日米金利ギャップ縮小と米利上げ無しのシナリオ

投資情報部 土居 雅紹
2026/08/27
米国金利に政権からの圧力?
■米国財務省の金利警戒――国債買い入れに映る危機感
混乱が続く中東情勢とその結果としての原油高、米ドルが円以外の通貨に対して下落したことによる輸入物価の上昇、トランプ関税などが複合的に米国の物価に影響を与えています。7月の米国消費者物価指数(CPI・前年同月比)は3.4%と前月の3.5%から下がりましたが、依然として高水準にあります。このため、米国国債利回りは2026年2月28日の米・イスラエルによるイラン攻撃以来、停戦協議の動向によって振幅はあるものの各年限で水準を切り上げています(図表1)。
一方、2026年11月の中間選挙が迫っていることもあり、トランプ政権は従来からの利下げを求める主張を強めていることがうかがえます。米国財務省は2026年8月19日(現地時間)に、流動性支援を目的とした長期・超長期国債の買い入れオペ(公開市場操作による買い入れ)について、1回当たりの買い入れ上限額を20億ドルから少なくとも40億ドルに倍増すると発表しました。米国内には高金利が企業の資金調達コストを押し上げ、消費意欲の減退につながることへの懸念があります。米国財務省は金利抑制を公式目的とは説明していませんが、買い入れ拡大が長期金利に低下方向の影響を与える可能性は残ります。このため、事実上、長期金利上昇の抑制を主たる目的の一つとしているのではないかと私は考えています。
■政策金利の引き上げを迫られる日本――国債利回りは着実に上昇
日本でも、原油高と円安によって輸入品・食料品を中心に物価上昇圧力が強まっています。一般的な経済セオリーで考えるなら、物価上昇を抑えたいのであれば、政策金利の引き上げは有効な手段の一つといえます。加えて、円安ドル高の原因の一つに日米金利差があるとも考えられています。政策金利を引き上げれば、この金利差が縮小し、円安に歯止めがかかることも期待できます。円安が物価上昇を招き、それがさらなる金利上昇につながるという悪循環を断ち切るためにも、今後複数回の利上げが行われるとの見方が強まっています。
さらに、米国財務省は円安への懸念を表明し、日銀の金融政策正常化がインフレ期待の安定や為替変動の抑制に寄与するとの見方を示しています。米国財務省のこうした見方の背景には、①円安、②日本国内の物価上昇、③円金利上昇という一連の流れが米国の金利を上昇させることへの懸念があるのではないか、と私は推測しています。こうした物価上昇圧力と政策金利引き上げ期待を背景に、底這い状態にあった日本国債利回りは、各年限で着実に水準を切り上げています(図表2)。
図表1 米国国債利回りの推移(2021/9/1~2026/8/21)
図表2 日本国債利回りの推移(2021/9/1~2026/8/21)
日米金利ギャップ縮小と投資アイデア
■短期金利ギャップの拡大――米国短期国債への投資機会?
米国国債の利回りが高水準かつ上昇傾向にある一方、日本の国債利回りは一本調子の上昇となっています。この結果、日米金利ギャップは全体として徐々に縮小しています(図表3)。ただし、2年国債利回りだけは例外で、2026年2月28日の米・イスラエルによるイラン攻撃を境にギャップが拡大し、他の年限との差が顕著になっています。その結果、2026年7月27日時点での日米2年金利ギャップは、2.81%ポイントに達し、過去1年間で最も広い水準となりました。
これは原油高による短期的なインフレ懸念が生じたものの、長期的な見通しには変化がなかったためと考えられます。なお、今後FRBが利上げ姿勢を示さずに「政策の柔軟性」を強調するようであれば、米国短期金利が低下する可能性があります。その場合、目先は残存期間2年から3年程度の米国短期国債への投資で、米ドル建での相対的に高い利回りと値上がり益の両方を期待できる可能性があります。
■為替変動リスク――円高転換までの時間軸を考える
米国国債利回りは現状でも高水準にあるものの、円金利の上昇によって20年や30年といった長い年限では日本国債との利回りギャップが縮小しています。それでも1~2%ポイントのギャップがあるので、長期間の米ドル建利回りを得たいと考える場合には、有効な選択肢と考えられます。
この場合においても、為替変動リスクについて考えておく必要があります。現在、「歴史的」な円安が続いていますが、円高転換の可能性が存在します。きっかけが何になるかは断定できませんが、日本の政策金利が連続的に引き上げられて、日米国債の利回りギャップが各年限でさらに縮小した場合は、分かりやすいカタリストとなる可能性があります。
円高転換のもう一つのきっかけとして、高市政権の「積極財政」による財政赤字急増への懸念が和らぐことも考えられます。こうした本格的な円高転換へと潮目が変わるまでには、なお時間を要すると考えるのであれば、日米国債の利回りギャップが大きい、残存期間2年から3年程度の米国短期国債は、比較的検討しやすい選択肢と考えられます。一方、米国20年国債や米国30年国債のような超長期国債は、円高転換リスクを前提とした損益分岐点為替の検討がより重要になります。為替レートが現状のまま推移することを前提に、米国短期国債の日米金利ギャップを享受するのか、それとも円高転換リスクを織り込んだうえで米国超長期国債の超過リターンを狙うのか、投資家の判断が分かれるところといえます。
■まとめ
・米国財務省は、長期・超長期国債の買い入れオペにより事実上金利上昇を抑えようとしている可能性。また、円安と日本の物価上昇を経由した日本の金利上昇が、米国金利を押し上げることを懸念していると推測
・日米の短期金利ギャップは依然として大きく、長期・超長期ではギャップが縮小傾向
・FRBがインフレへの懸念を強く示さないと考えるのであれば、米国短期金利の低下を予想した米国短期国債への投資妙味が生じる可能性
・投資期間が長いほど円高転換リスクを前提にした検討が必要で、損益分岐点為替の確認が重要
※過去の為替・金利の推移は将来の成果を示すものではありません。また、外貨建債券への投資は、円換算では為替変動により損失が生じる可能性があります。
図表3 日米国債利回りギャップの推移(2021/9/1~2026/8/21)
SBI証券で米国短期国債の既発債券を探す
ここではSBI証券のWebサイトで、残存期間が2年から3年程度の米国国債(既発)を探してみます。
- SBI証券のトップページにアクセスし、PCの場合は「債券トップ」の左横のメニューから「外貨建」の「+(プラス)」をクリックしてメニューを広げ、「既発債券」をクリックします(スマホの場合は「債券トップ」から上段メニューの「外貨建」を選び、ページ中央に表示される「既発債券」をクリックします)。
- 次に、絞込条件の設定画面が閉じられている場合には、「絞込条件を開く」をクリックします。通貨「米ドル」と商品区分1「国債」にチェックを入れ、ここでは残存期間が2年から3年の銘柄を探すため、残存期間(年)に「2~3」を入力して「検索」をクリックします。
→この操作で、対象が7銘柄に絞り込まれます(2026年8月25日時点、図表4参照)。
便利な機能も活用しましょう
- 気になる銘柄を「登録」しておくと、いつでもまとめて確認することができます。
- 外貨建債券では、「試算」機能を使って、為替変動の影響を含む購入後の損益をシミュレーションすることもできます。
SBI証券での債券取引の流れやお役立ち機能については、債券取引ガイドをご覧ください。
最後にひとこと
SBI証券で取り扱っている債券の銘柄や条件は、日々変わります。購入前には、必ず最新情報をWebサイトで確認してください。
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図表4 米国国債(既発債券、残存期間2年~3年)の検索結果(2026/8/25時点)
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