どうなる株価波乱!そこで収益機会を得る取引手法とは?
投資情報部 鈴木 英之
2024/06/05
東京株式市場が波乱となっています。日経平均株価は3/22(金)取引時間中に41,087円の過去最高値を付けた後、4/19(金)には一時37,000円を割り込む場面もありました。昨年末以来の急ピッチな上昇に対する反動という側面もありますが、以下の要因も影響したとみられます。
(1)米国で金融緩和期待が後退し、同国長期金利が上昇し、グロース銘柄に逆風が強まったこと
(2)中東の地政学的リスクが、イスラエルとイランの交戦という形で拡大したこと
(3)世界的半導体関連銘柄の決算が、半導体市場に対する不透明感を強めたこと
4/19(金)に日経平均株価の高値からの下落率が一時10%を超えたこともあり、値頃感から4/22(月)~4/24(水)は3営業日続伸となりました。しかし、4/25(木)には再び大きく売りが先行する展開となりました。不安定な相場状況に変化はないように見受けられます。
今後どうなるでしょうか。上記(1)~(3)のうち、(2)については、イスラエル・イランともに妥協点を探っている節もあり、相場への織り込みが進んだように思われます。ただ、(1)と(3)については、足元で大きな変化はなく、引き続き相場の波乱要因になると思われます。日経平均株価はテクニカル的に、下降傾向の25日移動平均線を下回る状態が継続しており、調整局面がもう少し続くと考えた方が無難なようです。
特に、半導体関連銘柄については引き続き要注意だとみられます。半導体市場の成長がAI(人工知能)分野に偏っており、他の分野では回復遅れや、減速が警戒されるためです。半導体関連銘柄の多くが、期待先行で買われ、高いPERで評価されているため、悪材料にもろくなっている可能性もありそうです。
ただ、半導体関連株に不透明感が漂う波乱相場においても、収益機会を獲得している投資家もいるようです。
そこで、再評価したい「取引手法」として、「SBI株オプション(1DAYオプション)」をご紹介したいと思います。今回は「プットの買い」をご紹介したいと思います。「SBI株オプション」は、ターゲット価格を決めた「約定日」の翌営業日終値が、ターゲット価格よりも上昇するか、下落するかを予測して行う取引です。
取引実例として「東京エレクトロン(8035)プットの買い」をご紹介します。
あくまでも「実例」であり、今後も同手法が利益につながるとは限りませんのでご注意ください。
4/18(木)朝、半導体露光装置の独占的企業である蘭ASML社の決算が発表されました。これまで好調だった同社の純利益は減り、受注も減少しました。好調だった半導体関連企業の変調を受け、日本の半導体関連銘柄の波乱を予想した投資家も少なくなかったと見受けられます。そこで、4/18(木)に以下の取引を行ったと仮定します。
○4/18(木)の午前8時30分までに東京エレクトロン(8035)の「プットの買い」をターゲット価格100%で発注します。
○4/18(木)の始値36,850円が約定価格です。
約定価格の100%(36,850円)がターゲット価格です。
また、約定価格の1.86%=685.41円が支払うべきプレミアム価格(コスト)です。
○結果・・・東京エレクトロン株は4/18(木)に前日比550円安、4/19(金)に同3,210円安と大幅続落しました。
4/19(金)終値は33,530円となりました。この価格が、今回取引の評価価格になります。
(1株当たり差損益)=(東京エレクトロ株の下落幅)-(プレミアム価格)
=(36,850円-33,530円)-685.41円=2,634.59円(利益)
東京エレクトロン株の下落見通しを前提としたトレードは成功し、1株当たり2,634円59銭の利益が実現しました。実際の取引では最低取引単位100株で263,459円の利益が出る計算です。
残念ながら、仮に4/19(金)終値が36,170円(36,850-685.41:呼び値を考慮)以上の場合は損失が出ます。しかし、4/19(金)終値がターゲット価格(36,850円)をいくら上回っても、最大損失はプレミアム料の1株685.41円(100株で68,541円)だけになります。
最後に「SBI株オプション(1DAYオプション)」の利点とリスクをおさらいしておきます。
【株オプションの利点とリスク】
★想定される利点
(1)損失の限定・・・「コールの買い」にせよ、「プットの買い」にせよ、想定される最大損失額が「プレミアム価格×株数」に限定されることです。「実例」では、最大損失額は1株当たり685.41円ですから、100株で68,541円に限定される計算です。
(2)1株当たりのプレミアム価格を投資金額とすれば、投資する間に固定される資金も抑えられることになります。
(3)投資額に対して高いパフォーマンスも・・・「実例」において、利益は1株当たり2,634.59円でした。したがって100株で263,459円の利益が出る計算です。(1)のプレミアムを投資金額とすれば、それに対し高い利益が出る可能性もあります。
(4)「SBI株オプション(1DAYオプション)」では、取引期間が「1日(1Day)」に単純化されていますので、オプション取引でプレミアム評価に関係する「時間的価値」はほとんど考慮する必要がありません。
(5)ETF(上場投信)も投資対象ですので、日経平均株価や米国株、REIT価格等、幅広い商品を投資対象とし、リスクを限定して投資することが可能です。
★注意すべきリスク
(1)リスクを大きく取ろうとすれば、投資する株数を大きくすればよい訳ですが、現物株式と異なり、投資資金(プレミアム)がすべて失われるケースもあります。
(2)取引期間が短いため、想定していた相場観が、その分実現されない可能性が大きくなりそうです。経済指標や個別企業のイベント等をしっかり把握して活用した方が、勝率アップにつながりそうです。
(3)現物株投資では、買付価格を上回った部分がそのまま利益(税込み)になりますが、株オプションでは、評価価格とターゲット価格の差がそのまま利益ではなく、プレミアム価格を引いた金額が利益の計算です、現物株取引の同数量の取引よりも利益が圧縮される計算になります。
利点とリスクを十分ご理解いただいて取引にご参加いただければ、株価の乱高下が想定される株式市場への対応力が増すのではないでしょうか。慣れない間は、投資株数を抑えて参加することも重要かと思われます。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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