【令和8年度税制改正大綱】賃貸不動産を活用した相続対策に影響?評価方法見直しのポイント

執筆:SBIマネープラザ株式会社

更新:2026年02月12日

令和712月、令和8年度税制改正大綱が閣議決定され、公表れました。今回の改正において、資産家や不動産オーナーが特に注視すべき点は、賃貸不動産における相続税評価額の算定ルールの見直しです。

影響を受ける可能性がある方

①相続対策として賃貸不動産の購入を検討している方

令和911日以後の相続では、取得から5年以内の貸付用不動産について、従来の路線価等ではなく、取得価額を基にした評価方法が適用されます。

②不動産小口化商品を保有している方、または購入を検討している方

不動産小口化商品については、取得時期に関わらず新しい評価方法が適用されます。すでに保有している商品も対象となる可能性があります。

③5年以上前から所有している土地に賃貸物件の建築を検討している方

経過措置により、一定の条件を満たす場合は従来の評価方法が適用されます。

近年、不動産は実勢価格と相続税評価額の乖離是正が進められてきましたが、令和8年度改正ではさらに踏み込んだ適正化が図られる見通しです。

本記事では、税制改正大綱のポイントを紐解きながら、不動産を活用した相続対策への具体的な影響について専門的な視点から解説します。

なぜ評価方法が見直されるのか

現行の評価方法

相続税法では、相続財産は「時価」で評価することとされています。実務上は、国税庁の「財産評価基本通達」に基づき、土地は路線価(地価公示価格等の約8割程度)、建物は固定資産税評価額を基に評価するのが一般的です。

賃貸に供している不動産は「貸家建付地」「貸家」としてさらに評価減が適用されるため、現金で保有するよりも相続税評価額を引き下げることが可能でした。

見直しの背景

この仕組みを利用し、貸付用不動産の市場価格と通達評価額との乖離によって相続税額・贈与税額を大幅に圧縮している事例が把握されていました。

現行制度でも通達の定めによる評価が著しく不適当な場合、国税庁長官の指示により個別に評価する規定(いわゆる「総則6項」)がありますが、今回の改正によって評価方法が抜本的に見直されることとなりました。

きっかけとなったのは、令和44月の相続税評価をめぐる最高裁判決で、この事案は、被相続人が取得したマンション2棟(購入価格:約13.8億円)について、相続人が路線価に基づく評価額(約3.3億円)で申告し、借入金との相殺により相続税を0円としたものです。国税当局は不動産鑑定評価額(約12.7億円)で再評価し、約3億円を追徴課税しました。最高裁は国税当局の処分を適法と認め、相続人側の敗訴が確定しています。

今回の改正は、こうした状況を踏まえ、評価の適正化及び課税の公平性を図る観点から行われるものです。

改正内容①:取得後5年以内の貸付用不動産

対象

被相続人等が、課税時期(相続開始・贈与)前5年以内に、対価を伴う取引により取得または新築した一定の貸付用不動産

評価方法

課税時期における通常の取引価額に相当する金額(原則として、取得価額を基に算定)によって評価

課税上の弊害がない限り、次の計算により評価することができるとされています。

取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額 × 80%

ポイント

  • 取得から5年超が経過した貸付用不動産については、従来どおり路線価等による評価が適用される見込みです
  • 「一定の貸付用不動産」の具体的な範囲は、今後発遣される通達で明らかになります

改正内容②:不動産小口化商品

対象

以下の契約に基づく権利の目的となっている貸付用不動産

  • 不動産特定共同事業契約
  • 一定の信託受益権に係る金融商品取引契約

評価方法

取得時期に関わらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価

具体的には、以下の価格等を参酌して算定します。

  • 事業者等が示した適正な処分価格・買取価格
  • 事業者等が把握している適正な売買実例価額
  • 定期報告書等に記載された不動産の価格

上記に該当するものがない場合は、取得後5年以内の貸付用不動産と同様の方法で評価することとされています。

ポイント

  • 一般の貸付用不動産と異なり、「5年以内」という取得時期の基準がありません
  • すでに保有している商品についても、令和911日以後の相続等では新しい評価方法が適用されます

いつから適用される?経過措置は?

適用時期

令和911日以後に相続、遺贈または贈与により取得する財産の評価に適用(令和911日より前に相続等が発生した場合は、現行の評価方法が適用されます。)

経過措置(取得後5年以内の貸付用不動産)

以下の条件を両方満たす場合、改正後の評価方法は適用されません。

つまり、長期間所有している土地に、通達発遣日までに賃貸物件を新築した場合は、従来の評価方法が適用されることになります。

ポイント

  • 経過措置は「取得後5年以内の貸付用不動産」に関するものです
  • 不動産小口化商品については経過措置の記載がなく、令和911日以後は取得時期に関わらず新しい評価方法が適用されます
  • 今から貸付用不動産を取得した場合、改正後の評価方法の対象外となるには5年超の保有期間が必要です

複雑化する相続・贈与は専門家への相談がおすすめ

令和8年度税制改正大綱では、貸付用不動産の相続税評価方法について見直しが盛り込まれました。

一定の貸付用不動産の具体的な範囲など、詳細は今後発遣される通達で明らかになります。賃貸不動産を活用した相続対策をお考えの方は、税理士等の専門家にご相談されることをお勧めします。

令和8年度税制改正大綱では、不動産投資を用いた過度な相続税・贈与税対策の抑制に加え、納税者の予見可能性を高めることを意図したものと考えられます。これにより、実需や経済合理性に基づいた不動産取得であれば、相続等の際に意図せず相続税・贈与税の圧縮が目的とみなされ財産評価基本通達総則6項が適用されるリスクは従来よりも低下すると予測されます。

インフレヘッジとしての現物資産投資は依然として合理的ですが、今後はより厳格な投資規律が求められ、特に、以下の視点を欠いた節税目的のみの投資は大きなリスクとなり得ます。

  1. 流動性の確保:納税資金等を円滑に準備できるか
  2. 収益性の検証:出口戦略を含め、事業として成立するか
  3. 適合性の確認:投資家の年齢や属性に見合っているか

令和911日の改正施行を見据え、本年中の生前贈与の増加が見込まれます。しかし、制度の隙間を突くような駆け込み贈与は、依然として総則6項の射程圏内にあると考えられます。

否認リスクを避けるためにも、専門家によるシミュレーションを行い、慎重な意思決定を行うことをお勧めいたします。

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