円金利上昇で今知っておきたい、単利と複利の違い

投資情報部 土居 雅紹
2026/09/10
単利と複利は何が違う?
■円貨建債券は単利、外貨建債券は複利で示されることが多い
円金利が上昇したことで、値ごろ感の出てきた円貨建債券と、相応の利回り水準にある米ドル建債券などを見比べる機会が増えると思われます。その際に注意したいのが、利回り表記に関する市場慣行の違いです。
一般的に、日本国内では円貨建債券の利回りが単利で示され、米ドルなどの外貨建債券では利回りが複利で示される場合が多いといえます。当社のWebサイトにおいても、円貨建債券(既発債券)の利回りは単利で表示され、外貨建債券(既発債券)の利回りは複利で表示されています(図表1)。
ここで少し注意が必要です。異なる指標同士をそのまま比べてしまうと、実際の水準を見誤るおそれがあります。そこで今回は、単利と複利それぞれの考え方の違いを整理したうえで、購入価格が額面に等しい場合(「パー」といいます)と、額面を下回る場合(アンダーパー)とで、同条件の債券でも、利回りが単利と複利でどう変わるのかを試算します。
■単利は簡便、複利はお金の時間価値を反映
円貨建債券で多く用いられる単利の利回りは、利金(額面金額×利率)に、額面と購入価格の差である償還差損益を残存年数で割った金額を加え、購入価格で割って求めます。
単利の利回り(%)=(1年分の利金+(額面金額-購入価格)÷残存年数)÷購入価格×100
単利の利回りは、複利に比べると計算が簡単で、一般的な電卓でも計算することができます。また、利回りの水準を大まかに把握する際に扱いやすい指標です(図表2)。
一方、外貨建債券で多く用いられる複利の利回りは、将来受け取る利金と償還金を、受け取る時期に応じて現在価値に割り引き、その合計が購入価格と一致する割引率(複利の利回り)を逆算したものです。単利と異なり、手計算で求めることは難しく、自分で複利の利回りを計算する場合は、金融電卓や表計算ソフトのRATE 関数やYIELD 関数などを用いる必要があります。
複利の利回りは、将来のお金は現在のお金と同じ価値ではないという「お金の時間価値」を考慮しています。この点が、単利との大きな違いです。ただし、複利の利回りどおりの運用成果を得るには、途中で受け取る利金(税引前)を同じ利回りで再投資できることが前提になります。実際には、長短金利が異なることに加えて、市場金利が変動するため、この前提が常に満たされるとは限らない点には注意が必要です。
図表1 SBI証券の取引メニューでの既発債券の利回り表示例(2026/9/3時点)
図表2 単利と複利 考え方の比較
パーとアンダーパーで確かめる、単利と複利の差
■購入価格が100のパーでは差が出ない
実際にどの程度の差が生じるのか、試算で確かめてみましょう。額面金額100、利率1%(税引前)の債券(半年ごとに0.5%支払い)について、残存期間を1年から30年までとして計算しました(図表3)。このうち、額面金額と等しい債券価格(パー)の場合は、どの残存期間でも単利・複利ともに1%となり、両者に差はありませんでした(図中紫線)。
なぜ差が生まれないかというと、パーでは「購入価格=償還価格=100」であるため、償還差損益がゼロとなるからです。単利・複利の差は、この償還差損益をどう計算に落とし込むかの違いから生まれるため、そもそも償還差損益がなければ、どちらの方法で計算しても「利率=利回り=1%」で一致します。このため、パーに近い価格で取引されている債券であれば、単利・複利のどちらで比較しても大きな誤差は生じにくいといえます。
■アンダーパーでは単利と複利の差が広がる
次に、同じ利率1%の債券価格が額面100に対して70まで大幅に下落した場合をみます(図中の細い赤色線と細い濃紫色線)。価格低下幅が大きく、その分償還差益が利回りに影響を与えるため、購入価格がパーの場合と比較してすべての年限で利回りが上昇しています。
これはパーとは異なり、アンダーパーの状況では「債券価格(70)<償還価格(100)」となり、償還時に差額の30が償還差益として生じるためです。この償還差益が利回りに上乗せされる分、利回りが高くなります。
また、同じアンダーパーであっても、購入価格と額面の差(償還差益)が大きいほど、また、残存期間が短いほど、単利と複利の差が目立ちやすくなる傾向がみられます。これは、単利が償還差益を残存年数で単純に割るだけの計算であるのに対して、複利は将来の受取額を現在価値に割り引いて計算するためです。
さらに、同じ残存年数で、債券価格が下落した場合には、単利の利回りの方が複利の利回りよりも上昇幅が大きくなります。図のA点(残存期間10年、債券価格70)では単利4.8%・複利5.7%で差は0.9ポイントでしたが、B点(残存期間10年、債券価格60)では単利6.5%・複利8.3%となり、差は1.8ポイントに拡大しています。このように債券価格が額面金額に対して大きく低下している場合には、同じ債券の利回りを単利にするか複利にするかで、数値が大きく異なることに注意が必要です。
特に、超低金利時代が長かった円貨建債券では利率が0.6%や0.7%といった条件のものが市場で流通しています。これらは今後日本の金利水準が上昇すると、額面に対して取引価格がさらに低下する可能性があります。そうなると単利と複利の差が大きくなるため、円貨建債券と外貨建債券を比べる際は、単利か複利かを確認することが重要と考えられます。
なお、本試算は、単利と複利の違いを分かりやすく示すための仮定の数値であり、将来の成果を示すものではありません。外貨建債券への投資は為替変動により損失が生じる可能性があります。投資に関する最終判断はお客さまご自身でお願いします。
■まとめ
・円貨建債券では単利、外貨建債券では複利で利回りが示されることが多い
・単利は、償還差損益を残存年数で割った金額と利金を用いて算出する簡便な指標
・複利は、将来のクーポンと償還金を現在価値に割り引いて逆算する、お金の時間価値を反映した指標
・購入価格が額面と同じ「パー」では、単利と複利の差は生じない
・円金利上昇局面で円債と外債を比較する際は、単利・複利どちらの利回りかを確認
図表3 単利と複利の利回り試算(利率1%、残存年数5年~30年)
SBI証券で日本国債の既発債券を探す
ここではSBI証券のWebサイトで、残存期間が10年から20年程度の日本国債(既発)を探してみます。
- SBI証券のトップページにアクセスし、PCの場合は「債券トップ」の左横のメニューから「円貨建」の「+(プラス)」をクリックしてメニューを広げ、「既発債券」をクリックします(スマホの場合は「債券トップ」から上段メニューの「円貨建」を選び、ページ中央に表示される「既発債券」をクリックします)。
- 次に、絞込条件の設定画面が閉じられている場合には、「絞込条件を開く」をクリックします。商品区分1「国債」にチェックを入れ、ここでは10年から20年程度の残存期間の銘柄を探すと仮定して、残存期間(年)に「9~21」を入力して「検索」をクリックします。
この操作で、対象が6銘柄に絞り込まれました(2026年9月3日時点、図表4参照)。
便利な機能も活用しましょう
・気になる銘柄を「登録」しておくと、いつでもまとめて確認することができます。
SBI証券での債券取引の流れやお役立ち機能については、債券取引ガイドをご覧ください。
最後にひとこと
SBI証券で取り扱っている債券の銘柄や条件は、日々変わります。購入前には、必ず最新情報をWebサイトで確認してください。
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図表4 日本国債(既発債券、残存期間9年~21年)の 検索結果(2026/9/3時点)
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