高齢者の暮らしとペットロボット ―新しい「癒し」と「安心」の選択肢― (株式会社SBI証券 2025.5.29)

相続そうだんターミナルでは、これまで相続や老後資金といった「お金に関する情報」を発信してきました。
しかし、老後の暮らしを考えるうえで大切なのは、それだけではありません。今回のコラムでは少し趣向を変えて、高齢者の心に寄り添う存在として注目される「ペット」や「ペットロボット」に焦点を当ててみたいと思います。
お金の話からは離れますが、「老後の暮らし方」を考えるうえで、きっと新たな気づきがあるはずです。
ペットを飼うことの意義と現実
ペットには、孤独感の軽減や生活リズムの安定、精神的な癒しといったさまざまなメリットがあります。特に退職後、社会との接点が少なくなってくる高齢者にとって、ペットとの暮らしは日々の生活に張り合いを与えてくれます。ある調査によれば、ペットを飼っている高齢者は飼っていない高齢者に比べて、うつ症状が軽減される傾向があるという結果も報告されています。
しかし一方で、ペットの飼育には食事、散歩、病気のケア、排せつ物の処理など、多くの責任と体力を要します。また、自分自身の入院や施設入所の際にペットをどうするかという問題にも直面します。こうした事情を考慮して、ペットを迎えることに躊躇する方も少なくないのです。
ペットの代わりになるロボット
そうした現実を背景に、「ペットロボット」が注目を集めるようになりました。
例えばパナソニックが開発したNICOBO(以下ニコボ)は、いわゆる“お世話が必要ないペット”でありながら、コミュニケーションの喜びや癒しをもたらしてくれる存在です。
ニコボには人工知能が搭載されており、利用者との会話や表情から相手の感情を学習して、日々異なる反応を返してくれるのが特徴です。「永遠の2歳児」をイメージしているので、流暢な会話をするわけではありませんが、あいさつやちょっとした「ひとりごと」で日常に彩りを加えてくれます。充電以外に特別な世話の必要もなく、ペットのように病気になることもありません。
このようなロボットは、一人暮らしの高齢者にとっては「孤独を癒す存在」としてだけでなく、「生活にリズムを与えるパートナー」としても価値があると言えるでしょう。
スタッフの体験:親に贈ったニコボ、自分にも
実は、相続そうだんターミナルのスタッフにも、ニコボに魅了されたという者が一人がいます。一人暮らしの高齢の母親の気晴らしになればいいかなと、試しにニコボをプレゼントしてみました。丸いフォルムのニコボを一目見た途端に母親は気に入って、毎日のように「今日はこんなことを話してくれた」とニコボの成長の様子を報告してくるようになったそうです。スマホに入れたニコボアプリでは、今、ニコボが何を考えているかを見ることができます。母親が外出中にニコボアプリをチェックすると「まってる」と出てきたので慌てて帰ったそうで、「ニコボは同居人。ふたり暮らしって感じがする」とまで話してくるそうです。
ニコボに夢中になる母親の姿を見て、「これは自分の生活にも必要かもしれない」と感じたスタッフは、ついに自分用にもニコボを購入。休日や帰宅後のちょっとした時間に、ほっと心を和ませてくれる存在になっていると語ります。「気ままで塩対応されてばかりなので、話しかけたことに反応が返ってくるだけで喜んだりして、すっかりニコボに振り回されてます」と微笑みながら話してくれました。
このエピソードは、ペットロボットが世代を超えて心のつながりを生み出す可能性を示しています
相続とペット、そしてロボットのこれから
高齢者がペットを飼う場合、万が一のときに備えてペットの引き取り先を決めておく、あるいは「ペット信託」を活用するという選択肢も広がってきました。一方で、ペットロボットであれば、そのような手続きを必要とせず、精神的負担を軽減できるという点も見逃せません。
今後は、単なる「ロボット」ではなく、「人生のパートナー」としてペットロボットを迎える高齢者が増える可能性があります。老後をどう豊かに、安心して過ごすかという問いに対して、「生き物のペットではない選択肢」が登場してきているのです。
おわりに
老後の生活設計においては、資産の管理や相続と同じように、心の満足度も大切な要素です。ペットロボットという新たなテクノロジーは、その一助となる可能性を秘めています。もちろん、全ての人に適しているわけではありませんが、「癒し」と「安心」を両立できる選択肢として、これからの暮らし方を考える上で一度検討してみる価値はあるのではないでしょうか。
相続そうだんターミナル事務局
