アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~AI投資の収益貢献が確認されたアルファベット、マイクロソフトほか~

投資情報部 榮 聡
2024/04/30
先週はS&P500指数が5,000ポイントを割り込んだことが値ごろ感を生む契機となって機関投資家による押し目買いが入ったとみられ、4週間ぶりの上昇となりました。今週の株価材料として、1-3月期決算発表、5月FOMC(連邦公開市場委員会)、4月雇用統計、などが注目されます。
今回は4/19(金)から4/25(木)に決算を発表したS&P500指数採用銘柄から、市場予想を上回る良好な実績をあげ、今後も注目されそうな銘柄として、アルファベット A(GOOGL)、マイクロソフト(MSFT)、ゼネラル モーターズ(GM)、アメリカン エキスプレス(AXP)、テキサス インスツルメンツ(TXN)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

5,000ポイント割れからの反発となりました。メタプラットフォームズ決算に対する市場の反応にはヒヤッとさせられましたが、アルファベット、マイクロソフトの好決算に助けられました。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は4/22(月)終値~4/29(月)終値によります)
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
一般消費財・サービス | 4.9% | -1.7% | 4.5% |
情報技術 | 4.2% | -3.4% | 1.6% |
S&P500 | 2.1% | -2.6% | 3.8% |
不動産 | 1.9% | -6.9% | -5.1% |
資本財・サービス | 1.8% | -2.0% | 8.2% |
公益事業 | 1.6% | 2.2% | 8.8% |
素材 | 1.4% | -2.9% | 8.7% |
生活必需品 | 0.9% | -0.7% | 4.5% |
エネルギー | 0.8% | 2.1% | 14.6% |
ヘルスケア | 0.7% | -5.1% | 0.2% |
コミュニケーションサービス | 0.2% | -0.7% | 4.4% |
金融 | -0.3% | -3.4% | 5.1% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
テスラ | 36.6% |
エヌビディア | 10.4% |
テキサス・インスツルメンツ | 9.7% |
ゼネラル・エレクトリック | 9.5% |
ブロードコム | 9.3% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
メタ・プラットフォームズ | -10.2% |
ブリストル マイヤーズ スクイブ | -9.2% |
インテル | -8.9% |
IBM | -8.0% |
アクセンチュア | -4.5% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で2.7%、ダウ平均は0.7%、ナスダック指数は4.2%の反発となりました。
S&P500指数が5,000ポイントを割り込んだことが値ごろ感を生む契機となって機関投資家による押し目買いが入ったとみられます。4/25(木)にはメタプラットフォームズの株価下落、1-3月期実質GDPの予想下振れ、同GDPデフレーターの上振れが重なって大幅に下落する場面がありましたが、翌日のアルファベット、マイクロソフトの好決算に救われました。
米10年国債利回りは一時4.7%を上回る水準まで上昇して、株価を抑制する要因になっています。GDP統計から計算される1-3月期の個人消費支出物価指数(GDPデフレーター)が前年比+3.7%と強く、また、3月個人消費支出物価指数が総合、コアとも市場予想を上回ったことが要因です。
「マグニフィセント7」銘柄決算への反応はまちまちでした。テスラ(TSLA)の1-3月期決算は減収減益かつ市場予想を下回りましたが、低価格EVの投入を早める意向を発表したことが好感されて上昇しました。また、4/29(月)には中国で運転支援システムの展開が承認され、競争力を改善すると期待されて株価が15%上昇しました。ただ、収益環境の悪さからみて、売り方の買い戻しが中心である可能性には注意が必要でしょう。
メタ プラットフォームズ A(META)は、4-6月期の売上ガイダンスが市場予想を下回り、通年の費用と設備投資の見通しを上方修正したことが嫌気されて下落しました。昨年来費用と投資の抑制が評価されて株価が上昇してきたことが背景にあります。アルファベットとマイクロソフトの1-3月期決算は、これまでのAIへの投資が収益に表面化していることが確認されて好感されました。
業種指数(4/29(月)までの過去5日)は、テスラの寄与で「一般消費財・サービス」がトップ、エヌビディアなど半導体株の反発によって「情報技術」が2位でした。
今週の米国株式
S&P500指数は5月FOMC、4月雇用統計の発表を控えて、米10年国債利回りの動向に神経質な展開となることが想定されます。一方、良好とみられる企業決算が下支えになると期待されます。なお、4/29(月)は米10年国債利回りの落ち着きを受けて主要3指数とも上昇しました。
今週の株価材料として、1-3月期決算発表、5月FOMC(連邦公開市場委員会)、4月雇用統計、などが注目されます。
1-3月期決算は、アマゾンドットコム、アップルのほか、S&P500指数採用銘柄の約3分の1が発表するピーク週になります。S&P500指数採用企業のEPSは、発表済企業と今後発表予定企業の混合で前年同期比+3.5%(FactSet社集計、4/26(金)時点)です。先々週までのやや低迷した状況から先週に改善しています。
5月FOMCでは政策金利は据え置きの見通しです。リリース内容やパウエルFRB議長の会見を受けて、年内の利下げ回数に関する市場予想がどう変化するかが注目されます。このところインフレの下がりにくさを示す経済指標が出てきましたので、市場が予想する利下げ回数は低下傾向となっています。
5/3(金)に発表予定の4月雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比24.0万人増の予想です。雇用市場の緩やかな減速を示すと期待されています。
経済指標では上記のほか、4/30(火)に中国の4月製造業PMI(前月の50.8から50.3に悪化の予想)、非製造業PMI(前月の53.0から52.3に悪化の予想)、ユーロ圏の1-3月期実質GDP(前年比+0.2%の予想、前期は同+0.1%)、米国の4月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の104.7から104.0に悪化の予想)。
5/1(水)に米国の4月ADP雇用統計(前月比18.0万人増の予想)、米国の4月ISM製造業景気指数(前月の50.3から50.1に悪化の予想)、5/2(木)に米国の3月製造業受注(前月比+1.6%の予想)、5/3(金)に米国の4月ISM非製造業景気指数(前月の51.4から52.0に改善の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は4/19(金)から4/25(木)に決算を発表したS&P500指数採用銘柄から、市場予想を上回る良好な実績をあげ、今後も注目されそうな銘柄を図表3にリストアップしました。
ここから時価総額が大きいものを中心に、アルファベット A(GOOGL)、マイクロソフト(MSFT)、ゼネラル モーターズ(GM)、アメリカン エキスプレス(AXP)、テキサス インスツルメンツ(TXN)を選んでご紹介いたします。
図表3 1-3月期決算の注目銘柄(S&P500指数構成銘柄対象、4/19(金)~4/25(木)発表分から、実績売上順)
銘柄(コード) | 売上 予想比 (%) |
EPS 予想比 (%) |
売上 前年同期比 (%) |
EPS 前年同期比 (%) |
アルファベット A(GOOGL) | 2.3 | 23.6 | 16.4 | 61.5 |
マイクロソフト(MSFT) | 1.6 | 3.9 | 17.0 | 20.0 |
ゼネラル モーターズ(GM) | 2.0 | 23.8 | 7.6 | 18.6 |
フォード モーター(F) | -0.4 | 15.9 | 2.1 | -22.2 |
ペプシコ(PEP) | 1.0 | 5.9 | 2.3 | 7.3 |
ロッキード マーチン(LMT) | 7.7 | 9.5 | 13.7 | -1.6 |
アメリカン エキスプレス(AXP) | 0.2 | 12.4 | 10.6 | 38.8 |
メルク(MRK) | 3.6 | 11.3 | 8.9 | 47.9 |
ビザ A(V) | 1.7 | 2.9 | 9.9 | 20.1 |
フリーポート マクモラン(FCX) | 10.3 | 22.5 | 17.3 | -38.5 |
ボストン サイエンティフィック(BSX) | 4.7 | 9.2 | 13.8 | 19.2 |
テキサス インスツルメンツ(TXN) | 1.6 | 12.7 | -16.4 | -35.1 |
S&P グローバル(SPGI) | 2.2 | 9.9 | 10.5 | 27.3 |
ユナイテッド レンタルズ(URI) | 1.3 | 8.9 | 6.1 | 15.1 |
アンフェノール A(APH) | 4.6 | 8.9 | 9.5 | 15.9 |
チポトレ メキシカン グリル(CMG) | 1.1 | 14.7 | 14.1 | 27.3 |
サービスナウ(NOW) | 0.5 | 8.1 | 24.2 | 43.9 |
ヒルトン ワールドワイド ホールディングス(HLT) | 2.4 | 8.0 | 12.2 | 23.4 |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (4/29) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | アルファベット A(GOOGL) | 166.151ドル | 23.1 | 【AIへの期待が回復】 ・1-3月期は市場予想を上回る好決算でした。検索収入が3%、YouTube広告が5%、クラウド収入が2%、それぞれ市場予想を上回りました。1株当たり20セントの初の配当を発表、自社株買いを700億ドル追加することも明らかにしました。 ・CFOは「AIが当社クラウド顧客にもたらす恩恵にすっかり興奮している。AIソリューションからの貢献が増えた」とコメントしました。同社は大手テクノロジー企業の中でもAI関連のリソースが最も分厚いと見られていましたし、実際にそうだと推察されます。しかし、昨年から注目を集めた生成AIでは出遅れたとみえて懸念されていましたが、これをかなり解消したとみられます。 | |
買付 | マイクロソフト(MSFT) | 402.25ドル | 34.1 | 【AIの貢献で堅調な業績を確認】 ・1-3月期の売上は市場予想を上回る好決算でした。部門別売上は、プロダクティビティ&ビジネスプロセスが前年同期比13%増、インテリジェントクラウドが同20%増、モア・パーソナル・コンピューティングが同19%と好調で、いずれも市場予想を上回りました。 ・「アジュールおよびその他クラウド収入」は前年同期比30%増で、2四半期連続で伸び率が高まりました。AI機能を付加して注目される「オフィス」関連の売上は同15%増と堅調です。「ウィンドウズ」OSの売上伸び率が加速、Xboxのコンテンツおよびサービスが大幅増でした。一方、検索関連収入の伸びは前年同期比8%で前四半期の同10%増から減速でした。 | |
買付 | ゼネラル モーターズ(GM) | 46.04ドル | 5.0 | 【大型ピックアップトラックの販売が好調】 ・米国市場で収益性が高い大型ピックアップトラックの販売が好調で、1-3月期のEPSは市場予想を24%も上振れました。同じ要因でライバルのフォードも16%上振れています。米国の個人消費は減速が懸念されますが、富裕層は堅調を維持すると期待されます。 ・2023年は労働者のストライキに加え、EVトラックの不振、自動運転によるロボタクシーに対する当局の調査など、苦しい年になりましたが、2024年は明るい見通しをもっています。CEOは「(同社が独自開発した)『アルティウム』バッテリーによるEVのブレイクスルーの年にする」とコメントしています。また、米政府がEV普及策の規制を緩和したことも安心感を生んでいます。 | |
買付 | アメリカン エキスプレス(AXP) | 238.92ドル | 18.4 | 【1-3月期決算は好調】 ・1-3月期決算は売上が前年同期比11%増、EPSが同39%増で、EPSは市場予想を12%上回って好調でした。純金利収入が同24%増と売上の伸びをけん引しました。特典が多くついたプレミアムカードが好調で、同社カード保有者の利用額は米国で同8%増、海外は同13%増えています。 ・2024年のガイダンスは売上が前年比9~11%増、EPSは前年比13~17%増に相当する12.65~13.15ドルを見込みます。米国の個人消費には減速の兆しが見られますが、同社の主力顧客である富裕層は相対的に好調を維持する可能性が高いとみられ、業績堅調が期待できそうです。 | |
買付 | テキサス インスツルメンツ(TXN) | 179.29ドル | 33.8 | 【工業向け半導体に底入れの兆し】 ・幅広い産業を顧客にもつ、アナログ半導体の最大手です。1-3月期は大幅な減収減益ですが、市場予想は上回りました。2022年7-9月期をピークに四半期売上は低下基調が続いていましたが、4-6月期のガイダンスは1-3月期比横ばい圏の見通しとなり、市場予想を上回りました。 ・工業機器向け半導体の底入れが示唆され、今後の回復が期待されます。足もとで世界的に改善傾向となっている製造業景気指数との平仄もあっているため、回復に期待がかかります。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、マイクロソフトが2024年6月期、その他はいずれも2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
29(月) | ||
30(火) | ・中国製造業・非製造業PMI(4月) ・財新中国製造業PMI(4月) ・ユーロ圏実質GDP(1-3月期、速報値) ・S&PコアロジックCS住宅価格(2月) ・コンファレンスボード消費者信頼感(4月) |
アマゾンドットコム、アドバンストマイクロデバイセズ スーパーマイクロコンピューター、コカコーラ、3M イーライリリィ、マクドナルド、ペイパルホールディングス スターバックス |
5月 1(水) |
・米FOMC政策金利 ・米ADP雇用統計(4月) ・米求人労働異動調査(3月) ・米ISM製造業景気指数(4月) ・米自動車販売台数(4月) |
ファイザー、クラフトハインツ、マスターカード、クアルコム |
2(木) | ・米チャレンジャー人員削減数(4月) ・米新規失業保険申請件数(4月27日に終わる週) ・米製造業受注(3月) |
アップル、コインベースグローバル ブッキングホールディングス |
3(金) | ・米雇用統計(4月) ・米ISM非製造業景気指数(4月) ・シカゴ連銀グールズビー総裁が討論に参加 |
|
6(月) | ・米シニア・ローン・オフィサー・サーベイ | パランティアテクノロジーズ |
7(火) | ・EU小売売上高(3月) ・3年債入札 |
ウォルトディズニー、リヴィアンオートモーティブ エコペトロル |
8(水) | ・10年債入札 | アームホールディングス、ビヨンドミート |
9(木) | ・中国貿易統計(4月) ・米新規失業保険申請件数(5月4日に終わる週) ・30年債入札 |
ユニティソフトウェア、クリーンスパーク |
10(金) | ・ミシガン大学消費者信頼感(5月、速報値) ・シカゴ連銀グールズビー総裁がQ&Aセッションに参加 |
マラソンデジタルホールディングス |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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