~2024年に逆張りなら?目標株価と大幅かい離の銘柄は~

~2024年に逆張りなら?目標株価と大幅かい離の銘柄は~

投資情報部 李 燕

2023/12/21

12/14-12/20の中国株主要指数は売り買いが交錯し、まちまちでした。

今回のトピックスは、「2024年に逆張りなら?目標株価と大幅かい離の銘柄は」です。

※「中国株 ココがPOINT!」は2024年から金曜日掲載に変わります。たとえば、2024年1月の初回は1/5(金)の予定です。なお、2023年12月最終週は休載とさせていただきます。

今週の中国株市況

図表1 主要中国株指数の年初来推移

注:12/20までのチャートです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の年初来推移

注:業種別指数は香港市場のハンセン総合指数のサブ指数です。12/20までのチャートです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 当社内売買代金上位10銘柄の騰落率と関連ニュース(注)

銘柄コード 銘柄名 騰落率 関連ニュース等
NIO 蔚来汽車(ニオ)Inc ADR 6.6% 2024年の販売回復期待と欧州での低価格帯EVの投入計画、および大株主による追加出資が好材料となった。同社は12/14にメディア向け説明会を実施。Q&A方式による李CEOの主なコメントは、以下の通りである。1)2024年-2025年は高価格帯EV(同社の主力市場)の販売回復が期待できる。2024年の販売見通しについては、月間2万台のベースラインを目標にしている(2023年10-12月期ガイダンスで試算すると、月間販売台数は約1.5万-1.6万台)。2)価格競争は確かにあるが、自社は値下げを実施するつもりはない。3)人員調整はほぼ完了している。機能が重複する一部の部門を統合したが、人員削減を拡大する一部の報道は誤った情報だ。同社は12/15に低価格帯EVブランドの「Firefly」を2024年に欧州で投入する計画を明かした(従来より1年前倒しとなった)。12/18に、アブダビのCYVNホールディングスが同社の新株2億9,400万株を引き受け、22億ドルを追加出資すると発表した。これにより、CYVNホールディングスはニオの発行済株式総数の20.1%を保有することになる。ニオは赤字が続いており、大株主による追加出資は希薄化懸念より、財務の強化として評価された。ただ、12/20は急落。クリスマス休暇を前に短期筋が利益確定売りを行ったもよう。テクニカル指標のRSIが短期的に買われすぎの70%に近づいたタイミングと重なった。
BABA 阿里巴巴集団(アリババグループ)ADR 2.6% バロンズ(米著名な投資週刊誌)が公表した「2024年に向けて本誌が選ぶ10銘柄」に同社がランクインした。同社株はクラウド部門のスピンオフ上場中止や競合PDDホールディングスの好業績で急落したが、前週に株価が下げ止まる気配を示した後、上昇に転じた。12/20は訴訟報道を嫌気し、反落した(クリスマス休暇前のポジション調整売りも影響したとみられる)。日本の特許管理会社BWBがEコマースシステムに関する特許を侵害しているとして、同社を相手取って、日本と米国および韓国で使用差し止めや損害賠償を求める訴訟を起こした。アリババはこれらの特許侵害の申し立てを否定し、日本の裁判所にこれらの申し立てを却下するよう要請した。日本と米国および韓国、3カ国の海外Eコマースの売上高は不明だが、同社の海外コマース全体の売上高は総売上高の8%を占める(2023年3月期)。なお、米国では同様な訴訟が2年前からあり、現在進行中と報じられている。訴訟の結果が出るには時間がかかる可能性が高く、短期的に同社業績への影響は(売上構成比からしても)限定的と考えられる。同社は12/20に主力部門の人事変更を発表した。アリババの創業メンバーの一人である吳氏がグループCEO、アリババクラウドCEO、タオバオ・天猫(中国Eコマース)CEOを兼任することになった。今回の人事変更からは、同社がクラウドと中国Eコマースを重視していることが伺える。人事変更に対する評価は今のところまちまち。全体的な競争力と柔軟性を強化する動きとしてポジティブの評価もある反面、競争の激しい中国コマース事業では支出が増える、利益率に影響ができる可能性があるとの見方もあった。なお、吳氏は「堅実で信頼できる人で立派な功績がある」とされ、「吳ママ」(ママはお母さん)のあだ名を持っている。吳ママの元でアリババが復活できれば株価の見直しも続く可能性がある。同社は国内外の小売部門でさまざまなAI駆動ツールを実験しており、同時にAI関連職種の採用急増に乗り出しているとも報じられている。
00700 テンセント(騰訊) 2.3% 新ゲームのリリースが買い材料となった。同社は12/15に新しいゲーム「DreamStar」をリリースした。「DreamStar」はアニメのキャラクターになりきって障害物競走を行うもので、ネットイース(NTES)の大人気ゲーム「Egg Party」に対抗するものとみられている。一部のアナリストは「DreamStar」は初年度に50億~60億元の収益をもたらす可能性があると予想した。テンセントのゲーム事業の年間売上高は1,707億元である(2022年12月期)。なお、ネットイースをカバーしているアナリストはテンセントの「DreamStar」のリリースを受け、ネットイースの収益が2%~3%影響を受ける可能性があるとし、ネットイースに業績予想を小幅に下方修正した。
XPEV シャオペン ADR -9.1% 12/15に大株主のアリババが同社株を一部売却したことが明らかになり、売り材料となった。売却についてアリババは、「自己資本管理の目的に沿ったもの」と説明し、シャオペンの将来性を信じており、同社と継続的に協力すると表明した。売却後、アリババの保有比率は10.2%から7.5%に低下した。シャオペンは、「売却はアリババが株主還元策の一環として投資利益の収益化戦略を実行したことであり、シャオペンに対する見解の変化を反映しているものではない」とコメント。 アリババは引き続き、第2位の株主であると強調し、今後もアリババとクラウドコンピューティングなどの分野で戦略的協力を実施していくと表明した。なお、アリババは現在、クラウドとEコマースでの地位を取り戻すことに注力しており、シャオペンだけでなく他の投資資産も見直しており、売却を進めている。12/20に大手投資ファンドがシャオペン(香港上場株)の保有比率を引き上げたことが明らかになった。なお、同社株の12/20の大幅下落は、クリスマス休暇前のポジション調整の売りが要因と考えられる。
01211 比亜迪 ( Byd ) -1.7% 中国EV電池メーカー最大手のCATL(中国本土上場)が特段材料がない中で急落し、連れ安した。BYDはCATLに次いで2位のEV電池メーカーである。株価は節目の200香港ドル維持を試している。大手投資ファンド数社が保有株比率を引き上げた。アマゾンウェブサービスのAWSクラウドは12/14に、 BYDがグローバルでのビジネスを支援する同社のコネクテッドカー向け車載プラットフォームに関して、AWSを推奨クラウドプロバイダーに選定したと発表した。発表資料では「コネクテッドカー向け車載プラットフォームをAWS上で稼働させることによって、BYDは世界どこにおいても車両の安全性や操作性、メンテナンス効率、そしてドライブ体験全般を向上させる自動アップデートを提供することができる」と記している。今回の動きは、BYDのグローバル事業拡大に向けた戦略の一環であるとみららる。
00941 チャイナモバイル -0.6% 需給要因のもよう。香港にある銀行傘下の投資ファンドが同社の保有株比率を引き下げた。
PDD PDD ホールディングス ADR 0.0% 特段材料はなく、横ばいとなった。競争のアリババやJDドットコムへの見直し買いがみられる中、同社株は小動きとなった。12/20の下落は、クリスマス休暇前のポジション調整の売りが要因とみられる。
LI リーオート ADR -4.0% 12/20の下落が響いた。米国市場で12/20に高値警戒感からテック株が急落し、中国企業ADRもそろって売られた。クリスマス休暇前のポジション調整売りも影響したと考えられる。12/20の下落で同社株は200日移動平均をわずかながら下回った。大手証券会社が同社の香港上場株を投資判断「買い」で新規カバレッジを開始したが、材料視されなかった。当面は需給要因が株価動向を左右する展開となるかもしれない。
02269 薬明生物技術 2.5% 予想外の業績見通し下方修正を嫌気した売りに一服感がみられた。同社は12/5に発表した通り、自社株買いを実施しており、それが株価を下支えした可能性がある。機関投資家の売買動向を確認してみると、売り買いが交錯した。
BILI ビリビリ ADR -9.9% 大幅反落した。前週は一部のアナリストが2024年に損益分岐点の達成が見込まれると予想したが、それに対して別のアナリストはゲーム事業の課題継続を考えれば厳しいだろうとコメントした。12/20に米国市場で高値警戒感からテック株が急落し、中国企業ADRもそろって売られる中、同社は出来高を伴う下落となった。

注:米国上場の中国企業ADRを含めた2023年7月-9月の中国株売買代金上位10銘柄で、売買代金順となります。米国市場と香港市場に同時上場している銘柄については、売買代金を合算の上、銘柄表記は売買代金の多い銘柄となっています。騰落率は12/20時点、過去5日間の株価騰落率です。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

12/14-12/20の中国株主要指数は、ハンセン指数が2.4%上昇、ハンセンテック指数は1.1%上昇しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は1.5%下落しました。香港市場の指数が上昇した一方、米国市場のHXC指数が下落したのは、12/20にHXC指数が3%下落したためです。

12/12-12/13の米連邦公開市場委員会(FOMC)では2024年に複数回にわたって金利を引き下げる見通しを示し、投資家のセンチメントが改善し、中国株にも見直し買いが入りました。しかし、12/20は米国市場で高値警戒感からテック株が売られ、中国企業ADRもそろって下落しました。クリスマス休暇前のポジション調整売りも影響したとみられます。

主要指数の構成銘柄の騰落率は、図表4の通りです。

注:騰落率は12/20時点、過去5日間の株価騰落率です。ナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数の主要構成銘柄は、11月末を基準に時価総額ベースで上位10銘柄となっております。中国企業ADRの代表銘柄の一つであるPDDホールディングスADR(PDD)は、現時点で同指数の構成銘柄には含まれておりません。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

大手電動工具メーカーのテクトロニック(00669)は、大手証券会社2社が目標株価を引き上げ、急伸しました。目標株価の引き上げ要因として米連邦準備制度理事会(FRB)による来年早期利下げの可能性、米住宅市場の回復、DIY(「日曜大工」)関連業務の下振れリスク低下などが挙げられました。同社は地域別売上構成比で北米が77%(2022年12月期)となっており、米利下げと住宅市場の回復の恩恵が受けられる中国企業となります。

Eコマース大手のJDドットコム(09618)は、大手証券会社2社の買い推奨で反発しました。中国のEコマース市場で競合のPDDホールディングス(PDD)の躍進が注目を集めていますが、アナリストは「JDドットコムの最新四半期決算は完璧ではないにしても、ここまで下落すると投資家に好機を提供している。同社株は不安定ながらボトミング(底打ち)プロセスの最初段階に入っている可能性がある」とコメントしました。もう一人のアナリストは、株価の割安さを取り上げ、「中国の消費が改善し始めれば同社株は恩恵を受けるはずだ」とコメントしました。

海運大手の東方海外(00316)コスコシッピング(01919)も急伸しました。イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘に絡んだ紅海での商船攻撃で、上海発欧州向けの海上運賃指数先物が急上昇しました。

一方、AIソフトウェア大手のセンスタイム(00020)は、共同創業者の湯暁鴎氏が病気のため12/15に死去し、売りを誘いました。米マサチューセッツ工科大学卒業の湯氏は同社株を21%保有しています。同社は、湯氏によるAIチームの育成によって同社は持続可能な発展が保障されていると表明すると同時に、業務運営は引き続きCEOや主席技術担当役員からなる経営陣が率いていくことを示しました。湯氏の死去に伴い、同氏が保有していたA類株は議決権のないB類株に転換しており、転換後も2022年末から起算する2年間のロックアップが適用されると説明しました。オンライン保険大手の衆安在線財産保険(06060)は、中国甘粛省で起きた大型地震が売りを誘いました。

今回のトピックス

今回のトピックスは、「2024年に逆張りなら?目標株価と大幅かい離の銘柄は」です。

2023年は中国株にとって厳しい1年となりました。景気懸念や地政学リスク、マーケットフレンドリーでない中国の政策対応(※)などが背景です。(※景気鈍化を受け、投資家は大規模な景気支援を期待していますが、中国当局は今のところ「適当な支援」にとどまっています。)

世界金融市場で中国に対する悲観論が浸透している中、11月は予想外に中国国債に過去最大規模の資金流入があり、注目を集めました。市場関係者は、以下2つが要因である可能性があると指摘しています。

1)米利下げ観測の強まりで高金利国債券への注目が高まっている

(弊社ファンドアナリストによる6/19付レポート「FRB金利据え置きで注目高まる 金利水準と新興国債券!?」をご参照ください。なお、関連の投資信託商品として「SBI岡三-中国人民元ソブリンオープン」もあります。詳細は、リンク先をご確認願います。)

2)中国経済は不動産問題を抱えながらも意外と堅調で、底割れするリスクは高くないかもしれない

上記の1)は債券市場に関するものですが、2)は株式市場にも言えるかもしれません。つまり、2024年に中国経済が底割れせず、堅調さが示されれば、バリュエーションの修正を背景とした見直し買いが入る可能性があります。いわば2024年は逆張りの投資チャンスがあるかもしれません。

そこで、アナリストたちによる目標株価(※Bloomberg集計)と足元の株価が大幅にかい離している銘柄を抽出しました。さらに、以下の条件を加えた銘柄群が、図表5の通りです(12/20時点のデータに基づく)。

1)ハンセン指数とハンセンテック指数、ナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数構成銘柄

(香港市場と米国市場に同時上場している銘柄は米国上場のADRを掲載)

2)目標株価と株価のかい離率が30%~100%

3)投資判断「売り」のアナリスト数は3名以下、「買い」のアナリスト数は25名以上

4)時価総額が2,000億香港ドル以上

5)株価収益率(PER))は10倍~50倍

(PERが著しい低い、あるいは著しく高い銘柄は業績面で問題を抱えている可能性もあるため)

図表5を確認してみると、ヘルスケアや消費関連、電気自動車(EV)、ネット大手の代表格が目立ちます。中国景気懸念もさることながら、米中対立や地政学リスクによるリスクプレミアムの上乗せもこれらの株価とバリュエーションを大きく押し下げた可能性があると言えます。ただ、業績見通しをみる上では中国の経済見通しがより重要になってくるため、2024年に中国景気の底型さが示されれば、これの銘柄には見直し買いが入るかもしれません。

図表5 目標株価と株価が大幅にかい離している銘柄群(12/20データに基づく)

銘柄コード Bloomberg銘柄名 目標株価と株価のかい離率
02269 薬明生物技術[ウーシー・バイオロジクス・ケイマン] 85%
00291 華潤ビール[チャイナリソーシズビール] 79%
00175 吉利汽車控股[ジーリー・オートモービル・ホールディングス] 77%
01211 比亜迪 [BYD] 69%
BABA アリババグループ・ホールディング 63%
02020 安踏体育用品 [アンタ・スポーツ・プロダクツ] 61%
JD JDドットコム 59%
02359 無錫薬明康徳新薬開発[ウーシー・アプテック] 57%
01876 百威亜太[バドワイザー・ブリューイング・カンパニーAPAC] 51%
LI 理想汽車 51%
BIDU 百度[バイドゥ] 47%
TCOM 携程旅行網[トリップドットコムグループ] 46%
00700 騰訊控股[テンセント・ホールディングス] 42%
01929 周大福珠宝集団[チョウタイフックジュエリーグループ] 39%
00388 香港取引所 39%
01093 石薬集団 38%
NTES 網易 31%
00285 比亜迪電子(国際) [BYDエレクトロニック] 31%

注:12/20時点のデータに基づくものです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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