NISAは「利益が出たとき」に強い制度
■非課税なら、最も値上がりしそうなものを入れるのが得?
NISA口座の取引には税金がかからないため※、「最も値上がりしそうなものをNISAに入れよう」と考えるのは自然です。課税口座では利益に約20%の税金がかかり、10万円の利益なら約2万円が引かれます。NISAならこれがゼロになります。仮に、購入後に株価が10倍となった場合(いわゆるテンバガー)には、特に効果は大きくなります。
※株式の配当金については、株式数比例配分方式を選択することが必要です。
ただし、見落としがちな点があります。NISAは、利益が出たときは強い一方、損失が出たときには「その損失はなかったこと」にされてしまう制度なのです。
■税金の仕組みから考える
課税口座では、ある銘柄の損失を、別の銘柄の利益(譲渡益・配当金・分配金など)と相殺して税金を減らせます。これを「損益通算※」といいます。たとえばA社株で100万円損をし、B社株で100万円の利益が出たら、差し引きゼロとみなされ、Bの利益への税金を払わずに済みます。使いきれなかった損失は、確定申告すれば翌年から3年間繰り越すこともできます。
※課税口座で生じた上場株式等の譲渡損失は、一定の条件のもと、他の上場株式等の譲渡益や、申告分離課税を選択した配当・分配金と損益通算できます。
ところがNISAの損失は、この相殺にも繰り越しにも使えません。利益が非課税になるかわりに、損失は税金計算上「なかったこと」にされる、これがNISAの意外な落とし穴です(図表1)。
「非課税でトクするはずが、損したときは助けてくれないの?」と思うかもしれません。実際、NISAには損失時の税制上のクッションがないのです。
■損したときのことも想像する
投資を行うときに、多くの人は「うまくいく」ことだけを考えがちで、「損したとき」のことを想像するのは気が進まないものです。しかし現実には、このところのAI・半導体株のような急騰・急落も珍しくありません。「10年以上保有するつもりだから大丈夫」という考え方もありますが、急落時に急にお金が必要になることもあります。長く投資を続けるなら、うまくいかない時期があることも織り込んでおくことが大切です。
図表1 NISA口座の損失は「無かったもの」になる
高配当・高分配は、NISAでは本当に有利?
■配当金が非課税で受け取れるとお得?
NISAでの投資先として、高配当株や隔月分配型投信のような「インカムゲイン重視」の投資を考える方もいます。配当金・分配金が非課税で受け取れる※のは一見魅力的で、定期的にお金が入れば投資の実感もわき、心理的ハードルの高い「売却」も不要です。「定期的な収入」を重視する方には有力な選択肢となり得るかもしれません。
※上場株式の配当金やETF・REITの分配金は、株式数比例配分方式で受け取る場合に限り非課税となります。
ただし、長期的な資産成長を主な目的とする場合には注意が必要です。配当金・分配金は、受け取った瞬間に運用の外へ出てしまうお金だからです。※
※投資信託の分配金は再投資も可能ですが、NISA口座での再投資は原則として新たな買付けとして年間投資枠を消費します。
■「外に出るお金」と「中で育つお金」
NISAを「お金を育てる温室」と考えてみましょう。温室の中では利益に税金がかかりません。せっかく木を育てられるなら、小さいうちに実を収穫して外へ持ち出すより、収穫を後回しにして木そのものを大きく育てた方が、将来もっと多くの果実を得られます(図表2)。
NISAにおける非課税のメリットは、できるだけ大きな金額を、できるだけ長く、非課税対象額の枠内で資産を増やすことができた場合に大きくなります。そう考えると、こまめに配当金・分配金としてお金を外へ出す銘柄よりも、NISA内にとどめて複利で成長させるタイプの銘柄の方が、長期では資産残高を増やしやすいと考えられます。具体的には、例えば配当金の少ない高成長株、内部成長重視で分配金の少ないETF・投資信託、金(きん)連動のETF・投信などが候補となると思われます。※
※将来の成長性や優位性を示すものではありません。また、各商品に価格変動リスクがあります。
図表2 収穫を重視するか、「非課税のNISAの温室」で増やすか(イメージ)
NISA成長投資枠は「長く、ゆっくり、大きく育てる」
■ハイリスク銘柄は、あえてNISAの外に置く選択も
NISA成長投資枠は年間240万円、非課税で保有できる取得価額ベースの上限は1,200万円で貴重な投資枠※です。では、値動きの激しい個別株やテーマ型ETF・投信をここに入れるべきでしょうか?
※売却した金融商品の簿価分は、翌年以降に年間投資枠の範囲内で再利用できます。
私は「大きく利益が出たときの効果は確かに大きいが、損失時の扱いまで考えると必ずしもNISA向きとは限らない」と考えます。ハイリスク銘柄は損失が出る確率も低くなく、その損失は課税口座の譲渡益や配当等と相殺できません。逃げ道がない分、精神的なダメージも大きくなりがちです。 課税口座なら損失を相殺できる※うえ、損失を管理しながら利益を伸ばすトレーディング的な運用にも向いています。また、利益が出れば税金はかかりますが、「実際に利益が出ている」ので受け止めやすいはずです。同じ理由で、売買回数の多い短期トレーディングもNISA向きではありません。買付金額が膨らんで年間上限に達しやすく、売却してもその年の年間投資枠は復活しないため、超えた分は結局課税口座での取引になるからです。
※課税口座の上場株式等で生じた譲渡損失は、一定の条件の下で、上場株式等の譲渡益や申告分離課税を選択した配当等と損益通算でき、控除しきれない損失は確定申告により最長3年間繰り越せます。
■NISAは「長く持てる中核銘柄」をまず検討
以上から、NISA成長投資枠には、短期で大当たりを狙うハイリスク銘柄よりも、長期の成長が見込める銘柄が向いていると私は考えています。取り崩しの必要がなければ、配当金・分配金が少なくNISA内で成長を期待できる銘柄の方が、良いパフォーマンスにつながりやすいでしょう。※
※個人の見解であり、将来の値上がりや運用成果を保証するものではありません。
NISA成長投資枠の中核銘柄(例)※
・全世界株式やNasdaq-100などに連動し、分配金が低めのETF・投信
・人口動態が良好で経済成長が期待できる国に投資するETF・投信
・株式と異なる値動きが期待できる金ETF・金投信
・長期増収増益ながら配当金が少ない日米個別株を複数銘柄組み合わせた自作ポートフォリオ
※Nasdaq-100はS&P 500やTOPIXより成長株の比率が高く値動きは荒いものの、過去の平均上昇率は高めです。ただし、過去の実績は将来の運用成果を保証するものではありません。国内株はS株(単元未満株)を併用することを想定しています。また、個別株投資では、業種・地域・相関・配分にも注意して分散投資すれば、一般にリスク・リターンのバランスが改善することが期待されますが、損失を完全に防止するものではありません。金自体は配当や利息を生みません。金ETF・金投信の分配方針や実績は商品ごとに異なります。
まとめ
・損失発生の可能性を考慮すると、ハイリスク銘柄はNISA口座外での運用も一案(NISA以外でも投資している場合)
・取り崩しニーズが無いのであれば、配当・分配金でお金をNISAの外に出さない
・長期成長を重視しつつ、リスク分散はしっかりと
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図表3 株価急落で見直すNISAの使い方
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