家族と話す相続対策:実体験から学ぶ(株式会社SBI証券2024.12.4)

何気ない会話をきっかけに
今日は私(50歳)が両親の相続対策を行った際の経験についてお話ししたいと思います。
80代の父と70代後半の母は大病もなく健康に暮らしているため、これまで相続対策には全く関心がありませんでした。
ある夏、私が姪っ子にお小遣いを渡すため帰省をしたときに、母から「テレビで話題になっている株について教えてほしい」と相談を受けました。証券会社に勤めている私は、家族からときどき投資のアドバイスを求められることがありましたが、さすがに今回は「後期高齢者が今から積極的に運用するべきか考えた?大丈夫?そのお金は何のためのお金?」と聞いてしまいました。すると、「万が一認知症になったときに施設に入るお金」と言われたのです。驚きました。失くなってはいけないお金で株式を買おうとしていたのです!
私は、お金にはいくつか種類があることを説明することにしました。「今すぐ使うお金」「将来使うかもしれないが今は使わないお金」「遺すお金」があります。今回は2番目ですよね。将来がいつになるかはわかりませんが、母の年齢を考えると今から株式投資に回すのは適切とは言えません。また、認知症を発症した場合には預金が凍結される可能性が高く、元気なうちに備えておく重要性を伝えました。「じゃあ、調べてきてよ」ということで、私が近くの金融機関で話を聞くことにしました。
翌日、ある銀行を訪れました。認知症対策のサービスについて聞きたいと伝えると、すぐに担当の方が出てこられ、丁寧に説明をしてくださいました。一通り提案を聞いたものを家に持ち帰り、家族全員で話し合った結果、株式を買うと言っていた資金はその銀行の認知症対策商品へ預けることを決めたのでした。
私は東京で生活をしていて、実家の面倒は妹が見ています。その商品を選んだ決め手は、両親に何かがあった場合に対応する妹が引き出せる点でした。
今回の出来事を通じて、両親の財産総額やどの資産を誰が引き継ぐかなど話すきっかけとなり、将来の方向性を家族全員で相談し、意見を一致することができました。
母の何気ない一言から相続の話ができた例でしたが、両親と相続の話はなかなかしにくいものです。日ごろの会話の中からチャンスを見つけて話をして、いざその話になったら総論までお話ができればよいのかなと思います。
コラムを読んでいる皆様のご参考になれば幸いです。
ちなみに、銀行に伺った際に、私が金融機関の人間でファイナンシャルプランナーであると悟られないようにしていましたが、初回の面談でばれていたそうです。
