保守的な業績予想が相次ぐ中で注目の材料は?

保守的な業績予想が相次ぐ中で注目の材料は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/04/30

日経平均は反発。前週下落した半導体株・半導体関連株が上昇をけん引

4月第4週(4/22-26)の日経平均は、前週末比866円41銭高(+2.34%)となり、週足べースで反発。米テック株高を背景に、前週軟調であった主力半導体関連株が上昇をけん引しました。

同期間、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は428pt上昇。前週438pt下落していた分を、ほぼ戻したような形です。また、米国では決算発表シーズンが本格化する中で、アルファベット(GOOGL)やマイクロソフト(MSFT)が1-3月期決算を発表。AI投資の収益貢献が確認され、グロース株全体の追い風となりました。S&P500は+2.7%したのに対し、ナスダックは+4.2%とアウトパフォームしています。

さらに東京市場では、26日(金)に日銀が金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定。緩和的な金融環境が維持されたことで、海外勢を中心に買いが入ったもようです。米国では根強いインフレ懸念でFRBによる年内利下げ観測が後退しており、日米金利差が一層意識されました。日銀会合後の為替市場では、一時1ドル160円を突破し34年ぶりの円安ドル高水準を更新。その後は、急速に1ドル154円台に戻すなど、日本当局による為替介入とみられる動きが発生しました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(4/22~26・図表7)の首位は、キーエンス(6861)でした。25日(木)引け後に24.3期決算を発表し、3期連続で過去最高の最終利益を更新。FA機器の同業他社にもれず中国は軟調であった一方、米州や欧州で前年比で増収となりました。2位のアルプスアルパイン(6770)は、旧村上ファンド系による株式取得が明らかとなっています。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(4/22~26・図表8)の首位は、レゾナック・ホールディングス(4004)でした。23日(火)に海外向け転換社債で1,000億円を調達すると発表。将来的な株式の希薄化を懸念した売りが広がりました。他には、ジェイテクト(6473)や東京瓦斯(9531)など期中の決算発表の内容が嫌気された銘柄が複数ランクインしました。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(4/19~4/26)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(4/19~4/26)

保守的な業績予想が相次ぐ中で注目の材料は?

国内では3月期決算企業の決算発表が続いています。今回の決算は、前期(24年3月期)の通期実績と共に、今期(25年3月期)の会社計画が発表されます(発表しない企業もあります)。新たな期に入り、企業側が期初時点でどのような事業計画を立てているのかを知る上でも注目の決算発表と言えます。

図表9は、東証上場企業のうち3月に本決算、または四半期決算を迎える企業の決算発表予定日を企業数で示したグラフです。毎年のことですが、この時期の決算はゴールデンウィーク(GW)を挟むため、決算発表日はその前後に分散(というより後ろ倒し)する傾向があります。今回の決算発表シーズンは、5月13日から15日の3日間で全体の半分以上の企業の決算発表が集中します。

図表9  決算発表予定社数の推移(3・6・9・12月期決算企業)

現状はGW入り前で決算発表シーズンは序盤戦を終了したところ。しかし、既にいくつかの主力企業が決算発表を終えており、そこから傾向として読み取れるのは、企業側が例年以上に慎重な会社計画を示す傾向があるということです。

例えば、日経平均採用銘柄の3月期決算企業で先陣を切って決算発表を行ったニデックは、今期の税前利益予想(会社予想)が2,200億円とアナリスト予想(Quickコンセンサス予想)の2,444億円を下回りました。また、半導体製造装置で26日に決算発表を行ったアドバンテストも、今期税前利益予想(会社予想)は890億円と、アナリスト予想1,335億円を大きく下振れしました。元々、企業側の期初予想はアナリスト予想を下回るなど、保守的になる傾向があると言われています。しかし、今回については、下振れが大きく、例年以上にその傾向が顕著になっていると思われます。中国をはじめ海外経済の不透明感が強いことや、為替相場が不安定なこと等、不透明要素が数多くみられる中、企業側としてはなかなか強気な会社予想打ち出し難い状況と言えます。

図表10は、今週以降に発表される主力銘柄の決算発表の一部を抜粋した表です。なかなか強気な会社予想を期待するのは難しい状況にありますが、アナリスト予想を上回る会社予想を打ち出す企業が出てくれば、そうした企業については市場から高い評価を得ることが期待できるでしょう。

図表10 今後に決算発表が予定されている主力企業(一部抜粋)

もっとも、業績予想が保守的になる傾向がある程度見えてきている中、全体として業績面において高い期待をかけることは難しいかもしれません。そうした中で業績面以外の注目点となるのが株主還元策となります。

図表11は株主還元策の1つである自社株買いについて、月毎の発表件数をまとめたグラフですが、3月期決算企業の決算発表が集中する5月は、他の月に比べて多くの自社株買いが発表される傾向があります。今回の決算発表では、業績面よりも自社株買いの有無に注目が集まる可能性があるでしょう。なお、自社株買いが期待できる銘柄については、4月12日付けの一郎の投資戦略『あるか為替介入?日本株の展開は?』や、日本株投資戦略『決算発表シーズン接近!自社株買いも期待できる?割安銘柄』で取り上げておりますのでご参考ください。

図表11 自社株買いの季節性

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