アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~エヌビディア含む「2024年の注目銘柄5選」が好調!年初来平均33%上昇!!~
投資情報部 榮 聡
2024/03/11
先週の米国株式市場はエヌビディア株上昇による相場けん引、弱めの経済指標、高値警戒を背景とした利食い売りが交錯して、高値圏でのもみ合いとなりました。今週の株価材料として、2月物価指標、2月小売売上高、オラクルとアドビの決算、などが注目されます。
今回は1/9(火)の当レポートでご紹介した「2024年の注目銘柄5選」の直近四半期決算が出揃ったことから、エヌビディア(NVDA)、サービスナウ(NOW)、クラウドストライクホールディングス(CRWD)、イーライ リリィ(LLY)、ネットフリックス(NFLX)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数のローソク足(週足、2年)
2022年10月の底入れから「N字波形」を形成、2023年7月~10月の押し幅に対する「倍返し」を達成しました。テクニカル的には一旦上昇波が出尽くした可能性がうかがえます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
公益事業 | 3.2% | 5.1% | -0.1% |
素材 | 1.6% | 7.2% | 8.6% |
不動産 | 1.5% | 4.3% | 5.9% |
エネルギー | 1.2% | 5.1% | 7.1% |
生活必需品 | 0.9% | 2.6% | 6.9% |
金融 | 0.8% | 3.8% | 11.8% |
資本財・サービス | 0.6% | 4.3% | 11.3% |
ヘルスケア | 0.0% | 1.5% | 10.2% |
S&P500 | -0.3% | 1.9% | 10.8% |
コミュニケーションサービス | -0.7% | -1.1% | 15.8% |
情報技術 | -1.1% | 0.9% | 13.8% |
一般消費財・サービス | -2.6% | 0.1% | 5.9% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ターゲット | 9.3% |
エヌビディア | 6.4% |
ゼネラル・エレクトリック | 5.9% |
ブリストル マイヤーズ スクイブ | 5.7% |
ネクステラ・エナジー | 4.7% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
テスラ | -13.5% |
ブロードコム | -6.5% |
アップル | -5.0% |
セールスフォース | -3.7% |
ゼネラル・モーターズ | -3.6% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で0.3%、NYダウは0.9%、ナスダック指数は1.2%の下落でした。
週初は利食いが優勢となって軟調、3/7(木)にはパウエルFRB議長の発言を好感して最高値を更新しましたが、3/8(金)は、予想を上回る2月非農業部門雇用者数を受けて再び利食いが優勢となり、週間では主要3指数ともマイナスで引けました。
パウエルFRB議長の議会証言は、3/6(水)には「今年のある時点で利下げするのが適切になる可能性が高い」とし、従来の立場を維持して、相場へのインパクトは限られました。一方、3/7(木)は利下げが適切と確信できる時期は「遠くない」として、両日でニュアンスが異なりました。
経済指標では、3月ISM製造業・非製造業景気指数、2月ADP雇用統計が弱く、米10年国債利回りの低下につながったとみられます。一方、2月雇用統計の非農業部門雇用者数は前月比+27.5万人と市場予想の同+20.0万人を上回りました。ただし、1月の数字が同+35.3万人から同+22.9万人に下方修正されており、一方的に強いという結果ではありませんでした。米10年国債利回りには下げ止まりの兆しも見られます。
業種指数では、これまで低調となっていた「公益事業」が上昇しました。大手テクノロジー株の寄与が大きい業種はいずれもマイナスとなりました。個別株では、ターゲット(TGT)が上昇トップでした。11-1月期決算は、売上・EPSとも市場予想を上回り、過剰在庫の解消進展が大幅な増益につながりました。2025年1月期の売上は前年比0-2%増と増収への回復を見込みます。
今週の米国株式
S&P500指数の予想PERが21.1倍まで上昇していることから、上昇一服となる可能性が高いとみられます。予想PERがさらに上昇するケースとして、「AIバブル」の発生が考えられますが、いまのところエヌビディアを例外としてAIで収益が様変わりしたという大手企業はなく、AIバブルとなる可能性は低いとみています。
2000年のITバブルのときは、インターネットの普及によって世の中が大きく変わることが容易に想像できたため、その後5年、10年で起こりうることを一気に相場に織り込みにいき、結果的に「ITバブル」となりました。このときと比べて、現在のAIの普及による全産業へのインプリケーションはまだはっきりしていないと言えるのではないでしょうか。
今週の株価材料として、2月物価指標、2月小売売上高、オラクルとアドビの決算、などが注目されます。
3/12(火)の2月消費者物価指数は、総合指数が前年比+3.1%の予想(前月は同+3.1%)、コア指数が前年比+3.7%の予想(前月は同+3.9%)です。3/14(木)の2月生産者物価指数は、総合指数が前年比+1.2%の予想(前月は同+0.9%)、コア指数は前年比+1.9%の予想(前月は同+2.0%)です。
インフレの低下ペース鈍化があらわれてきたと市場で捉えられるか注目されます。そのように捉えられると利下げ時期に対する市場期待の後ろ倒しにつながると考えられます。
3/14(木)の2月小売売上高は前月比+0.8%の予想です。米小売売上高は1月が前月比-0.8%となって、昨年夏から以上の強さが目立った米個人消費もさすがに落ち着きつつあるとの印象でしたが、予想並みの数字となれば、やはり米個人消費は強いとの印象になる可能性が高そうです。
オラクルは3/11(月)に、アドビは3/14(木)に12-2月期決算を発表予定です。いずれもAI関連のソフトウェア株として、AI相場の行方を占う上で重要と考えられます。
経済指標では上記のほか、3/15(金)に米国の3月ミシガン大学消費者信頼感(前月の76.9から77.1に改善の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は1/9(火)の当レポートでご紹介した「2024年の注目銘柄5選」の直近四半期決算が出揃い、年初来で平均33%上昇とパフォーマンスも好調であることから、エヌビディア(NVDA)、サービスナウ(NOW)、クラウドストライクホールディングス(CRWD)、イーライ リリィ(LLY)、ネットフリックス(NFLX)を再掲いたします。
同レポートでは今年想定される投資環境から考えて成長株が優位になるとの見方から、人工知能(AI)、サイバーセキュリティ、肥満治療薬などの投資テーマを中心に銘柄を選びました(詳しくは、1/9(火)掲載の「アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~2024年の注目銘柄5選、エヌビディア、サービスナウ、イーライリリィほか~」をご覧ください。)
図表3 「2024年の注目銘柄5選」の株価推移
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 「2024年の注目銘柄5選」の投資指標
銘柄名(コード) | 株価 (3/8) (ドル) |
予想 PER (倍) |
目標株価 (ドル) |
目標株価 乖離率 (%) |
目標株価 修正率 (1ヵ月) (%) |
EPS増加率 (今期予想) (%) |
EPS増加率 (来期予想) (%) |
通期EPS 修正率 (3ヵ月) (%) |
エヌビディア(NVDA) | 875.28 | 35.5 | 900.32 | 2.9 | 38.0 | 407.25 | 18.6 | 16.6 |
サービスナウ(NOW) | 757.68 | 57.2 | 840.83 | 11.0 | 25.1 | 33.42 | 21.3 | 9.4 |
クラウド ストライク ホールディングス A(CRWD) | 322.85 | 82.9 | 401.11 | 24.2 | 65.0 | 56.49 | 23.0 | 9.6 |
イーライ リリィ(LLY) | 762.14 | 61.0 | 797.21 | 4.6 | 25.9 | 57.47 | 44.8 | -2.4 |
ネットフリックス(NFLX) | 604.82 | 35.0 | 591.22 | -2.2 | 23.9 | 57.47 | 23.4 | 7.8 |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (3/8) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | エヌビディア(NVDA) | 873.28ドル | 35.7 | 【「推論」40%を織り込む市場】 ・11-1月期決算発表で最も注目できる点は、会社が「昨年のデータセンター向け売上の約40%は『推論』で利用されたと推定している」と述べた点です。AIの計算には、AIモデルを使えるようにする「訓練(トレーニング)」と、それを実際に利用する際の「推論(インファレンス)」の2つの種類がありますが、エヌビディアのAIコンピュータは主に「訓練」で使われ、「推論」はCPUで行われていると考えられていました。 ・このため、AIモデルを訓練するための設備投資が一服するとAIコンピュータの売上が急減してしまう心配がありました。しかし、同社が推定するように「推論」でも使われている場合には、そのリスクはかなり小さくなると解釈されます。そうなると、予想PERが上昇する(または、PER低下の度合いが小さくなる)可能性が指摘できます。AIコンピュータが「推論」でも使われるようになったとすれば、それは生成AIや大規模言語モデルの登場と関係しているとみられますが、このあたりの仕組みについては、追加の情報で確認する必要がありそうです。3/18(月)から開催される同社の年次技術カンファレンス(GTC)が注目されます。 | |
買付 | サービスナウ(NOW) | 757.68ドル | 57.2 | 【企業のAI対応で活躍が期待される】 ・企業向けに各種ソフトウェアを提供して、業務の自動化を促進するサービスを提供しています。この仕事はAIとの親和性が高く、生成AIが売上増につながりやすい企業として注目されます。生成AIを業務執行に取り込むためのバーチャル・エージェント「Now Assist」を投入、エヌビディアが企業向けの分野で同社を提携先として選んだほか、コンサルティング大手のアクセンチュア、デロイトなど企業向けサービスで重要な企業と提携を進めています。企業が生成AIの機能を業務執行に生かしていく上で、頼れる存在になりつつあると考えられます。 ・10-12月期決算は、売上が前年同期比26%増、EPSが同36%増と好調でした。1-3月期の売上見通しは前年同期比24%増で市場予想を上回り、2024年の売上見通しも前年比22%増で、市場予想をわずかながら上回りました。昨年後半にAI機能を付加して価格を引き上げた製品を投入しており、これが順調に拡大すれば、売上の加速が可能と期待されています。 | |
買付 | クラウドストライクホールディングス(CRWD) | 322.85ドル | 82.4 | 【好調な業績を確認】 ・サイバー攻撃に対する防御として、ネットワークへの侵入を防ぐやり方と、エンドポイントで不正な動きを検知する やり方がありますが、標的型の攻撃が増えたことでネットワークへの侵入を完全に防ぐのは現実的ではなくなり、侵入後の不正な動きを検知するエンドポイント保護の重要性が増してきました。そのエンドポイント検知分野でのリーダーの地位を確立したことから、安定的に高い売上成長を実現しています。 ・11月-1月は売上高が前年比33%増の8.5億ドル、EPSは同2倍の0.95ドルで市場予想を共に上回りました。同社CEOは「極めて好調な決算」と強気コメント。ARR純増は同27%増の2.8億ドルとなり、市場予想を上回りました。顧客サイズと契約が拡大しています。また、会社側の2-4月期の売上高とEPS見通しも市場予想を上回り、業績モメンタムは健全と思われます。株価は同業のパロアルトネットワークスの売上見通しが予想を下回ったことに連れ安していましたが、業績の状況が異なることが確認されて反発しています。 | |
買付 | イーライ リリィ(LLY) | 762.14ドル | 61.0 | 【肥満治療薬市場が巨大に】 ・肥満治療薬は2030年に770億ドル(約11兆円)の巨大市場になるとの予想もでており(日本経済新聞記事、モルガンスタンレーの予想)、この市場をデンマークのノボノルディスクとイーライリリーが2分すると見込まれています。期待されている肥満治療薬「ゼプバウンド」は23年11月8日にFDAから承認が下りました。ノボノルディスクの肥満治療薬「ウゴービ」は既に2022年に投入されていますが、臨床試験のときの平均体重の減少は、「ウゴービ」が約15%、「ゼプバウンド」が約21%でした。 ・糖尿病治療薬のマンジャロや肥満治療薬のゼップバウンドが売上拡大をけん引して業績好調です。生産能力が売上の制約になっていることから、アメリカではインディアナ州など二拠点の生産能力拡大、ヨーロッパではドイツで製造拠点の建設を行います。新型の糖尿病治療薬、肥満治療薬として需要が拡大している「GLP-1受容体作動薬」は2030年に1,000億ドル(約15兆円)の市場になるとの予想があり、同社はデンマークのノボノルディスクとともに市場を2分すると期待されています。なお、開発中のアルツハイマー治療薬「ドネツマブ」について、3月中と見込まれていたFDAによる承認が遅れることが3/8(金)に発表されています。 | |
買付 | ネットフリックス(NFLX) | 604.82ドル | 35.1 | 【新規加入者数の増加が期待される】 ・動画配信サービスの最大手です。オリジナルコンテンツの創作能力や会員のエンゲージメントを高める能力に定評があり、これによって価格決定力やユニットエコノミクス(顧客1人当たりの採算性を表す数値)を高めることで順調な成長の持続が期待されます。同社のセールスポイントである幅広いコンテンツによって盤石な地位を占めつつ、広告付きプランの導入が加わることで、全世界で8億人のターゲット市場(中国を除く)の取り込みが進むと期待されます。 ・10-12月期は、契約者純増が1,312万人(予想は891万人)と好調です。広告付きプランとアカウント共有対策の導入が効いているとみられ、好調が続く可能性が高いと考えられます。CEOは「今後、従来のTV放送からネットにつながる『コネクテッドTV』に多額の広告費が流れる。エンゲージメントが高い視聴者をもつ我々は、有利な立場にある」と自信を示しました。また、プロレスのWWEと提携して、人気番組の「RAW」を2025年から独占配信するとして、新しい客層へのアプローチとして注目されます。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エヌビディアとクラウドストライクホールディングスが2025年1月期、その他はいずれも2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
11(月) | ・日本実質GDP(10-12月期、確報値) ・日本工作機械受注(2月、速報値) ・NY連銀1年インフレ期待(2月) ・米3年国債入札 |
オラクル |
12(火) | ・米NFIB中小企業楽観指数(2月) ・米消費者物価指数(2月) ・米10年国債入札 |
|
13(水) | ・米30年国債入札 | レナー |
14(木) | ・米小売売上高(2月) ・米生産者物価指数(2月) ・米新規失業保険申請件数(3月9日に終わる週) |
アドビ、アルタビューティ |
15(金) | ・ニューヨーク連銀製造業景気指数(3月) ・米鉱工業生産(2月) ・米ミシガン大学消費者信頼感(3月、速報値) |
|
18(月) | ・日本機械受注(1月) ・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(2月) ・米NAHB住宅市場指数(3月) |
エヌビディアのGTC(技術カンファレンス、21日まで) |
19(火) | ・日銀政策金利 ・ドイツZEW景気指数(3月) ・米住宅着工・建設許可件数(2月) ・20年債入札 |
|
20(水) | ・米FOMC政策金利 | マイクロンテクノロジー |
21(木) | ・EU27ヵ国新車登録台数(2月) ・HCOBユーロ圏製造業PMI(3月) ・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(3月) ・米新規失業保険申請件数(3月16日に終わる週) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(3月) ・米中古住宅販売件数(2月) |
ナイキ、フェデックス |
22(金) | ・ドイツIFO企業景況感(3月) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
おすすめ記事(2024/03/11 更新)
免責事項・注意事項
・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
【手数料及びリスク情報等】
SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。