~FOMC後にリスク回避、医薬品株や石油関連株に注目~

~FOMC後にリスク回避、医薬品株や石油関連株に注目~

投資情報部 李 燕

2023/09/28

9/14-9/27(※)の香港市場は調整しました。中国の不動産市場に対する懸念や米長期金利の上昇が重石となりました。

(※前週が休載だったため、今回は過去2週間の振り返りとなります。)

今回のトピックスは、「FOMC後にリスク回避、医薬品株や石油関連株に注目」です。

今週の中国株市況

図表1 ハンセン指数とハンセンテック指数(ローソク足)の年初来推移

注:9/27(水)までのチャートです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の年初来推移(2022年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(9/27(水)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
02688 新奥能源 [ENNエナジー] 12.3% 5.1% -36.1% 天然ガス供給会社。自社株買い計画が好感された。大手証券会社による目標株価の引き上げも株高につながった。
03692 Hansoh Pharmaceutical 7.4% 5.7% -16.8% 医薬品大手。新薬の臨床試験が中国国家医薬品監督管理局から承認された。医薬品株に対する買戻しの動きも株高を支えた。
02269 薬明生物 [ウーシー・バイオロジクス] 6.3% 0.9% 16.5% バイオ医薬品開発受託大手。米連邦公開市場委員会(FOMC)後にリスク回避の動きが高まり、ディフェンシブの医薬品株が買われた。
00857 中国石油天然気 [ペトロチャイナ] 6.0% 2.8% 5.6% 中国石油・天然ガス最大手。原油先物価格が一段高となり、買い材料となった。
00316 東方海外 5.0% -2.0% -1.9% 海上貨物輸送を手掛ける。テクニカル要因のもよう。RSIが短期的売られ過ぎサインとされる30%に近づいた後、反発した。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00868 信義玻璃控股 [信義ガラス] -10.7% -15.2% -20.2% 大手ガラスメーカー。大手証券会社が目標株価を引き下げ、売られた。不動産デベロッパーの信用不安による不動産市場への影響も警戒された。
02382 舜宇光学 [サニーオプチカル] -12.8% -15.8% -31.0% 大手光学機器メーカー。大手証券会社が目標株価を引き下げた。アップル関連銘柄の売りも影響した。著名アナリストが中国市場で「iPhone 15 Pro Max」以外の「iPhone 15」シリーズ製品の販売状況は予想を下回っていると指摘した。
02331 李寧 [リー・ニン] -13.2% -13.6% -26.4% 中国国産ブランドのスポーツウエア大手。中国のスポーツ用品販売額が8月に前年同月より1割以上減少し、スポーツ用品メーカーが売られた。
00960 龍湖集団 [ロンフォー・グループ] -17.0% -17.8% -29.8% 中国不動産大手。再編中の中国恒大(03333)の本土部門がオンショア人元建て債の利払いを履行できなかったと公表し、不動産株が大幅安となった。
06098 CG SERVICES -17.6% -10.2% -21.2% 不動産大手カントリーガーデン(02007)傘下の不動産サービス会社。再編中の中国恒大(03333)の本土部門がオンショア人元建て債の利払いを履行できなかったと公表し、不動産株が大幅安となった。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
03888 金山軟件 [キングソフト] -0.4% -8.5% -16.2% ゲーム・ソフトウェア大手。連日の自社株買いが支えとなり、軟調地合いの中、下落率は限定的だった。
00241 阿里健康信息技術 [アリババ・ヘルス] -0.4% -1.1% -2.8% アリババ(09988)傘下のインターネットヘルス大手。米FOMC後にリスク回避の動きが高まり、ディフェンシブの医薬品株が買われるなか、下落率は限定的だった。
01810 小米集団 [シャオミ] -0.7% -4.2% 11.7% スマートフォン・IoT家電大手。連日の自社株買いが支えとなり、軟調地合いの中、下落率は限定的だった。
09898 微博 -0.9% -7.3% -11.1% ソーシャルメディア・プラットフォーム運営会社。特段材料はなく、薄い商いのなか、小幅安となった。
00981 中芯国際 [SMIC] -1.2% -0.6% -5.4% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。9/15にTSMCが主要サプライヤーに最先端半導体向け製造装置の納入を遅らせるよう求めたと報じられ、半導体株が売られた。ただその後は、半導体の底打ち期待と国産化機運により幾分買い戻された。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09868 小鵬汽車[シャオペン] -10.0% -13.1% 58.8% 新興EVメーカー。同社が公表した新型スマートSUV「G9」の価格が旧型より低く、粗利益率への影響が懸念された。米FOMC後のリスク回避志向の高まりも下落幅を増幅させた。
02015 理想汽車[リーオート] -12.1% -14.7% 2.7% 新興EVメーカー。同社の初期投資家で社外取締役である美団(03690)のCEOが同社株を売却したと報じられ、売られた。米FOMC後のリスク回避志向の高まりも下落幅を増幅させた。9/24までの9月の販売状況は引き続き好調だったが、軟調地合いの中、材料視されなかった。
00268 金蝶国際軟件 [キングディー・ソフトウエア] -12.4% -20.8% -9.3% ソフトウェア会社。中国国内メディアが同社の黒字転換は厳しいとの記事を掲載。株価は下降トレンドが続き、節目の10香港ドル台を割り込んだ。
02382 舜宇光学 [サニーオプチカル] -12.8% -15.8% -31.0% 大手光学機器メーカー。大手証券会社が目標株価を引き下げた。アップル関連銘柄の売りも影響した。著名アナリストが中国市場で「iPhone 15 Pro Max」以外の「iPhone 15」シリーズ製品の販売状況は予想を下回っていると指摘した。
09866 蔚来汽車 [ニオ] -18.5% -21.7% -4.0% 新興EVメーカー。会社側が10億米ドルの転換社債の発行提案を発表し、希薄化懸念で売られた。予想外の大規模(10億ドルは同社の時価総額のおよそ7%に相当する)な発行提案だったほか、さらに30億ドルの資金調達を計画していると噂されたこと、米FOMC後のリスク回避志向の高まりも下落幅を増幅させた。なお、同社は噂を否定した。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

9/14-9/27(※)の香港市場では、ハンセン指数が2.2%下落、ハンセンテック指数は5.1%下落しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は3.4%下落しました。(※前週が休載だったため、今回は過去2週間の振り返りとなります。)

過去およそ2週間の下落は、主に下記2つを背景に、投資家のリスク回避志向が高まったためとみられます。

1)中国の不動産デベロッパーの信用不安が再燃

再編中の中国恒大(03333)の本土部門がオンショア人元建て債の利払いを履行できなかったと公表し、不動産デベロッパーをめぐる信用不安が再燃しました。中国当局は一連の不動産支援策を打ち出していますが、その効果は今のところ限定的で、より強力な措置が必要であることが示されました。

2)タカ派のFOMC(米連邦公開市場委員会)による金融引き締めの長期化懸念と米長期金利の一段高

香港市場は中国本土市場より海外投資家の動向に左右されやすく、特に米国市場に同時上場している銘柄は米国市場の投資家センチメントの影響も受けます。たとえば、ナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数は、米長期金利の動向や米国個人投資家協会(AAII)の週次調査による強気弱気指数(AAIIセンチメント・ブル/ベア・レシオ)と連動性が比較的高い傾向があります(図表4)。タカ派のFOMC後、米長期金利が一段高となっていることからすると、当面は金利動向に留意する必要がありそうです。

図表4 WTI原油先物価格の推移(2019年以降)

※BloombergをもとにSBI証券が作成。

業種別では、不動産のほか、投資家のリスクセンチメントに影響されやすい一般消費財(主に電気自動車(EV)関連銘柄)、情報テクノロジーが下げを主導しました。EV関連銘柄については個別材料もあった(図表3を参照)ものの、中国の不動産市場に対する懸念や米長期金利の一段高を受けたリスク回避の影響も大きく受けています。

一方、エネルギーとヘルスケア、電気通信は逆行高となりました。エネルギーは主に原油高を支えに、石油メジャーのCNOOC(00883)やペトロチャイナ(00857)が上昇しました。

ヘルスケアは、ディフェンシブ性が評価され、買い優勢となりました。医薬品大手の翰森製薬(03692)やバイオ医薬品開発受託大手の無錫薬明康徳(02359)、バイオ医薬品開発受託大手の薬明生物技術(02269)など代表的な銘柄にそろって買いが入りました。ただ、米長期金利の上昇を嫌気し、赤字のバイオテクノロジー企業の百済神州(06160)は売り優勢でした。

なお、中国経済の見通しをめぐっては、不動産市場の苦境がクローズアップされ、全体的に見通しが悪化している印象が市場にあるようです。しかしながら、ここ2カ月の経済指標からは製造業や小売は比較的堅調で、特に製造業は持ち直す傾向にあることを指摘しておきたいと思います(図表5)。つまり、投資家が懸念しているほど中国経済は悪くなく、年後半は持ち直す可能性があります。

図表5 中国の主要経済指標の推移(月次ベース、2009年3月以降)

※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今回のトピックス

今回のトピックスは、「FOMC後にリスク回避、医薬品株や石油関連株に注目」です。

タカ派の米連邦公開市場委員会(FOMC)による金融引き締めの長期化懸念と米長期金利の一段高を受け、投資家のリスク回避志向が高まっています。米国の金利動向をめぐっては不透明感も多く、足元ではさらなる金利上昇や来年の金利高止まりを警戒する動きも出てきています。

当面、香港市場も中国側から何らかの政策が打ち出されない限り、米長期金利の動向に左右される展開となりそうです。金利高止まりに対する懸念が続くのであれば、ディフェンシブ銘柄が注目されるでしょう。たとえば、米FOMC後の業種別騰落率を確認してみると(図表6)、香港市場では全面安の中、ヘルスケアだけが逆行高となりました。ヘルスケアはディフェンシブ性が期待できるほか、年初からの売りでバリュエーションが大幅に低下していたことも買戻しにつながったとみられます。

図表6 米FOMC後のハンセン総合指数の業種別騰落率(9/20-9/27)

※BloombergをもとにSBI証券が作成。

なお、ヘルスケアの場合、個別銘柄は株価変動が大きくなる傾向があります。ヘルスケア関連指数に連動するEFTを活用する方法も有効かもしれません。

図表7 香港上場の主要医薬品関連銘柄とETF(赤字のバイオ企業を除く)

銘柄名 関連分野 株価(9/27) 52週高値 52週安値 予想PER 過去5年平均PER
薬明生物技術(02269) バイオ医薬品開発受託大手 44.55 77.40 35.00 33.34 107.31
無錫薬明康徳(02359) 医薬品開発受託大手 93.45 114.00 57.90 25.68 63.03
翰森製薬(03692) 医薬品大手 10.78 18.20 9.41 21.54 28.50
チャイナバイオ(02820) チャイナバイオテック指数に連動するETF 56.46 79.50 51.54 - -

また、原油先高観が根強いことから、ペトロチャイナ(00857)CNOOC(00883)などの石油関連株も引き続き、注目されることとなりそうです。(9/14付レポート「WTI原油先物がゴールデンクロスに、アリババはもはやバリュー株!?」をご参照願います。)

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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