【深掘り】NISA待機資金はどこに置く?

【深掘り】NISA待機資金はどこに置く?

まず待機資金の「性格」を考える

■なぜ「NISA待機資⾦」が⽣まれるのか

NISAのつみたて投資枠は年間120万円、成⻑投資枠は年間240万円で、合わせて年間最⼤360万円まで投資できます(⽣涯の⾮課税保有限度額は1,800万円)。相続や退職⾦などでまとまった資⾦が⼿元にあり、いずれはNISAで運⽤したいと考えている⽅の場合、年間の投資枠には上限があるため、360万円を超える分は「翌年以降に枠が空くまで待つお⾦」になります。

この待機している資⾦を、ただ銀⾏の普通預⾦に寝かせておくのは、少しもったいないかもしれません。とはいえ、近くNISAへ移す予定のお⾦で⼤きなリスクを取るわけにもいきません。ここで考えたいのは、あくまで「いずれNISAで投資する」と決めている資⾦の置き場所です。まずはその待機資⾦の「性格」を⾒極めることが出発点になります。

「数年で埋めたい」か「⼀括で⼊れたい」か

運⽤先を考えるうえで最初に⾃分へ問いかけたいのが、⾃分は次のどちらのタイプか、ということです。ひとつは、投資のタイミングを数年に分けて、じっくりNISA枠内でポートフォリオを組み⽴てたいタイプです。もうひとつは、本当はまとまった資⾦を今すぐ全額投資したいというタイプです。この場合は、NISAの年間投資枠が上限となり、枠が空くまで待っていることになります。

前者なら、待機資⾦は「値動きを抑えて、なるべく減らさずに待つ」ことが⽬的になります。後者なら、「待っている間も、できるだけ本来の投資対象に近い形で運⽤したい」という発想になります。どちらを選ぶかで、待機資⾦に持たせる役割はまったく変わってきます。同じ待機資⾦でも、⽬的が違えば適した置き場所は変わるため、タイプ別に⾒ていきます(図表1)。

待機資⾦の「性格」で置き場所を⾒極める

数年かけて埋めたいなら、円建短期債で⼿堅く待つ

待機中は、値動きを抑えつつ利回り向上を狙う

数年かけてNISA枠を埋めていきたい⽅にとって、待機資⾦は「増やす」より「減らさずに待つ」ことが優先されます。とはいえ、普通預⾦に置いたままでは⾦利はごくわずかで、待っている数年間を活かしきれません。そこで候補になるのが、価格変動リスクを抑えつつ、少しでも良い利回りを狙える置き場所です。具体的には、定期預金と円建ての既発債券※(すでに発⾏され市場で取引されている債券)です。前者は、ネット銀⾏などが実施する定期預⾦の⾦利キャンペーンで条件の良いものがあればそれを利⽤します。後者は、円建ての既発債券のうち、高格付けで、残存期間が1〜3年程度の銘柄を活⽤する⽅法が考えられます。このとき、翌年初めのNISA枠が更新されるタイミングに定期預金の満期日や債券の償還時期を合わせて利用すれば、必要なときに現⾦化できて、待機から投資への橋渡しがスムーズになります。

※既発債券は市場価格で取引され、途中で売却する場合は価格変動により損益が⽣じることがあります。また、発⾏体の信⽤リスク(デフォルトの可能性)にも留意が必要です。

■為替変動リスクを避ける

現在の日本の金利状況に鑑みれば、円預金よりも外貨預金、円建債券よりも外貨建債券の⽅が税引き後の運用利回りが高くなることも少なくありません。それでもこの待機資⾦については、外貨よりも円貨での運用が適していると考えられます。理由は為替変動リスクです。待機資⾦は1〜3年程度でNISAへ移して投資に回す予定のお⾦であり、運⽤期間が⽐較的短くなります。この短い間に円⾼が進むと、せっかくの利回りを為替差損が打ち消してしまい、元本を下回ってしまう可能性もあります。「減らさずに、予定どおりNISAへ橋渡しする」という⽬的からは、為替変動リスクのない円で⼿堅く待つ⽅が、計画を⽴てやすく安⼼感もあります。外貨での運用は、為替変動リスクを許容できる場合の選択肢といえます。

図表2 待機資⾦の「置き場所」比較(イメージ)

「本当は⼀括投資したかった」なら、課税⼝座で「先回り」

■超過分は同じ対象に課税⼝座で「先回り」

「できれば資⾦をすべて株式や投資信託で運⽤したかった」、という⽅には別の考え⽅があります。年間360万円※を超える分についても、NISAに⼊れたいのと同じ投資対象を、課税⼝座(特定⼝座または⼀般⼝座)で先に買っておく⽅法です。そして翌年、NISA投資枠が空いたら課税⼝座で投資していた分を売却し、NISAで買い直します(図表3)。

※つみたて投資枠と成長投資枠をともに利用できる投資対象の場合。個別株など成長投資枠のみの対象は年間240万円。

このとき利益が出ていれば、その約20%が課税されますが、待たずに早く運⽤できた分のリターンが得られるので、リターンが大きいほど、寝かしておくよりも良かったことになります。

逆に値下がりしていた場合では、仮にNISAで同額投資できていたとしても、同額の含み損になっていたはずです。 例えばNISA待機資金で、A社株を100株、3,000円(30万円分)を課税口座で購入し、1年後に株価が2,000円になっていたとします。このとき、「手元に残っているお金」という意味では課税口座でもNISAでも変わりはありません。

・ケース1)課税口座で運用:A社株100株時価20万円、10万円の評価損

・ケース2)NISA口座で運用:A社株100株時価20万円(投資枠30万円評価損は税務上「無いこと」になる

なお、ケース1の状況で時にA社株を時価で売却し(10万円の売却損)、NISA口座で改めて購入した場合は、

・ケース1')NISA口座で運用:A社株100株時価20万円(投資枠20万円

となり、NISA口座内で安く買える分、同じ株数‧⼝数でもNISAの生涯投資枠の消費を抑えることができます。

■既にNISA口座外で運用をしているなら、「損」がむしろ活きる

さらに、既にNISA口座外で株式や投資信託を運⽤している⽅には、課税⼝座ならではのメリットがあります。課税⼝座で投資していた分に売却損が出た場合、その損失を、一定の上場株式等の譲渡益や、申告分離課税を選択した上場株式等の配当・分配金と相殺できるのです。これを損益通算といい、その年に相殺しきれなかった損失は、確定申告により最⻑3年間、翌年以降へ繰り越すこともできます。NISAでは損失が税務上なかったことにされてしまうのに対し、課税⼝座の損失は税⾦を減らす材料として使えます。つまり、待機分を特定⼝座で運⽤して結果的に損が出たとしても、その損は他の利益と相殺できるため、損も「有効活用」できる余地があるということです。特に、近年の株高・円安で大きな評価益が出ているポジションがある場合には、一部の利益を実現させて損益通算することで、メリットが大きくなる可能性があります。

■まとめ

・待機資⾦は、まず「数年かけて枠を埋めたい」のか「本当は⼀括で⼊れたい」のか、⽬的を⾒極める

・数年かけて埋めたい場合は、為替変動リスクを避け、定期預金や短期高格付既発債(円建)で待つ

⼀括投資したい場合は、超過分を同じ対象で課税⼝座に“先回り”投資し翌年NISAへ。既にNISA口座外での運用がある場合は損益通算で損もムダにならない可能性がある。

図表3 課税口座で「先回り」投資した時の損益パターン

図表4 NISA待機資金はどこに置く?

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