~現実味増すリオープン、目標株価引き上げ銘柄リスト~

~現実味増すリオープン、目標株価引き上げ銘柄リスト~

投資情報部 李 燕

2022/12/22

12/15-12/21の香港市場は、利益確定売りで反落しました。欧米の利上げ長期化に対する懸念が再び強まるなか、中国の新型コロナの感染拡大も重石となり、利益確定売りを誘いました。

今回のトピックスは、「現実味増すリオープン」と「目標株価引き上げ銘柄リスト」です。

なお、12/29は掲載休止となり、次回予定は2023/1/5となります。

今週の中国株市況

図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

注:12/21(水)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(12/21(水)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
01044 恒安国際 [ハンアン・インターナショナル] 1.8% 19.8% 12.9% 衛生用品メーカー。中国銀行間取引市場の短期債発行が認可され、買われた。
02628 中国人寿保険 [チャイナ・ライフ] 1.7% 17.8% 13.0% 大手保険会社。大手証券会社が目標株価を引き上げた。
00066 香港鉄路[MTRコーポレーション] 1.3% 6.9% 0.8% 香港の公共交通サービス会社。「ゼロコロナ政策」の緩和で、香港と中国本土との往来は2023年1月初旬にも完全に再開される予定だと報じられ、買い材料となった。
00001 長江和記実業[CKハチソン] 1.1% 4.2% -5.2% コングロマリット。バルチック海運指数の上昇で買われた。同社は香港の港や上海港、深セン港の権益を保有している。
00316 東方海外 1.0% 16.8% -5.6% 海上貨物輸送を手掛ける。バルチック海運指数の上昇で買われた。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00960 龍湖集団 [ロンフォー・グループ] -6.3% 22.6% -7.7% 中国不動産大手。中堅不動産会社が増資計画で急落し、不動産株が軟調。同社はRSIが短期的に買われ過ぎサインとされる70%に達したこともあり、利益確定売りに押された。
00669 創科実業 [テクトロニック・インダストリーズ] -9.0% -3.2% -1.2% 大手電動工具メーカー。11月の米国の小売と住宅着工件数が市場予想を下回り、売り材料となった。同社は売上高の8割を北米が占める。
00868 信義玻璃控股 [信義ガラス] -9.1% 1.0% 6.6% 大手ガラスメーカー。会社側が2022年通期の純利益は前年比55%-65%減になる見通しだと発表し、売り材料となった。会社側は、2022年は建築用ガラスの需要減と原材料価格の上昇がダブルパンチになったと説明。
00241 阿里健康信息技術 [アリババ・ヘルス] -9.6% 30.6% 90.9% アリババ(09988)傘下のインターネットヘルス大手。中国株に対するセンチメントの好転を受けたリターンリバーサルで11月に入ってから3倍以上急騰したが、12月中旬以降は主要都市で感染拡大が伝わり、利益確定売りが進んだ。
09888 百度 [バイドゥ] -9.7% 16.3% -11.8% 検索エンジン大手。RSIが短期的に買われ過ぎサインとされる70%に達し、利益確定売りに押された。200日移動平均線を突破できなかったことも、売りを誘ったもよう。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09961 携程旅行網 [トリップドットコム゚] 4.8% 22.8% 31.8% オンライン旅行サービス大手。7-9月期の決算内容が市場予想を上回ったほか、「ゼロコロナ政策」の見直しに伴う旅行予約の増加が買い材料となった。
06690 海爾智家 [ハイアールスマートホーム] 0.2% 8.6% 6.7% 大手家電メーカー。自社株買いを実施。軟調地合いのなか、小幅ながら上昇した。
01347 華虹半導体 [フアホン・セミコンダクター] 0.0% 3.8% 36.9% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。大手証券会社が目標株価を引き上げ、上昇したが、米国が中国半導体メーカーYMTCなどを輸出禁止リスクに追加する予定だと報じられ、売り材料となった。
09999 網易 [ネットイース] -0.5% 6.9% -13.4% ゲーム大手。特段材料はなく、需給要因のもよう。
00992 聯想集団 [レノボ・グループ] -1.6% -2.5% 2.6% パソコン大手。需給要因のもよう。大手投資ファンド数社が持ち株比率を引き下げた。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09888 百度 [バイドゥ] -9.7% 16.3% -11.8% 検索エンジン大手。RSIが短期的に買われ過ぎサインとされる70%に達し、利益確定売りに押された。上昇局面で200日移動平均線を突破できなかったことも、売りを誘ったもよう。
09866 蔚来汽車 [ニオ] -10.0% 8.5% -45.3% 新興EVメーカー。ハッカー集団が同社のデータを盗み、身代金を要求したと明らかになり、売り材料となった。
00772 閲文集団(China Literature) -10.9% 4.9% 2.0% オンライン文学プラットフォームを運営。200日移動平均線に乗せた後、地合いの軟調を受け、利益確定売りに押された。
00909 Ming Yuan Cloud Group -12.0% 18.7% 22.8% 不動産会社向けソフトウェア大手。中堅不動産会社が増資計画で急落し、不動産関連株が軟調。
01833 平安健康医療 [ピンアン・ヘルスケア] -12.8% 17.3% 24.7% 平安保険(02318)傘下のインターネットヘルス大手。中国株に対するセンチメントの好転を受けたリターンリバーサルで11月に入ってから2倍以上急騰したが、12月中旬以降は主要都市で感染拡大が伝わり、利益確定売りが進んだ。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

12/15-12/21の香港市場では、ハンセン指数が2.6%下落、ハンセンテック指数は5.0%下落しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は、0.6%上昇しました。

欧米の利上げ長期化に対する懸念が再び強まるなか、中国の新型コロナの感染拡大も重石となり、利益確定売りが目立ちました。ただし、クリスマス休暇を控え、市場参加者は少なく、売買は低調でした。

業種別では、ヘルスケア、情報テクノロジー、工業が下落率上位に並びました。

ヘルスケアは、康希諾生物(06185)などワクチン関連株が下げを主導しました。中国の大手証券会社が、ワクチンの供給改善と治療薬の進展期待に加え、一部地域ではすでに新型コロナの感染ピークが過ぎた可能性があるとし、ワクチン関連銘柄は推奨しないと発表し、売り材料となりました。

情報テクノロジーは、11月に入ってから上昇が続きましたが、多くの銘柄がテクニカル面で短期的に買われ過ぎサインが点灯したため、利益確定売りに押されました。アリババ(09988)やJDドットコム(09618)、ビリビリ(09626)、百度(09888)などがそろって反落しました。

工業は、アップル関連株と時価総額の大きい信義ガラス(00868)、金風科技(02208)が下げを主導しました。アップル関連株は光学レンズを手掛ける舜宇光学(02382)が11月の携帯端末用レンズセット出荷量が前年同月比26%減少したと発表し、売りを誘いました。世界大手証券がアップルの2023年1-3月期のiPhone販売台数予想を700万台減らしたことも、嫌気されました。

信義ガラスは、会社側が2022年通期の純利益は前年比55%-65%減になる見通しだと発表し、売り材料となりました。減益要因について会社側は、2022年は建築用ガラスの需要減と原材料価格の上昇がダブルパンチになったと説明しました。風力発電機メーカーの金風科技については、大手投資ファンド2社が持ち株比率を減らしたことが明らかになりました。

個別銘柄では、オンライン旅行サービス大手のトリップドットコム(09961)が逆行高となりました。7-9月期の決算内容が市場予想を上回ったほか、「ゼロコロナ政策」の見直しに伴う旅行予約の増加が買い材料となりました。同社の予約サイトでは12/7-12/18に、中国国内の代表的な観光地である海南省行きの飛行機予約と海南省内のホテル予約が前月に比べ、6-7割増加しました。

市場の一部ではWithコロナの初期段階の感染拡大やそれに伴う混乱で、中国が再びロックダウンを導入するのではとの警戒もあるようですが、中国の人々はWithコロナに向けて動きだしているようです。

今回のトピックス

【現実味増すリオープン】

リオープンをめぐる動きは、12/21付けの外国株式特集レポート「2023年は米上場の中国ADRの年」となるか、暴落を招いた3大要因が剥落へ」の再掲で、最後の部分だけ最新情報を追加したものとなっています。

中国当局が「ゼロコロナ政策」の見直しを急激に進めたことで、Withコロナの初期段階は感染拡大や死者数増加といった混乱がみられています。これは中国に限らず、欧米や香港などにもみられた現象です。たとえば香港の場合、今年2-3月にかけて感染が急拡大し、死者数も増えました。当時、香港の致死率は世界トップとなり、注目を集めました。香港政府がワクチン接種(特に高齢者)を強化したことで、感染状況は4月に落ち着きました。今香港の域内ではほぼ完全にWithコロナの状態となっています。

香港経済紙のSCMPによると、香港と中国本土との往来は2023年1月初旬にも完全に再開される予定です。香港政府のトップも12月中旬に、「中国本土との来年の往来再開は、可能性が非常に高い」と表明しました。これには中国当局の意向も反映してあるとみられます。つまり、中国当局は「ゼロコロナ政策」の見直しを進めていく方針で、来年は国境をまたぐ移動の緩和について、最初の一歩として香港との往来を再開する計画です。

したがって、中国当局はWithコロナの初期段階の混乱は覚悟しているようで、今後はWithコロナに向けて動きを続けるとみられます。背景には、経済重視路線への転換に加え、現在のオミクロン株は致死率が低く、ワクチン接種が進んだ場合はさらに致死率が低下すると考えられるためです。行動制限の緩和と同時に、中国政府は足元でワクチン接種(特に高齢者)を強化しています。中国現地紙の財新によると、中国当局は2023年1月末前に、80歳以上の高齢者に対しては1回目のワクチン接種率を90%、60-79歳の人に対しては2回目のワクチン接種率を95%に達することを目標に設定しています。香港の成功事例を中国本土に展開したものとみられます。よって今後のカギを握るのは、感染者数や死者数よりも、ワクチン接種率となりそうです。 ワクチン接種が計画通りに進めば、中国本土は2023年にリオープンするとみられます。完全再開の時期について、市場のコンセンサスは3月に開催される全国人民代表大会の後に当たる第2四半期、あるいは年半ばとなっています。

一方、12/21の観測報道によると、中国は2023年1月3日にも水際対策を一段と緩和し、入境者の施設隔離期間を現在の5日間から0日間に変更する可能性があります。いわば、強制隔離を来年早々にも撤廃する可能性が出てきました。事実なら、中国当局は市場予想を上回るペースで「ゼロコロナ政策」の見直しを進めることを意味します。足元の動きからすると、中国は本格的にリオープンに向けて進んでおり、リオープンの現実味はますます増していると言えます。

【目標株価引き上げ銘柄リスト】
中国がリオープンに動き出した過去1-2カ月間、中国企業の2023年業績見通しについて上方修正する動きが目立ちました。一方で、アナリストたちは目標株価の引き上げに対して慎重でした。しかし、過去1週間では状況が変わり、目標株価を引き上げる動きも強まりました。中国のリオープンが現実味を増していることが背景と考えられます。

今回は、目標株価引き上げ銘柄(図表4)についてご紹介したいと思います。なお、銘柄リストの抽出条件は下記の通りです。
1)ハンセン総合指数の構成銘柄
2)時価総額が300億香港ドル以上
3)過去1週間で目標株価が引き上げられた銘柄のうち、上位20銘柄

図表4の銘柄リストを確認してみると、おおむね5つのグループに分けることができます。
1)リオープン関連銘柄:旅行や外食、スポーツ用品、決済サービス
2)不動産関連銘柄:建設資材、不動産
3)保険
4)医薬品開発受託
5)証券取引所

そのうち、1)のリオープン関連銘柄は経済再開を見込んだもので、2)の不動産関連銘柄は中国当局による支援を受けた不動産市場の回復を織り込んだものと考えられます。

3)の保険については、12/1付けレポート「中国株 ココがPOINT!  ~中国がついにWithコロナへ一歩、海外投資家は買いへ、保険株も出遅れ修正に~」をご参照願います。

4)の医薬品開発受託については、米商務省がバイオ医薬品開発大手の薬明生物(02269)の子会社を「未検証リスト(UVL)」(※)から除外したことを受けたものです。同子会社のUVLリスト入りを受け、米中対立が医薬品分野まで広がったと懸念されましたが、今回の動きで懸念は大幅に後退しました。

米中対立をめぐっては、12/21付けの外国株式特集レポート「2023年は米上場の中国ADRの年」となるか、暴落を招いた3大要因が剥落へ」でご紹介しましたように、今後は半導体以外の分野では「対立」より「協力」となりそうです。

5)の証券取引所については、中国当局が成長重視に方向転換したことを受け、中国株に対する関心が高まり、中国株の取引が活発になってくることを予想したものとみられます。今年の中国株は、様々な要因で調整が続きましたが、年末にかけて出始めた明るい材料は2023年の中国経済および中国株の回復につながると予想されます。

図表4 目標株価引き上げ銘柄リスト

銘柄コード Bloomberg銘柄名 目標株価の変化率(%、過去1週間) 来年度予想EPS成長率(%) PER 関連分野
09961 携程旅行網 [トリップドットコム゚] 50.6 6.8 - 旅行
02057 ZTOエクスプレス 15.3 0.2 23.7 宅配
09987 ヤム・チャイナ 3.2 0.7 48.4 外食
00696 中国民航信息網絡 2.3 1.1 60.1 航空
00388 香港取引所 1.7 0.2 42.3 証券取引所
01378 中国宏橋集団 1.2 0.1 3.8 建設資材・アルミニウム
02359 無錫薬明康徳 0.9 0.1 24.9 医薬品開発受託
03690 美団(Meituan) 0.8 7.8 - フードデリバリー・レストラン予約
00700 騰訊 [テンセント・ホールディングス] 0.6 0.2 14.9 ゲーム・決済サービス
00966 中国太平保険 [チャイナ・タイピン・インシュアランス] 0.6 0.4 6.4 保険
02269 薬明生物 [ウーシー・バイオロジクス] 0.5 0.4 46.6 バイオ医薬品開発受託
00868 信義玻璃控股 [信義ガラス] 0.5 0.2 5.8 建設資材・ガラス
02020 安踏体育用品 [アンタ・スポーツ] 0.5 0.2 31.3 スポーツ用品
02378 プルーデンシャル 0.5 0.3 24.6 保険
01109 華潤置地 [チャイナ・リソーシズランド] 0.4 0.1 7.2 不動産
02331 李寧 [リー・ニン] 0.4 0.2 33.9 スポーツ用品
00241 阿里健康信息技術 [アリババ・ヘルス] 0.3 0.6 692.5 インターネットヘルス
00005 HSBC (匯豊控股) 0.3 0.2 10.0 銀行
02318 平安保険 [ピンアン・インシュアランス] 0.3 0.3 8.0 保険
00688 中国海外発展 [チャイナオ-バ-シ-ズランド] 0.2 0.1 5.4 不動産

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

おすすめ記事(2022/12/22)

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。