【深掘り】AI覇権の勝者が誰でも買われる?サイバーセキュリティETFの選び方

【深掘り】AI覇権の勝者が誰でも買われる?サイバーセキュリティETFの選び方

売られた銘柄が、主役の調整局面で買われている理由

■「SaaSの死」懸念で売り込まれた2026年2月

AI相場では、半導体関連株や電線株に注目が集まります。実は、その陰でひっそり働き続けてきて、このところ再評価が進んできた銘柄群があります。サイバーセキュリティ関連株です。AIが注目され始めた2023年以降、主役の半導体株ほど派手ではないものの、これらの株価も着実に上昇していました。ところが2025年末ごろから、AI企業の収益力への懸念が生じました。2026年2月には「AIが普及すればSaaS企業のサービスは代替される」という見方が広がりました。いわゆる「SaaSの死」懸念です。サイバーセキュリティ企業の多くはSaaS型でサービスを提供しているため、同じ船に乗っているとみなされ、大きく調整しました。その結果、図表1のとおり、同期間のS&P500やNASDAQ100のパフォーマンスを大きく下回る展開となりました。

■2026年春を底に、立場が逆転

株式相場は連想で動きますが、常に正しいわけではありません。2026年4月を底に、SaaS銘柄の多くに見直し買いが入り始めました。さらに注目すべきは、2026年夏まで主役だったAI・半導体関連株が調整しても、サイバーセキュリティ関連株は上昇を続けている点です。長らく無関係と思われていたサイバーセキュリティ関連株は、AI・半導体関連相場をけん引してきた銘柄群に懸念が走った時にスポットライトを浴びました。舞台袖で出番を待っていた役者のようです。この背景には2つの変化があったと思われます。

1つは、AIの普及でSaaS企業の業績がかえって良くなると見方が変わったことです。心配された「SaaSの死」は、足元では現実にならず、逆にAIがSaaS企業の業績向上につながるとの認識が広がりました。もう1つは、AIを用いたサイバー攻撃の被害が顕著になり、サイバーセキュリティ関連株が実は「隠れAI関連株」だと再認識されたことです。売られた理由が一面的な見方に過ぎなかったという意見が出て、それが買われる理由に変わったとみられます。

図表1 サイバーセキュリティETFと主要株価指数の推移(2023/1/3=100)

サイバーセキュリティ株は勝者が誰であっても需要増の「隠れAI関連株」?

■どの国のAIが勝っても、サイバー犯罪は増加

ここが今回、いちばんお伝えしたいポイントです。AI関連投資の最大の悩みは「結局どこが勝つのか分からない」ことにあります。米国勢か中国勢か、AI開発企業かハイパースケーラーか、データセンター運営か電線各社か、先読みは容易ではありません。ところがサイバーセキュリティは、この勝ち負けの外側に立っています。どの国のどの企業がAI覇権を握っても、AIが使われれば使われるほど、AIを悪用したサイバー犯罪は増え、その対策市場は拡大すると考えられるからです。極端に言えば、米国製のAIが中国製AIに押されても、メモリー価格が急落しても、データセンター運営会社が破綻しても、AI利用が広がる限りサイバーセキュリティへの需要は高まると考えられます。AI戦争の勝者が誰であれ、防御ニーズは増す一方という見方があり、これがサイバーセキュリティ関連株が「隠れAI関連株」とみなされる背景です。

■3本のETF、似ているようで中身はちょっと異なる

米国には代表的なサイバーセキュリティETFが3本あります(図表2)。

アンプリファイ サイバーセキュリティ ETF(HACK)は守備範囲が広く、防衛や通信半導体まで含み、ゼネラル・ダイナミクスやノースロップ・グラマンといった防衛関連株も投資対象です。上位にはブロードコム、クラウドストライク、パロアルト・ネットワークス、シスコ、クラウドフレアが並びます。

グローバルX サイバーセキュリティ ETF(BUG)はサイバーセキュリティへの集中度が高く、イスラエルや日本の関連企業も組み入れます。上位はオクタ、クラウドストライク、パロアルト・ネットワークス、フォーティネット、クオリスです。

ファーストトラスト ナスダック サイバーセキュリティ ETF(CIBR)は3本の中で純資産額が最大で、上位はクラウドストライク、フォーティネット、パロアルト・ネットワークス、シスコ、ブロードコムです。名前は3つ、中身はかなり重なっている点がポイントです。

図表2 サイバーセキュリティETF3本と主要株価指数連動ETFの比較

個別株よりETF、そしてコアよりサテライト

■なぜ個別株ではなく、ETFなのか

サイバーセキュリティ分野への投資には、個別株よりETFが向いていると私は考えます。理由は以下の3つです。

第1に、技術の進歩が速く、難易度が高いことです。市場が拡大すると予想したとしても、どの企業の技術が優れているのかをこの分野の専門家でない個人投資家が見極めるのは容易ではありません。しかも新たな脅威は続々と誕生し、追加対応が求められるといういたちごっこが続くと考えられます。

第2に、デファクトスタンダードを握った企業が勝者総取りになる可能性があることです。関連銘柄に幅広く分散投資しておけば、勝者への投資によるリターンが敗者への投資の損失を上回る可能性があります。

第3に、個別企業のリスクが高いことが挙げられます。サイバーセキュリティ企業は関連会社を含め、サイバー犯罪の格好の標的になり得ます。従来であればわざわざ困難なターゲットを狙うのは、愉快犯に限定されていたと考えられます。しかし、AIが総当たりでサイバー攻撃を仕掛ける状況では、高度なサイバーセキュリティ対策が施されていても、人間では気付かない弱点を突かれる可能性があります。このとき、サイバーセキュリティ企業のサービスが一部でも被害を受ければ、他分野の企業以上に大きな打撃となることが予想されます。鍵屋や警備会社が盗難に遭ってしまったら、商売に大きくマイナスとなるような状況です。

■3本に分散しても、効果は限定的

では3本とも買えば万全かというと、そうでもなさそうです。組み入れ銘柄が共通していることが多いため3本の値動きは似ていて、分散効果は限定的と考えられます。「分散したつもりが、ほぼ同じものを3つ持っていただけ」では、期待外れな結果になりかねません。

投資対象の1本の選び方は、軍事企業まで含めて広く持ちたいならHACK、セキュリティに集中したいならBUG、規模と純資産額を重視するならCIBR、といった整理になるでしょう。

なお、サイバーセキュリティ関連株の値動きの大きさとテーマ性の高さを踏まえると、ポートフォリオのコアではなく、1本をサテライト運用で10%程度までとするのが適していると考えます。ポートフォリオの主役ではないものの、パフォーマンス向上を図るための頼れる脇役と考えたい銘柄群です。サイバーセキュリティ関連銘柄で、AI相場の将来に備える。そんな1本を、ポートフォリオに加えてみることも一案といえるでしょう。

※個人の見解であり、特定の銘柄を推奨するものではありません。また、将来の運用成果を示唆・保証するものではありません。海外ETFには価格変動リスク、為替変動リスク、流動性リスク等があります。

■まとめ

・どの国のAIが勝っても、サイバー犯罪は増えるので、サイバーセキュリティ株は「隠れAI関連株」とみなせる

・サイバーセキュリティの個別株は分かりにくい上に固有のリスクがあるので、ETFでの投資が適している

・サイバーセキュリティETFの値動きは似ているので、1本をサテライト運用で10%程度までを目安と考える

図表3 ドイマサの投資レシピ 実は隠れAI関連?サイバーセキュリティETFの使い方

免責事項・注意事項

・レポートおよびコラムの配信は、状況により遅延や中止、または中断させていただくことがございます。あらかじめご了承ください。

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなさるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製または販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料等及びリスク】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)、 店頭CFD取引(SBI CFD)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示または契約締結前交付書面等をご確認ください。