手紙とは異なり、ご自身の死後に生前の意思を実現させるための法律で認められた意思表示となります。

遺言書でできること

遺言書には、主に以下のような法的効力があります。

  1. 相続分の指定

法律で定められた相続割合とは異なる割合で、相続分を指定できます。

  1. 遺贈(いぞう)

原則、相続人となれるのは配偶者・子・親などに限られますが、遺言書による遺贈であればそれ以外の人にも財産を譲ることができます。

  1. 相続人の廃除・廃除の取消

自身への虐待があった場合など、特定の相続人に遺産を相続させたくない場合に相続の権利を失わせる、または一度決めた廃除を取り消すことができます。

  1. 子の認知

婚姻関係にないパートナーとの間に生まれた子を、自身の子として法的に認知できます。

遺言書と遺産分割協議、法定相続の違い

相続において「誰が・何を・どれだけ受け取るか」を決める基準には、主に以下の3つがあります。

①遺言書

亡くなった方が、生前に「誰に何を渡すか」を指定した文書です。

最も優先順位が高く、原則としてこの内容に従って遺産が分けられます。

②遺産分割協議

遺言書がない場合に、相続人全員で話し合って分け方を決める方法です。

全員が合意すれば、法定相続分にとらわれず自由に分けることができますが、一人でも反対すれば成立しません。

③法定相続

民法で定められた「誰が相続人になるか」「どれくらいの割合で受け取るか」というルールのことです。

遺産分割協議がまとまらない場合や、そもそも話し合いをしない場合は、法定相続分に従って分けることになります。

手続きの優先順位は 「①遺言書 > ②遺産分割協議 > ③法定相続」 となります。遺言書によって、法律が定めた画一的なルールや、相続人同士の話し合い任せにせず、自身の想いを優先させた柔軟な財産分けが実現できます。

遺言書がないとどうなる? 法定相続の落とし穴

法定相続は法律で公平に決められているなら安心だと思われがちですが、家族間のトラブルになるケースも少なくありません。

円満相続にならない理由

遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を開き、誰が、どの財産を、どれだけ相続するかを話し合って決めなければならず、相続人全員の合意がなければ成立しません。一人でも納得しない人がいれば、相続手続きがストップしてしまいます。

「実家の不動産は長男が相続すべきだ」、「いや、全員で平等に分けるために売却すべきだ」、「介護は私が一番やったのだから、多くもらう権利がある」など、分けにくい財産があったり、相続人それぞれの事情や感情が絡み合ったりすると、話し合いがまとまらず、円満だった家族関係に亀裂が入ることも珍しくありません。

財産が少なくても争続トラブルは起こる

「うちは財産と呼べるものがないから、遺言書なんて必要ない」という方もいますが、本当にそうなのでしょうか。

以下の表は、遺産分割に関するトラブルの発生件数を、財産の金額別に整理した件数です。

遺産分割事件の遺産の価額別内訳表

出典:最高裁判所 令和6年 司法統計年報(家事編)のデータを基に作成

家庭裁判所に持ち込まれる相続トラブル(遺産分割調停)のうち、遺産総額5,000万円以下が78%を占めており、財産が自宅と少しの預貯金だけ、といった場合のほうがトラブルに発展しやすいという点に注意が必要です。

法定相続では「想い」が反映されない

法定相続は、あくまで法律上の権利関係に基づいて財産を分けるルールのため、遺言書がなければ以下のような想いは実現できません。

  1. 相続人ではない人への感謝

長年連れ添った内縁のパートナー、身の回りの世話をしてくれた子の配偶者、特定のお世話になった友人などは法定相続人ではないため、遺言書がなければ財産を渡すことができません。

  1. 相続人ごとの事情への配慮

家業を継ぐ子に会社の株式を集中させたい、体が不自由な子に多めに財産を残したいなどの想いがあっても、法定相続では原則として法律で定められた割合で分けることになります。

  1. 相続人がいない場合

身寄りがないなど法定相続人がいない場合、遺言書がなければ、最終的に財産は国のものになります。

遺言書の主な種類と特徴

遺言書には、定められた種類があり、方式を間違えるとせっかく作成しても法的に無効になってしまうため、注意が必要です。

遺言書の種類

自筆証書遺言

秘密証書遺言

公正証書遺言

概要

自分で全文を書く

ただし、財産目録は、パソコンでも作成可

自分で全文を書く

パソコンでも作成可(ただし、署名は自署が必要)

法律の専門家である公証人が正確に作成し、保管する

費用

法務局の保管制度利用せず

法務局の保管制度

利用

11,000円

公証人手数料として遺言内容や財産額により変動

無料

3,900円

作成方法

1人で可能

公証人と証人2

作成場所

どこでも可

原則公証役場

手続場所

手続不要

法務局

原則公証役場

保管場所

自宅等

法務局

自宅等

公証役場

適法性リスク

未発見リスク

やや低

やや低

検認

必要

不要

必要

不要

 ※検認とは
家庭裁判所で相続人等の立会いのもと、遺言書の開封や内容確認を行う手続きのことです。遺言書の偽造・変造を防ぐための証拠保全が目的であり、遺言が有効か無効かを判定するものではありません。申立てから完了まで通常1〜2ヶ月程度かかり、その間は相続手続きが進められません。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言書の全文、日付、氏名を手書き、押印し作成する方式です。

以前は遺言書の紛失や改ざん、遺言書を作ったことに遺族が気づかないなどのリスクがある方式でしたが、

2020年から自筆証書遺言書保管制度が始まり、遺言書を法務局に預けることで、紛失・改ざんのリスクや面倒な検認も不要となり、自筆証書遺言の手軽さを活かしつつデメリットを補う有効な選択肢となりました。

ただし、自分で全文を書くため、書き間違いなどにより無効になるリスクがある点には注意が必要です。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、「作成した遺言書が存在すること」「遺言書は本人が作成したこと」を、公証人および証人2名に証明してもらう方式です。公証人や証人を含め、遺言内容を秘密にしたまま遺言書の存在だけを公証役場で証明できますが、内容を確認しないため書き間違いなどで無効になるリスクは自筆証書遺言と同様に残ります。また、法務局保管の自筆証書遺言や公正証書遺言と異なり、検認が必要となります。

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証役場で公証人に内容を伝えて遺言書を作成してもらう方式です。公証人が作成するため最も確実な方式ですが財産額に応じて公証人手数料がかかります。

遺言書を作成する3つのメリット

遺言書がない場合、残された家族間の争族トラブルに発展する可能性があるため、自身の意思を明確にすることで家族を争続から守ることができます。

メリット1:自分の意思を優先できる

遺言書の最大のメリットは、遺産分割や法定相続分よりも、自身の意思を優先でき、特定の人に多く渡す、相続人以外の人に渡す、特定の相続人には渡さないなどを決めることができ、家庭ごとの事情や想いに基づいた柔軟な相続が実現できます。

ただし、配偶者・子・親などの一定の相続人には法律で保障された最低限の遺産(遺留分)を受け取る権利があります。遺言書の内容が権利を侵害していても遺言自体は有効ですが、後から他の相続人に請求され、トラブルになる可能性があるため配慮が重要です。

メリット2:相続手続きの負担を大幅に軽減できる

遺言書がない場合、相続人全員で「遺産分割協議書」を作成しますが、全員の合意が得られない場合、銀行預金の解約や不動産の名義変更等ができません。一人でも連絡が取れなかったり、話し合いに反対したりすれば、すべての手続きが凍結されてしまいますが、法的に有効な遺言書があれば、原則として遺産分割協議は不要になり、相続手続きは遺言書の内容に従って進められるため、家族の負担とそして精神的なストレスを大幅に軽減できます。

メリット3:財産分けの理由や「想い」を伝えられる

財産分けの内容だけが記されていると、「なぜ自分はこれだけなのか?」「兄ばかり優遇されている」といった不満や疑念が生まれることがあります。遺言書には、法的な効力を持つ本文とは別に、付言事項(ふげんじこう)として、メッセージや感謝の言葉を残すことができます。

「なぜ、このような財産分けにしたのか」という理由、「これまで本当にありがとう」という感謝の気持ち、「仲良く暮らしてほしい」という願いなど、付言事項に法的な拘束力はありませんが、ご自身の真意や想いを伝えることで、相続人の納得感を高めることができます。

実務経験豊富なコンサルタントにおまかせ

相続トラブルに発展する原因は、故人の明確な意思がわからないことです。

財産の額にかかわらず、遺言書がなければ残された家族は法定相続人全員で遺産分割協議という大きな負担を背負うことになります。

遺言書を作成することで自身の想いを法的に実現し、相続トラブルを未然に防ぐことができますので、まずはご自身の想いを整理することから始めてみませんか。

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