【アメリカNOW!】 がんワクチンの開発に近づいたモデルナほか、医薬品銘柄

【アメリカNOW!】 がんワクチンの開発に近づいたモデルナほか、医薬品銘柄

投資情報部 榮 聡

2026/08/24

先週の米国株式市場は、米30年国債利回りが一時19年ぶりの水準に上昇したことや、ウォルマート決算を受けて個人消費の先行きに懸念が出たことを受けて反落しました。今週の株価材料として、ジャクソンホール会合、エヌビディアの決算発表、7月個人消費支出物価指数が注目されます。

今回は好材料が出たモデルナ(MRNA)メルク(MRK)のほか、医薬品セクターから好業績のイーライ リリィ(LLY)アムジェン(AMGN)、医薬品ETFのiシェアーズ バイオテクノロジー ETF(IBB)を選んでご紹介いたします。

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図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

マクロ的な悪材料を受けて最高値圏でのもみ合いから反落しました。一方、4-6月期決算で企業業績の好調が確認されているため、急落にはなりにくいと考えられます。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
ヘルスケア 4.3% 7.4% 16.5%
エネルギー 2.5% 6.2% 7.4%
素材 2.3% 5.3% 6.4%
一般消費財・サービス -0.2% 8.9% -2.0%
不動産 -0.5% -2.2% 1.3%
生活必需品 -1.0% 1.2% -1.2%
金融 -1.2% 1.9% 10.7%
S&P500 -1.4% 3.5% 2.7%
コミュニケーションサービス -1.4% 4.2% -8.5%
情報技術 -3.2% 3.9% 1.5%
資本財・サービス -3.4% -1.4% 4.9%
公益事業 -3.6% -7.9% -5.8%
騰落率上位(5日) 騰落率
メルク 12.3%
ダナハー 8.1%
サーモフィッシャーサイエンティフィック 7.0%
セールスフォース 6.6%
コノコフィリップス 6.4%
騰落率下位(5日) 騰落率
インテル -12.1%
ウォルマート -10.0%
GEベルノバ -10.0%
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ -8.0%
ハネウェル・インターナショナル -7.7%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で1.4%、ダウ平均は0.8%、ナスダック指数は2.1%の下落でした。

8/17(月)に米30年国債利回りが19年ぶりに5.3%を付けたことが懸念されて相場を押し下げる要因になりました。

長期債利回りの上昇に対してベッセント財務長官が長期債の買い戻し額を20億ドルから40億ドルに増やし、また、財政健全化に向けた方策を発表する予定だとしましたが、利回りは高止まりとなっています。

また、ウォルマートの5-7月期決算で既存店売上の伸び率が2-4月期から減速、市場予想を下回ったことから、8/14(金)に発表の7月小売売上高の前月比減少で懸念が生じていた個人消費の行方に対する市場の不安を強めました。

業種指数では、モデルナの好材料が株価を刺激したヘルスケア、原油価格の高止まりを受けたエネルギー、素材などが上昇しました。長期金利の上昇が意識された公益事業、AI投資関連銘柄が下落した資本財・サービスと情報技術の下落が大きくなりました。

個別株で上昇トップのメルク(MRK)は、今週の5銘柄で取り上げます。下落が大きいインテル(INTC)は、8/12(水)に完了した200億ドルの公募増資以来、株価が軟調に推移しています。

今週の米国株式市場

先週の相場反落は、長期債利回りの上昇に対する懸念と個人消費の先行きに対する懸念が要因になったと考えられます。

長期債利回りの上昇については、ここにきて急に上昇したわけではなく、時間をかけて安定的に上昇してきたことから、抑え込むのは簡単ではないと見られます。原油価格の高止まりだけでなく、世界経済分断による供給コスト上昇がベースにあり、最近ではAI投資に伴う価格上昇の波及、ハイパースケーラーによる巨額の社債発行なども上昇要因になっていると見られます。

幸い米財務省がさらなる上昇をけん制する姿勢を明確にしていることから、株式相場急落につながるような急上昇は避けられそうです。

個人消費については、7月小売売上高の前月比の減少は、年初来、高い伸びが続いた反動によるものです。一方、前年比では5.0%増で、まだまだ堅調と言ってよい水準です。ウォルマート決算について会社は、医薬品の上限価格を設定する法律の影響により、既存店売上は2-4月期から5-7月期にかけて1%ポイント程度低下したとし、これを除く全般的な消費は堅調だと説明しています。

米国の個人消費がいますぐ大きく悪化するという話にはならないと考えられます。

今週の株価材料として、ジャクソンホール会合、エヌビディアの決算発表、7月個人消費支出物価指数が注目されます。

ジャクソンホール会合は8/27(木)から8/29(土)に開催されます。ウォーシュFRB議長の講演は8/28(金)の予定です。ウォーシュ氏は講演内容について、「可能であれば、大きな問いも提起したい。会合や記者会見が頻繁に開かれる中で、近視眼的な議論に陥りがちだ」と述べています。大局的な話になるとみられます。

エヌビディアは、8/26(水)引け後に5-7月期決算の発表を予定しています。AI関連銘柄の4-6月期決算は好調なものが多く、同社の決算も好調が期待されます。

7月個人消費支出物価指数は、総合指数が前年比+3.6%の予想(前月は同+3.7%)、コア指数は前年比+3.3%の予想(前月は同+3.3%)です。既に発表されている7月消費者物価指数、生産者物価指数に沿って、インフレの沈静化を示す見込みです。

経済指標では上記のほか、8/25(火)に米国の7月新築住宅販売件数(前月比-1.3%の予想)、8月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の90.8から90.2に悪化の予想)、8/26(水)に7月耐久財受注(前月比+0.5%の予想)、4-6月期実質GDP改定値(前期比年率+1.5%の予想)などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は8/19(水)に好材料が出て株価が前日比2.8倍になったモデルナ(MRNA)のほか、医薬品銘柄をご紹介いたします。

同社はメッセンジャーRNA(mRNA)という遺伝情報を伝える物質を使ったワクチンを開発している会社で、2021年から2022年にかけて業績を伸ばしましたが、新型コロナワクチンの需要が沈静化した2023年から赤字決算が続いています。

今回はmRNAを使ったがんワクチンの後期臨床試験において、メルクのがん免疫治療薬「キイトルーダ」との併用でメラノーマ(悪性黒色腫)の再発と転移リスクを低減する有効性が示されたと発表されました。

2.8倍という大幅な株価上昇になった理由として、積み上がっていた空売りの買い戻しが誘発されたことが挙げられています。新型コロナワクチン以外に業績を支える主要製品がない状態が続いているため、会社の存続を疑う向きがあるようです。

しかし、今回の臨床試験で製品化が見えてくれば、会社の存続可能性が一気に高まると期待されます。さらに、ワクチンなので、将来的には幅広いがんの予防に発展していく可能性も考えられ、期待の持てる材料と言えます。

赤字決算の会社ですのでリスクの高い投資になる点は注意が必要ですが、空売りの買い戻しで上昇した分が落ち着いてくれば、おもしろい投資対象になるのではないかと見られます。

モデルナ(MRNA)以外に同社との共同開発を行っているメルク(MRK)mRNAワクチンとは関係ありませんが、医薬品銘柄で好業績のイーライ リリィ(LLY)とアムジェン(AMGN)、さらにiシェアーズ バイオテクノロジー ETF(IBB)を選んでご紹介いたします。

図表3 今週の5銘柄の投資指標

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(8/21)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートモデルナ(MRNA)145.13ドル

【開発中のがんワクチンが前進】 

・8/19(水)にメッセンジャーRNA(mRNA)がんワクチンの後期臨床試験で、メラノーマ(悪性黒色腫)の再発と転移リスクを低減する有効性が示されたと発表しました。mRNAがんワクチンが後期臨床試験で良好な結果を示したのは今回が初めてです。

・同ワクチンは、がん細胞の特定の変異を標的とすることで、患者自身の免疫系に腫瘍を攻撃するよう訓練する仕組みです。キイトルーダ単独よりも、ワクチンを追加した方が効果が高いことが示されました。同社の業績は新型コロナワクチンの需要が落ち着いたことで、2023年から赤字決算が続いており、会社の存続にはがんワクチンの製品化が不可欠とみられます。

買付チャートメルク(MRK)152.55ドル55.5

【がんワクチンを共同開発】

・モデルナのメッセンジャーRNAがんワクチンを共同開発しています。今回の臨床試験では、同社の主力がん治療薬「キイトルーダ」とワクチンを併用することで、メラノーマ(悪性黒色腫)の再発と転移リスクを低減する効果があったと発表しました。

・2025年売上の49%を占める「キイトルーダ」の売上をいかに維持できるかが業績見通しのポイントになっています。「キイトルーダ」の物質特許は2028年に切れますが、フォーミュレーション・パテント(製剤や配合の特許)によってバイオシミラーの本格的な参入を2033年まで遅らせることができるか注目されています(Bloombergアナリストの見方)。

買付チャートイーライ リリィ(LLY)1,255.40ドル34.2

【肥満治療薬の成長続く】

・4-6月期決算は、市場予想を売上で12%、EPSで40%と大幅に上回りました。糖尿病治療薬のマンジャロは前年同期比91%増、ゼップバウンドは同46%増でした。

・注目の肥満治療薬では、現在主力のゼップバウンド(注射薬)は海外での伸びが期待されます。また、経口の「ファウンダヨ」(物質名:オルフォルグリプロン)が4月から投入されています。開発中で強力な体重減少結果が出ている「レタトルチド」(GLP-1、GIP、グルカゴンの3つの受容体に同時作用する次世代肥満治療薬)は2027年第1四半期に米FDAへの承認申請を予定しています。

買付チャートアムジェン(AMGN)439.33ドル19.1

【肥満治療薬「マリタイド」が注目点】

・バイオ医薬品大手で、関節リウマチ治療薬「エンブレル」、骨粗鬆症治療薬「プラリア」などが主力です。開発中の肥満治療薬「マリタイド」が注目されています。同薬は月1回(またはそれ以下の頻度)の皮下注射で効果を発揮することが特徴です。2024年11月の中期臨床試験では、最大20%の体重減少が報告されました。

・2023年に買収したホライゾンによって売上の伸びが確保されてきましたが、徐々に伸びが低下しています。中期的に売上成長を押し上げるためには、「マリタイド」の成功が必要と考えられます。

買付チャートiシェアーズ バイオテクノロジー ETF(IBB)213.56ドル

【バイオテクノロジー株のETF】

・ブラックロック社が提供する米国上場のバイオテクノロジー株のETFです。組み入れ上位銘柄は、アムジェン、バーテックス・ファーマシューティカルズ、ギリアドサイエンシズ、リジェネロンファーマシューティカルズなどです(8/19時点)。

・7月末時点の純資産額は92.1億ドル、分配利回りは0.20%、経費率は0.44%です。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2026年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
24(月) ・シカゴ連銀全米活動指数(7月)  
25(火) ・S&PコタリティCS住宅価格(6月)
・米新築住宅販売件数(7月)
・米コンファレンスボード消費者信頼感(8月)
・米2年国債入札
 
26(水) ・米個人所得・個人支出(7月)
・米個人消費支出物価指数(7月)
・米耐久財受注(7月)
・米実質GDP(4-6月期、改定値)
・米5年国債入札
エヌビディアクラウドストライクホールディングス
セールスフォース、HP
27(木) ・ジャクソンホール会合(29日まで)
・米新規失業保険申請件数(8月22日に終わる週)
・米7年国債入札
ダラーツリー、ダラーゼネラル、ワークデイ
28(金) ・米ミシガン大学消費者信頼感(8月、確報値)  
31(月)    
9月
1(火)
・米ISM製造業景気指数(8月)
・米求人労働異動調査(7月)
パロアルトネットワークス、メドトロニック
2(水) ・米ADP雇用統計(8月)
・米製造業受注(7月)
・地区連銀経済報告(ベージュブック)
ブロードコム
3(木) ・米チャレンジャー人員削減(8月)
・米貿易統計(7月)
・米新規失業保険申請件数(8月29日に終わる週)
・米ISM非製造業景気指数(8月)
 
4(金) ・米雇用統計(8月)  

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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