アメリカNOW! ~最高値更新銘柄から:シーゲイト、ラムリサーチ、GEベルノバ、GM、AMEX~

アメリカNOW! ~最高値更新銘柄から:シーゲイト、ラムリサーチ、GEベルノバ、GM、AMEX~

投資情報部 榮 聡

2025/12/15

先週の米国株式市場は、政策金利の引き下げが相場を押し上げる一方、AI関連銘柄として注目されたオラクル、ブロードコムは決算発表を受けて株価が急落し、テクノロジー株に対する売りにつながりました。今週の株価材料として、11月雇用統計、マイクロンテクノロジー決算、エプスタイン裁判関連資料の公表が注目されます。

今回は先週12/10(水)に史上最高値を更新した銘柄群から、シーゲイト テクノロジー(STX)ラムリサーチ(LRCX)GE ベルノバ(GEV)ゼネラル モーターズ(GM)アメリカン エキスプレス(AXP)を選んでご紹介いたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

12/11(木)には終値ベースで最高値を更新しましたが、決算発表を受けてオラクルが12/11(木)、ブロードコムが12/12(金)に終値が前日比10%以上の急落となったことをきっかけに、12/12(金)には1%を超える下落となりました。「雲」の上限が下値支持帯となるか注目です。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
素材 2.4% 3.5% -1.6%
金融 2.3% 4.6% 2.3%
資本財・サービス 1.4% 2.9% 3.1%
生活必需品 1.1% 2.2% 0.1%
ヘルスケア 0.4% 1.3% 12.7%
一般消費財・サービス 0.3% 3.0% 0.1%
エネルギー -0.6% -1.4% 3.2%
S&P500 -0.6% 1.4% 3.2%
不動産 -0.8% -0.6% -3.0%
公益事業 -1.1% -3.8% 0.0%
情報技術 -2.3% -1.6% 3.6%
コミュニケーションサービス -3.2% 6.5% 2.8%
騰落率上位(5日) 騰落率
アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG) 10.2%
ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS) 6.4%
ゼネラル・モーターズ 6.4%
ロッキード・マーチン 6.2%
ウォルト・ディズニー・カンパニー 6.0%
騰落率下位(5日) 騰落率
オラクル -12.7%
インテル -8.7%
ブロードコム -7.8%
TモバイルUS -6.9%
インテュイティブサージカル -5.7%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で0.6%の下落、ダウ平均は1.0%の上昇、ナスダック指数は1.6%の下落となりました。

政策金利の引き下げを好感して12/11(木)のS&P500指数は終値ベースで最高値を更新、10/29(水)に付けた6,920.34ポイントに肉迫しましたが、オラクル、ブロードコムの決算に対する反応が失望的となって12/12(金)にはテクノロジー株を中心に下落しました。

FOMCでは労働市場の緩やかな冷え込みに配慮して0.25%の利下げが実施されました。今後についてパウエルFRB議長は、「事前に決められた道筋はなく、会合ごとに判断する」とコメントしました。

AI関連銘柄の物色に影響を及ぼすと注目された、AIインフラを提供するオラクルとAI半導体を製造するブロードコムとも、決算発表を受けて株価は10%以上の下落となりました。

オラクルは、9-11月期の売上および調整後営業利益が市場予想を下回り、2026年5月期の設備投資見通しを350億ドルから500億ドルに引き上げたことが嫌気されました。ブロードコムについては、決算内容は文句のない好決算だったと考えられますが、最近の株価上昇を受けた利食い売りが優勢となったとみられます。

経済指標では、ADPの週次統計は4週ぶりにプラスに転じ、9月、10月の求人件数は前月比増加となって、雇用市場が足もとで急激に悪化しているわけではないことが示唆されました。

業種指数では、政策金利の引き下げを受けて素材、金融、資本財・サービスの景気敏感業種の上昇が目立ちました。一方、コミュニケーションサービス、情報技術はAI関連銘柄への懸念から大幅な下落となりました。個別銘柄で上昇トップのアメリカン インターナショナル グループ(AIG)は、同業のチャブ リミテッド(CB)による買収提案の噂が出ています。

今週の米国株式市場

S&P500指数は取引時間中の最高値更新に肉迫しましたが、更新できないまま反落となりました。一目均衡表の「雲」の上限が下値支持帯となるか注目されます。

物色については、AI関連銘柄に対する物色動向を左右すると目されたオラクル、ブロードコムの決算に対する市場の反応がネガティブとなったことから、AI関連銘柄に対する物色は不安定な状況が続きそうです。関連銘柄が一斉に上昇・下落するというよりは、銘柄による選別が進む可能性がありそうです。

今週の株価材料として、11月雇用統計、マイクロンテクノロジー決算、エプスタイン裁判資料の公表が注目されます。

発表が遅れていた11月雇用統計が12/16(火)に発表の予定です。非農業部門雇用者数は前月比5.0万人増の予想で、雇用市場は鈍化傾向が続くものの、急激に悪化しているわけではないとの見方を強化するものになると考えられます。

マイクロンテクノロジーが12/17(水)に9-11月期決算を発表します。AI半導体とともに使われるHBM(High Bandwidth Memory)

と呼ばれるDRAMメモリーを製造しており、AI関連銘柄の物色に影響をもちます。

未成年女性虐待に関するエプスタイン裁判資料の公表期限が12/19(金)に到来しましす。エプスタイン氏は、トランプ大統領やクリントン元大統領など政財界要人との交友が報じられており、相場のかく乱要因にならないか注視していく必要がありそうです。

経済指標では、12/18(木)に米国の11月生産者物価指数(総合指数は前年比+3.1%の予想、コア指数は同+3.0%の予想)、12/19(金)に米国の中古住宅販売件数(前月比+1.2%の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は先週12/10(水)に史上最高値を更新した銘柄群をご紹介いたします。S&P500指数の史上最高値更新に向けた動きをリードしている銘柄群として注目できると考えます。

同日に史上最高値を更新したのは全部で26銘柄ありましたが、時価総額が500億ドル以上の銘柄を図表3に抽出しました。半導体関連やHDD(ハードディスクドライブ)メーカー、発電機などAIデータセンター投資から恩恵を受けている銘柄群が目立ちます。

また、トランプ政権による規制緩和が追い風になると期待される金融や自動車も見られます。また、米国の個人消費が二極化する中で、これをうまく捉えていると考えられる銘柄もあります。

この中から、今後も上昇が期待できそうなものとして、シーゲイト テクノロジー(STX)、ラムリサーチ(LRCX)、GE ベルノバ(GEV)、ゼネラル モーターズ(GM)、アメリカン エキスプレス(AXP)を選んでご紹介いたします。

図表3 12/10(水)に史上最高値を更新した銘柄群(時価総額500億ドル以上、S&P500指数採用銘柄対象)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 今週の5銘柄の投資指標

注:予想PERは今期予想EPSに基づいて計算しています。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(12/12)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートシーゲイト テクノロジー(STX)287.64ドル25.5

【HDDにもAIデータセンター投資の恩恵】

・ウェスタンデジタルと並ぶHDD大手です。AIデータセンター投資拡大を受けてHDDの需要が急増しています。これまで成長期待が低かった業界のため、業界大手への恩恵は大きく、長く続くとみられます。確定注文を受けてから生産を開始する「受注生産戦略」を採用していることは、顧客に対する交渉力の強さを示唆しています。

・7-9月期の市場別売上は、80%を占めるデータセンターが前年同期比34%増、20%を占めるエッジIoTが同12%減でした。HAMR(熱アシスト磁気記録)の製造能力の大きさはウェスタンデジタルに対する当面の売上拡大において優位となる可能性があります。

買付チャートラムリサーチ(LRCX)160.52ドル33.2

【半導体製造装置で例外的に好調】

・半導体製造装置メーカー。成膜やエッチング装置に強く、AI半導体とともに使用されるDRAM(揮発性メモリー)の多層化の動きが同社製品への需要を拡大しています。今週のマイクロンテクノロジー決算の動向が株価に影響を与える点には注意が必要です。

・10-12月期の売上見通しを52±3億ドル(市場予想は48億ドル)、EPSを1.15±0.1ドル(市場予想は1.01ドル)として市場予想を上回るガイダンスとなりました。中国の売上構成比が43%(7-9月期)と高いのが懸念されていますが、最先端品ではないため現時点では大きな影響はないとみられます。

買付チャートGE ベルノバ(GEV)671.71ドル50.7

【中期業績見通しを引き上げ】

・旧GEの分社化によって2024年に誕生した世界有数の発電設備メーカーで、発電機、風力発電、送配電・変電設備などを手掛けます。AIデータセンター投資の拡大が電力需要の拡大見通しにつながり、発電機への需要を刺激しています。

・12/9(火)に開催した投資家説明会で、2028年の売上見通しを1年前時点の450億ドルから520億ドルへ引き上げ、2025年から2028年までの累積フリーキャッシュフロー見通しを140億ドル以上から220億ドル以上へ大幅に引き上げました。また、先行きの業績に対する自信を背景に四半期配当額を1株当たり0.5ドルへ倍増させました。

買付チャートゼネラル モーターズ(GM)80.89ドル7.0

【排ガス規制緩和の恩恵】

・トランプ政権による排ガス規制の撤廃を受け、利益率が高い大型SUVやピックアップトラックに車種構成をシフトできるほか、関税の影響を受けている利益率の低い韓国からの輸入車を減らすことで収益の改善が見込まれると注目されています。

・7-9月期決算は、関税コストの削減やEV事業の赤字抑制が効いて市場予想を大きく上回る決算となりました。市場は同決算を好感して株価は発表翌日に15%上昇して史上最高値を更新し、その後も上昇基調を維持しています。

買付チャートアメリカン エキスプレス(AXP)382.56ドル21.9

【米富裕層の消費好調から恩恵】

・米国の個人消費は低所得層の低調と高所得層の好調という二極化が言われますが、アメリカンエキスプレスは後者の恩恵を受けている代表的な銘柄と考えられます。

・顧客満足度の向上(J.D.パワー調査で2025年に顧客満足度1位を獲得)、ミレニアル世代、Z世代からの新規アカウント獲得の好調、プラチナカードの刷新などを背景に業績は好調です。7-9月期決算は売上が前年同期比11%増、EPSが同19%増と好調で、通期のガイダンスを売上は前年比9-10%増、EPSは15.2~15.5ドルに引き上げました。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、シーゲイトテクノロジー、ラムリサーチは2026年6月期、その他は2026年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
15(月) ・NY連銀製造業景気指数(12月)
・米NAHB住宅市場指数(12月)
 
16(火) ・米雇用統計(11月)
・米S&Pグローバル製造業PMI(12月)
 
17(水) ・米20年国債入札 ・MedlineのIPO
マイクロンテクノロジー
18(木) ・米新規失業保険申請件数(12月13日に終わる週)
・米消費者物価指数(11月)
ナイキ、アクセンチュア、フェデックス
19(金) ・米中古住宅販売指数(11月)
・米ミシガン大学消費者信頼感指数(12月、確報値)
カーニバル
22(月) ・シカゴ連銀全米活動指数(11月)  
23(火) ・ADP週次雇用統計(11月29日に終わる週までの4週間)
・米実質GDP(7-9月期、改定値)
・米耐久財受注(10月)
・米鉱工業生産(11月)
・米コンファレンスボード消費者信頼感(12月)
 
24(水) ・米市場半日休場(クリスマスイブ)
・米新規失業保険申請件数(12月20日に終わる週)
 
25(木) ・米市場休場(クリスマス)
・日本鉱工業生産(11月)
 
26(金)    

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

新着記事(2025/12/15)

免責事項・注意事項

・レポートおよびコラムの配信は、状況により遅延や中止、または中断させていただくことがございます。あらかじめご了承ください。

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)、 店頭CFD取引(SBI CFD)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。