「月◯万円」から逆算し、「利回り5%」の中身を分ける
「将来、不労所得を月数十万円もらえるようにするには、どうしたらよいですか?年5%程度の利回りは期待できますか?」というご質問を、お客さまからいただくことがあります。
■まずは「元本×利回り÷12」の割り算から
ここで、「はい、分かりました。では、この商品をどうぞ。」とお答えする前に、まず、単純な割り算から始めます。1年間の運用成果は、おおまかに「元本×利回り」で表すことができ、それを12で割ったものが毎月の平均リターンといえます。例えば、元本2,000万円を利回り3%で運用すれば年60万円、月5万円です(図表1、税引前)。また、月20万円を利回り5%で得るには元本4,800万円、利回り3%なら8,000万円が必要です(黄色のハイライト箇所)。まずはこの早見表で、ご自身の位置を確かめ、足りない分を公的年金などでどこまで埋められるかを確認する必要があります。
■「5%の利回り」の異なる3つの意味
日常会話で「5%利回り」といった場合には、何を指しているのか混同されやすいので、まず言葉の意味を整理します。「年率5%の利回り」として意図されることが多いのは、①利金・配当金・分配金などのインカムを投資元本で除した「インカム利回り」※1、②インカム利回りにタコ配※2(元本払戻し分)を加えた分配金総額を、投資元本で除した「見かけ上の分配金利回り」、③インカムに値上がり益を含めたトータルリターンという、まったく異なる3つの意味に使われることがあります。このうち②のタコ配込みの分配金利回りは、税務上は区別されますが、しばしば①と同じように扱われてしまうことがあります。
※1 ここでは商品比較のために税引前を想定していますが、実際に手元に残るお金に関しては税引き後の利回りを確認する必要があります。
※2 タコ配またはタコ足配当:タコが自分の足を食べるということに元本の払戻しを喩えた表現です。元本払戻金となるか、普通分配金となるかは、各投資家の個別元本との関係で異なる場合があります。
現時点の日本の市場環境で、①のインカム利回りだけで安定して5%を期待することは現実的とは言えません。2026年9月1日時点で日本国債の利回りは5年2.25%、10年2.99%、20年3.87%、30年4.16%でした。米国上場の高配当株ETFの配当利回りは、例えば、iシェアーズ コア米国高配当株 ETF(HDV)が3.07%、バンガード 米国高配当株式ETF(VYM)が2.24%、State Street SPDRポートフォリオS&P500高配当株式ETF(SPYD)が4.10%でした※。
※Bloombergより転載
いずれも5%には届かず、米国上場の高配当株ETFの場合には、ここから外国での源泉徴収に加え、日本国内でも課税※されます。元本の値下がりリスクを抑えたうえで受け取れるインカム利回りは、現実には日本国債の運用で期待できる年3%前後が出発点になると考えられます(2026年9月1日時点)。この区別をしないまま投資元本に対して5%の金額を定期的に受け取ることを前提に商品を探すと、②のタコ配商品を購入することになり、元本を減らしていく可能性があります(商品性に問題があるわけではなく、意図的に元本を取り崩していく方法として用いるなら便利な面もあります)。なお、③のトータルリターンで5%を目指すのであれば、元本の価格変動リスクを伴いますが、想定リターンとして達成不可能な水準とはいえないでしょう。
※NISA口座での取引を除く
図表1 運用元本と月間、年間リターン早見表
トータルリターンの目安が高いと、元本が減るリスクが増す
■12の商品を、9つのモノサシで比較
定期収入を目的にした場合に利用されることが多い金融商品を12種類例示し、9つの項目で比較したものが図表2です。 まず、①トータルリターンの目安でその金融商品の稼ぐ力をみます。その稼ぎのうち、配当金や分配金から得られる分が②インカム利回りです。
債券の償還差損益は通常インカム利回りには入れないことが多いので、利率が低い債券の場合は、トータルリターンが高くても、インカム利回りが低くなります。国内債券は固定利付債であればインカムの変動がないことが他の金融商品と比べた場合のメリットといえます。この意味で、日本の国債利回りは「元本の値下がりリスクを抑えたうえで受け取れるインカム利回り」の基準といえます。
■高いトータルリターンは、元本の価格変動リスクの見返り
日本国債の利回りを上回るリターンは、どこから来ているのでしょうか?
答えは、何らかのリスクを引き受けた見返りです。高いリターンを期待するには、一般に価格変動リスクや信用リスクなどのリスクを取る必要があります。①のトータルリターンが「高」であれば、⑤の元本の価格変動リスクや⑥の倒産・破綻リスクなどを負っていることが多くなります。外貨建資産の場合は、為替変動リスクもあります。また、投資信託やETFのように分散投資ができていれば⑥の倒産・破綻リスクは低くなりますが※、個別株の場合は倒産・破綻リスクを考慮する必要があります。これは⑦の運用の手間と関連があり、ここでも、個別株ではタイムリーに投資対象の状況を把握する必要があります。
※投資信託やETFの場合、組み入れ銘柄の倒産・破綻は基準価額の低下として反映されます。
④のNISA成長投資枠が使えるかどうかという点では、毎月分配型の投資信託と債券などは対象とならないので注意が必要です。また、毎月分配型の債券型投資信託、ハイイールド債型投資信託、高配当株投資信託やREITの一部には、高い分配金を設定しているものがあります。これらの商品の中には、投資家の購入価額や運用状況によっては、分配金の一部または全部が実質的に元本の払戻しに相当する場合があるので注意が必要です。
図表2 定期収入作りに利用されることが多い12商品の比較
「年5%の定期収入」への3つの回答例
■「5%」の現実を受け止める
十分な資金を用意することができれば、日本国債を用いて「月額〇万円」をインカムだけで達成することができます。現在の日本の金利水準では、10年国債を用いて3%程度、残存期間20年超の国債を用いれば投資タイミングによって4%を超えるトータルリターンが期待できます(2026年9月1日時点)。しかしながら、「やっぱり年5%の定期収入が欲しい!」ということであれば、インカムだけで達成するのは難しいという現実を見る必要があります。
このため、「証券投資で定期収入が欲しい」というご要望への回答は、大きく分けて3通りになると考えられます(図表3)。まず1.インカム利回りだけで、元本の価格変動リスクをとらないケースです。この場合は、現在の日本の投資環境では、元本の価格変動リスクや大きな信用リスクを取らずに、5%の定期収入を期待することは現実的とはいえないでしょう。このため、元本の価格変動リスクを取らないことを優先し、5%を諦めることになります。現実を受け止めるということです。
例えば、満期が5年から30年までの日本国債に分散投資すれば、2026年9月1日時点の利回りの目安は、5年国債2.25%、10年国債2.99%、20年国債3.87%、30年国債4.16%だったので、均等に持つ場合の平均は年3.3%程度となります。ただし、個別の債券はNISAの対象外ですから、全額が課税口座になります。ここで無理に高い利回りを求めると、分かりにくい条件の下で元本の価格変動リスクを取ったり、信用リスクが高くなってしまったり、タコ配(元本の払戻し)で「定期収入」を水増しする金融商品を購入することになったりしかねません。
■トータルリターンで5%を目標にする
2つ目の回答例は、2.インカム+値上がり益で5%のトータルリターンを目指すというものです。この方法であれば図表2で挙げた金融商品の組み合わせが無数にあり、一定額のインカムと5%のトータルリターンを目指すことができます。ただし、インカムも変動しますし、元本の価格変動リスクも程度の差こそあれ生じます。ここでは債券主体でJ-REITと高配当株ETFを併用する2-Aと、値上がり益とインフレ耐性をより考慮した2-B(国内高配当個別株、J-REIT、高配当株ETF、海外REIT投信)を例示しています。
3つ目の回答は、3.の5%のトータルリターンを得たうえで、定期収入を証券会社の投資信託定期売却サービス(SBI証券では「定期売却設定」)を用いて実現するという手法です。対象となる金融商品は投資信託に限定されますが、各種株価指数(MSCI オール・カントリー・ワールド指数(ACWI)、S&P 500、日経平均株価など)への連動を目指す投資信託を用いて定期収入を実現できるという利点があります。
■まとめ
・インカム(債券利金、配当金、分配金)だけで定期収入を狙うなら必要元本が増す
・日本国債を超える想定利回り(トータルリターン)を求めるなら、元本リスクが伴う
・トータルリターンで考えるなら、投資信託の定期売却サービスを利用することも一案
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