アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~8月の好決算銘柄、エヌビディア、TJX、メドトロニックほか~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~8月の好決算銘柄、エヌビディア、TJX、メドトロニックほか~

投資情報部 榮 聡

2024/09/02

先週はエヌビディアの決算発表まで様子見姿勢が強まりましたが、同決算を無難に通過して週末にかけて上昇となりました。今週の株価材料として、8月雇用統計、企業景況感、地区連銀経済報告、などが注目されます。

今週は8/9(金)~8/29(木)に四半期決算を発表したS&P500指数採用銘柄(該当するのは41銘柄)から、エヌビディア(NVDA)TJXカンパニー(TJX)メドトロニック(MDT)ウォルマート インク(WMT)アプライド マテリアルズ(AMAT)を選んでご紹介いたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

「雲」の上でもみ合っていますが、7月半ばの高値と「ダブルトップ」になってしまう可能性に注意が必要でしょう。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
金融 2.9% 8.5% 9.8%
資本財・サービス 1.7% 6.9% 6.5%
素材 1.6% 4.5% 3.2%
ヘルスケア 1.0% 4.1% 9.5%
エネルギー 1.0% 2.6% -1.7%
公益事業 1.0% 2.3% 4.9%
生活必需品 0.8% 3.7% 7.1%
不動産 0.3% 3.9% 14.7%
S&P500 0.2% 5.6% 7.0%
一般消費財・サービス -0.2% 6.1% 5.4%
コミュニケーションサービス -0.7% 2.3% 1.6%
情報技術 -1.5% 6.8% 8.2%
騰落率上位(5日) 騰落率
インテル 7.3%
バークシャー・ハサウェイ 5.0%
メットライフ 4.2%
RTX 4.1%
USバンコープ 4.1%
騰落率下位(5日) 騰落率
エヌビディア -7.7%
セールスフォース -4.2%
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ -4.1%
ターゲット -3.1%
テスラ -2.8%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で1.4%、ダウ平均は1.3%、ナスダック指数は1.4%の上昇でした。

エヌビディアの決算発表を控えて8/28(水)までは様子見姿勢が強まってもみ合いに終始しました。S&P500指数は7月半ばの最高値に近づいていますが、まだ更新はしていません。

8/28(水)引け後に発表されたエヌビディアの決算では、8-10月期の売上ガイダンスが市場予想に対して2%上回るにとどまり、これまでよりも小さかったことから、同社株価は翌日に6.4%の下落となりました。しかし、アナリストの通期業績予想は上方修正され、目標株価平均値も上昇と内容は良好であったことから、市場全体への波及は限られました。

経済指標では、8月コンファレンスボード消費者信頼感は前月から改善し、4-6月期実質GDPの改定値は個人消費の改善で前期比年率+3.0%と、速報値の同+2.8%から上方修正され、いずれも米景気に対する懸念を和らげました。

業種指数では、景気指標の改善を受けて、「金融」「資本財・サービス」「素材」などが騰落率上位で、大手テクノロジー株の寄与が大きい、「情報技術」「コミュニケーションサービス」「一般消費財・サービス」が下位となりました。

個別銘柄で上昇率トップのインテル(INTC)は年初来大幅な株価下落となっていますが、8/30(金)に投資銀行と複数の経営再建策を検討中と伝わって9.5%の上昇となりました。再建策には、受託生産部門の分離、プログラマブルICのアルテラ部門の売却、コスト削減策などが含まれる可能性があるといわれます。

今週の米国株式市場

米国経済のリセッション懸念は一旦収束しているものの、底流には燻っているとみられます。今週は8月初に景気に対する懸念が高まるきっかけとなった、ISM製造業景気指数と雇用統計の発表を迎えます。市場の警戒感が高まりやすく、軟調となる可能性がありそうです。

S&P500指数の予想PER(2025年予想EPS基準)は再び20倍超まで上昇しており、さらなる上値に対してはバリュエーションの高さが抑制要因になると考えられます。テクニカル的には、7月半ばの高値とともに「ダブルトップ」になりそうな気配もあるため注意が必要でしょう。

今週の株価材料として、8月雇用統計、企業景況感、地区連銀経済報告、などが注目されます。

9/6(金)の8月雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比16.5万人増の予想、失業率は4.2%の予想で、前月の4.3%から改善の予想となっています。先月の雇用統計で「サーム・ルール」(※)がヒットしたと市場で注目された失業率の行方が注目されます。

7月の失業率上昇については、ハリケーン「ベリル」による一時的な押し上げが含まれるとの見方もありましたが、その後8/16(金)に公表された州別データでは失業率の上昇はハリケーンの影響が大きかったテキサス州だけでなく全米に広がっていました。本当に予想通り8月の失業率が前月から低下するか、懐疑もあるとみらるため注目です(図表3)。

※サーム・ルールは、元FRBエコノミストのサーム氏が提唱したもので、米国の失業率の3ヵ月移動平均が過去12ヵ月の最低値より0.5%ポイント以上上昇すると景気後退入りすることが多いという経験則です。

8月初めに景気への懸念が台頭した要因の一つに、7月ISM製造業景気指数の悪化(6月48.5➡7月46.8)がありました。9/3(火)の8月ISM製造業景気指数は、前月の46.8から47.5に改善の予想です。また、9/5(木)の8月ISM非製造業景気指数は、前月の51.4から51.1にやや悪化の予想です。

9/4(水)の地区連銀経済報告(ベージュブック)は、FOMC(米連邦公開市場委員会)の2週間前に公表され、FRBが政策を検討するうえで参考にする資料です。今回は利下げへの転換を決めると見込まれているため、特に重要な経済報告です。

経済指標では上記のほかに、9/4(水)に米国の7月製造業受注(前月比+4.7%の予想)、9/5(木)に米国の8月ADP雇用統計(前月比14.0万人増の予想)、などが発表予定です。

今週の5銘柄

今週は8/9(金)~8/29(木)に四半期決算を発表したS&P500指数採用銘柄(該当するのは41銘柄)から、エヌビディア(NVDA)、TJXカンパニー(TJX)、メドトロニック(MDT)、ウォルマート インク(WMT)、アプライド マテリアルズ(AMAT)を選んでご紹介いたします。

相場全体はやや軟調となる可能性があるとみているため、業績動向に良好な裏付けのある銘柄に安心感があると考えられえます。

図表3 米雇用統計の失業率

注:オレンジ色の2024年8月分は市場コンセンサスです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 最近の好決算銘柄(8/9(金)~8/29(木)に四半期決算を発表したS&P500指数採用銘柄)

銘柄(コード) 売上
予想比
(%)
EPS
予想比
(%)
売上
前年同期比
(%)
EPS
前年同期比
(%)
決算
発表日
エヌビディア(NVDA) 4.2 5.5 122.4 151.9 28日
TJXカンパニー(TJX) 1.1 4.4 5.6 12.9 21日
メドトロニック(MDT) 1.4 2.4 3.9 2.5 20日
ウォルマート インク(WMT) 0.5 3.8 4.8 9.2 15日
アプライド マテリアルズ(AMAT) 1.5 4.5 5.5 11.6 15日

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
()
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートエヌビディア(NVDA)119.37ドル42.3

【顧客層の広がりが注目される】

・5-7月期実績、8-10月期の売上ガイダンスとも市場予想を上回りましたが、上回る程度がこれまでよりも小さかったことから、株価はネガティブな反応となりました。しかし、アナリストによる通期の売上・EPS、目標株価平均値とも上方修正されており、好決算と捉えてよいでしょう。

・今回の決算では、クラウドサービスプロバイダー(AWS、マイクロソフト、グーグルなど)は、データセンター売上の約45%を占めると開示されました。つまり、半分以上は消費財企業、インターネット企業、その他大企業向けが占め、AIに関してFortune100企業の大部分と協働しているとコメントされました。AI利用の広がりがうかがえ、中期的にポジティブな材料と捉えられます。

買付チャートTJXカンパニー(TJX)117.27ドル28.1

【既存店売上が4%増と堅調】

・アパレルのディスカウンターで、有名ブランドのアパレル(衣料、靴、バッグなど)を割安価格(定価の20%~60%引き)で販売します。米国の消費環境が厳しくなると活躍する傾向があり、同業のロスストアーズの決算も市場予想を上回って堅調でした。

・5-7月期の既存店売上は前年同期比4.0%増で市場予想の同2.7%増を大きく上回り、通期の既存店売上は従来予想の前年比2~3%増から同4%増へ引き上げました。既存店売上の増加は、すべて来店客の増加によるもので質が高く、同社の最新フォーマット「Marmaxx」が特に好調です。

買付チャートメドトロニック(MDT)88.58ドル16.3

【新製品が順調】

・医療機器大手で、心臓ペースメーカーで世界首位です。「PulseSelect」(心房細動治療システム)、「Micra」(リードレスペースメーカー)、「MiniMed 780G」(インスリンポンプ)などの新製品の貢献によって、オーガニック売上成長は6%近くまで引きあがると見込まれています。

・5-7月期のオーガニック売上成長率は前年比5.3%増で、部門別には主力の神経科学が同5.3%増、心血管疾患が同6.9%増などと好調です。堅調な業績を受けて2025年4月期のオーガニック売上成長率を前年比4~5%増から同4.5~5%増へ下限を引き上げています。

買付チャートウォルマート インク(WMT)77.23ドル31.4

【業績拡大が順調】

・5-7月期の米国ウォルマートの既存店売上は前年同期比4.2%増で、来店客数が同3.6%増、平均購入額が同0.6%増と、伸びを来店客数がけん引していることがポジティブと考えられます。好調な業績を受けて2025年1月期の売上見通しを、前年比3.0~4.0%増から同3.75~4.75%増へ引き上げました。

・物価の上昇で消費者が痛みを感じる中で、当社はうまく立ち回って業績を伸ばしている印象です。中期的には、価値と便利さを提供することで消費者の生活必需品購入の中心的な存在になり、そこから、eコマース、ウェルネス、金融サービスなどの分野に広げてシェアを拡大しようとしています。

買付チャートアプライド マテリアルズ(AMAT)197.26ドル23.1

【AI分野の主導権争いが需要を刺激と】

・露光装置を除く幅広い製品を提供する半導体製造装置の大手です。5-7月期決算リリースでCEOは、 「当社は2024年も堅調な業績を上げつつあり、第3四半期の売上高は過去最高、利益はガイダンスの上限付近となった。AI分野における主導権争いを受けて、当社の幅広い製品とそれらに関連する技術、サービスを提供する機会は活況を呈しており、当社は長期的にも市場以上の伸びが見込めるポジションある」とコメントしています。

・8-10月期のガイダンス中央値は売上が69.3億ドルで前年同期比3%増、調整後EPSは2.18ドルで同3%増と堅調な見通しです。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エヌビディア、TJXカンパニー、ウォルマートインクは2025年1月期、メドトロニックは2025年4月期、アプライドマテリアルズは2025年10月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
9月
2(月)
・米国市場休場(レイバーデー)  
3(火) ・米ISM製造業景気指数(8月)  
4(水) ・米貿易統計(7月)
・米求人労働異動調査(7月)
・米製造業受注(7月)
・地区連銀経済報告(ベージュブック)
シースリーエーアイ
5(木) ・ユーロ圏小売売上高(7月)
・米ADP雇用統計(8月)
・米ISM非製造業景気指数(8月)
・米新規失業保険申請件数(3月9日に終わる週)
ブロードコムニオ
6(金) ・ユーロ圏実質GDP(4-6月期、確報値)
・米雇用統計(8月)
・NY連銀ウィリアムズ総裁が講演
 
9(月) ・日本実質GDP(4-6月期、確報値)
・中国生産者・消費者物価指数(8月)
・NY連銀1年インフレ期待(8月)
・米消費者信用残高(7月)
 
10(火) ・中国貿易統計(8月)
・3年債入札
・大統領候補のTV討論会(ハリス氏対トランプ氏)
 
11(水) ・米消費者物価指数(8月)
・10年債入札
オラクル
12(木) ・ECB主要政策金利
・米生産者物価指数(8月)
・米新規失業保険申請件数(9月7日に終わる週)
・米家計純資産変化(4-6月期)
・30年債入札
アドビ
13(金) ・ミシガン大学消費者マインド(9月、速報値)  

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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